ブルーアーカイブ -灰の翼-   作:空素

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あらすじ
変異コーラル侵食第三段階

アビドス3章も完結し、これで気兼ねなく執筆出来ます!

嘘です!
嘘じゃないけど、アビドス3章が完結しないから執筆が遅れた訳ではありません!ごめんなさい!


EP-72 刻まれし追憶

変異コーラルによる侵食が更に深化することで、新たな段階へと至ったパワーローダー。

 

その様は正しく、荒ぶるコーラルの奔流そのものであり、全てを蝕み、破壊する恐るべき脅威であった。

 

このままでは、仮に倒せたとしても、周辺一帯をコーラルが汚染し、大地にコーラルが根付く危険性がある。

 

それだけ、目の前のパワーローダー──エアの言葉を借りて、変異“侵蝕”体と呼ばれる存在から放たれるコーラルの気配は、非常に密度が高かった。

 

一刻も早い撃破及びコーラルの焼滅が求められる。

 

──その為には、今のままでは足りない。

 

“歯車”を回すだけでは、足りない。

 

だからこそ、私は意を決する。

 

“歯車”を回した上で、更なる内なる力の解放。

 

かつて、ルビコンを焼き尽くした災禍の火、その残滓に火を点ける。

 

──“残り火”を燃やす。

 

ゴウッ、と全身から真紅の火が燃え上がる。

 

その火は、私を燃やすことなく、力を与えてくれる。

 

しかし、この力にもまた代償が組み込まれている。

 

かつて、ルビコンで戦い続け、生き抜いた“記憶(かこ)”。

 

それが少しずつ燃えて行く。

 

現在(いま)”の(じんかく)を構成するモノが、灰になっていく。

 

だからこそ、一刻も早く、戦闘を終わらせなければならない。

 

とは言え、急ぐあまり殲滅が不十分になってしまっては本末転倒だ。

 

確実にパワーローダーを撃破し、エア──コーラルを焼き滅ぼす。

 

その為には、攻撃の威力の更なる高出力化が求められる。

 

「エア──」

 

──その為の方法は、既に知っている。

 

「私の“全力”で、あなたを滅ぼす」

 

『そんなお前に、一つ、力を伝授しよう。

これは──“残り火”の奥義にして極意。使う場所は良く考えて使え』

 

あの夢の空間で、もう一人の私に伝授された、“残り火”の奥義。

 

私は思い浮かべる。

 

記憶の奥底に刻まれた、ルビコンでの戦いを。

 

その戦いの最中で出会った、強敵たちの姿を。

 

──《類稀なる強者の追憶を燃やす》。

 

****************************

 

エアはこの瞬間を待ち侘びていた。

 

レイヴンがかつて、ブラックマーケットでの戦闘の最中に見せた“真紅の火”、その解放の時を。

 

とは言え、エア自身、出来ることであれば、変異コーラル侵蝕体を生み出したくは無かった。

 

元より、その存在自体は想定してはいた。

 

それまで、汚染体、感染体と侵食率が上がるに連れて段階的に強化される変異コーラルの侵食個体群。

 

事前に研究出来ていれば良かったのだが、その為にはあまりにも時間が少なかった。

 

その上、想定される周囲への影響を考えて、研究に踏み出せなかったと言うのもある。

 

エアの標的はレイヴンただ一人。

 

その他のキヴォトスの住民には興味は無く、また出来る限り干渉したくない。

 

故に、感染体の上の第三段階の存在は想定はしていても、どれだけの力を発揮し、その上で周囲に影響を及ぼすかは、エアでも把握出来ていなかった。

 

コーラルを支配し、更に思いがけず、強大な力を手にしたエアであったが、その力を完全にコントロールするには、まだまだ時間がかかる。

 

これから徐々に慣らし、馴染ませる必要があるのだ。

 

その為にも、今後を見据え、レイヴンの戦闘データを少しでも多く収穫する必要がある。

 

コーラルとはまた異なる、真紅の火を纏うレイヴンは、キヴォトスの住人である象徴とも言えるヘイローが変化している。

 

そのヘイローは常に激しく脈打ち、煌々と紅に煌めく刺々しい形状。

 

ともすれば歪んでいるとも見えるその(いびつ)なヘイローは、まるで心臓のように脈動を繰り返す。

 

他の生徒と比べても、明らかに異質だ。

 

そして、ヘイローの下、揺れる純白の長髪は真紅の火の影響か赤みがかっており、風に煽られ、靡く。

 

ヘイロー同様に、真紅に煌々と燃える双眸は、常にパワーローダー──エアを捉えており、一分(いちぶ)の隙も無い。

 

エアとしては、願ってもないことだ。

 

戦意に燃え盛るレイヴンは、それでいて冷静に状況を把握している。

 

今のレイヴンに、不意打ちは出来ないだろう。

 

ならば、正面から全力で叩き潰す他に手は無い。

 

レイヴンをアサルトアーマーで吹き飛ばせたように、小細工のない、防ぎようのない広範囲殲滅攻撃こそが、今エアに可能な戦法だ。

 

「──エア」

 

だが、その瞬間、エアはレイヴンの異変を感じ取る。

 

「私の“全力”で、あなたを滅ぼす」

 

レイヴンは何かを決意したように、静かに瞼を閉じた。

 

──その直後、レイヴンは激しい真紅の火に包まれた。

 

*****************************

 

《類稀なる強者の追憶を燃やす》。

 

それは、私がこれまでに戦い、脳裏に刻み込まれた強者の記憶。

 

それを焼き尽くし、失う代償に、その力を我が物とする方法。

 

記憶を燃やす“残り火”だからこそ可能な、正しく奥義にして極意。

 

私が燃やしたのは、《大型武装戦闘機の追憶》と《壁の守護者の追憶》。

 

それぞれ、ルビコンに密航して最初に戦った惑星封鎖機構大型武装ヘリと、土着のルビコン解放戦線の重要な交易拠点である通称“壁”を守っていた“ジャガーノート”と呼ばれる大型武装砲台。

 

それらを燃やすことで、私は身体能力の上昇に加えて、“追憶の力”を手にする。

 

私は、武装ヘリの追憶から得た力を左右の銃に乗せる。

 

右手のショットガンと左手のスナイパーライフルがそれぞれ、真紅の火に燃え上がる。

 

即座に地面を蹴り、パワーローダーへと疾駆する。

 

私の動きに反応し、遅れてパワーローダーが動き出す。

 

パワーローダーが一歩踏み出すだけで、そこから深紅の稲妻が弾け、迸る。

 

迸った稲妻が地面を灼き、その場所にコーラルが漂う。

 

やはり、コーラルの密度──濃度が高いが故に、動くだけで周囲を汚染する存在のようだ。

 

一刻も早く、倒さなくてはならない。

 

突進の勢いのまま、懐に飛び込んだ私は、回し蹴りを胴体に叩き込む。

 

蹴りと同時に、真紅の火が爆ぜ、衝撃と爆発がパワーローダーの巨体を揺るがす。

 

僅かにたたらを踏んで後退したパワーローダーへ、更に右手のSGを見舞う。

 

だが、発射された散弾は、弾丸の一つ一つが真紅の火を纏い、着弾と同時にミサイルの爆撃と見紛うような爆発が起きる。

 

『!?これは一体──!?』

 

エアの驚愕の声が聞こえても、攻める手を止めずに追撃する。

 

後方宙返りで飛び退きつつ、空中からSRでパワーローダーを狙撃する。

 

こちらも同様、狙撃銃による銃弾とは思えないような巨大な火球が放たれ、グレネードランチャーの如き爆炎が舞い上がる。

 

これらの変化は、追憶によって得られたものだ。

 

大型武装ヘリのミサイルとグレネードランチャー、その二つの攻撃を真紅の火によって再現した。

 

この再現こそが、追憶を力にする真髄とも言えるだろう。

 

私が着地すると同時に、パワーローダーを包んでいた黒煙が吹き飛ぶ。

 

そして、黒煙を貫いてコーラルに侵食された無数のミサイルが私へと殺到する。

 

パワーローダーの両肩の連装ミサイルだ。

 

コーラル侵食の影響もあり、直撃すればただでは済まないだろう。

 

更には、パワーローダーは両腕を合わせ、その銃口を真っ直ぐ私へと向けると、ガトリングを放ちながら、グレネードを発射する。

 

息を吐かせぬ三段攻撃。

 

ミサイルと銃弾、砲弾の弾幕が私へと襲い掛かる。

 

私は咄嗟に、“力”を()()()()()

 

左手のSRを背中に仕舞い、開いた手のひらを正面に向ける。

 

その直後、展開されるのは真紅の光芒で構成され、表面に六角形のハニカム構造が浮かび上がる長方形のラージシールド。

 

その形状は、ジャガーノートの正面を守る装甲に酷似している。

 

ジャガーノートの装甲を模倣・再現した大盾は、不動の堅牢さを誇り、パワーローダーの弾幕を防ぐ。

 

だが、全ての攻撃を防ぎ切ると同時に、その大盾は砕け散った。

 

今の大盾は、数秒程度しか展開出来ない代わりに、その時間内であればあらゆる攻撃を防ぐ事が出来るようだ。

 

ただし、再発動の為の冷却時間はかなりの時間を要する。

 

少なくとも、数十秒程度で再展開は不可能だ。

 

それまでは、私自身でどうにかするしかない。

 

以前、使用したリアクティブパルスシールドもあるにはあるが、あれは耐久性という面で不安が残る。

 

攻撃が強化されているコーラル侵食体であれば尚更だ。

 

やはりここは、防御よりも回避を優先すべきだろう。

 

真紅の火を使った回避力を高める方法を模索しよう。

 

回避に重要なのは、やはり速度。

 

イメージするのは、ACに乗っていた時に散々使用したクイックブースト。

 

あれをイメージし、足裏で火を爆発させ、推進力を得る。

 

試しに、左手にSRを握った後、パワーローダーの攻撃が止んだのを確認し、距離を詰める為に、地面を蹴ると同時に足裏で火を爆発させる。

 

爆発による推進力は凄まじく、一瞬にしてパワーローダーの足下に潜り込む。

 

予想通りの速度と推進力だが、かなり制御が難しい。

 

今回は正面だったから問題無く静止出来たが、横方向や後方、斜めなどはかなり動静が困難だろう。

 

だが、使用できる状況が限られる以上は、可能な限り迅速にモノにしなければならない。

 

少しでも早く慣れる為に、短い時間で回数を(こな)さなくてはならない。

 

再び地面を蹴り、パワーローダーの足下から背後を取るように飛び出す。

 

突進の勢いの中、空中で体勢を掌握し、後ろに振り向く。

 

その直後、背を向けるパワーローダーの足下が爆発し、爆炎が燃え上がる。

 

足下に潜り込むと同時に仕掛けた“地雷”による爆発だ。

 

この地雷もまた、ジャガーノートの追憶の力だ。

 

任意で足元に二〜三程度の真紅の火の地雷を設置する。

 

地雷の爆発を確認して即座に追憶を切り替え、大型武装ヘリの力を両手の銃に付与する。

 

空中にいる状態でSGを発射し、その銃弾は無数のミサイルとなってパワーローダーを襲う。

 

真紅の爆炎に包まれるパワーローダーの背中に、着地と同時にSRで狙撃する。

 

狙撃という名の爆撃は、着弾と同時に火柱を巻き上げ、それまで蓄積し続けたダメージによって、パワーローダーは膝を突く。

 

負荷限界(スタッガー)

 

『ッ──まだです!レイヴン!まだ、私は──!!』

 

パワーローダーを中心に深紅の稲妻が迸り、それが収束する。

 

直後、広範囲を巻き込むようにドーム状にそれが爆ぜる。

 

私は事前に察知出来ていた為に飛び退くだけで回避するが、それだけでは終わらない。

 

空中に霧散するはずのコーラルの稲妻が収束し、まるで槍のような形状を無数に形作る。

 

その矛先の全てが、私へと向いている。

 

恐らく、その一本一本の槍がエアの制御下に置かれ、私を追尾して来るだろう。

 

ジャガーノートのシールドはまだ使えない。

 

そもそも、あれが展開出来るのは正面の一方向のみであり、加えて展開可能時間中に全てを受け切ることは不可能だ。

 

なるほど、つまり。

 

この槍を全て躱すことが出来れば私の勝ち、一本でも当たればエアの勝ちという事だ。

 

『レイヴン!避けれるものなら、避けてみて下さい!!』

 

コーラルの稲妻の槍が、一斉に私へと殺到する。

 

私は保険の為に、真紅の火のリアクティブシールドを展開し、地面を蹴る。

 

深紅の稲妻の槍は、まるで矢の雨のように、しかし一本一本が私自身を狙って襲い来る。

 

だが、狙い目はある。

 

全ての槍は正面方向から飛んで来ており、私を包み込むように全方位から殺到している訳ではない。

 

加えて、私一人に狙いが集約するが故に、自ずとその軌道は尻すぼみに収束する。

 

だからこそ、ギリギリまで引き付けつつ、咄嗟に横に飛べば、ある程度は回避出来る。

 

飛ぶと同時に、足裏で火を爆発させ、推進力で速度と距離を得る。

 

幾つかの槍は、地面に突き刺さり、小爆発を起こして消える。

 

だが、それ以外は地面に直撃する前に軌道を変え、横に飛んだ私を追従する。

 

残る槍が飛んでくる軌道は様々。

 

地面スレスレを飛び真っ直ぐ正面から飛んでくるものもあれば、私の側面を狙うように湾曲した軌道で左右から来るもの、弧を描くように頭上から降り注ぐもの。

 

私はそれらに対して──()()()()()()()、足裏で爆発を起こし、更に後ろに飛んだ。

 

エアからはきっと、空中を蹴って飛んだように見えただろう。

 

左右と頭上から飛んで来ていた槍は(くう)を切り、頭上からのものについては地面に着弾して爆ぜる。

 

真っ直ぐ正面から飛んで来ていたものに関しては、尚も追尾して来るが、それも想定内。

 

そこは基地の周囲を包囲する壁があり、空中で爆破跳躍した私は身を翻してそこに着地し、壁を足場に再び飛ぶ。

 

私を正面から追尾して来ていた槍も壁に直撃したことで爆ぜる。

 

これで、私を追尾する槍はかなり減った。

 

三十〜四十程度の槍が背後から私に向かって飛んで来ている。

 

だが、これならば十分、普通に回避出来る数だ。

 

槍の群れを飛び越えた私は、着地と同時に再び地面を蹴り、足裏で爆炎を起こす。

 

稲妻の槍は、高速で飛んで来る時と、緩やかに狙いを定める時の二つのパターンがある。

 

高速の時は、爆発の推進力を得ても敵わない。

 

だが、同時に制御が難しいらしく、咄嗟の方向転換が利かない。

 

だからこそ、一度高速状態になってしまうと、障害物に直撃する直前で切り替えが利かず、直撃して爆ぜてしまう。

 

緩やかな時は、制御が容易だが回避され易い。

 

背後に槍の群れを連れたまま、私は真っ直ぐパワーローダーの元へと駆ける。

 

パワーローダーは今の間にスタッガーから立ち直りつつある。

 

──させるか。

 

その前に、一気に片を付ける。

 

だが、その意気はエアも同じ。

 

パワーローダーとの距離が縮まるに連れ、背後から迫る槍の気配が強くなる。

 

それでも私は、回避すること無く、いつ貫かれてもおかしくないまま、パワーローダーへと滑空する。

 

そして、ついにパワーローダーへと肉薄すると同時に、背後からの稲妻の槍が私に触れるか触れないかの位置まで迫っていることを感じ、それでも尚、私は攻めの姿勢を崩さない。

 

否──攻めと守りを両立させる方法を実行する。

 

私の頭上のヘイローが一際、眩く輝く。

 

その直後、パワーローダーを呑み込み、稲妻の槍を吹き飛ばし、真紅の火球が地上を吹き飛ばした。




そろそろレイヴンVSエアも大詰め…

エンディングも近いですね

…って毎回言ってる気がします!
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