ブルーアーカイブ -灰の翼-   作:空素

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パッチに続き、完全オリジナルのキャラクターが登場しましたが、皆さんに受け入れてもらえるか、不安です…。

……でも、それよりもずっと、楽しみです…。

…ハッ!?今何かに精神汚染されていたような!?


後日談:阿漕な情報屋と頑固な技師 4

へたり込んだ少女に外の兵器を渋々ながらも止めさせる。

 

これでホシノの方も大丈夫だろう。

直に合流して来るはずだ。

 

少女の方へと視線を向ければ、怪訝(けげん)な険しい表情をしていた。

それは敵愾心(てきがいしん)と言うよりは、不安や不審といったようなものに思えた。

 

私たちが何者であり、何を目的としているのか、自分は何をされるのか。

そういった気持ちが表れているように感じられた。

 

先ずは自己紹介でもして、少しでも警戒心を緩ませることにしよう。

 

「まずは自己紹介を。私は渡鳥イヴ。レイヴンとも呼ばれている。一応、連邦生徒会所属ではあるけど、シャーレの手伝いをしながら、傭兵紛いの仕事をしている」

 

取り敢えず、自分自身の身の上は明かすことにする。

少なくとも、ならず者でないことを明かせば、多少は警戒心も和らぐはずだ。

 

「…れ、れれれ連邦生徒会…!?…そんな良いご身分の人がなんで!?それにシャーレ!?噂の先生とかいう大人が居るところですよね!?しかもレイヴン、ですか!?そ、そんな肩書きで今度は私に何をさせたいんですか!?」

 

だが、その効果は今一つどころか逆効果だったようだ。

 

「い、言っておきますけど!そんな肩書きで権力を振り翳したところで私は屈しませんから!職権濫用反対!!」

 

逆に燻っていた敵対心を煽り、燃え上がらせてしまったようだ。

 

「…私に権力なんて無いよ。あるのは、暴力だけだ」

 

「ぼ、暴力反対!や、やっぱり力尽くで私に乱暴するつもりなんですか!?そ、それなら私も徹底抗戦の構えですよ!!」

 

──しまった…。

事実を述べただけのつもりが、逆に怖がらせてしまった。

 

「グルルルル…ガルルルルル…!!」

 

少女は完全に歯を剥き出しにして唸り、威嚇状態だ。

特に獣要素は見当たらないが。

 

少女は迂闊に手を出せば噛み付いて来そうな勢いだ。

 

どうしたものかと悩んでいると、背後から近付く気配を感じた。

 

「イヴちゃんお待たせ〜」

 

ホシノだった。

 

合流したホシノは特に怪我を負った様子もない様子だった。

どうやら私が少女に兵器を停止させるまでの間、無事に乗り切れたらしい。

 

ホシノは、私と唸る少女を交互に見比べた後、頬を掻きながら首を傾げた。

 

「えっと…どういう状況…?」

 

私はホシノに、これまでのことをざっくりと説明した。

 

「…なるほどねぇ〜。取り敢えず状況は把握したよ」

 

そう言うとホシノは敵対心剥き出しの少女に歩み寄る。

少女はホシノ相手でも、私の仲間という括りで敵対心を微塵たりとも緩めない。

 

「はじめまして。おじさんは小鳥遊ホシノって言うんだ〜。よろしくね〜」

 

ホシノは緩く、いつもの調子で何と言うことのない自己紹介をする。

 

「…小鳥遊、ホシノ…!?あなたがあの…?」

 

だが、少女の態度に変化が訪れた。

ホシノの名前を聞き、少女は威嚇をやめ、僅かに目を見開いた。

 

「うへ…おじさんのこと知ってるの…?」

 

ホシノにとっても予想外だったようで、不思議そうに首を傾げる。

 

それに対して少女は真剣な鋭い眼差しで床を見詰めている。

まるで、頭の中で過去を想起させているかのように。

やがて、ふと我に返り、そっぽを向く。

 

「…アビドスの小鳥遊ホシノ…い、一時期、その名前をよく聞いたというだけです。べ、別にあなたのことを詳しく知っているという訳ではありません、ごめんなさい…」

 

気持ちを切り替えるように少女はわざとらしい溜め息を吐き、私たちに顔を上げる。

 

「そ、それで、アビドスの副生徒会長とシャーレの番犬が私に何の用なんですか?わ、私はあなた方に目を付けられるような生き方はしていなかったと思うのですが…」

 

どういう心境の変化だろうか?

少女は先程までの頑とした非協力的な様子から一変、話くらいは聞いてくれそうな雰囲気にまで戻った。

 

「用があるのは私じゃないんだ。イヴちゃんだよ」

 

そう言ってホシノが引き下げると、少女は心底から嫌そうに顔を歪める。

…流石にそこまで露骨に嫌がられると私も傷付くのだが、それはさておき。

 

「…ところで、あの…貴女は私がどういった人間なのか分かっているんですか?」

 

確かに、向こうからしてみれば、面識のない相手が、自己紹介もしていないのに用があると言われるのは違和感しか無いだろう。

 

「…さっきも言ったが、技術者だろう?武器や兵器関連の」

 

「──その情報、何処から手に入れたんですか?」

 

……なるほど、そう来たか。

どう答えるべきか。

素直にパッチと答えてしまえば、パッチからの信用を失う。

 

かと言って、隠し続ければ今度は目の前の少女からの信用を得られない。

 

「……はぁ、まぁ良いです。どうせ、大方パッチさんでしょう。キヴォトス広しと言えど、私を知ってるのは彼くらいでしょうから」

 

少女はスッと目を細め、私と目を合わせる。

その眼光には、先程のような怯えは一切、感じられなかった。

 

「……ふむ、まあ及第点といったところですかね。咄嗟の出まかせも言わず、軽々しく口を開くこともなく、最低限の思慮は感じられました。貴女は多少は信用できそうです」

 

どうやら私は彼女に試されていたらしい。

見た目や言動によらず強かなようだ。

 

或いは、そうでもないと生きていけない環境で生きてきたのか。

 

何にせよ、これで要求を聞いてもらえる程度には信用を獲得できた。

 

「そ、それで、レイヴンさんは私に何を求めるんですか?何をして欲しいんですか?」

 

さて、ここからが本番だ。

取り敢えず、彼女を取引の席に着かせることには成功した。

 

だが、私はここから彼女に武器を作成してもらうべく、あわよくば、専属の技師になってもらえるように交渉しなくてはならない。

 

「……これは、肩書きに関係無い、私個人の依頼だ。貴女に私の銃を作って欲しい」

 

彼女を真っ直ぐ見詰め、私は願いを告げた。

相手もまた、私の目を見詰め返し、僅かな間を置いて口を開いた。

 

「……理解できません。何故、私である必要があるんですか?私の元ではなくても、銃なんてキヴォトスでは何処でも買えますよね?オーダーメイドにしても、専門のガンショップだってあるはず。レイヴンさんにとって、私にあって、それらに無いものはなんですか?」

 

パッチと同様の質問。

同じような答えでは、彼女は恐らく、納得しないだろう。

 

「……私には、このキヴォトスで為すべきことがある。その為には力が必要なんだ。その力の為に、どうしても通常の規格を凌駕する武器を作れる技師を探していた。それはきっと、貴女以外にはあり得ない」

 

規格を凌駕する武器は、ある意味ではエンジニア部も当てはまるが、彼女らを専属の技師にするのは色々な観点から見ても難しいだろう。

 

「……帰って下さい。私は、私の好きなように好きなものに打ち込みながら生活をしていたいだけです。生活を脅かすトラブルの原因になりそうな面倒事は御免です。他を当たって下さい」

 

話はこれで終わりとでも言うように、少女は私から視線を外し、背を向ける。

 

だが、ここまで来て、諦めることは出来ない。

 

「…面倒事は御免、か。そう言えばさっき、()()()()()()()()()()()()()()()って言ってたな?誰かにスカウトでもされてるのかな?」

 

私の指摘に対し、少女はゆっくりと振り返る。

心底から億劫そうに、少女は口を開いた。

 

「…マーケットガードの人達に、兵器の提供を迫らせているんです。それがしつこくてしつこくて…。逃げ回っている内に、こんな奥地で暮らす羽目になっているんですよ。まあ、今となっては、此処も気に入ってますが」

 

なるほど。

そうなると、外の警報及び迎撃設備は、そのマーケットガードに対するものだったのだろう。

 

「それなら提案がある」

 

彼女の話を聞き、活路が見えた。

 

「私に協力してくれれば、マーケットガードから保護してあげる。何なら、あなたの為の拠点を用意することも(やぶさ)かじゃない」

 

シャーレへの寝泊まりが判明してから、新しい拠点となる住宅の賃貸や購入も提案されていた。

カイザーの口止め料込みの報酬金は羽振りがよく、更には風紀委員会からの依頼も悪い金額ではない為、一括払いは厳しいが、ローンを組めば、買えないこともない。

 

だが、これまでは自分一人の為にわざわざ買うほどのことでもないと渋っていたが、同居人がいるのであれば話は別だ。

 

ましてや、私専属の技師となれば尚更だ。

 

私の提案に、少女は背を向けたまま思案しているようで、表情は窺えない。

 

「…それはつまり、あなたの専属エンジニアになれ、ということですか?」

 

少女は背を向けたまま、疑問を投げかける。

 

本来は、武器を作ってもらうだけの依頼だったが、私の出した提案に則れば、彼女の言う通りだ。

 

「…そうだな」

 

何か嫌な予感を感じながらも、私は肯定するしかない。

 

「それでは、拠点となる住居及び施設は、そちらの負担という認識で宜しいですね?」

 

私が招き入れるのだし、私が負担するのが道理、だろう…。

多分…。

 

「それは…そうなるな?」

 

痛い出費ではあるが、その結果、専属技師ができるのであれば、安いもの、なのかもしれない。

 

「三食おやつ昼寝付きですよね?当然」

 

肩越しに振り返った少女の顔には、先程の魔王然とした歪んだ笑みが浮かんでいた。

 

「……うん…」

 

やられたと分かっても、もはや、今の私に拒否権はなかった。

 

「そーですか、そーですか!まあ、それならば良いでしょう!取引成立です!」

 

これまでにないほどの満面の笑顔で振り返った少女は、嬉しそうに両手を合わせ、頬に添えた。

 

「そうと決まれば、引越しの準備をしておきますね!あ、地下室のある物件でお願いしますね!ウフフフ、楽しみですねぇ!」

 

少女は意気揚々と壁際の床の一部を引っ張り上げ、その下に続く階段を降りて行った。

どうやら、地下に彼女の仕事場と居住スペースがあるようだ。

 

それを呆然と眺めていると、隣にホシノが近付き、私の肩にそっと手を置いた。

 

「イヴちゃん…カモられてたよ…」

 

その声は、私を慰めるように優しいものだった。

 

「…やっぱり…?」

 

虚空を見詰めながら、今後に掛かりそうな経費を見積もり、貯蓄と照らし合わせる。

 

これまでは一日一依頼で悠々自適生活を過ごしていられたが、今後は仕事量を増やさなくてはならないかもしれない。

 

「カモだなんて人聞きが悪いですね!」

 

すると話を聞き付けた少女が開いた床からひょっこりと顔を出す。

 

「その分、頼まれた仕事は出来る範囲であればきっちり(こな)します!これでも技術者としての誇りと矜持は持ち合わせていますから!!それと──」

 

少女は階段を上がり、再び私の前に立った。

 

「私は、《レンカ》!固城(こじょう)レンカです!これからよろしくお願いしますね、レイヴン♪」

 

新しい拠点を前に浮き足だってテンションが上がっているのだろう。

少女改め、固城レンカは、最初に出会った時の挙動不審な怯えっぷりが嘘のように鳴りを潜めていた。

 

*****************************

 

一先ず、すぐには拠点は用意できないので、今日のところは私たちは帰ることとなった。

 

いつでも連絡が取れるように連絡先だけ交換し、私とホシノは夕暮れに染まりつつある空の下、帰路に着いた。

 

途中、何度か不良連中に絡まれたりもしたが軽くしばき倒し、ブラックマーケットを出る頃には夜の帳が下りていた。

 

「それじゃあ、私はこの辺で〜」

 

「うん、ありがとうホシノ。お蔭で助かったよ」

 

「良いよ、これくらい。イヴちゃんには助けられてばっかりだからね〜」

 

「そんなことないよ。ホシノも、何か困ったことがあったら、いつでも言ってくれ」

 

「イヴちゃんも、一人で突っ走っちゃダメだよ〜?」

 

「それはお互い様だな」

 

「うへ〜、またノノミちゃんやアヤネちゃんに怒られないようにしないとね〜」

 

「みんなにもよろしく言っといて」

 

「うん、わかった。新しい家が出来たら教えてね。みんなで遊びに行くからさ」

 

「勿論。それじゃあ、この変で」

 

「うん、お疲れ様〜。じゃあね〜」

 

私とホシノは別れ、各々の家路に着くのだった。

 




はい、これにて後日談も完結となります

そして、当作品のオリジナル生徒、固城(こじょう)レンカちゃんのお披露目回でした

エンジニアというか、技術者というか、そういった人物は頑固で職人気質なオヤジキャラクターにされがちですが、作者なりにそれをキヴォトスフィルターで美少女に落とし込んだらこうなりました

詳しい情報は次のファイル回でパッチ共々、紹介させて頂きます

何はともあれ、これで心置きなく、パヴァーヌ編に入っていけます!
そちらでもよろしくお願いします!!

では、また次回!
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