ブルーアーカイブ -灰の翼-   作:空素

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あらすじ

イオリの脚ペロ

アニメ9話がお辛すぎてダメージを受けました

本日はメインストーリー更新なので早めに更新
まあ基本ストックしているんですけどね


EP-62 無形と有形の贈り物

翌日、早朝。

 

まだ空が白み始める前の薄暗い時間。

 

私は、アビドスの病院の一室で、準備を整えていた。

 

準備とは勿論、PMC前哨基地廃墟に行き、全ての兵器を潰し、元理事を捕縛する為のものだ。

 

しかし、これは他のアビドスや便利屋、先生にすらも内緒だ。

 

私が先んじて襲撃し、全てを終わらせる。

 

コーラルが、エアが関わっていると言うのだとするのなら、他の者たちを巻き込む訳にはいかない。

 

これは、私の因縁であり、責任であり、戦いだ。

 

だからこそ、私は敢えて、コーラルの情報を誰一人に対しても伝えなかった。

 

共有しなかった。

 

全ては、私一人で、私自身の手で、全てを終わらせる為。

 

エアが生きている理由は、この際どうでも良い。

 

今度こそ、コーラルごと、エアを完膚無きまでに殺し尽くし、焼き滅ぼす。

 

キヴォトスをルビコンと同じように汚染させ、コーラルの分散を許す訳にはいかない。

 

その果てに、どんな代償を払うことになろうとも、私はただ、為すべき事を為す。

 

ウォルターから受け継ぎ、今は私自身の使命となった、コーラルの焼滅を遂行する。

 

もう誰も、コーラルに関わらせ、傷付けさせない。

 

準備を済ませた私は、病室の窓を開け、飛び降りる。

 

誰が見ているか分からない。

 

素早く、砂漠方面に向かわなければ。

 

病院の敷地を駆け抜け、門を潜り抜ける。

 

「ね、言ったでしょ?イヴは絶対、抜け出すって」

 

「ん…今回はカヨコの勝ちだね、仕方ない」

 

その先で待っていたのは、シロコとカヨコだった。

 

「二人とも、何で…」

 

彼女たちはもちろん、誰一人として、私が早朝から動き出すことは伝えていない。

 

「イヴ、それはこっちのセリフだよ」

 

カヨコが鋭い視線を私に向ける。

 

「なんで、単独行動を取ろうとしたのか、教えてくれる?」

 

カヨコが畳み掛けるように詰め寄る。

 

それに対して私は、押し黙るしかなかった。

 

こんな事なら、夜中に動き出すべきだった。

 

「…また、一人で抱え込もうとしたんだね」

 

シロコは、どこか哀しそうに、寂しそうに、告げた。

 

待ち受ける危険は、コーラルだけではない。

 

カイザーの連中も、何を企んでいるか分からない。

 

コーラルと企業から遠ざける為にも、私一人で全てを終わらせたかった。

 

『コーラルが絡むと、死人が増える』

 

ウォルターが言っていた言葉だ。

 

これ以上、コーラルに関わらせる人間を増やす訳にはいかない。

 

キヴォトスの人々まで、あの災厄に巻き込む訳にはいかないのだ。

 

「…あの、赤い光の粒子のこと?」

 

カヨコはまるで、私の心を読んだかのように、的確に言葉を放つ。

 

「…あの赤い光が現れてから、イヴの雰囲気が変わった。あれが、イヴの過去に関わってるの?」

 

コーラルが現れた場面には、カヨコがいた。

 

表には出さないようにしていたつもりだったのだが、どうやら失敗したらしい。

 

「…シロコ、カヨコ」

 

それなら、仕方ない。

 

「敢えて聞かせて。そこを通してくれない?」

 

それでも、念の為、聞いておく。

 

最終確認として。

 

「行かせると思う?」

 

「イヴを一人だけで戦わせる訳にはいかない」

 

カヨコとシロコは、それでも尚、立ちはだかる。

 

「そう…それなら──」

 

無理にでも推し通るしか、方法は無い。

 

「私は、貴女達を薙ぎ倒してでも、行かなくてはならない」

 

二人が私の邪魔をするなら、私は二人を倒すしかない。

 

「…そこまでしなきゃいけないものなの?そんなに危ないものにイヴは一人で行こうとしてるの?」

 

そうだよ、カヨコ。

 

コーラルは、決して人とは相容れない災厄。

 

そして、その災厄を滅ぼすことが出来るのは、私だけだ。

 

「…良いの?イヴ。此処で私たち二人を相手にしたら、その分、消耗することになる」

 

それについても問題ないよ、シロコ。

 

消耗したところで、私にはそれを補って余りある手段がある。

 

“歯車”と“残り火”。

 

その二つを使ってでも、私はコーラルと元理事、カイザーの企みを叩き潰す。

 

だから、二人とも。

 

これ以上、私の邪魔をしないで。

 

両手の銃を握り、駆け出す。

 

その瞬間、私の顔の前を銃弾が掠める。

 

「──何してんのよ、あんた達は」

 

銃弾が飛んで来た方を見れば、そこにはアルを始めとしたムツキ、ハルカの三人。

 

アルはこちらに銃を向けており、その銃口から煙が立ち昇っている事から、先程の銃撃はアルのものだと理解できる。

 

「どっちも、動くんじゃないわよ」

 

その反対側からは、銃を構えたセリカ、ノノミ、アヤネ、そして、先生。

 

アビドスに加えて、便利屋と先生が、この短時間に集合出来るはずがない。

 

そこから考えられるのは、私は最初から見張られていた、ということだ。

 

「ちょっとカヨコ!私たちが到着するまで場を持たせるって話だったでしょ!?」

 

「シロコ先輩も!何を戦おうとしてるのよ!」

 

やはり、この場の私以外の全員が繋がっていたのか。

 

「私も出来ればそうしたかったけど、私の話にもシロコの話にもイヴが全く乗ってくれなかったから…」

 

「ん、カヨコの言う通り。アレはもう戦うしかない雰囲気だった。でも、正直助かった。グッジョブ」

 

「「グッジョブじゃないわよぉ!!!!」」

 

そんな言い合いを尻目に、私は先生へと視線を向ける。

 

「…これは先生の判断かな?」

 

[“まぁね。とは言え、私一人では半信半疑で、みんなに相談したら、満場一致でね。だからずっと見張ってたんだ。あ、でも安心して。あくまでも見張ってたのは病室の出入口と、病院の外だから!”]

 

そう言うことでは無いのだが。

 

「…わざわざ、寝ずに見張ってたの?」

 

「いいえ!ちゃんと一人ずつローテーションしながら、他の人はキチンと寝るようにしましたよ!」

 

ノノミは意気揚々とピースサインを私に向ける。

 

その様子からも、寝不足な様子はない。

 

「…はぁ…」

 

何だか、もう何もかもがバカバカしく感じて来た。

 

「…あの二人は?」

 

何故か先んじて私の前に立ちはだかったカヨコとシロコ。

 

あの二人が現れたタイミングは、どう考えても私が外に飛び出してから移動したのでは間に合わない。

 

まるで直前まで待機していたかのようなタイミングだ。

 

「あー…あの二人は近くの建物の中に張り込んで、イヴちゃんの室内を…その、直接、覗き込んでいたみたいで…」

 

戸惑っているアヤネに説明を受けた私は、無表情のままシロコとカヨコに顔を向ける。

 

「戦友の危機を見逃すことは出来ないから!」

 

「お姉ちゃんとして、やるべき事をやっただけ」

 

二人は一切、悪びれた様子は無い。

 

なるほど、つまりこの二人は、私が起きて準備している時には、既に認知して行動を始めていたと。

 

バカだ。

 

そして、それはこの二人に限らず。

 

バカばっかりだ。

 

どいつもこいつも、私の気も知らないで。

 

好き勝手にやりたい放題。

 

「…もう良い。好きにしてくれ」

 

私はもう、みんなを止める気はない。

 

お人好しのバカばかりだ。

 

だが、どうせなら、精々、利用させて貰うとしよう。

 

私がコーラルを滅ぼし、エアと決着を付ける為に。

 

「ふん、最初からそれで良いのよ」

 

私に、アルが歩み寄る。

 

「此処には、自分の身も守れないような、あなたの荷物になるような奴なんて、一人としていないわ。あなたに守られるような筋合いは無い。あなたはただ、いつも通りに敵だけを見て、どう叩き潰すかだけを考えていれば良いのよ。そうやって、好きなように戦うのが、傭兵というものでしょう?」

 

こればかりは、アルの言う通りかもしれない。

 

私は、目的ばかりを見て、周りが見えていなかったかもしれない。

 

そうだ、ここに居る連中はみんな、これまで数々の激闘を共に乗り越えて来た強者ばかりだ。

 

私が柄にも無く、守ろうと考える必要は無かった。

 

私はただ、告げれば良かったのだ。

 

「──みんな」

「今回の敵は、私の獲物だ」

「だから、露払いを頼む」

 

****************************

 

動き出したイヴと、そして、その仲間たちを見ている者がいた。

 

「…みんな、イヴちゃん…」

 

ホシノは、建物の陰から、彼らの様子を眺めていた。

 

「私がやるべき事。私の守りたいもの。私は、これで良いんですよね?ユメ先輩…私の選択は、間違っていないですよね…?」

 

自分に言い聞かせるように、刻み込むように、強く胸の前で拳を握る。

 

「私は決めたんだ。みんなを守る為に。だから、私は──」

 

最後に、彼らを一瞥した後、ホシノはその場から立ち去った。

 

****************************

 

改めて、PMC前哨基地廃墟へと向かう準備の途中。

 

殆んどの者は、アビドスが保有する車に物資などを詰め込んだり、各々の武器の最終点検をしている中、私を一晩中、見張っていたおバカのカヨコとシロコの二人は大人しく眠らせていた。

 

覆面水着団などの突飛な考えを捻り出すシロコは兎も角、カヨコはそれほどおかしな言動をしないと思ったのだが、まさか、シロコと同調するとはどう言うことだろうか。

 

そんなことを考えていると背後から気配を感じた。

 

「イヴ」

 

背後から声を掛けられたと思えば、そこに立っていたのはシロコだった。

 

「ダメだよシロコ。まだ寝てないと」

 

「うん、そうだけど、早くお礼を言っておきたくて」

 

「お礼?」

 

シロコにお礼を言われるようなことは──。

 

もしや。

 

「イヴでしょ?アビドス宛に、“アレ”が届いたの」

 

どうやら、()()()()は思いの外、早く仕事をこなしてくれたようだ。

 

「気に入ってくれた?」

 

「うん。少なくとも、見た目は。能力はまだ使ってないから分からないけど、イヴとの戦いで見てみたかったかも」

 

なるほど、シロコが私との戦いに乗り気だったのは、私でアレの──戦闘用ドローンの試し撃ちをしたかったからか。

 

本当にシロコはバカだ。

 

「それは残念だったな」

 

一応、操作性は元の規格を元にして依頼した為、大きく変更されるようなことはないと思うが、それでも事前の仕様確認は大事だ。

 

況してや、今回はミレニアムのエンジニア部に頼んだのだから。

 

「大丈夫。その分、弾薬を節約出来たと考えれば良い」

 

そう言ってシロコが空を見上げれば、そこには一台のドローン。

 

白を基調に、水色のラインとミサイルの弾頭が映え、また側面にはアビドス高校の校章が入っている。

 

「逞しいな」

 

シロコであれば、ぶっつけ本番でもどうにかなるかもしれない。

 

「改めて、ありがとう、イヴ。大事にするね」

 

「気にしなくて良い。元々、私が壊したものだから」

 

「それでも言わせて。これで、私はイヴの力になれるし、ホシノ先輩を助けることが出来る」

 

そう言い残し、シロコは再び、仮眠を取りに行った。

 

その後、私たちがアビドス砂漠へと出発したのは、すっかり日が顔を出した頃のことだった。




ようやくシロコのドローンが復活です

しかもエンジニア部のお手製

どんな性能をしているのか、楽しみですね()
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