狂ったエアちゃん
狂化暴走パワーローダー(コーラル仕様)
一つ一つ、戦いが終結に向かいます
大型強化外骨格──元理事の言葉を借りて《ゴリアテ型パワードアーマー》に乗り込んだ元理事との戦闘では、対策委員会の四人は攻撃を躱しながらも、決定打を与えられずにいた。
シロコが前線に立ち、元理事の気を引きつつ攻撃を躱し、側面や後方から、セリカとノノミが銃撃を見舞う。
「貧弱貧弱ゥ!!そんなチャチな豆鉄砲で、この強化装甲が撃ち抜けるかぁッ!!」
コーラルによる強化も相まって、装甲の表面には掠り傷にもみたない痕が付くだけだ。
時折、アヤネがドローンを使用して爆弾なども落として爆撃するが、効果は今ひとつのようだ。
「フハハハハハッ!!どうしたァ!?そんなものかアビドス対策委員会!!」
ゴリアテの両腕のガトリングによる銃撃を薙ぎ払い、シロコを攻撃する。
シロコはそれを飛び越え、潜り抜けるように回避すると、着地と同時に手榴弾を投擲する。
それを元理事は半身の体勢で肩の装甲で受けて無傷に終わらせる。
「所詮は、小鳥遊ホシノやレイヴンが居なければ、有象無象の寄せ集めかァッ!?」
「ッ!?」
その言葉を受けて、シロコが驚愕すると同時に動きが止まる。
「何ですってぇッ!?」
その代わりに激昂するのはセリカ。
「セリカちゃん!落ち着いて!!」
ノノミの制止も聞かずに、怒りを乗せて、強化装甲へと銃弾を叩き込む。
それを元理事は容易く腕で防ぎ、その直後、肩部分の装甲が開く。
そこから発射されたのは、全方位ミサイル。
それらが、シロコ、セリカ、ノノミへと殺到する。
セリカとノノミは、何とか直撃を避け、爆風に煽られるだけで済む。
だが、シロコは回避が遅れて、爆炎に吹き飛ばされる。
「ふん…貴様らは結局のところ、現実が見えていないお子様だったのだ。此処には、死にに来たようなものだ」
シロコは地面を転がり、どうにか受け身を取って立ち上がるものの、そこに元理事が迫る。
「シロコ先輩!!」
シロコを助けるべく、背後からセリカが銃弾を浴びせる。
だが、それは無慈悲にも火花を散らして弾かれた。
「ふっ…可哀想なことだ。どれだけ足掻き、抗おうと、結局は力が全て。こうして、努力も空しく、力によって、全て叩き潰されるのだ」
シロコを元理事が見下す。
追い詰められた危機的状況。
だが、シロコは未だ闘志を宿す眼で元理事を上目遣いで睨み付ける。
「…なんだ…その眼は…まさか、まだ戦うつもりか?勝てるなどと言う幻想に縋り付くのか?」
元理事は、シロコの決して折れない様に、不快感と苛つきを示す。
「…あなたの言う通りだよ」
そう言うと同時に、シロコは銃を撃ちながら動き出す。
「こいつ…!まだ動けるだけの力が…!」
それを元理事が追うが、それを阻むように、無数の銃弾が襲い掛かる。
「私たちを忘れてない?」
「行かせませんよ!!」
背後からセリカとノノミが絶えず、銃撃を浴びせ続ける。
「チッ…虫ケラにも劣る劣等が…!邪魔立てするなァ!!!」
元理事はシロコから狙いを外し、セリカとノノミを排除するべく、両腕のガトリングを向ける。
しかし、その直前に、上空からアヤネのドローンが爆弾を落とす。
「ぐぅッ!?何なのだ…!何なのだ貴様らはッ!?大人しく諦めれば良いものを!いつまでもいつまでも足掻き、抗い続けて…!苦しみを先延ばしにして、それに何の意味がある!?」
最早、元理事はがむしゃらにガトリングの銃弾を周囲にばら撒く。
「貴様らは敗者!奪われる側なのだ!何故それを理解しないッ!?それを受け入れぬのだァッ!?」
更に続けて、両肩から多連装ミサイルを発射し、周囲を爆撃する。
「──元理事、あなたの言う通り」
ミサイルにより舞い上がった爆煙の中から、静かに、だが力強く、シロコの声が届く。
「私には、ホシノ先輩みたいな強さも、イヴみたいな力も無い。ただ、あの人達の真似事をしているだけに過ぎない」
元理事が、声が聞こえる方向に振り向けば、そこには砂煙の中にシルエットが揺らいでいた。
「でも、あの人達は、どれだけ強くても、どれだけ力を持っていても、人なんだよ。傷付くし、痛いし、苦しいはずなの。だから、あの人たちを“独り”で戦わせない為に、私たちも一緒に戦うんだよ。痛みを少しでも分かち合えるように」
砂煙の中に揺らめく影に、元理事は背面から伸びる砲塔の狙いを定める。
「シロコ先輩!!」
危険を感じたセリカが鋭く名を叫ぶ。
だが──。
「綺麗事を…抜かすなァーーーーーーーッ!!!!」
砲口が禍々しい赤黒い熱を帯び、稲妻が迸った直後、極太の光線が真っ直ぐ放たれ、直後、爆炎が立ち昇った。
「シロコ、ちゃん…」
吹き飛んだ地面と立ち昇る爆煙を見上げ、ノノミは愕然とした表情のまま固まってしまう。
赤黒い爆炎が地面の砂を吹き飛ばし、濛々と黒煙が立ち昇る。
「そんなものは世迷言だッ!!傷付く?痛み?苦しみ?そんなものは、大人であれば、社会に出れば、誰しもが経験するのだ!それに耐えられぬのであれば、そいつはその程度の者だったというだけのこと!共に戦う?何を馬鹿げたことを!強者とは、勝者のことッ!勝者は常に、頂点に立ち、敗者を踏み付け、支配する者のことだ!!貴様らの抱くものは、所詮は社会を知らぬガキの夢物語だッ!!!」
爆炎によってクレーターのように抉れた地面から立ち昇る黒煙に、元理事は息を荒げて捲し立てる。
「…フン、だが、これで思い知っただろう。勝者とは常にッ!何者にも脅かされぬ者のことだ!力が正義であり、強者の証ッ!」
元理事は黒煙に背を向け、セリカとノノミを捉える。
振り向いた元理事に、セリカは睨み返し、ノノミは焦りが浮かぶ表情でありながらも武器を構える。
「アビドスを全滅させ、この力で小鳥遊ホシノもレイヴンも打ち破る…!そうなれば、カイザーも、連邦生徒会も敵ではないッ!ゆくゆくは、この私が、キヴォトスの頂点に立ち、この世界を支配するッ!!」
セリカとノノミへと、ガトリングの銃口を向ける。
「さぁ、我が覇道の礎となれッ!アビドス対策委員会ッ!!」
銃を放つ──その瞬間、元理事は背後から爆発を受けた。
「ッ!?バカな!?アレを受けて、動ける、だとッ!?」
そして、振り向こうとした元理事は、
「!?な、なんだ!?何が起こった!?何故、私が膝を突いている!?」
元理事が必死に動かそうとするが、パワードアーマーは応えない。
「ゴリアテが…動か、ない…!?」
時間にして、ほんの数秒の一時的な不調。
だが、その数秒が、元理事には長く、そして、シロコには十分過ぎる時間だった。
「──こうして、あなたを追い詰められることが出来たのも、あの二人のお陰」
そう言いながら、黒煙の中から現れたのは、無傷のシロコであり、その左手には、ホシノの大盾を携えていた。
「ホシノ先輩のこの盾が、私を守ってくれた。そして、今こうしてあなたが膝を突いているのは、イヴが教えてくれた戦法のお陰。攻撃による衝撃を蓄積させて、負荷限界に陥らせる」
シロコの背後から、黒煙を突き破って勢い良く現れたのは、シロコの魔改造ドローン。
「何の意味があるか、とか、私たちが敗者かどうかなんて、どうだって良い。私たちは、居場所を守りたい。ただ、それだけ。強者とか、勝者だとか、そんなものに興味はない。私たちの居場所を奪おうとして、仲間を傷付けるヤツは絶対に許さない。だから──覚悟して」
シロコのドローンから、無防備な元理事へとミサイルが発射される。
「ば、バカな…私は、私は…キヴォトスの支配者になるはずの…この私が…!──ぐわぁぁぁぁぁああああああああああああアアアアアアアアアアアアアアアッ!!!!?」
パワードアーマーに次々と着弾していくミサイル。
それは無数の小爆発を起こし、その後、全身を飲み込む大爆発を起こす。
爆炎が晴れた先には、辛うじて形は保っているものの、黒焦げとなったパワードアーマーと、その上で完全に伸びている元理事の姿があった。
「それと、コーラルも許さない」
パワードアーマーは操縦者が気絶している為、動く様子はないが、それでもその装甲の表面にはしぶとくコーラルが根を張っている。
シロコは盾を畳んで背中に背負うと、両手で握った銃でパワードアーマーを攻撃し始めた。
「シロコ先輩!」
「シロコちゃん!」
そこにセリカとノノミが駆け付ける。
「ん、二人とも無事で良かった」
パワードアーマーに手榴弾を投げ付けながら、シロコが振り向く。
「無事、って…それはこっちのセリフ!心配したんだからね!!」
セリカは鬱憤を晴らすように片手でパワードアーマーを攻撃しながら、シロコに詰め寄る。
「ご、ごめん…でも、こうして無事だから…」
セリカの気迫と、その目尻に浮かぶ涙の前には、さしものシロコもタジタジで弱気になってしまう。
「そういう問題じゃあ──」
言い訳がましいシロコに更にセリカが詰め寄り、いよいよ頭突きでもしてしまうような勢いを遮り、声が届く。
「シロコちゃん」
静かに、ノノミの声が聞こえ、シロコとセリカは推し黙る。
ノノミの声には、言い知れない迫力が込められていた。
ノノミは無言のまま、シロコに歩み寄り──。
そして、優しく抱き締めた。
「…もう、こんな無茶はしないで、シロコちゃん。本当に…本当に、シロコちゃんがあの光線に巻き込まれたと思って、胸が張り裂けそうだったから。だから、お願いです…」
そのノノミの声は、心から切なく、か細い、消え入りそうなものだった。
「…ノノ、ミィィィィィイイイイイイイイイイイ!!?」
ノノミはシロコを抱き締めた。
強く強く、抱き締めた。
それはもう、お仕置きと言わんばかりに。
「シロコちゃん、返事は?」
先程の声が嘘のように、その声には怒りが篭っていた。
シロコを強く抱き締め、締め付けるノノミは、満面の笑顔だったが、目元が一切、笑っていなかった。
「わ、分かったから!分かったから、ノノミ!折れる!折れちゃう!!」
珍しく声を荒げるシロコが、涙目になりながら、必死に懇願する。
それを眺めていたセリカは、その光景に引きつった表情を浮かべつつも、その内心では、ノノミは怒らせないように誓うのだった。
「それとシロコちゃん、ごめんなさい、は?」
シロコの懇願を受けても尚、ノノミはシロコを解放しない。
逆に追い詰め、畳み掛ける。
「ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさいぃぃぃぃいいいいいいいいあああああああああああああああああああああ!!!!」
世にも珍しいシロコの絶叫が響き渡った。
ノノミが解放すると、シロコはそのまま、砂の地面に突っ伏した。
「…ほね、おれるかと…おもった…りじの…びーむより、きょうふをかんじた…」
シロコは覚束ない口調でうわ言を呟いていた。
「う、うわぁ…」
セリカはシロコの様子に、こうはなるまいと肝に銘じた。
『…正直、ノノミ先輩がやらなければ、私が私なりのやり方で同じようなことをしてました』
そのアヤネの発言に、セリカが戦慄したのは無理もない。
それと同時に、いつの間にアヤネはこんなに逞しくなっていたのかと少し距離感を感じた。
『全く…ホシノ先輩は居なくなるし、イヴちゃんは無茶するし、シロコ先輩はそんな二人を真似するし…こっちの身にもなって欲しいよ…』
インカムから届くその小さな呟きは、日頃やこれまでの鬱憤と怒りが籠っているようだった。
セリカは、アヤネも怒らせないようにしよう、そう誓った。
『[“あ、あははは…み、みんな、取り敢えず、お疲れ…”]』
そんなやり取りを耳にしながらも、事態を収拾する為に先生が労いも含めて声を掛けるの
「先生、元理事さんはどうしましょうか?」
パワードアーマーの上で気絶している元理事は、コーラル自爆によって崩壊してスクラップになった装甲の上から落下し、地面の上に倒れていた。
『[“取り敢えず、拘束しておこうか。今は気絶してるけど、また逃げられてトラブルの元凶になられたら厄介だからね”]』
その後、アヤネのドローンで、金属製のワイヤーが届けられ、元理事は近くの砂に埋もれた電柱に括り付けられた。
「それじゃあ、残るはイヴのところね!」
アヤネの支援で体力と物資共に回復した三人は、イヴの元へと向かうべく、歩き出した。
VS元理事戦、決着!!
怒らせると怖いノノミ&アヤネ
良いぞ!その調子だ!
ホシノとシロコとイヴを分からせろー!