ブルーアーカイブ -灰の翼-   作:空素

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あらすじ

対策委員会VS元理事
イヴの元に現れたルナシー(?)

つれぇ…つれぇよぉ…


EP-66 夢の名残り

『ねぇ、ホシノちゃん』

 

『私ね、ホシノちゃんと初めて会った時、これは夢なんじゃないかなって、何度も頬をつねったの』

『ホシノちゃんみたいな、可愛くて強くて、頼れる後輩がそばにいてくれるなんていう夢みたいなことが、本当に嬉しくて…』

『うーん、上手く説明できてないかもしれないけど…』

『ただ、こうしてホシノちゃんと一緒にいられることが、私にとっては奇跡みたいなものなの』

 

『…毎日毎日、こうして一緒にいるじゃないですか。昨日も今日も、明日もそうです。こんな当たり前のことで何を大袈裟なことを…』

 

『はぅ…だって…』

 

『“奇跡”というのはもっとすごくて、珍しいもののことですよ』

 

『…ううん、ホシノちゃん。私はそうは思わないよ』

 

『ねぇ、ホシノちゃん。いつかホシノちゃんにも可愛い後輩ができたら、その時は──』

 

 

 

 

 

 

「……」

 

ホシノは、ゆっくりと目を開けた。

 

薄暗い廃墟の中で、ホシノはゆっくりと立ち上がる。

 

ほんの少し待機するつもりが、少しだけ微睡んでいたようだ。

 

未だに、少しだけ寝ぼけた脳裏には、僅かな夢のひと時の記憶が揺らめいている。

 

それは、夢であり、現実。

 

過去の出来事の追憶だった。

 

「…分かってます。ユメ先輩。だから私は、後輩と、アビドスを護る。もう、誰にも奪わせない為に」

 

カイザーから支給された防弾ベストに身を包んだホシノは、主武装のショットガンと、同じくカイザーからの支給品である副武装のハンドガンの状態を確認する。

 

それを終えると、ホシノは今一度、目を閉じて開いた後、桃色の長髪を束ねたポニーテールを揺らしながら、廃墟の外へと踏み出した。

 

その表情は、とても冷酷で険しく、研ぎ澄まされていた。

 

かつての彼女を知る者が見れば、きっと口を揃えて告げるだろう。

 

《アビドス生徒会》、“副会長”の再来、と──。

 

****************************

 

元理事と対峙する対策委員会のシロコ、セリカ、ノノミの三人は、アヤネの支援と先生の指揮もあり、元理事を守るように現れたコーラル侵食兵器群を少しずつ、だが、着実に撃破していっていた。

 

「こんなの!幾ら数を揃えたところで!私たちには勝てっこないってのに!!」

 

苛立ちを露わにして、セリカが次々とオートマタやドローンに銃弾を浴びせて行く。

 

「セリカちゃん!下がってくださいね!」

 

そこに続けて、ノノミがマシンガンの掃射を見舞い、次々とコーラル自爆を引き起こす。

 

その間に、セリカの元に、アヤネのドローンが現れる。

 

『セリカちゃん!支給品だよ!』

 

アヤネが届けたのは、弾薬とゼリー飲料。

 

「サンキュー!アヤネちゃん!」

 

遮蔽や回避で攻撃を避けているとは言え、完全に無傷とは言えない。

 

だからこそ、このアヤネによる回復の支援はありがたいものだった。

 

そんな中、シロコは最前線で戦車を相手取っている。

 

主砲による砲撃を躱し、手榴弾を投擲する。

 

爆発が戦車を飲み込むが、続けてありったけの銃弾を叩き込む。

 

コーラル自爆が発生する。

 

だが、僅かに倒し切るには至らない。

 

黒煙の中で、主砲がシロコに向く。

 

「させないわよっ!!」

 

だが、そこへ回復し終えたセリカの銃撃が追撃し、完全にトドメを刺す。

 

「ん、ありがとう。セリカ」

 

戦車が片付いたことで、残るはオートマタやドローンのみ。

 

それらを攻撃しながら、シロコはセリカに礼を言う。

 

「べ、別に良いわよ!お礼なんて!」

 

セリカは照れ隠しのように、銃を乱射し、敵を薙ぎ倒していく。

 

「セリカちゃんは素直じゃないですね☆」

 

そこにノノミも加われば、この場の敵が殆んど片付き、元理事の姿が露わとなる。

 

「さぁ!これでもうあんたを守ってくれるものは何も無くなったわ!大人しく観念しなさいっ!!」

 

銃口を元理事へと向け、セリカが言い放つ。

 

元理事にとっては、追い詰められた危機的状況。

 

それなのにも関わらず、元理事には余裕があった。

 

「ふん…やはり、アビドス生は侮れんな。だがッ!それも今日までよ!!」

 

元理事には、まだ何か策がある。

 

そう結論を出し、身構えた直後。

 

『!皆さん!何か飛んで来ます!』

 

アヤネがそう言い放った直後、元理事の背後に巨大な何かが降り立つ。

 

「“コレ”で…私が手ずから、貴様らを砂の底に沈めてやろう!!!」

 

“ソレ”は、両手にガトリング、前方に突き出す砲塔を備えた、重装甲の大型強化外骨格(パワードスーツ)だった。

 

そして、これもまた、例に漏れず、コーラルに侵食されたものだった。

 

「《ゴリアテ型パワードアーマー》だッ!我が力の下に、平伏しろぉッ!!」

 

*****************************

 

耳に届いた声に、私は体が強張ったのを感じた。

 

そして、それと同時に疑問が浮かび上がる。

 

私は、ルナシーの正体は、エアだと思っていた。

 

そうでなくとも、同じようなCパルス変異波形的存在だと身構えていた。

 

だが、今聞こえた声。

 

その聞き馴染みのあるセリフは、間違いなくルビコンでの《傭兵支援システム》、《オールマインド》のものだった。

 

だが、僅かな違和感も感じる。

 

どうして、彼女が私の正体──C4-621という強化人間としての型番を知っているのか。

 

それを知っていたのは、ルビコンに於いては、ウォルターとエア、後はウォルターの友人であるカーラと彼女の作ったAIであるチャティ、腐れ縁らしいミシガンくらいのものだろう。

 

オールマインドが知る術は無いはず。

 

それなのに、何故?

 

疑問、驚愕、困惑。

 

そんな思考を巡らせていると、再び声が届く。

 

「…ふふっ、すみません。久々の出会いだったもので、少しだけ浮かれてしまいました」

 

その声は、届いた言葉は、間違いない。

 

紛れも無い──。

 

「…エア、なの…?」

 

私は、恐る恐る、後ろに振り向いた。

 

エアは、ルビコンの住人である《ルビコニアン》ではあるが、コーラルであり、その内に生じる波形。

 

姿があり、目に見える訳でもない。

 

その先入観はあった。

 

それでも、私は背後に気配を感じ、振り向かずにはいられなかった。

 

私が振り向いた、その先には──。

 

「お久しぶりです、レイヴン」

 

穏やかな口調と共に、深紅の粒子を漂わせ、白を基調としたドレス風の衣装に身を包んだ女性的な姿が浮かび上がっていた。

 

“女性的”、と言葉を濁したのは、その容姿が、完全な人のものではなかったからだ。

 

シルエットで言えば、腰を超える程の長髪を靡かせる、ドレスを着た女性に見える。

 

だが、その頭部、顔には辛うじて目と認識できる左右対称の鋭利な菱形と鼻の突起が確認出来るだけであり、眉毛や口、耳も確認出来ない。

 

大人の女性を思わせるその容姿は、それに相応しい豊かな膨らみを胸部に備えるが、その中心は丸みを帯びた菱形に近い形状に裂け、その中ではコーラルが瞬いていた。

 

「すみません。まだコーラルの精密な操作に慣れていなくて。今はまだ、こうして人のような姿を保っているのがやっとなのです。お見苦しい姿を見せてしまいましたね」

 

かつて、ルビコンで共に苦楽を共にしていた頃と変わらない声色、口調。

 

「それでも、どうしても、レイヴンとこうして面と向かって、話がしたかったのです」

 

まるで、あの頃に戻ったかのような錯覚に陥る。

 

「例え、道を違えた、敵だとしても。かつてのような意思の疎通ではなく、“会話”がしたかったのです」

 

そう、エアの言う通り。

 

私とエアは、道を違えた。

 

選択の末に、訣別した。

 

「…エア」

 

それは、曲げようの無い事実。

 

決して覆らぬ真実。

 

「はい、どうしました?レイヴン」

 

それでも、かつてと変わらないエアの“声”に、私は希望を抱きそうになる。

 

「エアは──」

 

 

 

 

 

 

“私の味方なの?”

 

 

 

 

 

私は自身の頬を殴り抜いた。

 

この後に及んで、何を楽な道を選ぼうとしているのか。

 

希望に縋ろうとしているのか。

 

私は“選択”した。

 

“答え”を出した。

 

それを、ここに来て曲げてしまっては、その為の戦いと、その中で散った者達に対する冒涜だ。

 

「…どうしました?」

 

目の前の、エアに対しても、失礼極まりない。

 

「ごめん。ちょっと今のこの状況が夢なんじゃないかと思って」

 

私は先程、思い浮かんだ愚考を悟られないように誤魔化す。

 

「夢、ですか。そうですよね。レイヴンからしてみれば、私はあなたに倒され、あの場で滅びる筈でした。そんな私がこの場にいることが信じられないとしても、無理はないですね」

 

誤魔化しが成功したことは僥倖だが、確かに、エアが言っていることについても疑問が無い訳ではない。

 

「分かりました。良いでしょう。説明します。ただ、その前に一つ、レイヴンに訊ねたいことがあります」

 

「…私に答えられることなら」

 

「大丈夫です。これは、レイヴンなら答えられるハズです。“選び、選択した”()()()であれば──」

 

エアは僅かな間を置き、言葉を放った。

 

「レイヴン…()()は、今でも、コーラルを滅ぼしたいと思っていますか?」

 

コーラルを根絶させたいと言う想いを継ぎ、使命となったそれを私に依頼したウォルターとカーラ。

 

私は、あの時、一人の傭兵として、《ウォルターの猟犬》となることを選び、星と共にコーラルを焼くという選択をした。

 

それと同時に、コーラルを焼くと言う依頼は、ウォルターの使命を継ぎ、私にとっての《誓約》となった。

 

コーラルを焼き、その果てに根絶する。

 

ルビコンでは、あの星に根付いたものであった為に、星ごと焼き払うしか方法が無かった。

 

でも、キヴォトスなら。

 

まだコーラルが根付いていないのであれば、私の力でコーラルを焼き払い、根絶させることが出来るかもしれない。

 

それならば。

 

その為ならば──。

 

私は再び、かつての友に銃口を向ける事も厭わない。

 

「…うん。それが、私が選んだ“答え”だから。例え、またエアと戦うことになったとしても、ね」

 

私が静かに告げると、エアは顔を伏せる。

 

その胸中は窺い知れない。

 

「…それを聞いて安心しました」

 

顔を上げたエアの声は、僅かな安堵と共に、歓喜が感じられた。

 

「レイヴン。私の目的を話しますね」

 

僅かな違和感。

 

記憶との齟齬。

 

過去からの乖離。

 

かつてのエアとは僅かに、しかし、決定的に異なるズレ。

 

それを言語化することは難しい。

 

例えるなら、歯車が噛み合わないような。

 

それに近しい不快感。

 

「私の目的はただ一つ。──貴女を殺すことです」

 

そのエアの声は、心底から嬉しそうに、淡々としながらも、上擦っていた。




オマちゃんかと思った!?残念!エアちゃんでした!!

ようやく、エアとキヴォトスレイヴン(イヴ)の出会いを描けました

ですが何やら、エアちゃんの様子がおかしいですね

果たしてどうなるんでしょうね(他人事)
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