ブルーアーカイブ -灰の翼-   作:空素

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あらすじ

どうしてキヴォトスにコーラルがあるんだよ!

尚、本作のレイヴンもといイヴは皆さんご存知の通り、レイヴンの火ルート621なので、コーラル絶対殺すウーマンとなっております


EP-54 火花爆ぜる街路

“深紅”に染まるオートマタへと、滑空からの蹴りを叩き込む。

 

オートマタは吹っ飛ばされるが、今までと違い、それだけでは倒し切れない。

どうやら、耐久力も上がっているようだ。

 

しかし、そこへ追撃を加えるより先に、周囲のオートマタやドローンの銃撃、戦車からの砲撃が襲い掛かる。

 

猟犬が駆け、弾幕をすり抜ける道を指し示す。

銃撃の合間を縫い、砲撃の間隙を舞い、躱し切る。

 

宙を舞いながら、大鴉が攻撃のタイミングを示す。

私は周囲のオートマタやドローンへと、ショットガンをぶちかました。

 

ショットガンも例によって、ヘイローの光芒で強化されており、その衝撃だけで直撃した兵器は“真紅”の爆発と共に吹っ飛ぶ。

 

“残り火”は使っておらず、“真紅の火”は出ない筈だ。

恐らくヘイローの光芒による銃の強化によるものだと思われ、単なる銃撃を強化するだけの効果だけだったが、どうやらコーラルに対しては特別な反応を見せるようだ。

 

だが、やはり倒し切れない。

 

とは言え、問題ない。

何せ、今の私は一人ではない。

 

「カヨコ!」

 

私が前線で暴れ回り、注意を引き付けることで、カヨコは今、完全にフリーの状態だ。

 

「任せて…!」

 

私が最初に蹴りで吹き飛ばしたオートマタ、その後にショットガンで吹き飛ばした兵器類それぞれを狙い撃ち、確実に仕留めて行く。

 

カヨコの銃撃を受けた兵器達は、まるで“C兵器”のような“深紅”の爆発を起こして内側から吹き飛ぶ。

 

《C兵器》とは、いわゆる製造の際に、エネルギー源をコーラルとして設計された兵器群の事であり、幾らコーラルに触れたからと言って、コーラルで動くC兵器にはならなかったハズだ。

 

だが、目の前の兵器群は、まるでコーラルに侵食され、乗っ取られてしまっているかのようだ。

 

何故、このような現象を引き起こしているのか。

 

キヴォトスの“神秘”の力の影響で変質したとも考えられるが、今はそんな考察は後回しだ。

 

一先ず、攻撃が有効であり、倒せるのであれば、今はただ、倒すことに集中する。

 

だが、それと同時に、私には確認しなくてはならないことがある。

 

右手の真紅に染まったアサルトライフルを薙ぎ払うように掃射し、オートマタも戦車も纏めて吹き飛ばし、左手のSGを背中のスナイパーライフルと持ち替え、狙撃で戦車の砲塔を吹き飛ばす。

 

周囲がある程度片付くと、三つの銃をそれぞれリロードしつつ、インカムを取り付け、電源を入れた。

 

****************************

 

一方、アビドス組は、先生の指揮の元、復活した“深紅”の兵器軍団を相手取っていた。

 

[“やっぱりだ!みんな!聞いてくれ!相手の弱点を見付けた!”]

 

そして、さすがは先生と言うべきか。

 

僅か数分程度の交戦の合間、早々に相手の兵器群の弱点を看破した。

 

それも、以前、アビドスがヘルメット団に襲撃され、レイヴンとの交戦時、瞬く間に対策委員会が壊滅に追い込まれた経験あってのものだった。

 

あの後、先生は相手がレイヴンでないにしろ、同じような状況に追い込まれないように、瞬時に状況を見極めることを意識して戦況を読むようにしていた。

 

[“ダメージの蓄積だ!一見すると、あたかも耐久力が上がってるように思えるけど…いや、実際に上がってるんだろうけど、さっきの赤い粒子の影響か、一定以上のダメージが蓄積すると、追加ダメージの爆発が起きるみたいだ!そしてそれは多分、こちらの攻撃力に依存しない()()()()()()!効いていないように思えても、確実にダメージが入るみたいだ!”]

 

それが、先生が対策委員会の三人が兵器群と交戦している最中に導き出した、相手の弱点だった。

 

先生がゲーム脳的思考を持っていたのもその助けとなっただろう。

 

『なるほど、つまり攻撃し続ければ勝手に自爆してくれるって事だね』

 

シロコが簡潔に纏める。

 

『オーケー!それなら分かりやすくていいわ!』

 

『はい!このままガンガン攻撃し続けますよ!』

 

[“うん、それと、一応、相手の攻撃も強化されてると思うから、それにも気を付けて”]

 

「さすが先生ですね。この短時間に相手の弱点を見付けるなんて…!」

 

先生の護衛兼サポーターとして共にいるアヤネが、手元のノートPCから視線を外して賞賛する。

 

先生の指示のお陰で、シロコ、セリカ、ノノミの三人は、順調に復活した兵器群を再び撃破して行く。

 

[“いや、これは前のパワーローダー戦があったから早く気付けたんだよ”]

 

「あ、前の砂漠のアレですか?」

 

[“うん。あの時、イヴがパワーローダーを攻撃の衝撃の負荷蓄積で行動不能にできることを思い付いてくれたでしょ?あれから、何も自分たちの攻撃だけが全てダメージに繋がる訳じゃないって知見を得られたんだよ”]

 

「あ、それで今回も相手の自爆を利用した作戦を?」

 

なるほど、とアヤネが納得し、会話がひと段落したタイミングで。

 

『先生!聞こえるか?イヴだ』

 

インカムから聴こえて来たのは、イヴの声だった。

 

[“イヴ!?”]

 

『『『「イヴ(ちゃん)!!!!?」』』』

 

先生と生徒四人の声が重なる。

 

『ちょっとあんた!今無事なの!?』

 

セリカの第一声に、まるでお母さんのようだと感じたのは、先生だけではなかったが、それはさて置くとして。

 

『私は大丈夫だ。ただ、こっちも余裕がある訳では無いから、簡潔に情報を伝える』

 

普段と違い、イヴは中性的な口調からより男性的な口調になっている。

戦闘時にその傾向があると先生は密かに分析していた。

 

そして、イヴの口から語られたのは、今はカヨコと共にいること。

 

兵器軍団を相手にしていること。

 

赤くなって復活したが、問題無く倒せていること。

 

今、カヨコが協力を仰いだ便利屋が来ていて、窮地に陥っているかもしれないこと。

 

『これを聞いて、先生の方はどんな状況か聞きたい』

 

[“分かった。じゃあ、こちらも簡潔に。こっちでも兵器の復活現象は確認してる。けど、こっちは問題ない。だから、イヴ──いや、レイヴン。カヨコと一緒に便利屋のみんなを助けに行ってあげて”]

 

人数的にも、こちらは便利屋の方に比べれば余裕がある。

 

現状で、より優先されるべきは便利屋だろうという判断を下す。

 

『分かった。私たちが合流するまでどうにか持ち堪えてくれ』

 

それだけ言うと、イヴの通信は切れた。

 

「一体、アビドスで…いや、このキヴォトスで、何が起こっているんでしょう…」

 

不安そうに独り言ちるアヤネを尻目に、先生はシロコ達三人が戦っている様子が映ったタブレットへと視線を落とした。

 

*****************************

 

戦車にSG、ARを全弾叩き込み、爆発させると、私は勢い良くカヨコに振り向く。

 

「カヨコ!予定通り、便利屋を優先して助けに行く!」

 

カヨコはドローンを撃墜させながら、肩越しに振り向く。

 

「わかった…!案内する…!」

 

カヨコが先行し、私は殿を務めて追いかけて来るオートマタやドローンを撃破していく。

 

出来れば全て倒して行きたいが、今は一先ず、便利屋の救助が優先だ。

 

病院を出る際に自販機で購入した手榴弾を取り出し、その爆発の爆炎で相手の足を止め、爆煙に紛れる。

 

その後、私とカヨコは、まだコーラルに侵食されていない兵器群を倒しながら、便利屋の元へと急ぐのだった。

 

****************************

 

その一方で、便利屋のハルカ、ムツキ、アルもまた、コーラル侵食兵器群との激闘を繰り広げていた。

 

そして、その場には、彼女たち以外の人物もいた。

 

「ッ…!すまねぇな、嬢ちゃんたち…!」

 

その人物は、片目が傷付いた犬の姿をしたアビドスの住人。

 

「えっへへ〜、私たちは大丈夫だよ〜」

 

埃や煤に汚れながらも、ムツキはその人物に笑顔を向ける。

 

「“大将”!私たちの事は良いから行って!あなたが傷付けば、沢山の人が悲しむわ!!」

 

片手で狙撃をしながら、アルはその人物──柴関ラーメンの大将を急かす。

 

「っく!ありがとよぉ!この礼は腹いっぱいのラーメンで返すからなぁ!嬢ちゃんたちも、気を付けてなっ!」

 

未練を残しながらも、アルたちの想いを汲み、大将はその場を去る。

 

その後ろ姿を見送り、アルは鋭い視線を前方に向ける。

 

その先には、“深紅”の兵器群が壁を成していた。

 

その最前線で、壁を抑え続けるのはハルカ。

 

銃撃を躱し、時に受けながらも、決して倒れず、敵の気を引き付け続ける。

 

「あなた達に大将さんも、ムツキ先輩もアル様も傷付けさせません…!死んでください…!!」

 

隙があれば、すかさずSGを近距離でぶっ放し、仰け反らせる。

 

「ハルカちゃ〜ん!ちょっと前に出過ぎだよ〜!下がって下がって〜!!」

 

そこにムツキが声をかけ、気付いたハルカが下がったところへ、爆弾を投擲する。

 

爆弾は下がったハルカを追いかけるように距離を詰めたオートマタを爆炎に飲み込み、吹き飛ばす。

 

「む、ムツキ先輩…あ、ありがとうございます…!」

 

立ち昇った火柱は、周囲に浮かぶドローンをも巻き込み、撃墜させる。

 

「ふふ〜ん♪こっちはレイヴンの依頼のお蔭で、たっくさん爆弾が買えたからね!まだまだ行くよ!!」

 

だがそこで、黒煙の中から戦車が飛び出し、ムツキを狙い、砲塔を向ける。

 

そこへ、ムツキの背後から銃弾が放たれ、砲塔に着弾した直後、周囲を爆発させる。

 

「アルちゃんナイス〜♪」

 

狙撃の主はアルであり、ムツキは後ろに振り返り、微笑む。

 

「無駄話はあと!それより、来るわよ!」

 

ハルカのSG、ムツキの爆弾と銃撃、アルの狙撃と爆発により、兵器軍団はそれなりに数を減らしつつあるが、元の数が多い為に、倒しても倒しても、減ってる気配を三人は感じていなかった。

 

黒煙の中から、続々と“深紅”を纏う兵器達が現れる。

 

アルは何となく、一定以上のダメージを与えることで自爆させられることを察しつつあったが、それにしても多勢に無勢で追い詰められつつあった。

 

オートマタの銃持ちとドローンの銃撃、ロケットランチャー持ちと戦車の砲撃が次々と放たれる。

 

ハルカがその身を呈して狙いを自身に絞り、時に受けたりもするが、全てを引き付けられる訳ではない。

 

ハルカが引き付け切れない銃撃がムツキやアルを狙う。

 

「ッ!こっちを…こっちを見てください!!」

 

銃が頬を掠め、爆炎に炙られながらも、ハルカは回避の隙間に、銃撃を差し込む。

 

「ハルカちゃん!あんまり無茶しちゃダメだよ!」

 

ムツキが小柄な体躯を活かして銃撃を回避しつつ、フリスビーのように地雷を放ち、それに接触した者たちを吹き飛ばす。

 

それでも自爆に十分なダメージは与え切れず、攻撃を許してしまう。

 

オートマタのロケットランチャー持ちと戦車の砲撃がアルを狙う。

 

「ッ!!」

 

アルは被弾覚悟で自身を狙う二体へと銃口を向け、狙撃する。

 

銃弾が放たれ、直撃と同時に爆発が起こり、戦車とRL持ちに加え、その周辺の兵器たちも巻き込み、自爆させる。

 

だが、同時にアルは砲撃を回避出来ない。

 

幸い、砲弾そのものはアルを外れ、地面や背後の建物に直撃し、爆炎に吹き飛ばされるだけで済んだ。

 

また、砲撃がアルの背後の建物に穴を開けてくれたお蔭で、アルは爆炎を受けて壁に叩き付けられることなく、建物の中へと転がり、どうにか受け身を取ることが出来た。

 

「…ッ…!」

 

アルは節々が痛む身体に鞭打ち、立ち上がる。

 

建物の木材が燃えているからだろうか、香ばしい良い匂いがする。

 

最近、何処かで嗅いだような、良い匂い。

 

そして、()()()()()()()ような香りだ。

 

その視界に入る建物の内装に、アルは見覚えがあった。

 

飲食店のような内装であり、テーブルや椅子が置かれ、厨房と思われる場所もある。

 

「──うそ、でしょ…」

 

アルは、そこが柴関ラーメンの店内であると気付いた。

 

かつての温かみのある内装は砲撃によって今やめちゃくちゃであり、壁には穴が開き、椅子やテーブルは吹き飛ばされ、火が着いていた。

 

アルは膝から崩れ落ちそうになる脱力感を歯を噛み締めて堪え、悲哀の気持ちを振り払うように店に空いた穴から外に飛び出す。

 

今、自分がやるべき事は、無力感に打ちひしがれることでは無い。

 

これ以上、この店が、酷い状況にならないように戦うことなのだと、自身を叱咤する。

 

外では、ハルカとムツキが傷付きながら必死に兵器たちを足止めしてくれていた。

 

「…あ、アルちゃん…!柴関ラーメンが…!」

 

どうやらムツキも気付いていたようだ。

 

彼女もそれなりに思い入れがある筈だ。

 

それでも──。

 

「ムツキ、壊れてしまったものは仕方がないわ。それでも、私たちがするべきなのは、これ以上、壊れないようにする事よ!!」

 

それは、ムツキではなく、自分自身に言い聞かせる言葉。

 

自分自身の心に刻み込む言葉。

 

「──うん、そうだね!それでこそアルちゃん!!」

 

ムツキは前へと視線を戻し、銃撃し、爆弾を投擲する。

 

アルも狙撃でオートマタやドローンを攻撃して行く。

 

それでも、耐久が上がったのか、敵は倒し難く、数は減らし辛い事もあって、未だ数の差は絶望的だ。

 

このままではいずれ、数で圧殺される。

 

せめて、あと一人、攻撃役が増えてくれれば──。

 

その直後、上空から影が差す。

 

反射的に見上げた先に舞うのは、桃色の長髪。

 

その人物は、建物の上からアルたちの目の前に降り立ち、敵へと突進する。

 

新たな乱入者に、兵器たちが攻撃するが、その人物は小柄な体躯を活かした身軽さを活かして銃撃を躱しつつ、高速で接近し、その手のSGを放つ。

 

三発を連射し、その範囲内の兵器を瞬く間に自爆させる。

 

そこへ戦車が砲撃するが、容易く軌道を見切って避け、一気に距離を詰める。

 

車体を足場にして上に乗り、リロードの後、先程と同じようにSGを連射し、自爆する直前に地面に飛び降りる。

 

その姿は紛れも無い──。

 

「小鳥遊ホシノ!!」

 

アルは思わず、その名を叫んでいた。

 

詳しいことはアルも知らないが、今朝、アビドスの対策委員会の面々が躍起になって探しているホシノが、どういう訳か、目の前に現れた。

 

呼ばれたホシノは、アルに振り返り、余裕そうにしながらも困ったような表情でひらひらと手を振る。

 

そこへ銃撃して来たオートマタの方へと疾走し、再びSGを連射して自爆させると、ホシノはそのまま軍団を飛び越え、姿を消した。

 

ホシノの助太刀のお蔭で、後は三人だけでもどうにかなりそうな数まで減らされている。

 

複雑な心境ながらも、アルはムツキとハルカと共に、残る兵器軍団を倒していく。

 

イヴとカヨコが合流したのは、三人が兵器を全滅させた直後だった。




本作では、違うアプローチで、便利屋には柴関ラーメン破壊の現場に関わって頂きました

尚、イヴ中心に物語を描写している都合上、描いていませんでしたが、便利屋は原作通り、600円以下の柴関ラーメンのラーメン一杯を四人で分けようとして、大盛りを食べさせて貰ったイベントを裏で消化済みです

なので一応、本作でも大将は便利屋にとって恩人ではあります

その恩人の店を守れなかったアルの心境たるや…

ハルカのムツキとカヨコの呼び方は、(コミカライズ版でのみ登場し)室長とか課長呼びみたいですが、本作では先輩呼びもさせてみました

ハルカはアルちゃんをアル様や社長と二つを使い分けて呼ぶので、それに対応させたいと思いました

そのついでに因むと、本作のカヨコは便利屋だけの時はアルを呼び捨て、誰かがいる時は社長呼びと使い分けるように意識しています(何処かでそうなってないところもあるかもですが、まぁカヨコの気分次第なところもあるので)

なんかカヨコのアルちゃんの呼び捨てが何だか無性にえっちだったので隙があればアルちゃんを呼び捨てで呼ばせてます

トリニティピンクカタツムリ「エッチなのはダメ!死刑!」
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