ブルーアーカイブ -灰の翼-   作:空素

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あらすじ

BOSS:コーラル侵食クルセイダー戦


本編には関係ありませんが、皆さんいつも閲覧ありがとうございます
最近はコメントが多く頂けて嬉しい限りです
今後ともよろしくお願いします


EP-57 接触と切望

イヴと便利屋が合流してくれたお陰で、戦況は大分、余力が生まれた。

 

タブレット端末──《シッテムの箱》に映る映像を見ながら、先生は安堵する。

 

だが、未だ安心は出来ない。

 

クルセイダーそのものもあるが、先生が気になっているのは、イヴとの連絡が取ることが出来なかった不具合と、病院を含めた市街各地の監視カメラの映像を見ることが出来なかった現象だ。

 

今は、アヤネのドローンの映像を共有することで戦況を把握出来ているが、それが無ければ先生は状況の把握が危険な現地に行くことでしか出来ないところだった。

 

単なる偶然と言われればそれまでだが、先生は何者かの意思の介在を感じずにはいられなかった。

 

イヴを孤立させようという思惑を感じたのは、こうして合流できた事から気のせいだったのかもしれないが、それにしても不気味だ。

 

こちらからイヴへの連絡は出来ず、だが逆に、イヴからのインカムの通信は許容した。

 

携帯端末の通話を妨害できた点から、インカムの通信も同じように妨害出来てもおかしくはない。

 

いや、もしかすると、妨害しなかったのではなく、()()()()()()のだとすれば、或いは。

 

例えば、イヴとその人物は面識があり、妨害の手口から自身の存在を認知される可能性があって、そうならないようにしている、とか。

 

結局のところ、全ては憶測に過ぎないが。

 

仮に、先生たちを妨害した何者かがいるとして、その人物は今もこの状況を眺めている可能性がある。

 

それがとても不快で、心地の悪いものだった。

 

[“アロナ、やっぱりまだ、動き辛い感覚が残っているかな?”]

 

『はい、先生。こんなことは初めてです…』

 

アロナは、普段の気の抜けた様子からはまるで想像が付かないが、高いハッキング能力を持っている。

 

生半可な妨害ではものともしないはず。

 

そのアロナが、身動きが取れないなど、前代未聞だ。

 

その直後──。

 

『…初めまして、シャーレの先生』

 

インカムから聴こえてきたのは、大人びた女性の声。

 

『私は《ルナシー》。訳あって、今は元、カイザーPMC理事に協力している者です』

 

先生は一瞬、驚愕するが、すぐに落ち着いて口を開く。

 

[“君だね?イヴへの通信を妨害して、今もアロナの身動きを封じ込めているのは”]

 

何となく、この事態は姿を眩ませたカイザーPMC元理事が関わっていそうな気はしていたが、こうして判明するとは。

 

「先生?どうかしました?」

 

横のアヤネが訝しむが、先生はそっと口に人差し指を添え、“静かに”のジェスチャーを取る。

 

『はい、その通りです。さすがにこの程度は察していたようですね』

 

《ルナシー》と名乗った女性の声は、何処か淡々とした無機質な機械的な、まるで“AI”を彷彿とさせるものだった。

 

『本来なら、彼女を孤立させたかったのですが…その端末──シッテムの箱と言うそうですね?そちらのお嬢さんを抑えるのに精一杯で、上手くいきませんでした。素直に賞賛いたします』

 

端末の画面に視線を向ければ、アロナが目を丸くして慌てふためいていた。

 

[“君は、もしかしてイヴの──いや、“レイヴン”と面識があるのかな?”]

 

先生は、自身の推測、憶測の答えを得るチャンスだと、単刀直入に問いかける。

 

『…まさか、そこまで辿り着いていたとは。私は貴方を侮っていましたようです。その答えは、YESであり、NOでもある、と言ったところでしょうか』

 

その声は、何処となく寂しそうな、哀しそうなものに先生は感じた。

 

[“…それは、どういうことかな”]

 

『ふふっ…そのままの意味ですよ、先生。彼女は、“かつての私”を知る者であり、しかし、“今の私”は知らない者』

 

先生は以前、レイヴンが多くの人々の命を奪ったという事を聞いていた。

 

きっと、彼女はその、かつてのレイヴンに関わりがある人物に違いない。

 

[“…ルナシー、君はどうして私に通信を?”]

 

だからこそ、疑問に思う。

 

何故、彼女が先生である自身に接触して来たのか。

 

全く無関係とまでは言わないが、イヴと親しい者は他にも居るはずだ。

 

『…ふふっ、さぁ、何故でしょうね?これ以上はまたの機会に、という事で。今後とも、よろしくお願いしますね、先生。そして、彼女をこれからも助けてあげてくださいね』

 

そこには紛れも無い、レイヴンへの優しさのようなものが含まれていた。

 

そんな想いを持っていて尚、ルナシー、彼女は何故、レイヴンの敵としての立ち位置に甘んじているのか。

 

聞いてみたかったが、きっと彼女はこれ以上、質問に答えてはくれないだろう。

 

[“それは言われなくても。私は先生だからね”]

 

レイヴンは今、このキヴォトスで“渡鳥イヴ”として生きている。

 

彼女もまた、先生にとって、大切な生徒の一人だ。

 

先生とは、生徒を助ける者だ。

 

彼女が過去、どれほど罪を犯していようと、一人の生徒として向き合い、彼女を支え、導く。

 

その意志に変わりはない。

 

『…それを聞けて安心しました。それでは失礼します。また、近い内にお会いしましょう』

 

そう言い残し、ルナシーからの通信は切れた。

 

[“…ごめん、アヤネ。ちょっと、通信が入っていてね”]

 

アヤネは心配そうに先生を見詰めていた。

 

「…イヴちゃんに、関係のある人なんですか?」

 

アヤネの言葉に、先生はどう答えたものか思い悩み、タブレット端末の画面に視線を落とす。

 

映像内では、相変わらず、イヴがクルセイダーを前に大立ち回りで圧倒していた。

 

「…そうですか、簡単には答えられない事なんですね…」

 

アヤネは納得した様子だったが、何処か寂しそうな、切ない表情を浮かべていた。

 

「…それでも、先生。私に手伝えることがあったら、言ってください。私も、イヴちゃんの力になりたいんです…!」

 

アヤネは、真摯な視線を先生に向ける。

 

「彼女との出会いは、考え得る限り、最悪のものでした。正直、最初は私は、彼女のことを怖いって思ってたんです」

 

イヴとアビドス対策委員会の邂逅は、カタカタヘルメット団の襲撃の場であり、敵としてのものだった。

 

「ですが、その後、彼女は何回も、私たちの為に、戦ってくれました!傷付いても、倒れても、いつも自分を蔑ろにしてまで、私たちを優先してくれました!」

 

セリカ救出作戦でも、ブラックマーケット闇銀行の襲撃でも、彼女は率先して矢面に立ち、傷付きながらも、対策委員会のみんなの為に戦ってくれた。

 

その結果、彼女は倒れてしまい、入院中にアビドスを狙った襲撃に巻き込まれて尚、今もこうしてアビドスの為に戦ってくれている。

 

「私は、イヴちゃんを友達と思ってますし、同じアビドスの仲間の一人とも思ってます!だから…!」

 

アヤネは、目が潤んでいた。

 

声も僅かに上擦ったものになっている。

 

「イヴちゃんが、何か辛いことがあるなら、今度は私たちが助けてあげたいんです…!」

 

その言葉は、これまで、ずっと心の内に溜まっていたものだったのだろう。

 

[“…うん、話を付けたらきっと、アヤネにも…アビドスのみんなにも伝えるよ”]

 

「分かりました!絶対ですからね!」

 

全てを吐き出したアヤネは、何処か清々しい顔をしていた。

 

[“その為にも先ずは、このクルセイダーを倒さないとね…!”]

 

戦っているみんなをサポートするべく、二人は画面へと向かうのだった。

 

*****************************

 

クルセイダーの攻撃は、非常にパターンが少ない。

 

主砲からの単発ないし連発砲撃。

 

巨体を生かした突進は、ドリフトで往復もするが、結局はやっている事は同じだ。

 

その派生として、先程見せたドリフトからの無差別砲撃は、注意が必要だろう。

 

そして、クルセイダー最大最強の攻撃である、広範囲溜め砲撃。

 

今のところ、使用したのは私や便利屋が合流する前の一度きりのようだが、その威力は深々と爪痕を残している。

 

あれがもう一度、放たれてしまえれば、同じように無事で済む保証はない。

 

阻止する為にも、一刻も早い撃破が求められるが、それを阻むのが車体を覆う装甲とコーラルによる耐久性の上昇だ。

 

元より、貫通性の高い銃撃でなければまともなダメージが入らなかったが、それがコーラルの影響か、貫通性の銃撃をも弾くようになってしまっている。

 

それでも、これまでに三度の自爆を引き起こせたのは、数によるごり押しによるものだった。

 

アビドスの三人に、便利屋の四人、そして私が加わった八人による猛攻で、三度の自爆を起こさせていた。

 

それが、三度しか、と捉えるか、三度も、と捉えるかの話であれば、私としては後者の思いが強い。

 

私の共鳴の幻視による特効ダメージで間違いなく削れている筈だが、それでもクルセイダーは未だに暴れ回っている。

 

猛突進からドリフトし、広範囲に無差別に爆撃をばら撒く。

 

私はその中の空白地帯を掻い潜り、距離を詰める。

 

常に私に敵視を向けさせ続ける為に、クルセイダーに私の危険性を刻み込み、私から排除させるようにする為に、生半可な攻撃は出来ない。

 

共鳴の幻視による弱点特効があるとは言え、気を抜けば他のメンバーに狙いが向きかねない。

 

特に、威力の高いスナイパーライフルの銃撃に加えて爆発まで起こすアルや、ノノミのマシンガンの往復掃射などは瞬間的威力が非常に高いと思われる。

 

それらの攻撃のダメージを常に上回り続ける為に、私は一回一回の攻撃に全力を込める。

 

突進からの蹴りを叩き込んで車体を揺らし、空かさずSGを近距離で浴びせる。

 

弾丸の一つ一つがコーラルに反応し、小爆発が車体を包み込む。

 

近距離に居続けてクルセイダーが突進する頻度を減らし、固定砲台にして他のメンバーが攻撃しやすいようにする為に、即座に薙ぎ払い飛び退き回避──“戦技”、《狼騎士の旋回》で距離を取る。

 

この技は、ラスティを参考にしたところが多分に含まれる。

 

ラスティのエンブレムは“狼”であり、その気高き生き様は“騎士”のようだった。

 

動きには、ラスティが使っていたレーザーブレードの舞うような流麗な動作を参考にしたのもあって、故に“旋回”。

 

二段構えの攻撃なのも、ラスティのレーザーブレード攻撃が二段構えなことを踏まえてのものだ。

 

《狼騎士の旋回》で飛び退きつつ、着地と同時に銃撃を薙ぎ払い、SGをSRに切り替え、狙撃する。

 

そこに続けて、アビドス便利屋連合が攻撃を畳み掛ける。

 

無数の銃撃、爆撃がクルセイダーへと殺到し、しかし、そのほとんどは見掛け倒しだが、四回目の自爆が発生し、着実なダメージの蓄積を実感する。

 

自爆と共に、クルセイダーは負荷限界(スタッガー)を起こし、動きを止める。

 

更なる攻撃のチャンス。

 

『[“負荷限界だ!全員、総攻撃!!”]』

 

先生がインカムからアビドスメンバーへと指示を出す。

 

「ハルカ、ムツキ!攻撃をお願い!」

 

「カヨコ!今が攻撃チャンスよ!」

 

「アルさん!攻撃をお願いします!」

 

比較的前に出がちなシロコからハルカとムツキへ、同じ中距離の立ち位置のセリカからカヨコへ、遠距離の立ち位置のノノミからアルへと指示が伝えられる。

 

「わ、分かりました!!」

 

「オッケー、シロコちゃん♪」

 

「了解」

 

「承知したわ!!」

 

それに便利屋四人が応え、スタッガー状態のクルセイダーに総攻撃が加えられる。

 

私も離れた位置から突進し、蹴りを叩き込み、みんなの攻撃中に素早くリロードしておいたSRとSGの銃撃を浴びせる。

 

スタッガーにより、より多くのダメージが与えられるようになり、五回目の自爆が発生する。

 

目に見えて、クルセイダーの車体に傷が刻まれて行く。

 

それでも、未だクルセイダーは、満身創痍ながらに動き続ける。

 

スタッガーから復帰し、キャタピラを唸らせ、私目掛けて突進する。

 

私は跳躍して真上を通り過ぎるように回避しつつ、ガラ空きの天板に空中から跳躍の直前に持ち替えたARの銃撃を浴びせる。

 

無人の空間を突っ切ったクルセイダーと入れ替わるように着地し、ARをリロードする。

 

クルセイダーは、ドリフトして私へと狙いを付ける。

 

無差別砲撃をしないと言うことは、往復突進か。

 

そう身構える私の予想に反し、クルセイダーはその位置で動きを止める。

 

その時点で、私は嫌な予感を感じていた。

 

クルセイダーの主砲が赤熱し始める。

 

『皆さん!クルセイダーの広範囲砲撃です!』

 

鋭くアヤネの声が届く。

 

私の背後には、アビドスと便利屋のメンバーがいる。

 

しかも、中途半端に距離が開き、今から一斉にクルセイダーへと距離を詰めたとしても、砲撃発射まで間に合わない。

 

このままでは、全員が巻き込まれ、壊滅だ。

 

クルセイダーの主砲がコーラルと同じ“深紅”に染まり、そして、破壊と撃砕の爆炎が解き放たれた。




イヴが編み出した、戦技《狼騎士の旋回》は、メタ的モチーフはダークソウル無印DLCのボス、狼騎士アルトリウスのモーションの一つを参考にしています

それ以外では、エルデンリングなら、神肌の使徒や獣の司祭が同じような動きをします

手元にあれば、暇な時にでも見てみてください
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