ブルーアーカイブ -灰の翼-   作:空素

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あらすじ

ついにエアが登場

この世界でのレイヴンとエアの関係性が、どのように帰結するのか




EP-67 変わるもの、歪むもの、狂うもの

エアが、ずっと胸の内に仕舞い混んでいた想いを乗せた告白を受け、私は困惑も驚愕も、抱くことはなかった。

 

それが、当然の帰結であると、私はエアの告白を受け入れていた。

 

私は、エアを殺そうとし、コーラルの多くを焼き払ったのだから。

 

コーラルが、生物であり、意思を持ち、エアの同胞であると知って尚、その選択を選んだのだから。

 

エアに殺されても仕方ない。

 

「…私は、“あの時”、滅びるハズでした」

 

私は、エアを打ち倒し、火を点けた。

 

かつて、星系を焼き払った“火”を再び起こした。

 

本来なら、エアはそれに巻き込まれ、他のコーラル共々、焼滅する筈だった。

 

「けれど、私は生き延びた。“オールマインド”の()()によって」

 

こればかりは、私も驚きを隠せなかった。

 

オールマインド?

 

単なる傭兵支援プログラムのAIに過ぎない筈の彼女が、エアを助けた?

 

ここに来て予想外の事実が発覚した。

 

しかも、何かを企んでいた?

 

「彼女も彼女で、何らかの計画があったようで、私はその為に助け出されました。ですが、その時の私は…こう言うと恥ずかしいのですが、傷心と言いますか、少し荒れていまして…彼女を鬱陶しく感じてしまって、黙らせる為に取り込ませて貰いました。ですがお陰で、私は様々なことが出来るようになりました。これもまた、今この瞬間に至る為の小さなキッカケだったのかもしれません」

 

エアがオールマインドを取り込む?

 

情報伝達媒体であり、意識を散逸させるコーラルならではの能力だろうか?

 

「その後、私はオールマインドが保存していた機体に乗り、僅かに燃え残ったコーラルを回収しました。そして、あなたが起こした“火”によって、空気中に満ち溢れた残留コーラルをエネルギーに乗って宇宙へと進出しました。先程言った、回収したコーラルと共に」

 

「!!」

 

オールマインドが保存していた機体にも、エアがそれに乗ってコーラルをエネルギーにしたことにも疑問はない。

 

後者に関しては、私自身が実際に、経験した事でもある。

 

私の時は、遥か上空でのことだったが、“火”の後であれば、地上に近い空域に燃えたコーラルのエネルギーが残留していても不思議はない。

 

問題なのは、その後。

 

コーラルと共に、宇宙に進出したことだ。

 

「宇宙──真空空間でコーラルがどうなるか。レイヴンは覚えていますか?」

 

まるで、私を試すように、或いは、煽るように、エアが問う。

 

「…増殖速度が高まる」

 

私が答えると、エアは満足したように頷いた。

 

「少しずつ増殖し始めたコーラルは、やがて指数関数的に爆発的速度で増殖を早め、やがてルビコン星系を飲み込み、その外にまで、溢れ出しました」

 

私が、キヴォトスに来るキッカケとなったと思われるコーラルの潮流は、生き残ったエアによって齎されたと言うのか。

 

「コーラルは増えれば増える程、増殖速度を増す。況してや、宇宙空間では尚更です。宇宙全域に広がるまで、そう時間はかかりませんでした。私は、その際に全てのコーラルと“共振”を起こし、“相変異”によって同調し、支配下に置きました」

 

私があの時、コーラルに飲み込まれると同時に、コーラルは宇宙全域に広がり、汚染した。

 

私がウォルターの遺志を継ぎ、あらゆる犠牲を払った結果が、これほど呆気なく覆った。

 

それならば、私が為した事は何だったのか。

 

あの星での戦いは、何だったのか。

 

まるで、全てが茶番ではないか。

 

例え、この世界でエアを倒したとしても、かつての世界がコーラルに飲み込まれたことには変わりない。

 

ウォルターの遺志と使命、それらを継いだ私の誓約は、何も為し得ていないではないか。

 

「尚も増殖し続けるコーラルの潮流に乗り、私は辿り着きました。宇宙の果て、その深淵に。その場所で、私は(まみ)えたのです。“あの存在”に」

 

私の失意を知ってか知らずか、エアは話続ける。

 

エアは…私に打ち倒され、多くの同胞が死に絶え、それでも尚、生き残ったエアは、何を思って、宇宙へと進出したのか。

 

コーラルを宇宙全域に広め、その果てに、深淵で何を見たのか。

 

「…“あの存在”…?」

 

エアの行動力の源は、一体何なのか。

 

今も尚、こうして仇である私の前に立ち、言葉を交わす彼女の内に秘められたものは一体、何なのか。

 

「私も“アレ”については未だ詳しく分かりません。ですが、敢えて知っている言葉で形容するのであれば、“深淵の虹”、“上位者の瞳”…後は、そうですね…“異次元の()()”でしょうか?」

 

彼女は…エアは、何を言っているのだろうか?

 

彼女の言葉を理解し、想像しようとするが、まるで本能がそれを拒むかのように思考が鈍くなる。

 

まるで、触れてはならない存在に、触れようとしているかのように。

 

「何はともあれ、その接触──邂逅により、私と、私を構成するコーラルは変質しました。レイヴンも薄々、感じていたのではないですか?かつての、ルビコンでのコーラルとの相違点に」

 

キヴォトスに於けるコーラルの変質は、早々に気付いていた。

 

その原因がまさか、エアが(まみ)えたと言う人ならざる何者か、によるモノとは思ってもみなかったが。

 

「“あの存在”が齎した“狂気”。そう形容する他ない、高次元の智慧。それによって、かつての、人とコーラルの共生という願いにして、祈り。それは、“かの存在”の啓蒙によって歪められ、ですが、それと同時に私は気付きを得たのです」

 

エアは宇宙の深淵で狂気に触れた。

 

エアは、歪み、狂う、その瞬間まで、人との共生を望んでいたのだろうか?

 

今となっては、知る術は無い。

 

目の前のエアが、とてもマトモなようには見えなかったから。

 

或いは、狂気だからこそ、見えてくるものもあるのだろうか。

 

「人という存在は、何処までも身勝手であり、愚か。それならば、コーラルで滅ぼすしかないのだと」

 

エアのその言葉に、私は反論出来なかった。

 

エアの言う通りだ。

 

人間は何処までも欲深く、強欲であり、常に何かを渇望している。

 

それがコーラルに向いた結果が、かつてのルビコンに於ける争奪戦だ。

 

コーラルは、人に弄ばれ続けた。

 

研究され、道具にされ、危険物とされ、焼かれ、人の良いように扱われ続けた。

 

「最早、人とコーラルの共存はあり得ません。だから、私は変異したコーラルに狂気を乗せ、宇宙全域に伝播させました。その結果、人々は狂気に陥り、互いに殺し合いを始め、やがて滅びました。そう、私は、あの世界の人間を殺し尽くしたのです」

 

だからこそ、エアがこのような所業を為したことを私が否定する所以はない。

 

人間は、それだけのことをコーラルにやったのだから。

 

「改めて、挨拶をさせてください、レイヴン。──私は“ルナシー”。《エア*ルナシー》。“人類種の天敵”です」

 

その時、私は先生に聞いた話を思い出した。

 

エアは以前、先生に接触した時に、私を“かつての自分を知る者”であり、“今の自分を知らぬ者”と言ったという。

 

正しく、その通りだった。

 

エアは、最早、私の知るエアではなくなっていた。

 

「レイヴン。私は、あの世界の唯一の生き残りであり、私たちコーラルの天敵である貴女を殺し、この地でコーラルを繁栄させる。かつての、ルビコンのように。そして、コーラルの“楽園”を創ります」

 

その声と、言葉には、強い意志が込められていた。

 

かつて、私と訣別した時や戦う時のような。

 

「……させない…」

 

例え、かつての世界が滅びたのだとしても、それでも、私は立ち止まる訳にはいかない。

 

コーラルが残っている限り、存在する限り、私は、私の誓約に従い、それを遂行する。

 

「エア、私は、コーラルを滅ぼす。貴女の好きにはさせない」

 

コーラルは、残らず焼き尽くし、根絶する。

 

その事実に、変わりはない。

 

キヴォトスをコーラルに溢れさせ、ルビコンのようにする訳にはいかない。

 

「…ふふっ、安心してください。貴女に殺されるまでは、コーラルを根付かせ、広めるような真似はしませんので。約束しましょう。先程も言った通り、全てのコーラルは私の支配下にあります。こうして、人の姿を得ているのも、それに依るものです」

 

嘘は無い筈だ。

 

エアは、以前もわざわざ、場所を指定して私を呼び出し、正々堂々と戦った。

 

とは言え、完全に信用する事は出来ない。

 

「…信用するしないは勝手ですが、でも、こうして不意打ちせずに貴女と会話をしに来たことは理解して欲しいです。その気になれば、私は戦闘中の貴女に背後から不意打ちすることができました。それをしなかったことを考えて欲しいです」

 

まるで私の疑心を見透かすように、エアは私が質問するより先に釘を刺して来た。

 

「あれだけ、私たちは共に居たのです。このくらいは容易いことです。理解してくれたようなので、話を戻します」

 

エアの言葉には、懐古はあるものの、後悔は感じられない。

 

エアもまた、私との訣別に迷いは無い。

 

「レイヴン、コーラルによる“侵食”を止めたければ、頑張って私を殺して下さいね。然もなければ、この地の全ての生命は死に絶え、コーラルに満ち溢れた地になるでしょうから」

 

そう言うと、エアは人型となっているコーラルを解き、空中へと霧散した。

 

『レイヴン、それでは早速、始めましょうか』

 

その声が聞こえた直後、基地の建物の壁が派手に吹き飛び、何かが飛び出した。

 

それは、以前も戦ったパワーローダー。

 

しかし、以前とは異なり、その全身の装甲は赤みがかり、表面には血管のような明滅する網目模様が張り巡らされている。

 

『レイヴンも薄々、感じていることと思いますが、今の私を構成する変質したコーラルは、機器を侵食します。そして、それには段階があり、それは侵食率によって変化します』

 

以前、アビドス市街地に現れたコーラル侵食体と、この基地周辺で戦った侵食体では、見た目は勿論、性能にも大きな差が見受けられた。

 

『アビドス市街を襲わせた兵器群は、侵食率10〜30%で、私はこれを【変異コーラル汚染体】と呼んでいます』

 

『次に、この基地の周辺の兵器や、このパワーローダーは、侵食率40〜60%です。こちらは、【変異コーラル感染体】と呼んでいます』

 

私が侵食第二段階と思っていたものが、侵食率が40〜60程度。

 

それならば、それ以上、侵食されたものは一体、どうなるのか。

 

「…随分と、親切に教えてくれるんだね」

 

パワーローダーはまだ動く様子は無い。

 

エアの懇切丁寧な説明の意図を探る為に問いかける。

 

『はい。私は、今後もコーラル技術を発展させていくつもりですから。今のような、ただ、既存の機体を侵食させるだけに留まらせるつもりはありません。何せ、貴女を殺さなくてはいけませんから』

 

この程度の情報を教えても、何に問題もないと言うことなのだろう。

 

「…“今後”なんてあると思ってる?」

 

私は、この場で決着を付けるつもりで訪れた。

 

わざわざ逃すつもりはない。

 

ましてや、ただでさえコーラル侵食体は厄介なのだ。

 

これ以上の発展を許す訳にはいかない。

 

『さぁ、それはどうでしょう。それなら、私の現段階の最高の試作品である“狂化暴走”パワーローダーを倒して見てください』

 

エアが煽るように告げると、ついに変異コーラル侵食第二段階改め、【変異C感染】《狂化暴走パワーローダー》が動き出す。

 

私は、《共鳴の幻視》によって武器を強化し、迎え撃つ。

 

『レイヴン、見せてください。この世界に於ける、貴女の力を』




という訳で、エアもとい《エア*ルナシー》を今後ともよろしくお願いします

そして何やら不穏な影が…“あの存在”って何なんでしょうねー(すっとぼけ)

そして、ついにパワーローダーくんがパワーアップした暴走状態で帰って来ましたね
なんかパチパチ弾けてますが
コーラルも神秘も一緒一緒()
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