そして、それはどんな人物なのか──!?
サブタイに書かれてますけどね!()
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「いやぁ、今のところ順調だねぇ〜。これならおじさんはいらなかったかな〜?」
パッチから買った情報、その中の一つである地図を参考にブラックマーケットの深部を進んでいる中、隣のホシノが悠々と背伸びしながら、そんな自嘲を溢した。
「何言ってるんだ。ホシノの案内があったからここまで順調に事が運んだんだよ。ホシノには感謝してる」
「…そっかぁ。それなら良かった」
ホシノはこちらに振り向き、柔らかい笑みを浮かべた。
私達が進んでいるのは、廃墟と化した、風化した建物が立ち並ぶ区画だ。
元は住宅街だったようで、いくつかの集合住宅が建ち並んでいるが、どれもこれもが劣化し、最早、人の気配は微塵も感じられない。
ブラックマーケットの中でも、一際、
パッチの地図によれば、この区画の何処かに、私の求めるターゲットが居るらしいのだが、今のところは影も形もない。
これは地道にしらみ潰しに見ていくしかないと辟易していたところで──。
「今更だけどさ、ありがとね、イヴちゃん」
隣のホシノが感謝を告げた。
「カイザーに唆された私を止めてくれて。イヴちゃんには、何も関係無いのに…」
何のことかと思ったら、そんなことか。
「別に良いよ。私もあのままホシノがアビドスから居なくなったら嫌な思いをしていただろうし。それに、私としては本気のホシノと戦えて楽しかったから」
あの時のホシノはいつものシールドを持ってはいなかったから完全な全力とは言えないだろうが、それでも、あの時の武装で出せるだけの全力は出していたハズだ。
そう考えると、本来のホシノは更にシールドによる未知数の防御力による耐久も加わることになり、それはかなり厄介そうだ。
「楽しかったって…うへ、シロコちゃんと仲が良いのにも納得だよ…あんな状況でも楽しんでたんだね」
困ったように笑ったホシノは、ふと僅かに俯いた後、私と目を合わせるように顔を向けた。
「イヴちゃんは強いね。どうしたら私もイヴちゃんみたいに強くなれるかな?」
私が強い、か。
それはとんだ思い違いだ。
「…私は強い訳じゃないよ、ホシノ」
「そんなこと──」
ホシノの言葉を遮るように、私は首を横に振る。
「私はただ、“力”を持ってるだけ。目の前のものを破壊するだけの暴力の塊なだけだ。それは、闘争と戦争の引き金にしかならない。誰かを助けたり、救うことができるような“強さ”は、私には無い。むしろ、それは私よりもホシノの方が持っている」
力など、破壊と殺戮の呼び水でしかない。
ルビコンで、そうだったように。
本当なら私は、単身で元理事とエアに挑むつもりだった。
そうなれば、私は死んでいたか、或いは、例え目的を果たすことが出来ていたとしても、何か取り返しのつかない過ちを犯していたかもしれない。
そうならなかったのは、ひとえに私を止めてくれた対策委員会と便利屋、先生のお蔭だ。
ホシノが襲撃して来た時だって、私は後ろに対策委員会と先生が控えていてくれたから無力化し、後を任せることで止まれた。
止まっていなかったら、私はホシノを──。
「だから、きっとホシノの方が私よりもずっと強い。誰かを想い、護れる強さがあるはずだよ」
「……そっか…」
ホシノは、困ったように笑みを浮かべた。
──この時の私は、ホシノが何故困っているのか、その理由を理解することが出来なかった。
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その後、特に会話はなく、私たちは無言のまま寂れた廃墟街を散策していた。
そんな中、私はふと、火薬の匂いを感じ取った。
キヴォトスに置いては、そこら中で銃火器の撃ち合いがある為、火薬の匂い自体は珍しいものではない。
ましてや、ブラックマーケットともなれば尚更だが、匂って来た火薬はその量が桁違いだった。
火薬と灼けた鉄の匂い。
更には、金属が擦れるような音や機械の駆動音までもが頭頂の犬耳に届く。
いずれも微かなものだが、決して間違いや幻ではない。
どうやらホシノも同様に感じ取ったようで、私たちは互いに頷き合い、匂いと音を頼りに、その発生源へと近付いて行く。
そうして辿り着いたのは、中規模の工場跡。
外観では完全に
私とホシノは目を合わせて頷き合い、目の前のシャッターで閉ざされた廃工場に踏み入る手段を模索する。
私とホシノは二手に分かれ、廃工場の周囲を探索する。
ふと、背後に違和感を覚える。
僅かな風切音と駆動音が聞こえ、振り向いた先には一機のドローン。
もし、このドローンを通じて、何者かが私を見ているとしたら──。
それが、この廃工場の
その人物は、ただでさえ住人を選ぶブラックマーケットの更に人が立ち入らない奥地に住まい、住居の外に監視の目を行き届かせているような強い警戒心の持ち主。
そんな人物が、見知らぬ二人が自らの住処の周りを彷徨いている光景を目撃したとしたら──。
直後、突如として警報が鳴り響き、赤色ランプが点灯する。
『侵入者に告げる。直ちにこの場を立ち去れ。繰り返す、この場を立ち去れ。さもなくば、即座に襲撃者として判断し、攻撃する。繰り返す──』
女性の声をした無機質な警告が響き渡る。
すると、工場周辺の倉庫のシャッターが開き、武装されたドローンや小型のオートマタ、更には戦車までもが現れる。
出来れば事を荒立てたくは無かったが、ここまで来て引き返す訳にはいかない。
「イヴちゃん!」
ガードロボを飛び越え、壁を蹴り、ホシノが姿を現す。
向こうもガードロボに追われており、私たちは周囲を取り囲まれる。
まだ攻撃はして来ないが、その猶予に余裕はないだろう。
「まさか、ここまで来て引き下がる、なんて言わないよね?」
私とホシノは背中合わせのまま、周囲のガードロボの軍団と対峙する。
「──当然ッ!!」
ホシノの煽るような問いに、私は不敵に答える。
『──襲撃者と判断。攻撃、制圧します』
それを合図とするように、私とホシノは同時に地面を蹴った。
各々の武器を取り出し、ガードロボへと駆ける。
先ずは細かい敵を片付ける。
その為に、手榴弾を投擲する。
間もなく爆発し、ガードロボの群れを吹き飛ばす。
その隙に私は立ち上る黒煙に紛れ、攻め込む。
猟犬の耳でドローンの居場所を察知し、その方向へとミレニアム製試作型SRの銃撃を放つ。
このSRは、どうやら特殊な特性を持っているらしく、“神秘”と呼ばれているらしい。
重装甲の相手には効果が薄いが、それでもドローン程度の装甲ならば撃ち抜ける程度の威力は出せる。
四機程度のドローンを撃ち落としたところで黒煙が薄まりつつある。
チラリとホシノの方を見れば、シールドで銃弾を防ぎながら突撃しつつ、SGの範囲攻撃で次々と薙ぎ倒しているところだった。
向こうは問題なさそうだ。
こちらも早々に片付けるべく、風紀委員会から貸与されたARを握り、駆ける。
私が目指す先には戦車。
戦車と言っても、クルセイダーやマーケットガードの強化された戦車に比べれば小型だ。
戦車が砲口の狙いを定めるより早く、ARの斉射を叩き込む。
こちらは爆発の特性であり、重装甲にも効果が見込める。
無数の弾丸が装甲を撃ち抜き、戦車が小規模な爆発を起こす。
リロードしながら周囲に目を配れば、他にも戦車が二輌、吹き飛ばしたドローンや小型オートマタも補充されつつある。
向こうの兵器の貯蔵がどれほどのものかは不明だが、一個人が保有できる兵力には限りがあるはずだ。
──ふと、そこで違和感を覚える。
何かがおかしい。
歯車が噛み合わない。
警戒心の強いターゲット、警報、大量の兵器──。
迫り来る兵器の波の前で、私は思考を巡らせる。
そして、私は一つの結論に辿り着き、電流が走るような衝撃を受けた。
──その瞬間。
「イヴちゃん!!」
ホシノの叫び声が届く。
「ここは任せて!」
まるで示し合わせたかのような完璧なタイミング。
私が至った“答え”に合致する行動をホシノは取ってくれた。
「──頼む、ホシノ!!」
私が駆け出す直前、ホシノは背中を向けたまま顔半分で振り向き、不敵な笑みを浮かべてシールドを握る左手で親指を立てて見せた。
その様を見届け、私はホシノを信じて駆け出す。
私の行く手をガードロボが阻もうと立ち塞がるが、背後からの的確な銃撃がそれらを撃ち倒していく。
徐々に隙間が広がっていくガードロボの波の中を駆け抜け、私が辿り着いたのは、廃工場の中へ繋がっているであろうシャッターの前だ。
背後からしつこく追従して来るドローンや小型オートマタを撃ち落としながら、シャッターを破るべく手榴弾を投擲する。
間もなく爆発し、爆炎と衝撃が迸る。
かなりの強度があるようで、大きく歪み、凹んではいるものの、手榴弾でも僅かな亀裂しか生じていなかった。
手を切らないように慎重に隙間をこじ開け、内部へと侵入する。
廃工場内部は、コンクリートの床や壁が広がる格納庫のようなだだっ広い空間だった。
錆び付いた工具や経年劣化で割れたガラス、金属の作業台や椅子が転がっており、やはり人の気配は感じられない。
それでも間違いなく、ここに目的の人物がいるはずだ。
そして、私が先程気付いたのは、警報も大量の兵器も、私達の気を引き、目を眩ませる為のデコイに過ぎないということだ。
ターゲットは恐らく、警戒心が強いという推測を立てた。
それは、間違っていないと思われる。
ブラックマーケットの片隅に住居を構えていることがその証左だ。
そんな人物が、侵入者を撃退する為とは言え、あれほど大きな警報音を響かせるだろうか?
警告音声を発するだろうか?
大量の兵器も合わせて、自分の居場所を自分で教えているようなものだ。
そこから私は、それらの違和感は全て、ここの主が逃げる為の時間稼ぎの陽動であれば、辻褄が合うと気付いた。
そして今、その推測は真実であったと証明された。
「──あなたが、ブラックマーケットの裏の武器商人、いや、エンジニアということで良いかな?」
目の前の、いそいそと荷物をまとめ、逃げ出しそうな様子の一人の少女の姿によって。
少女は、長い黒紫の髪を一本の三つ編みに束ねた髪型で、その頭には作業中の目の保護の為だろう大きめのゴーグルを乗せており、はだけるように着ている、所謂つなぎと呼ばれる作業着、その下にはブカブカの割りには主張激しく膨らんだノースリーブのTシャツ、裾を捲り、白く細いくるぶしが露わとなった足下には厚底の安全靴を履いている。
頭上には、工具のスパナとハンマーが組み合わさったようなヘイローが浮かんでいた。
少女は、クマが浮かぶ垂れ気味の双眸を大きく見開き、八重歯が覗く口をあんぐりと開けた驚愕と困惑の表情を浮かべていた。
「──えっ!?あっ!なんで!?どうしてここにいるんですか!?ああっ、いや…そんなこと聞いてる場合じゃなくて…!どうしよう、どうしよう!?」
少女は顔を青くしたり、赤くしたり、百面相で身振り手振りと分かりやすく慌てふためいている様子だ。
取り敢えず落ち着かせる必要がありそうだ。
生徒と同じような少女であったことは驚きだが、今はそんなことを気にしている場合ではない。
少女を落ち着かせ、外の兵器を止めて貰わなくては。
「取り敢えず落ち着いて。私達はあなたに危害を加えるつもりは──」
「い、いいい言っておきますけど!な、何度、来られても、何を言われても!脅されても、私は
しかし、相手は完全にパニックに陥ってしまっているようで、私の言葉も声も届いていない。
気になることもあるが、今は彼女を落ち着かせることが最優先だ。
「大丈夫、大丈夫だから、落ち着いて。私の言葉を聞いて」
努めて優しく、柔らかく、穏やかに声を掛けながら、足を踏み出す。
だが、その行動が裏目に出た。
「ひぃっ!?そ、それ以上、近付かないで下さい!うぅっ…!そちらも引くに引けないという訳ですか…!こ、こうなったら、かくなる上は──!!」
少女は更に追い詰められたように慌てふためき、意を決して何かのボタンを押す。
私の背後、工具が散乱するコンクリートの床。
そこには、線が引かれている。
より正しくは、溝と言うべきか。
その溝に合わせて、床が開いていく。
嫌な予感を感じつつ、警戒する私の耳に少女の声が届く。
「ひ、ひひひっ…!
先程までの怯え切って慌てふためく様子は何処へやら。
少女は魔王の如き歪んだ笑みを浮かべ、言い放った。
魔王らしく、そのセリフには不穏な単語だらけだったが、床の隔壁はほぼ開き切っている。
腹を括り、どうにか少女に逃げられないように注意しながら戦闘をしなくてはならなそうだ。
開き切った隔壁の下から、何かが複数、飛び出して来る。
それは回転しながら、こちらに転がって来た。
私はそれらの軌道を見切り、紙一重で躱す。
回避は三回。
私の横を通り過ぎた回転する何かを目に捉える為、私は振り向いた。
私の目に映ったのは、自ら回転し、こちらへと狙いを定めつつある、直径一五〇センチ前後の
「《自律型追尾回転機》、《ホイールキャット》です!一度でも標的と定めた相手を何処までも転がり、何処までも追尾する!獲物を狙うネコのように!」
三つのタイヤ改め、ホイールキャットは、回転数を上げ、火花を巻き上げる。
だが、私の脳内はそれどころではなかった。
回転し、転がり、追尾する敵──そこから、最悪の記憶が掘り起こされ、忌まわしい悪夢が蘇っていた。
──ルビコン…技研都市…大橋…沼地…自律型の、破砕機…!!
その直後、私は自ずと、猟犬の耳と鴉の眼を全開にし、共鳴の幻視を発動させていた。
床を蹴り、一機の側面を取る。
共鳴の幻視で爆発特性を強化したARを斉射し、バランスを崩したところに全力の蹴りを叩き込み、吹き飛ばし、壁に激突させる。
「……へ?」
瞬く間に三機の内の一機が落ち、少女が気の抜けた声を漏らす。
その間に他の二機が私に狙いを定める。
だが、向こうが走り出すと同時に側面を取り、ホイールキャットは空を切る。
一機のタイヤがドリフトして方向転換しようとするが、それを私は許さない。
リロードし終えたARを側面に叩き込む。
バランスを崩し、回転数が落ちたところに先程と同じく、渾身の蹴りを叩き込み、壁に激突させる。
「ホイールキャットの弱点を即座に見破った…!?」
少女の狼狽えた声が耳に届く。
あのタイヤの弱点は、正面ではなく、側面に攻撃を打ち込む事だ。
最悪の記憶が呼び起こされる。
早く終わらせてしまおう。
残り一機となったタイヤが、まるで玉砕上等とでも言うかのように真正面から突っ込んで来る。
私はそれを容易く躱し、タイヤがドリフトして方向転換をする前に、手榴弾を投擲する。
爆発に巻き込まれたタイヤは横転し、動きが止まる。
私は倒れたタイヤに銃口を向け、トドメの銃撃を叩き込んだ。
何度も何度も、記憶の中の忌まわしい幻影を振り払うように。
火花を散らし、タイヤが動かなくなると、それを少女の方へと蹴り飛ばす。
「ひぃっ!?」
端から当てるつもりはなく、タイヤは少女の横を通り過ぎ、壁にぶつかって止まった。
少女は先程までの魔王然とした立ち振る舞いから一変、顔を青ざめさせ、再び怯えているようだった。
だが、もう優しく穏やかな手段は選んでいられない。
また同じようなヘンテコ兵器を繰り出される訳にはいかない。
私は床を蹴って一気に距離を詰め、壁際まで追い詰めると、逃げ場を塞ぐように壁に手を叩き付け、見下ろすように迫る。
「私の話、聞いてくれる?」
少女は暫し、呆然としていたが、やがて受け入れるようにその場にへたり込んだ。
「ひゃい…」
悪りぃ、これで終わんなかったわ()
はい、すいません。思ったより長引いてしまいました
次こそは終わります、終わらせます