ブルーアーカイブ -灰の翼-   作:空素

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あらすじ

ファウスト登場

ここからまた、ボチボチ調子を取り戻して行きたいですね…


EP-65 因縁と邂逅

「随分と派手な登場ね、ヒフ──」

 

砲撃と共に現れたヒフミに驚くセリカのセリフに被せるように、食い気味にヒフミは言い放つ。

 

『ファウストです!!』

 

「それって重要?」

 

そのやり取りを聴きながら、シロコは首を傾げる。

 

『あ、あはは…』

 

アヤネも乾いた笑いをしているようで、引きつった笑みが容易に想像できる。

 

「わあ!ファウストさん!お久しぶりです!自分から名乗るだなんて、覆面水着団のリーダーとして、自覚が芽生えたんですね☆」

 

その一方で、ノノミはとても嬉しそうに喜んでいた。

 

『えっ!?いやっ、これはそのっ!?あ、あうぅ〜!!』

 

ヒフミとしては、無関係の人間を名乗りたかったのだが、完全に外堀を埋められ、逆に逃げられない状況に追い込まれる。

 

『そ、それはさておき!』

 

だからこそ、ヒフミはその事実を一旦、棚に上げた。

 

『私ももうすぐ、そちらに着きますので!お待ちください!』

 

ヒフミの意味深な発言に、首を傾げる一同。

 

すると、驚きの声をあげたのは、アヤネだった。

 

『み、皆さん!そちらに、巡航戦車クルセイダーが向かっています!』

 

その発言に、その場の誰もが身構える。

 

ただでさえ、目の前にはコーラル侵食第二段階のクルセイダーがいると言うのに、更にそこに増援とは。

 

だが、ここまでの流れから察するに、そのクルセイダーは──。

 

『ですが、トリニティのエンブレム!友軍です!』

 

アヤネの声と同時に、巨大な戦車が姿を現す。

 

造形は、目の前のカイザーPMCクルセイダーと同じだ。

 

だが、表面装甲が煌びやかであり、燦然と輝くエンブレムは間違いなく、トリニティ総合学園のものだ。

 

トリニティクルセイダーは、そのままコーラル侵食クルセイダーへと砲撃を撃ち込む。

 

これには対策委員会も便利屋も、口をあんぐりと開けていた。

 

「…トリニティ生徒はこんなにアウトローなの…?」

 

アルがそんな呟きを漏らす。

 

だからか、慌てた様子のヒフミの声がインカムから届く。

 

『こ、これはトリニティ総合学園とは一切関係ありません!』

 

最早、語るに落ちているような状況だが、彼女がトリニティの“イレギュラー”である事は確かだ。

 

『って、ゲヘナの生徒さん!?あうぅ〜!これはその!?』

 

トリニティの戦車に加えて、トリニティの榴弾砲と、ゲヘナとの関係性が芳しくない上に、今は複雑な時期である為、トリニティであるヒフミがこの状況下で一応、ゲヘナの生徒である便利屋を警戒するのは無理もない。

 

「安心して良いよ。私たちはゲヘナ生徒ではあるけど、むしろ追われる身だから。告げ口するようなことは無いよ」

 

ヒフミを安心させるようにカヨコが便利屋の身の上を話す。

 

「って言うかあの子、ブラックマーケットに居なかった…?」

 

ムツキの疑問は尤もなのだが、この際、それは見なかったことにするとして。

 

『…便利屋以外にも、一応、私も居ますけどね』

 

インカムから届いたのは、風紀委員会の火宮チナツだ。

 

アヤネと共に、先生の元で後方支援を担当している。

 

『ふぇっ!?あうぅ〜!風紀委員会の人に見られていたなんて終わりですかぁ!?』

 

『…まあ、風紀委員会はあくまでも治安維持が目的ですからね。一応、委員長には報告しますが、気になさらないでしょう。どうか安心してください』

 

溜め息混じりにチナツは説明する。

 

『あ、ありがとうございます!!』

 

安堵のお礼をしたヒフミは、話題を切り替える。

 

『と、兎に角、皆さん、この先に用があるんですよね!?私の戦車と向こうの砲撃で足止めします!ですから──』

 

そう言いながら、トリニティクルセイダーが砲撃をヘリへと放つ。

 

その間も、タイミングを見計らって榴弾砲の砲撃が、コーラル侵食部隊へと降り注ぎ、次々と敵を撃破して行く。

 

しかし、それをものともせず、コーラル侵食クルセイダーがトリニティクルセイダーへと猛突進からの体当たりを繰り出す。

 

『あうぅっ!?』

 

インカムからヒフミの悲鳴が届く。

 

「そんな!無茶よ!」

 

セリカが心配しながら、遮蔽からコーラル侵食クルセイダーに銃撃を見舞う。

 

だが、やはり明確な決定打には成り得ない。

 

確かに、トリニティの榴弾砲もヒフミが乗っているクルセイダーも強力だが、コーラル侵食第二段階のクルセイダーの脅威は計り知れない。

 

「ファウストさん!私たちも一緒に戦います!」

 

ノノミも続いて、周囲の兵器群と共に、コーラル侵食クルセイダーを掃射で薙ぎ払う。

 

「ん、大丈夫。みんなで戦えば──」

 

その直後、コーラル侵食クルセイダーが爆発に飲み込まれる。

 

「対策委員会」

 

静かに告げたのは、アルだった。

 

「何の為に、わざわざ私たちがここまで着いて来たのか、決まってるでしょう?」

 

すると、便利屋の面々が次々と飛び出し、トリニティクルセイダーのそばに立つ。

 

「ここは私たちに任せて、先に行きなさい!!」

 

自信たっぷりに、アルが言い放つ。

 

「はぁ…ま、そう言うこと。私たちも加われば、何とかなるでしょ」

 

「あははははは!!これは惚れちゃうヤツだね!そんなにカッコイイ台詞を言われちゃったら、私たちも、もうやるしかないね!」

 

「さ、流石です、アル様!一生ついていきます!!」

 

他の面々もやる気に満ち溢れている。

 

その様子を目にしたシロコは、僅かな驚きの後、穏やかな笑みを浮かべた。

 

「…そっか。なら、ここはお願い」

 

「あんたたち…もうっ!べ、別に、お礼なんて言わないんだからねっ!でも!全部終わったら一緒にラーメン食べに行くわよっ!ヒフミもっ!」

 

『ファウストです!』

 

「はい!どうか、ヒフ──ファウストちゃんをよろしくお願いします!また後で一緒に打ち上げでもしましょう!!」

 

お礼と約束を告げて、シロコ、セリカ、ノノミの三人は、その場を後にする。

 

『あ、あうぅ〜たった三人だけで大丈夫でしょうか…?』

 

「大丈夫よ。あの三人なら、ね。それでも心配なら──」

 

「この場をさっさと終わらせれば良いだけよ」

 

「ひゅ〜♪言うねぇ、アルちゃん!それじゃあ行くよ!紙袋5号ちゃん!」

 

『ヒフミです!あっ!?ファウストです!!』

 

「あっはは!おもしろ〜い♪ムツキだよ♪」

 

「仲間がごめんね。私はカヨコ」

 

「は、ハルカです!よろしくお願いします!」

 

「アルよ。さぁ、ふざけてないで行くわよっ!!」

 

****************************

 

アビドス対策委員会の三人は、目的の地点へと向かう。

 

その地点とは、PMC前哨基地の外れ。

 

そこに、元理事と思しき反応を捉えた。

 

周辺にはそれなりに戦力も集中している為、出来れば便利屋も含めて辿り着きたかったが、致し方ない。

 

それに、対策委員会は元理事とは因縁がある。

 

ちょうど良い分配と言えるかもしれない。

 

周囲を哨戒するオートマタやドローン、時には戦車などを薙ぎ倒して行った先に対策委員会の三人が辿り着いたのは、砂に埋もれた建造物だった。

 

『目標の座標地点に到達!恐らく、この近辺に元理事がいる筈です!』

 

アヤネの言葉を受け、三人は周囲を見渡す。

 

「……」

 

だが、やはり目を引くのは、正面の建物だった。

 

「ここは…学校、でしょうか?」

 

「うん…この痕跡、多分学校だよね…」

 

砂の埋もれた建物の特徴から、ノノミとセリカは学校の校舎であると当たりをつける。

 

「砂漠の真ん中に学校。もしかして──」

 

シロコが結論を出す。

 

その直前に、その耳は砂を踏む第三者の足音と気配を捉える。

 

「あぁ、ここは本来の、アビドス高等学校本館だ」

 

そのセリフと共に現れたのは、他でも無い元理事だった。

 

「!!」

 

「……」

 

「あんたは…!」

 

現れた元理事に、三人は身構える。

 

だが、それに反して、元理事は悠々と、余裕を感じさせる動きと共に、話し始める。

 

「よくぞここまで来たものだ。アビドス対策委員会」

 

その余裕からは、ここにいる三人など相手にならない、すぐに倒せるという自信を感じさせる。

 

「…砂漠化が進行し、捨て去られたアビドスの廃墟。ここが、元々はアビドスの中心だった」

 

それはまるで、自ら、その目で見て来たかのような口振りだ。

 

「…かつて、キヴォトスで最も大きく、そして強大だった学校の残骸が、この砂の下に埋もれている」

 

それは、まるで懐かしむような、逆に、想いを馳せるようにも聞き取ることができる。

 

「…君達も、ずっと気になっていたのではないか?カイザー、ひいては私が、何の為にアビドスの土地を買い占め、君達を苦しめていたのか」

 

元理事のその言葉には、この場の三人も、インカム越しのアヤネと先生も驚かずにはいられなかった。

 

カイザーの目的が、借金による資金ではなく、アビドスの土地である事は、事前に会議を重ねて辿り着いていた。

 

「…何のつもり?」

 

だからこそ、警戒せずにはいられなかった。

 

そんなことを伝えて何になるのかわからない。

 

セリカが睨み付け、問いただす。

 

「ふっ…今となっては、私もカイザーに首を切られ、お尋ね者となった身。最早、隠す必要も義理もない。ちょっとした世間話だよ」

 

その言葉から、元理事がかつてのカイザーに反抗の意志があると窺える。

 

「カイザーはこの砂漠で、“宝探し”をしていたんだよ」

 

その口調、様子は、どこも冗談やふざけているようには見えなかった。

 

「宝探し…?」

 

『そんなもの、あるはずが…』

 

シロコが怪訝な表情を浮かべ、アヤネが否定する。

 

「さてな。以前、あの場所にいた頃はあると信じて疑わなかったが……今となっては最早どうでも良い」

 

そう言うと、元理事は指を鳴らす。

 

「!!」

 

それに合わせ、周囲から兵器群が続々と姿を現す。

 

その全てが、コーラル侵食第二段階の兵器だった。

 

「さて、お話はここまでだ」

 

元理事を守るように、兵器群が立ちはだかる。

 

「対策委員会…ずっとお前たちが目障りだった」

 

唐突な、内心の吐露。

 

それは、今まで溜めに溜め込んだものを吐き出すようなものだった。

 

「これまで、ありとあらゆる手段を講じて来た…。それでもお前たちは、滅びかけの学校にいつまでも残り、しつこく粘り、借金を返済しようとして──」

 

語気が強くなり、それまで堪えていただろう怒りが滲み始める。

 

「あれほど懲らしめたのに、徹底的に苦しめたのに、毎日毎日楽しそうにしやがって!!」

 

「目障りな対策委員会、鬱陶しいシャーレのカラス、私を切り捨てたカイザーのバカ共…どいつもこいつも…!お前たちのせいで!計画も、私の人生も、全てが滅茶苦茶だッ!!」

 

最早、その様子に、それまでの紳士然とした姿は無く、怒りに支配された復讐者が正体を表した。

 

「ふん、あんたみたいな下劣で浅はかな奴が何をしようと、私たちの心は折れたりしないわよ!!」

 

「どんなに敵を出そうと関係ない。全部倒して、お前を捕まえる」

 

「はい!あなたみたいな情けない大人に、私たちは負けません!絶対に!」

 

『行きましょう!皆さん!今回も私が、皆さんをサポートします!』

 

『[“元理事、あなたが犯した罪、償って貰うよ!!”]』

 

まるで、元理事の怒りに呼応するように、暴走する兵器群が三人へと襲い掛かった。

 

****************************

 

前哨基地の敷地内。

 

まだ建物の内部には至っていない屋外施設内。

 

次々と現れるオートマタを薙ぎ倒して行く。

 

銃弾を掻い潜り、蹴りを叩き込み、吹き飛ばしたところにスナイパーライフルによる狙撃を見舞う。

 

左右から挟み込むように、シールド持ちの大型オートマタが迫るが、ふわりと後退して躱し、互いに激突し合ったところに持ち替えたショットガンの銃弾を浴びせる。

 

それでは倒し切れないが、続けて薙ぎ払うようにアサルトライフルを掃射し、それらに付与された《共鳴の幻視》のコーラル特効も相まって大ダメージを与える。

 

やはりシールド持ちは硬い。

 

続けて蹴りを叩き込んで吹き飛ばすことで、完全にトドメを刺す。

 

しかし、周囲の敵の数は一向に減る気配が無い。

 

あまり時間が掛かると、他の場所に負担が掛かってしまう。

 

この場所を私一人の担当にするように頼んだのは、私自身であり、そしてそれは、ルナシーと名乗る何者か、と決着を付ける為だ。

 

ルナシーと名乗る何者かは、私を知っており、しかもそれは、かつてルビコンに居た頃。

 

独立傭兵レイヴンとして活動していた頃の私だ。

 

それでいて、推定コーラルを操るという力を持っている。

 

私が思い当たるのは一人だけだったが、かつての私はとても悪名高い存在だった。

 

私が知らないだけで、他に居る可能性も無い事はない。

 

それでも、コーラルを操り、この騒動の原因とあらば、私自身の手で決着を付けたい。

 

だからこそ、この場の敵は、早々に片付ける必要がある。

 

“歯車”も“残り火”も、使ってしまえば、容易くこの場を鎮めることが出来るだろう。

 

だが、あれらの力は出来るだけ使いたくない。

 

あれらの力には、極力、頼りたくない。

 

私は、“歯車”を回さない程度に、出力を上げる。

 

これまでのキヴォトスでの戦いでは、確かに“歯車”や“残り火”によって、力を引き出す戦い方をしていた。

 

しかし、だからと言って、これまでのキヴォトスでの戦いで、私が全く成長していない訳では無い。

 

これまでの戦いも間違いなく、私の糧になり、力となった。

 

目に見えて分かるような成長では無い。

 

だが、間違いなく、地力と呼べるものが上がっているのを私は感じている。

 

黒い私の言葉を借りるなら、そう。

 

“神秘”の高まり、とでも呼べるものだ。

 

その影響かは分からないが、肉体が以前より鍛え上げられている気がする。

 

それでも、銃弾を無効化するようなことは無いが。

 

また、それと同時に、技もより洗練されつつある。

 

武器の切り替え──《クイックチェンジ》は流れるようにスムーズに出来るし、共鳴の幻視は言わずもがな。

 

ブーストキックを模倣した滑空からの蹴りは、かつての機体に近しい安定感と速度を実現出来つつある。

 

“猟犬の耳”と“鴉の眼”は、神秘の影響もあってか、以前よりも精密な感知が可能となっている。

 

それらを活かし、私は、宙を舞う。

 

オートマタやドローンの銃撃を紙一重で躱し、オートマタであれば蹴りを叩き込み、ドローンであれば撃ち落とす。

 

共鳴の幻視は、以前、ブラックマーケットで行ったように、銃の他に、一瞬であれば手脚にも付与出来る。

 

それにより、コーラル特効を得た蹴りは、コーラル侵食を受けたオートマタに触れると爆発し、衝撃と同時に大ダメージを与える。

 

大型オートマタであっても、蹴りで盾防御を打ち崩し、体勢が崩れたところに蹴りと共にSGの散弾を浴びせる。

 

戦車が現れても、クルセイダーでも無ければ相手にならない。

 

速攻で蹴りで横倒しにし、銃弾を叩き込み、トドメに手榴弾で爆破する。

 

多少、硬いだけのサンドバッグ状態だ。

 

武装ヘリ──アパッチであっても、それは同様だ。

 

先程は、みんなが乗った車を守る必要があった為、後手に回っていたが、今はもう守るものは何も無い。

 

身一つで特攻し、畳み掛ける。

 

地面を踏み締めて跳躍し、ヘリが飛んでいる高度まで上がると、そのフロント部分に着地する。

 

プロペラ部分の根元に、銃弾を叩き込み、コーラル自爆も含めて叩き折り、飛行が維持出来なくなったところで飛び降りる。

 

制御が効かなくなったヘリはそのまま敷地内の地面へと墜落し、派手に爆発する。

 

未だちらほらと残っているが、周辺は粗方、片付いた。

 

さて、後は残りを始末するだけ。

 

そう考えながら一歩踏み出した。

 

そこへ──。

 

『登録番号、Rb23、識別名 レイヴン。──いえ、こう呼ぶべきでしょうか?強化人間C4-621、レイヴン。ルビコンを焼き払った独立傭兵──』

 

背後から、聞き覚えのある声が、耳朶に響いて来たのだった。




対策委員会は、ついに元理事との決戦…!?

そして、イヴの前に現れたのは一体…!?

ところで、アビドス三章の続きはまだですか?
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