ブルーアーカイブ -灰の翼-   作:空素

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あらすじ

元理事、撃墜




EP-69 弾ける火花、爆ぜる焔火

「ああ!もう、こいつらしつこいなぁ!!」

 

悪態を吐くのは、風紀委員会の銀鏡イオリ。

 

ヒナと共に、レイヴンを先に進ませる為にこの場に残ったものの、攻撃してもしつこく復活して来るコーラル侵食機体──コーラル感染体を相手に、苦戦を強いられていた。

 

『イオリ、慌てて一気に倒そうとせずに、一体一体、確実に倒して行きなさい。あなたは委員長のように手数が多い訳では無いのですから』

 

そんなイオリを見かねたアコが、助言を贈る。

 

『先生からの情報によれば、コーラル侵食体──その第二段階は、通常よりも遥かに耐久力が上がっているそうです。いつも以上に、徹底的にダメージを与える必要があります。攻撃に関しては、あなたの機動力であれば、回避は容易いでしょうが、その調子では敵に囲まれて袋叩きにされますよ?』

 

アコの的を射た指摘を受け、イオリは言葉に詰まる。

 

イオリは、つい、いつもの調子で敵が倒れたら、それでターゲットを移してしまう。

 

気が逸ってしまい、つい、仕留め損ねてしまっている。

 

それも無理は無い。

 

イオリは、コーラル侵食体との戦闘は初めてであり、そう簡単に慣れるものでは無い。

 

何より──。

 

「イオリ、そんなに焦る必要はない。落ち着いて対処すれば、あなたでもそう苦戦する相手じゃない」

 

そのように、イオリを気遣う余裕を見せて尚、コーラル侵食兵器を圧倒するヒナの存在が、更なる活躍の場をイオリ自身に強いらせる。

 

ヒナと共に戦う場面など、そうそう無い。

 

だからこそ、イオリは焦る。

 

自身が、足手纏いになるまいと。

 

そうしている間にも、ヒナは黒紫のエネルギーを纏った無数の銃弾を放ち、戦車もオートマタもドローンも纏めて吹き飛ばし、爆散させる。

 

そこへ、上空からコーラル侵食の武装ヘリがヒナへと銃撃を見舞う。

 

それに対してヒナは、腰から左右に伸びる翼を広げ、滑空する。

 

銃撃を躱すと同時に、ヘリの真下へと潜り込み、銃撃を下から叩き込む。

 

黒紫のエネルギーを纏っていない為、火力不十分であり、倒し切ることは出来ない。

 

だが──。

 

「イオリ!決めなさい!」

 

ヒナに名を呼ばれ、イオリは反射的にヘリへと銃口を向け、発射していた。

 

計三発の狙撃を受け、ヘリは空中でコーラル自爆を起こし、爆散する。

 

燃え尽きるヘリの残骸を眺めながら、ふとヒナへと視線を向ける。

 

「ありがとう、助かった。この調子で、よろしくね」

 

そう言い残し、ヒナはまだ残るコーラル侵食兵器の元へと向かった。

 

イオリの脳裏には、先程のヒナの言葉が、繰り返し響いていた。

 

『…委員長が、足手纏いを一緒に連れて来るハズが無いでしょう…』

 

呆れたようなアコの声が聞こえ、イオリは喜びが込み上げて来る。

 

自分でも、ヒナの役に立てるのだと。

 

自分も、ヒナと一緒に戦えるのだと。

 

その気付きを得たイオリは、これまでの雑な立ち回りと迷いのあった狙いが嘘のように、的確で研ぎ澄まされたものへと昇華していた。

 

だが、その様はまるで単純な子供のようであり、その様子にもまた、アコは深く溜め息を吐く。

 

周囲のコーラル侵食兵器は、二人の活躍と奮闘で、着実に数を減らしていくのだった。

 

****************************

 

一方、コーラル侵食クルセイダーと対峙する便利屋68と、トリニティクルセイダーに搭乗し、操作するヒフミ。

 

トリニティの榴弾砲や便利屋の爆撃により、周囲の取り巻きはほぼ壊滅状態だった。

 

残るはコーラル侵食クルセイダーのみ。

 

しかし、そのコーラルクルセイダーに、便利屋とヒフミは苦戦を強いられていた。

 

「無差別砲撃!来るわよ!」

 

アルが叫ぶ、その視線の先で、コーラルクルセイダーの砲塔が熱を帯びる。

 

『皆さん!私の陰に!』

 

即座にヒフミが、トリニティクルセイダーの陰に隠れるように指示を出す。

 

トリニティクルセイダーも高い防御性能を誇る装甲に覆われているとは言え、コーラルによって強化されたクルセイダーの無差別砲撃を受けて、ただでは済まない。

 

それでも、誰かが身一つで受けるよりは、遥かにマシだ。

 

砲撃のほとんどをトリニティクルセイダーが受け止め、その範囲から外れた砲撃が周囲で火柱を上げる。

 

『あうぅ!!』

 

ヒフミの悲鳴が届き、便利屋メンバーは全員が胸を痛める。

 

今はまだ、どうにか受け止めることが出来ているが、いつまでも可能な方法ではない。

 

早々に決着を付けなくては、ヒフミの身が危ない。

 

「次、撃たれる前に、決着を付けるわよ!!」

 

トリニティクルセイダーの陰から飛び出し、アルはコーラルクルセイダーを狙撃する。

 

放たれた銃弾は、砲塔に着弾し、爆炎を迸らせる。

 

コーラルクルセイダー自体も、度重なる攻撃によって、着実にダメージが刻まれている。

 

次の無差別砲撃の前に撃破するというのも、不可能ではない。

 

「りょ〜か〜い♪それじゃっ、出し惜しみはナシだねっ!!」

 

ムツキも続けて、爆弾を投擲する。

 

それは、爆発と同時に、青白い閃光を迸らせた。

 

「虎の子のEMP(電磁パルス)手榴弾〜♪」

 

その電撃は車体全体に伝わり、至る部位でコーラル爆発が発生する。

 

「あの主砲が無くなれば、手っ取り早いんだけどね」

 

カヨコがコーラルクルセイダーの砲塔目掛けて、狙いを澄まし、連射する。

 

放たれた無数の銃弾が砲塔に直撃し、火花を散らす。

 

着実にダメージは刻まれるが、コーラル自爆には至らない。

 

「わ、私も行きます!!」

 

そこで、ハルカがコーラルクルセイダーへと距離を詰める。

 

しかし、そこでコーラルクルセイダーが大技後の硬直から立ち直り、動く出す。

 

ハルカへと、キャタピラを唸らせ、突進しようとする。

 

『させませんっ!!』

 

だが、その直前に、ヒフミがコーラルクルセイダーへと砲撃する。

 

その衝撃により、コーラルクルセイダーはコーラル自爆を起こし、突進が不発に終わる。

 

「あ、ありがとうございますっ!!」

 

そこへ、更に畳み掛けるようにハルカが近距離でショットガンを連射する。

 

立て続けに発射される散弾がコーラルクルセイダーの装甲を削り、表面のコーラルに負荷を蓄積させる。

 

『ハルカさん!下がってください!』

 

ヒフミの指示を受け、ハルカが飛び退く。

 

『砲撃部隊の皆さん!お願いします!』

 

ヒフミが指示を出して間も無く、無数の砲撃がコーラルクルセイダーへと降り注ぐ。

 

車体全体を爆炎が飲み込み、また、それが起因となってコーラル自爆が発生する。

 

砲撃が止み、爆煙が晴れると、黒煙を立ち昇らせるコーラルクルセイダーの姿があった。

 

しかし、その表面にはまだ、コーラルが浮かび上がっている。

 

突如、コーラルクルセイダーは、キャタピラを唸らせ、トリニティクルセイダーへと突進する。

 

『っ!!』

 

それを迎え撃つように、ヒフミもトリニティクルセイダーを突進させる。

 

二両のクルセイダーが激突し、激しく火花を散らす。

 

その凄まじい衝撃に、両方の車両が飛び跳ねる。

 

『きゃあっ!?』

 

だが、それにより、ヒフミが衝撃に耐え切れず、一瞬だけトリニティクルセイダーの操作が不能になった。

 

まるで、その瞬間を見計らったかのように、コーラルクルセイダーが至近距離でトリニティクルセイダーへと砲撃を放つ。

 

その衝撃で、トリニティクルセイダーが押し戻され、それと同時に、動きが止まる。

 

相手の兵器が衝撃の蓄積により、負荷限界を迎えるように、こちらもまた、そのルールからは逃れられない。

 

その一瞬の負荷限界の間に、コーラルクルセイダーが主砲にエネルギーを溜める。

 

無差別砲撃の予備動作。

 

負荷限界状態でコーラルクルセイダーの無差別砲撃を直撃すれば、幾らトリニティクルセイダーと言えど、ただでは済まない。

 

ましてや、これまでに蓄積したダメージを鑑みれば、大破の可能性も十分にあり得る。

 

「これやばいってぇ!!?」

 

それを止める為に、便利屋が動き出す。

 

ムツキが爆弾入りのバッグをコーラルクルセイダーへと投擲する。

 

無数の火柱が上がり、コーラルクルセイダーの装甲を吹き飛ばすが、チャージは止まらない。

 

カヨコ、ハルカも、射撃を見舞うが、効果は無い。

 

そして、アルはと言えば──。

 

「アル!?」

 

「アル様!?」

 

「アルちゃん!?」

 

三人が驚愕し、視線を向けるのは、トリニティクルセイダーの天板の上だった。

 

そこで、アルはコーラルクルセイダーの赤熱する砲塔に向かって、左手だけで持ったスナイパーライフルの銃口を向けていた。

 

『アルさん!?ダメです!逃げて──』

 

ヒフミが今からでも降りるように説得しようとする。

 

「嫌よ」

 

だが、ヒフミが言い切るより早く、両断する。

 

その間にも、コーラルクルセイダーの砲塔は赤熱し、それすらも超えて白熱する。

 

「私はもう、誰かが傷付きながら守られるのは、真っ平ごめんなのよッ!!!」

 

アルのスナイパーライフルから、銃弾が放たれる。

 

それは、砲撃寸前のコーラルクルセイダーの砲口に吸い込まれるように飛んで行き、砲身の中の光へと消えて行く。

 

その直後、コーラルクルセイダーの砲身があり得ない程に歪み、膨れ、やがて眩い光がコーラルクルセイダーの至るところから噴き出し、一際、強い光を放つと、内側から爆発した。

 

砲塔は跡形も無く砕け散り、天板が吹き飛ぶ。

 

ダメ押しと言わんばかりにコーラルが自爆し始め、無数の小爆発の後、全体を覆い尽くす程のコーラルの大爆発を引き起こす。

 

爆炎と爆風が止むと、後には原型を留めていない残骸の鉄屑だけが残っていた。

 

トリニティクルセイダーはギリギリ、爆発に巻き込まれずに済み、その中のヒフミは呆然と、黒煙と炎を立ち昇らせる残骸を眺めていた。

 

一方、アルは爆風に煽られ、車体の上から転げ落ちる。

 

だが、地面に激突する前に、誰かがアルを受け止める。

 

「全く、無茶が過ぎるでしょ…」

 

目を開けた先には、呆れた様子のカヨコの顔があった。

 

「な、何よ…べ、別に勝算があって、最終的にみんな無事なんだからそれで──」

 

抱きかかえられているという状況もあって、アルは気恥ずかしさもあって、カヨコから視線を外す。

 

「良くない!」

 

その声は、カヨコにしては、いつも以上に強く、荒いものだった。

 

「…アルは、便利屋にとって…私たちにとって、掛け替えの無い存在だって自覚してよ。…一歩間違えたら、アルは…アルが居なくなったら、誰が私たちを纏めるの?」

 

大袈裟だ、と一蹴してしまうのは簡単のはず。

 

だが、アルは、ふと横目で見た切なそうなカヨコの顔を目にして、言葉に詰まってしまった。

 

「はぁ…どうしてイヴと言い、こうして無茶ばっかりするのか…本当に勘弁してよ…」

 

「…ごめん、なさい…」

 

アル自身、イヴの行動にカヨコ同様に呆れていた物だが、これで自分も彼女を責めるに責められなくなった。

 

「まぁ、説教はこのくらいにしてあげる。アルのお陰でみんな無事なのは、間違いないしね。それじゃ、後は立てるよね?」

 

そう言って、カヨコはアルを地面に下ろそうとする。

 

だが──。

 

「ま、待って…」

 

アルはカヨコに制止をかける。

 

「ん?」

 

カヨコは訝しんでアルの顔を見れば、震えながら、僅かに赤くなっていた。

 

「そ、その…腰が抜けちゃって…立てない…」

 

カヨコは呆れながら、溜め息を吐きつつも、アルらしいとどこか安心感を覚えた。

 

「…慣れないことするから」

 

そんなことを言いながらアルに微笑み掛ければ、当人は耳まで真っ赤にして両手で顔を覆う。

 

「う、うるさいわね…!ちょっと疲れただけよ…!」

 

そんな強がりを聞きつつ、アルの反応を楽しんでいると。

 

「「「………」」」

 

クルセイダーの陰からこちらを見詰めるムツキ、ヒフミ、ハルカの三人と目が合う。

 

それと同時に、言い知れぬ羞恥心が湧き上がる。

 

「えーっとー…もう話し掛けても大丈夫そ?」

 

ニヤニヤしながらこちらを窺うムツキに、カヨコは腕の中のアルを離す。

 

アルが強かに尻を打ち付け、悲鳴を上げるが、今のカヨコにそれを気にしていられる余裕はなかった。

 

「べ、別に何でもないから!何もないから!」

 

「うん?私が聞いたのは話しかけて大丈夫かどうかだけど?」

 

ムツキはわざとらしく、芝居がかった様子で大袈裟に首を傾げる。

 

「あ…いや、えと…その…」

 

「あ、あの、えと…み、皆さん無事で良かったです!!」

 

何とかフォローするべく、ハルカが助け舟を出そうとする。

 

「は、はい!そ、そうですね!一時はどうなる事かと思いましたが、便利屋の皆さんも無事で良かったです!」

 

それにヒフミも便乗する。

 

「そうだねぇ〜良かったねぇ〜うんうん♪」

 

だが、ムツキはそれすらも利用し、ニヤニヤとした笑みを浮かべながら、カヨコを揶揄う。

 

「む、ムツキ!言いたいことがあればはっきり言えば!?」

 

「別に何でもないよ〜♪それはそうと、ご馳走様♪」

 

「〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜っ!!!」

 

「おしり、いたい…」

 

一人取り残されたアルは、うつ伏せの体勢で両手で臀部を押さえているのだった。




さて、残すところは、イヴとエアの戦いだけとなりました

果たして無事に決着が付くのか…

そう言えば、姿が見えない人がいますね…
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