ブルーアーカイブ -灰の翼-   作:空素

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あらすじ

レイヴンVSエア
レイヴン劣勢か!?


EP-71 猟犬、再び

パワーローダーのアサルトアーマー。

 

当然、それそのものが凄まじいダメージに加え、それはコーラルを帯びている。

 

私は、爆発のエネルギーに加えて、凄まじいコーラルを浴びたこととなった。

 

私は直撃の刹那、咄嗟に全身を共鳴の幻視による真紅のエネルギーで覆い、即席の鎧としたが、それでも完全にダメージを相殺出来るはずもなく、私は爆発の衝撃によって大きく吹き飛ばされ、壁に叩き付けられた。

 

爆発のダメージも然ることながら、何より私を苛んでいるのは、突如として発生した頭部の激痛と高熱だ。

 

『変異コーラルは、生物に接触した場合、“狂気”を伝染します。多少の接触では、然程、問題はありません。ですが、今のレイヴンのように、多量に接触してしまった場合、“狂気”が蓄積し、それが発露した場合、対象は“発狂”します』

 

エアの声すらも聞き取れないような頭部と、瞳を焼き焦がすかと思うような高熱と、それに付随する激痛。

 

それは最早、堪え切れるようなものでは無かった。

 

「──あぁッ…!?あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙ぁぁぁァァァァァア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ッ!!!?」

 

両眼を両手で押さえながら天を仰ぎ、堪らず自分でも聞いた事が無いような悲鳴、絶叫が溢れ出す。

 

両目が燃えているのでは無いかと錯覚するような灼熱を感じながらも、私は自身に近付きつつある振動を感じ取っていた。

 

『こんなものではないでしょう?この程度で終わりではないでしょう?さぁ、見せてください、レイヴン!貴女の強さ、その内に眠る力を…!』

 

パワーローダーが迫り来る気配を感じる。

 

視認することは最早、不可能だ。

 

灼熱と激痛により、まともに情報を処理することが出来ない。

 

それでも、私がこれまでに培って来た経験の賜物か、無意識的に体が動く。

 

私は咄嗟に、右手のアサルトライフルで防御姿勢を取った。

 

その直後、凄まじい衝撃が伝わり、相手の攻撃をタイミングよく防御出来たことを感じ取る。

 

だが、それと同時に、防御に使用したアサルトライフルが砕け散った事も理解した。

 

カタカタヘルメット団にいる時に貰い、それからずっと使い続けて来たが、ついに壊れて…否、壊してしまった。

 

けれど、お蔭で私は生き延びることが出来た。

 

今まで一緒に戦ってくれてありがとう。

 

漸く、エアの言っていた“発狂”の状態が落ち着いたのか、発熱と頭痛が収まり、視界が明瞭になる。

 

未だ白んだ視界の中、砕け散ったアサルトライフルの破片が宙を舞っている。

 

思考が加速した、緩やかな体感時間の中、すぐ目の前には狂化暴走パワーローダーの姿がある。

 

先程の銃で防いだ攻撃はガトリングによる連射だったようだ。

 

パワーローダーは続けて、私に両肩の連装ミサイルと、グレネードを発射する右腕の狙いを定めていた。

 

このまま思考速度が元に戻り、体感時間が等速になれば、ミサイルの弾幕とグレネードが私を襲うだろう。

 

それよりも早く、私は一刻も早いアクションを起こさなければならない。

 

そんな中、私は傍に寄り添う機械仕掛けの猟犬を感じる。

 

そこから先の光景は、まるで白昼夢のような、朧げで、不明瞭な、靄がかかったような意識の中で私の目に映った。

 

機械仕掛けの猟犬は、まるで(ほど)けて行くかのように、姿を変えていく。

 

それは、徐々に人型となり、やがてイヴに酷似した容姿でありながら、細部や雰囲気が微妙に異なる四人の少女となった。

 

あぁ…そうか…。

 

“あなた”は…()()()()は、そういう事だったんだね。

 

これまでずっと、一緒に戦い、導いてくれていたんだね。

 

…ずっと、不思議には思っていた。

 

機械仕掛けの猟犬が、私のAC、LOADER4なのだと言うのなら、そこに宿る意志は、一体、何なのか。

 

その謎が、氷解した。

 

あなた達の遺志だったんだね。

 

それならば、私は、まだまだ、死ぬ訳にはいかない。

 

彼らが共にいる限り、死ぬ事は許されない。

 

これでまた一つ、戦い続ける理由が出来た。

 

私は此処で、死ぬ訳にはいかない。

 

私と共に、戦ってくれ、猟犬たちよ…!!

 

四人の少女たちは、再び猟犬へと形を成し、私の傍らに寄り添う。

 

“歯車”を回す。

 

ガリガリと、音を立てて、錆が刮ぎ落ちる。

 

“歯車”の回転速度が増し、身体能力の出力が上がる。

 

ブラックマーケット以来の、“歯車”を回す感覚。

 

先程の発狂とは異なる、痛みと熱に見舞われる──かに思われたが、しかし、その力の代償と言うべき、“歯車”を回す際に襲って来ていた反動は、一切、感じられなかった。

 

これは…もしかして…。

 

いや、今はそんな思考を巡らせている時間も惜しい。

 

夢のような、朧げな意識の中に揺蕩う、白昼夢に終わりが訪れる。

 

それと同時に、思考が高速化した事による緩やかな体感時間の流れが、元に戻る。

 

緩やかな体感時間の中では、止まっているも同然だったパワーローダーの攻撃が、一斉に私へと襲い掛かって来る。

 

だが、それも問題無い。

 

既に、“猟犬たちの導き”は、答えを出している。

 

猟犬が駆け、攻撃の隙間を縫う。

 

それに従い、私はミサイルの弾幕をすり抜け、グレネードを躱す。

 

パワーローダーの背後に降り立ち、右手にショットガン、左手にスナイパーライフルを握る。

 

そこへ、漆黒の大鴉が舞い降りる。

 

「さぁ、ここからは、狩りの時間だ」

 

****************************

 

満身創痍だったレイヴンの動きが、明らかに変わった。

 

いや、相変わらず満身創痍なことには変わりない。

 

しかし、武器の一つを壊し、追い詰めたかに思えたレイヴンは、あわよくばトドメとなることを望んだ集中攻撃を紙一重で躱し、背後を取って見せた。

 

エアは、これまでのキヴォトスに於けるレイヴンの戦闘を全て、陰ながら目にしていた。

 

その戦いの中でも目にした、異様とも言える、超回避能力。

 

針の穴に糸を通すような精密さで、銃弾の雨の中を無傷で掻い潜る。

 

レイヴンが、このキヴォトスで身に付けた能力の一つ。

 

元々、ルビコンに於けるACによる戦闘でも、レイヴンの回避能力はずば抜けていた。

 

それが、このキヴォトスの地でも発揮されている。

 

だが、エアは知っている。

 

その力は諸刃の剣であると。

 

大いなる力には代償を伴う。

 

レイヴンのこの超回避能力もまた、その制約からは逃れられない。

 

だが、これだけでは無い。

 

レイヴンの秘めた力はまだある。

 

レイヴンはまだ、力を隠している。

 

それを引き出すまでは、この戦いを諦める訳にはいかない。

 

さぁ、レイヴン、見せてください。

 

貴女の力を…!!

 

****************************

 

パワーローダーが振り向くよりも早く、私は左手のSRによる狙撃を見舞う。

 

例に漏れず、共鳴の幻視による強化を施された弾丸は、着弾と同時に爆ぜ、真紅の爆炎が装甲表面のコーラルを喰らう。

 

パワーローダーは振り向き様にガトリングを掃射して私ごと背面を薙ぎ払おうとするが、私は既に地面を蹴っていた。

 

上体を前に倒し、低姿勢で滑空するようにパワーローダーへと突進し、真紅の光芒を纏った蹴りを叩き込む。

 

“歯車”を回したことで、膂力も向上しており、蹴りの威力もこれまでとは段違いであり、直撃と同時に爆発を起こす。

 

その衝撃がパワーローダーの巨体を揺らし、またコーラルを燃やす。

 

更に続けて、近距離でSGによる散弾を見舞う。

 

放たれた銃弾は装甲の面を打ち、大きく不可を蓄積させる。

 

あと少しで負荷限界(スタッガー)に陥らせることが出来る。

 

──というところで、それはエアも理解しているのだろう。

 

追撃を止めるべく、パワーローダーをその場で跳躍させる。

 

あわよくば押し潰そうという魂胆だろうその攻撃に対し、私は飛び退く。

 

その直後、パワーローダーは両腕を叩き付けるように地面を叩き、衝撃と振動を周囲に伝える。

 

だが、その攻撃は一時凌ぎにしかならず、また大きな隙を晒す。

 

その間に、私は両手の銃を素早くリロードし、同時に、手榴弾を投擲する。

 

私が悠々とリロードしている間に、パワーローダーは手榴弾の爆発に飲み込まれ、その直後、コーラルの自爆現象が発生する。

 

それにより、装甲表面のコーラルの一部が焼滅し、色みが薄くなる。

 

自爆の影響で、パワーローダーの動きが止まったところへ、狙撃を見舞う。

 

今度こそ、パワーローダーは膝を突き、負荷限界に陥った。

 

これで、一気に片を付ける。

 

その意気で、攻撃を叩き込む。

 

滑空突進で距離を詰め、勢いを乗せた蹴りを叩き込む。

 

更に、身を捻りながら、両の脚による回転しながらの蹴りの連撃。

 

その一撃一撃が、無防備なパワーローダーの装甲を歪ませ、爆発による炎がコーラルを焼き尽くして行く。

 

更に、歪み、凹んだ装甲部分へとSGの銃口を突き付け、至近距離で散弾を見舞う。

 

無数の銃弾が装甲の面を打ち、限界が訪れた箇所がついに割れる。

 

最後に、割れて亀裂が生じた装甲の内部に、SRの銃口を突き付け、弾丸を放つ。

 

放たれた銃弾は装甲の内側へと潜り込み、間も無く、内側からコーラルの自爆による深紅の爆炎が迸る。

 

機体の内側から爆炎が噴き出し、パワーローダーが崩れ落ちて行く。

 

もう、これで動く事は出来ないだろう。

 

後は、コーラルを残さず焼き尽くすだけだ。

 

エアも含めて。

 

エアを目視することは出来ない。

 

少なくとも、先程のように、寄り集まって姿を形作らない限りは。

 

それでも、私の“耳”は、コーラルの気配を決して(のが)さない。

 

エアも決して、()がさない。

 

『…流石です。レイヴン』

 

そこで聞こえて来たのは、エアの声。

 

この後に及んで、未だ余裕が感じられる、悠々とした声だ。

 

まだ何か、隠した策があると言うのだろうか。

 

周囲に警戒を巡らせる。

 

『やはり、付け焼き刃の汎用機のコーラル侵食では、貴女を追い詰めることは難しいようです。これは、今後の重要課題になりそうです』

 

エアの声は響いている。

 

何処から声を発しているのか、位置を特定できない。

 

『PMCの元理事も失敗したようです。まあ、あちらは先生も着いていますし、元から期待はしていませんでしたが…。それでも、誰一人として、始末することが出来ないとは……』

 

どうやら、他のメンバーも無事なようだ。

 

あくまでも、エアの言葉を信じるのであれば、という事にはなるが、エアはわざわざ嘘を言うような性格ではない。

 

とは言え、油断は出来ない。

 

エアが今、この瞬間も何かを画策していることは間違いないのだから。

 

『…このまま、何の収穫も無しという訳にはいきません。レイヴン、貴女にはもう一戦、付き合って頂きます』

 

エアがそう言い放った直後、周囲からコーラルが残骸と化した筈のパワーローダーに収束していく。

 

崩壊しつつあったパワーローダーは、火花と炎を撒き散らしながらも、ぎこちない動きで動き始める。

 

その装甲の表面は、先程の変異コーラル感染体の狂化暴走パワーローダーよりも更に濃く深い、目が痛くなるような深紅に染まる。

 

更には、そこに浮かび上がる血管のような網目模様は最早、黒としか言いようのない赤黒い色合いをし、脈動するように明滅していた。

 

感覚で分かる。

 

目の前の“コレ”は、先程の《変異C感染体》よりも侵食率の高い存在なのだと。

 

明らかに、先程よりもコーラルの気配が濃く、強い。

 

その代わり、周囲に満ちていたコーラルの気配が一切、感じられない。

 

それ即ち、エアを含めた全てのコーラルが、目の前のパワーローダーに集約されたことを意味していた。

 

『…これは、未だ実現していなかった、理論上の存在が顕現したものです。先程までの《変異C感染体》までは、事前に確認していました。ですが、今のこの存在は、私でも目にしたのは初めてです。ですから、レイヴン、気を付けて下さい』

 

侵食するコーラルが張り巡らせた根によって、崩壊から繋ぎ止められたパワーローダーが、その身に秘める爆発的なエネルギーから生じる深紅の落雷を周囲に発生させ、駆動音を唸らせる。

 

それは何処か、機械的な音と言うよりは、“何かの声”のようにも聞こえて来るものだった。

 

『言うなれば、これは《変異C“侵蝕”体》。推定される侵食率は70〜100%の最高レベル。ここから先は、私でも、何が起こるか分かりません』




狂化暴走パワーローダー第二形態…!

ボスに第二形態はお約束

場合によっては第三形態も…!?

いや、そこまで行くともう蛇足ですね

第二形態くらいが丁度良いと思います
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