…すみません、どうしても書きたかったんです…
サブエピソードなので、短い話数で終わると思います
…多分
「──これは…どういうことだ…?」
きっと今、私は頬を引き攣らせた、ぎこちない笑みを浮かべていることだろう。
目の前には、ミレニアムサイエンススクールのエンジニア部の三人。
金髪メガネの豊見コトリ、黒髪垂れ犬耳の猫塚ヒビキ、紫長髪の白石ウタハ。
事の起こりは、ミレニアムのエンジニア部に武器の改良を依頼した事から始まる。
私が愛用していた、カイザーPMCの基地からシロコがくすねて来たショットガンだが、元が中古品なだけに、細部の部品に結構なガタが来ており、銃の整備序でに部品の交換・改良を頼んだのだった。
それが二日前であり、完成品を受け取りに来たのだが──。
「……えーっと、これはそのぉ〜…」
豊見が冷や汗気味に目を泳がせながら、口ごもる。
私の手の中には、一見すると完成したように見える元通り──否、フレームも磨き上げられて新品同様のショットガンが握られている。
ならば、何が問題なのか──。
私はおもむろに、試射スペース内の的に向かって銃を向け、引き金を弾く。
銃口から勢いよく放たれたのは、放射範囲状にばら撒かれる散弾──ではなく、液体。
その液体は、毒液という事でもなく、爽やかさすら感じるような香りを放っている。
柑橘類──それも、レモンの果汁、いわゆる、レモン汁だった。
「…散弾ならぬ、“酸”弾、ってことだね」
猫塚が正座しながらも不敵な笑みを浮かべる。
反省していない様子なので、正座している猫塚の手前の床に散弾を発射、レモン汁をぶちまける。
猫塚と、その左右の二人が驚いて正座のまま跳ね上がる。
「…レイヴン、待って欲しい」
そこで、弁明か、それとも謝罪か、白石が真面目な顔で口を開く。
レモン汁の弾丸をリロードしながら、横目で視線を向け、発言を促す。
「確かに、深夜テンションという正気ではない状態で君の愛用の銃を改造してしまったことは認めるし、謝ろう」
エンジニア部は正気で狂っているのではないか、という感想を押し留め、白石の続きの言葉を待つ。
「だが、よく考えて欲しい!いつでも新鮮なレモン果汁が使えるんだ!素晴らしいとは思わないかい!?コンビニ弁当の揚げ物をさっぱりさせたり、甘いモノにもほど良いアクセントを加えられるんだ!!」
力強く熱弁する白石は、まるで舞台劇の役者のような大仰な動きで私を説得しようとする。
私はそんな白石に無言のまま、口元に微笑みを浮かべた。
それを受け、エンジニア部の表情が、私に許された、解放されるという期待からか、明るく晴れ渡る。
そんなエンジニア部へ──私は容赦なく、レモン汁の雨を斉射した。
それは正しく、レモン汁の嵐──集中豪雨。
雨の後にはレモン汁塗れで倒れる、エンジニア部の三人が無惨に転がる。
こんなものを食べ物に使える訳が無いだろう。
「二日後にまた来る。その時までに
レモン銃を近くの台に立て掛け、私はミレニアムを後にした。
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レモン汁発射装置となってしまった愛銃の代わりとして、一応、エンジニア部から代用品を借りている為、戦闘に困ることはない。
とは言え、ただでさえゲヘナの風紀委員会からも武器を借りている為、このままでは借り物で武装が固まってしまう。
依頼等の仕事には支障は無いが、一つくらいは自身の武器を持っておきたい。
エンジニア部の試作品は兎も角、風紀委員会から借りている銃を壊してしまうのは忍びない。
そこで私は、その相談をしに、アビドスへと赴いた。
アビドスと言っても、対策委員会の面々は今、先の騒動の後処理や自治区の復興で多忙に追われている。
そこに更に私が面倒事を持ち込む訳にはいかない。
私が頼ったのは、私にとってのキヴォトスでの故郷とも言える、カタカタヘルメット団だ。
思いの外、頻繁に通っているなと思いながら、砂漠地帯を越えた先の廃墟と化した市街地へと踏み入る。
旧市街の一角、カタカタヘルメット団アジトに近付けば、いつものように、門番が警戒しながら現れ、私と気付く。
「なんだイヴかよ!思ったより足繁く里帰りすんじゃねぇか!まあ、私たちは大歓迎だがな!」
などと言葉通り、歓迎されながらアジト内に通される。
アジト内を歩き回るヘルメット団メンバーが私に気付いては駆け寄って来てくれ、温かい言葉で歓迎してくれる。
「イヴ!よく来たな!」
「イヴちゃんおかえりー!元気してたー?」
「イヴ!ちゃんと飯食ってるか!?」
思わず口元が緩むが、急ぎという程でもないが、余裕もそれほどある訳ではない。
「みんなも元気そうで何より。でも、ごめん。単なる里帰りじゃなくて、リーダーに相談したいことがあって来たんだ」
私としても、もう少しだけヘルメット団メンバーとの会話を続けたいが、そうも言ってられない。
「そういう事なら私がリーダーの元に案内するよー」
そう言って一人のメンバーが名乗り出る。
ハーフサイズのヘルメットを被った、やや小柄なショートツインテールの少女だった。
すると、私の周囲を取り囲んでいたメンバーは別れを告げ、中断していたものに戻る。
門番の団員も、名乗り出た団員に任せ、持ち場に戻って行った。
「それじゃ、こっちだよー」
私は案内されるがままに、ショートツインテールの少女に着いていく。
リーダーの元に着くと、私は簡潔に状況を説明した。
「ふーむ、なるほど。自分自身の武器が欲しいと…」
「うん。それで、何か伝手がないか聞きたいんだ。武器商人…武器関係の技術者でも良い」
私が重ねて助力を乞うと、リーダーは腕を組んで頭を悩ませ、唸る。
暫く唸っていたリーダーだったが、見かねた側付きの団員がため息混じりに口を開く。
「力になってあげたいのは山々ですが、生憎、武器を調達できる伝手は残念ながらこのカタカタヘルメット団にはありません。今ある物資も、ブラックマーケットに流れ着いた中古品を掻き集めたモノですからね…」
その団員は、このヘルメット団の参謀的な立ち位置の、お馴染みの人物だった。
「ん〜!まぁ、そういう事だな!すまん!そもそも、そんな相手がいたら、わざわざカイザーなんかと組むはずもないし…」
然もありなん。
リーダーが言ってるのは、アビドス高校襲撃時の話だ。
あの襲撃はカイザーからヘルメット団への依頼であり、その際にヘルメット団は武器や兵器の援助物資を受けた。
最終的には、ヘルメット団に貸し付けた戦力を潰す為か、カイザーの差し金で差し向けられた便利屋68に始末された。
リーダーの言う通り、武器だけでも自力で調達出来るのであれば、あのような危ない橋を渡ることも無かっただろう。
「ただし!それはあくまでも
空振りかに思われたが、突如、リーダーが誇らしげに大声を上げる。
「私は知らないが、ブラックマーケットには、“ブラックマーケット1”を名乗る情報屋が居るんだよ。そいつなら、何か知っているかもしれない」
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この日は、既に日も暮れかかっており、ブラックマーケットへは翌日に向かうことにし、この日は一旦、シャーレへ帰った。
私がシャーレに寝泊まりしていることが判明した以降、対策委員会と便利屋がかなりしつこく自身の家や事務所に泊まらせようとする*1が、私としてはシャーレが一番、気が楽かつ依頼の確認等も出来る為、出来る限りはそちらに帰るようにしている。
設備が揃っているのもシャーレの良い点だ。
それに、先生は基本、デスクに向かって缶詰め状態であり、居住区画というか、利用区画は私とはあまり重ならない。
顔を合わせることも少ない為、私としても気楽に過ごせるということだ。
それに一応、私はシャーレ所属だし。
そのままシャーレで一夜を過ごした翌日。
私はブラックマーケットへ向かう準備を整え、念の為、先生の元に顔を出した。
[“あ、おはよう、イヴ”]
徹夜だったのだろう、先生の目の下にはハッキリとクマが浮かんでいた。
「おはよう。また徹夜?少しは休んだ方が良い。体を壊すぞ。休むのも立派な仕事だ」
[“はは…いやぁ、おっしゃる通りで…仕事はひと段落ついたから、これからひと休みするつもり…ところでイヴは朝早くから仕事?”]
「いや、ちょっと武器を調達しにブラックマーケットに」
[“ブラックマーケット…?それは大丈夫なの?”]
完全に緩み切っていた表情が一変、先生は険しい視線を私に向ける。
以前、私がブラックマーケットで倒れたことを思い出したのだろう。
あの時は、カイザーの陰謀とゲヘナの風紀委員会ひいては天雨アコの謀略が重なった結果だが、あんなことがそうそう起こるはずもない。
というか、あってたまるか。
「…大丈夫。情報屋に情報を聞くだけだから」
先生は具体的に不満をこぼす訳ではないが、不安な心情を包み隠さず、心配するような視線を向けてくる。
[“はぁ…まあ、私が何を言っても、イヴは止まらないだろうから仕方ないか…。くれぐれも気を付けてね”]
だが、先生は思いの外、あっさりと身を引いた。
生徒のこととなると頑として石頭のあの先生が…?
言いしれぬ違和感を覚えながらも、私は先生に見送られ、ブラックマーケットへと発った。
そして、私は先生に抱いた違和感の正体をすぐに知ることになった。
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ブラックマーケットの入口、そこで私は思いがけない人物と出会った。
「んー、あ、来た来た。先生の言う通りだったね〜。思ったより早かったね、イヴちゃん」
その人物は他でも無い、アビドス対策委員会の小鳥遊ホシノその人だった。
──やられた…。
やけにあっさりと引き下げると思ったら…。
そういうことだったか。
裏で根回ししたという訳だ。
「…どこまで聞いた?」
「ん〜?イヴちゃんが
ホシノは相変わらずのまったりとした、それでいて一切の隙が無い様子で答える。
「はぁ…先生の心配性にも困ったもんだな…」
私は独りごち、顔に手を当てる。
「うへ〜、まあ仕方ないんじゃないかな〜?イヴちゃん、一回ここで倒れてるし」
それを言われては、私としても返す言葉も無い。
「でもね、イヴちゃん。多分だけど、私はイヴちゃんの目的に協力出来ると思うんだよね〜」
ホシノの言葉に、私は意図が読み取れず首を傾げる。
「…イヴちゃんが探そうとしてるブラックマーケットの情報屋って、もしかして
そのホシノの発言は、私にとって思いがけないものだった。
まさか、ホシノの口からその文言が出るとは思わなかった。
「うへ〜、その反応は当たりみたいだね〜」
「…ホシノは知ってるの?その情報屋について」
「うん、まぁね〜。
そのように語るホシノは、声色こそ普段と変わりないが、僅かに剣呑な雰囲気が感じ取れた。
ホシノがここまで警戒するということは、それだけただならぬ相手なのだろう。
そのまま、ホシノは続ける。
「ところで、イヴちゃんは相手の名前は知ってる?探そうとしている情報屋の名前」
私は無言で首を横に振った。
ヘルメット団のリーダーも恐らくは噂を聞いただけで、実際のところは詳しくは知らなかったのだろう。
だからこそ、私も
“ブラックマーケット1の情報屋”という情報だけで私は探し出そうとしていた。
「それなら教えてあげる。アイツの名前は──」
「《パッチ》。“鋼鉄”の《パッチ》だよ」
イヴとホルスでタッグを組ませたかったのです…
そして、こいつも出したかった
そう言えば、AC6では出て来ませんでしたねコイツ
AC発祥のキャラクターですが
三話くらいで終わる予定!