ブルーアーカイブ -灰の翼-   作:空素

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あらすじ

変異コーラル侵食体、再び

二章では大人しいと思った?
残念!絶賛レイヴン抹殺計画進行中だよ!


EP-6 亡霊

「やばいやばいやばいやばい!どうなってんのこれぇ!?」

 

モモカはモニターの前で慌てふためいていた。

突如として通じなくなったレイヴンとの通信、そして、レイヴンの様子を確認していたモニターは全て、赤黒いノイズで画面が見えなくなってしまっていた。

 

「んも〜!面倒事に巻き込まれるのは勘弁なんだってばー!」

 

色々と操作を試してみるが、どういう訳か機器の類いは全て、正常に動作していることを示している。

これでは、どうする事もできない。

故障を示してくれた方がマシだった。

 

「取り敢えず、こんな時は──」

 

モモカは上着のポケットに手を突っ込み、携帯端末を取り出す。

 

「責任を“上”に押し付けるに限る!!」

 

端末を操作し、ある人物へ通話をかける。

モモカが心から信頼し、尊敬している人物。

 

「あ、リン先輩!実は今、かなりヤバいことになってて──」

 

*****************************

 

『……』

 

『…さぁ、レイヴン、試させてもらいましょう』

 

『今回の貴女の相手は、変異コーラルの侵食率200%。一個体が保有できる臨界点を超えた夥しいコーラルに深く深く、蝕まれたモノです。私はコレを《深蝕体》──或いは《黒化体》と呼んでいます』

 

『ルビコンのコーラルは、非活性化することで、結晶化する性質を持っていました。ですが、この変異コーラルは真逆…活性化することで結晶化し、その内部にコロニーを形成します。言わば、その結晶はコロニーを守護する外殻という訳です』

 

『それだけではありません。“ソレ”には特別な()()()をさせていただきました』

 

『この戦いは、対レイヴンを想定した私の計画(プラン)、その足掛かりとなるものです』

 

『この程度の相手で貴女を殺せるとは思っていません。貴女は、その程度の存在に収まる器ではない。貴女は、尋常の理から外れた存在』

 

『──例外(イレギュラー)

 

『私はそれをよく知っています。“あの星”で、ずっと(そば)で見てきましたから』

 

『貴女に、何処まで通用するのかは分かりません。ですが…いえ、だからこそ、私は、手段を選びません』

 

『貴女を殺す。その時まで──』

 

*****************************

 

ノイズ混じりの不協和音の咆哮を上げ、スイーパー集合体のコーラル侵食体が飛び掛かってくる。

 

全身から黒い結晶を無数に生やしたその姿は、以前にも増して禍々しく、悍ましい。

以前、ルビコンにて、不活性化して結晶化したコーラルを見たことがあった。

ウォルターはそれを指して死んだコーラルと言っていた。

 

だが、目の前のこれは寧ろ、生を迸らせ、心臓のように鼓動を打っていた。

色合いもより黒く、深く、まるでその色合いは光すら飲み込む深淵の闇が固形化したようにさえ見える。

 

右腕に比べて左腕の結晶がより顕著に肥大化しており、あれに殴られればただでは済まないだろう。

加えて、この場所は無制限に移動が出来る場所ではなく、範囲が限られた橋梁の上だ。

落下の危険にも意識を割く必要がある。

 

あとは、こいつに対して、どれだけ“残り火”の力が通用するか。

 

振り下ろされた腕を躱す。

黒い結晶は鋼鉄の床に叩きつけられてもびくともしていない。

かなりの硬度を有しているようだ。

だが、先程まであった電撃の追撃は無さそうだ。

 

回避してすぐに、真紅の火を付与したアサルトライフルの連射を見舞う。

取り敢えず、全体的に浴びせてみるが、真紅の火は黒い結晶の表面を僅かに焦がすだけだ。

まばらに撃っては、ダメージの通りが悪そうだ。

 

続けて、黒い結晶を生やしたスイーパーの侵食体──長いので今後は《黒の機獣》と呼ぶことにするが、黒の機獣はより結晶が発達した左腕を薙ぎ払ってくる。

 

薙ぎ払われた腕を後方宙返りで躱し、残り少ない手榴弾を頭部に投げ付ける。

手榴弾は顔面で爆発し、黒の機獣の動きが止まった。

そこへ、持ち替えたスナイパーライフルで狙い撃つ。

標的は、胸部から生えている一際大きな結晶。

SRに真紅の火を付与し、一発、発射する。

放たれた銃弾は真紅の軌跡を残し、胸部の結晶に吸い込まれて行き、着弾して一際大きな真紅の爆発を起こす。

 

更に続けて、ハンドガンの速射をSRの狙撃が着弾した一点に叩き込む。

無数の爆発が重なり、更に大きな爆発を引き起こす。

 

やはり、神秘特性の銃に共鳴の幻視や“残り火”などのコーラル特効を付与すると威力が高くなっている。

今は一先ず、これが疑念から確信に変わっただけで十分だ。

()()()()()()が神秘で高まっているのか、それともコーラル特効の効果に神秘が加算・乗算されているのか。

そういった詳細は追々、突き詰めれば良い。

 

ピシッという音が、耳に届く。

思った通り、黒い結晶は一点集中の攻撃には耐えられないようだ。

このまま行けば、あの胸部の結晶は破壊出来るだろう。

 

問題は、その結果、何が起こるか、どれだけダメージを与えられるか、というところか。

だが、今は結晶の破壊を目指すしかない。

 

黒の機獣もやられっぱなしではいられないようで、不快な雑音の咆哮を上げて、結晶の爪で引き裂こうとしてくる。

 

範囲と威力は恐ろしい。

だが、その攻撃はいずれも大振りであり、また鈍重だ。

容易く見切ることができる。

 

それよりも私が気になるのは、黒の機獣の声が、少しずつ変化していることだ。

最初は金属を引っ掻いたような甲高い音とノイズが混ざったものだった。

今は、ノイズは相変わらずだが、金属音が変化しつつある。

それは何処か、生物というか、動物、更には人間めいて来ている。

ノイズ混じりの、人のようでいて、人ではない者の無数の声が重なった不協和音。

 

それは何処か不気味であり、不快感を通り越して恐怖或いは狂気さえ感じさせる。

 

エアが何を企んでいるのかは知らないが、碌なことではないだろう。

彼女が何を生み出そうと、私はそれを全て破壊し尽くすだけだ。

 

黒の機獣が両手を組み、ハンマーのように振り下ろす。

結晶が棘の役割を果たし、その凶悪な姿は最早、モーニングスターだ。

 

飛び退いて回避し、攻撃後の無防備な隙に、胸部の結晶にSRの狙撃を撃ち込む。

派手に爆炎が迸り、先程よりも大きく、ビシィッという亀裂の音が耳に届いた。

 

もう少しで壊せる。

だが、私もまた、背面に壁を背負い、壁際に追い込まれつつある。

これ以上、後ろに逃れることはできない。

 

黒の機獣の横を通り抜け、背後に逃れる必要がある。

 

背水の陣、だが、私は一切の焦りも感じていない。

 

黒の機獣が、大きく左手を振り上げる。

このまま振り下ろし、私を叩き潰すつもりなのだろう。

 

──その攻撃を待っていた。

私は、ガラ空きになった懐に飛び込み、胸部の結晶に、至近距離で真紅の火を付与したショットガンを浴びせた。

 

無数の弾丸が結晶に直撃し、コーラルに反応して爆発を起こす。

そして、その爆発は、ヒビ割れた結晶を破壊するには十分過ぎる威力だった。

黒い結晶が爆発と共に砕け散り、黒の機獣は悲鳴の絶叫を上げ、よろめく。

 

その隙に私は黒の機獣の股下を潜り抜け、背後に逃れる。

更には置き土産に手榴弾を足下に転がして追撃し、背中を向ける黒の機獣の背中にSGの残弾を全て浴びせる。

手榴弾の爆炎に真紅の爆炎が混じり、黒の機獣を焼く。

 

黒の機獣は砕けた結晶の部位を庇うように右手で押さえながら振り向いた。

 

私は消費した分の弾丸をリロードしつつ、相手の出方を窺う。

 

その直後だった。

 

『グウッ…クソッ、オレハモウマケラレナイ…!()()()()()()、マケルワケニハイカナイ…!!』

 

声。

人の声だった。

僅かにノイズが混じっているが、紛れもなく、人間の声だった。

 

しかも、その声に私は聞き覚えがあった。

 

『オレノ()()()()()()()()()()()オマエヲタオシテ、オレハモウイチド、レッドガンニナルンダ!レイヴン!!』

 

私がルビコンに訪れ、傭兵業を営み始めた頃。

アーキバス系列企業のシュナイダーの依頼で、ベイラムの同盟企業、大豊核心工業集団の導入したテスターACの撃破を請け負った時の、パイロットと同じものだった。

私は、そのテスターACを撃破し、そのパイロットである彼もまた、命を落としたはずだ。

 

そう、彼は死んでいるはずなのだ。

このキヴォトスから色んな意味で遠く離れた辺境の惑星、ルビコンの地で。

 

「……ッ」

 

私は目を閉じる。

そして、意を決して黒の機獣を見据える。

 

エアがどんな手を使ったのかは分からない。

だが、このパイロットは、()()()()()()()()()()()()だ。

私がこの手で再び、眠らせてあげなくてはならない。

 

黒の機獣は先程のダメージからか、それともパイロットの意識のせいか、動きが鈍い。

一気に決める。

 

私は地面を蹴り、黒の機獣に突進する。

真紅の爆発を伴う突進は、一瞬にして黒の機獣に肉薄させる。

 

黒の機獣は私を振り払うように腕を振るうが、私はその下を潜り抜ける。

 

結晶が砕けた胸部は、その下の血管のような模様が露出していた。

そこを狙い、SGを浴びせる。

派手に爆発が起き、黒の機獣が再びよろめく。

 

『グッ…ウゥッ…マタオマエハオレヲコロスノカ!?アノトキトオナジヨウニ!オマエタチノカッテナツゴウデ!イノチヲフミニジルノカ!?』

 

抗うように、拒むように、黒の機獣は爪を振るう。

 

「……」

 

クイックブーストの要領で加速しつつ横に逸れて爪を躱し、再度、懐に飛び込み、ARの連射を叩き込む。

これまでの蓄積したダメージによるものか、半身を包み込む程の爆発が起き、胸部周辺の結晶まで砕け散る。

 

かなりのダメージを与えたのだろう。

黒の機獣はバランスを崩して尻餅を突いた。

胸部の結晶は広範囲が剥がれ落ち、その下の脈動する血管の模様が浮き彫りになっている。

 

『ハァッ…ハァッ…!クル、シイ…!イヤダ…モウ、シニタク、ナイ…!オレモ、オレダッテ…レッドガンニナリタカッタ…!ソレナノニ、ドウシテ…?』

 

黒の機獣は最早、私を見てはいなかった。

尻餅を着いた体勢で、空を見上げていた。

 

そこへ、私は歩み寄る。

 

「──貴方の言う通りだよ」

 

言葉を投げかける。

 

『…エ…?』

 

黒の機獣が、顔の無い頭部を私に向ける。

 

「貴方は何も悪くない。貴方が死ぬのは──死んだのは、私のせい。私が、私の目的の為に必要だったから殺した。悪いのは、私」

 

私があの時、彼が乗ったACを撃破しなければ、彼はレッドガンになれたのかもしれない。

もしかしたら、コールサインG(ガンズ)13は、彼のものになっていたのかもしれない。

 

「そして今、貴方がこうして苦しんでいるのも私のせい。また殺されるのも、私が悪い。でも、もう苦しい思いはさせない」

 

しかし、彼は死んだ。

私が殺した。

そして再び、こうして蘇っているのも、例えエアの仕業だったとしても、結局は私が原因だ。

 

「貴方はただ、眠るだけ。もう戦う必要も、苦しむ必要も無い。私が、眠らせてあげる。送ってあげる」

 

エアが私を倒す為に行っている非道な実験なのだとしたら、私が眠らせなくてはならない。

それが、私にできる、せめてもの手向けだ。

 

『……メザメテカラズット…ネムインダ…ソレガコワクテ…コワクテ…オレヲ…ネムラセテ、クレルノカ…?』

 

「ああ、貴方はもう、十分苦しんだ。──終わりにしよう」

 

『…ソウカ…ソレナラ、キミニマカセヨウ…レイヴン…』

 

黒の機獣が再び動き出す。

だが、そこには最早、意思と呼べるものは宿っていない。

 

ただの条件反射で目の前の存在に襲い掛かるだけの獣。

 

獣が腕を振り上げる。

だが私は、その下でHGを構え、ただ剥き出しの胸部を撃つ。

 

一発一発が着弾する毎に爆発が起き、獣が怯み、行動が中断される。

HGを撃ち尽くせば、次はSGの散弾を浴びせる。

黒い結晶という装甲が剥がれた胸部は、剥き出しの肉に等しい。

その全体に散弾が着弾し、爆発し、続けてコーラルの自爆現象が全身を焼き尽くす。

 

獣は最早、動くこともままならず、その場に膝を突き、項垂れる。

 

「…これで、終わりだ」

 

私は獣の胸部にSRを突き付け、引き金を引いた。

真紅の火が爆ぜる。

爆ぜた火は、スイーパーの集合体に根を張るコーラルを伝い、燃やしていく。

それは全身に伝染し、まだ破壊していなかった結晶を内側から昇華させる。

コーラルの根によって形を保っていたスイーパーも崩れ始め、完全に獣が滅びつつあることを示していた。

 

『…あり、ガ…とう…』

 

コーラルを燃やしていく炎の中、彼の声が聴こえた気がした。

 

“歯車”と“残り火”を解除する。

辺りはすっかり、夜の帷が降りていた。

 

結局、私は戦い、殺すことしか出来ない。

それでも、私はその者との戦いと命を糧とし、遺志を継いでいく。

それが祈りであろうと、例え、呪いであろうと。

 

それが、主無き、首輪が外れた猟犬である私の“狩り”だ。

 

『──レイヴン!無事!?』

 

コーラルによるジャミングが解けたのだろう。

インカムからモモカの声が届く。

その声からは意外にも焦燥が窺うことができた。

 

「あぁ、私は大丈夫だ」

 

モモカも案外、冷たいようで誰かの心配をすることができるようだ。

 

『良かったー…レイヴンに何かあったら──私の責任問題になっちゃうからねー。ふぅ、安心安心(パリパリ)』

 

・・・どうやらそうでもなかったらしいん

 

『イヴさん、無事なようで何よりです』

 

次に聞こえて来たのは意外にも七神リン──先輩の声だった。

どうやらモモカはリン先輩を頼っ──いや、さてはアイツ、ぶん投げたな?

 

『モモカに急に通信が途切れて画面が何も見えなくなったと聞きまして……何があったんです?』

 

「それについては、結構長くなりそうなんだ。一先ず、ここを出てからで良いか?リン先輩」

 

『はい、では、帰投して──え?先輩…?』

 

『コイツ…私は呼び捨てのクセに…(パリッ)』

 

インカムの通話を切り、私は周囲に意識を向ける。

周囲に満ちていたコーラルはいつの間にか消え去り、その残滓すらも感じ取れなくなっていた。

 

“ルビコンの亡霊”。

死者の復活とも呼べる、この現象については、間違いなくエアが関わっていることだろう。

そして、それには必然的にコーラルも。

 

死者への冒涜だとか、生命を愚弄する行為だとか、そんな高尚な説法を説くつもりはない。

そもそも、傭兵は血に塗れた稼業だ。

そんなもの端から持ち合わせてはいない。

 

私が感じているのは、変異コーラルの脅威性だ。

直接的ではないにせよ、結果的に死者が何らかの形で復活している。

こんなことすら可能とする変異コーラルの潜在能力。

 

間違いなく、エアは何かを生み出そうとしている。

私もそれに備え、力を蓄えなくてはならない。

何を生み出そうと、それを叩き伏せられる力を。

 

だが、今は一先ず、帰って休むことが先決だ。

 

今回は思いがけない強敵の出現によって、“歯車”と“残り火”を使うことになってしまった。

幸い、“追憶”を燃やすことは無かったが、これによりきっと、“猟犬”は再び私の代償を肩代わりすることになっただろう。

 

それが彼らに何を齎しているのか。

私は問い詰めなくてはならない。

もう一人の私である、“レイヴン”を──。

 

*****************************

 

『……』

 

『…ふむ…やはり、素体が素体なだけに、レイヴンに対しては大した脅威にはなり得ませんでしたか…』

 

『ですが、試作品の試運転としては上々でしたね。様々な実戦データを得ることができました』

 

『あとはこれの精度と角度を高めていくだけです』

 

『…レイヴン、貴女は私の計画(プラン)を前に、どれだけのものを見せてくれますか?』

 

*****************************

 

「いやぁ〜、ホントに無事で良かったよレイヴン!うんうん!(パリパリ)」

 

帰還した私を出迎えてくれたのは、満面の笑顔で菓子を貪るモモカだった。

 

「…お前には組織のトップの素質があるよ」

 

たっぷりの皮肉を込めて、そう言ってやった。

 

「えー、褒めてくれるのは嬉しいけど今の地位で十分に満足しているから良いや〜(パリパリ)てかついにお前呼びかい」

 

互いに睨み合っているところに、二つの気配が近付いてくる。

 

「イヴちゃん、無事で良かったです」

 

一人はアユム先輩、それから。

 

「イヴさん、ひとまず、お疲れ様でした」

 

面と向かっては久し振りのリン先輩だ。

 

「アユム先輩、リン先輩、ただいま戻りました」

 

安堵した様子のアユム先輩に対して、リン先輩は落ち着かない様子。

先輩付きで呼ぶのはさっきと今は初めてだから無理もない。

 

「わたしには〜?ねぇ〜ねぇ〜、わたしにはぁ〜!?」

 

コイツは論外。

というかほぼ同期みたいなものだろうに。

そんなに先輩呼びされたかったら威厳を見せて欲しいものだ。

あと身長も伸ばすべき。

 

「あっ!今私のことチビって思ったでしょ!?」

 

なんでこんなに鋭いの?

 

「思ってないよ」

 

にっこりと微笑んで頭をぽんぽんと軽く叩いてやった。

 

「言動が!伴って!ないんだよっ!!」

 

両腕をぐるぐると振り回すが、片手一本で頭を押さえてやるだけで当たらない。

 

「あの、イヴさん?そろそろ良いでしょうか?」

 

「ああ、モモカがすいません」

 

「お前が言うなぁ!!」

 

そんなやり取りをしつつも、私は今日のことを大まかにリン先輩に報告した。

 

コーラルについては先生が以前に連邦生徒会に報告書として上げてある。

その情報についてはある程度、共有されており、話は早かった。

 

「変異コーラル侵食体の新しい形態と、不自然な人格、ですか…」

 

とは言え、ルビコンのことやパイロットの彼のことまでベラベラと話せる訳もなく、謎の人格が宿っていたと、ぼかして伝えた。

 

「…何かあれば、シャーレ経由でも私に直接でも良いから教えてくれ。まあ、とは言っても、相手の狙いは私だから、私がいない場所で何か起こるとは思えないが…念の為、な…」

 

何かがあってからでは遅い。

最低限の情報共有は必要だろう。

備えられることには備えていきたい。

 

「分かりました。情報共有ありがとうございます、イヴさん」

 

リンは端末に情報をまとめたようで、作業が終わったところで顔を上げた。

 

「いや、こちらこそ。忙しい中、仕事を増やしてしまってすまない。先生には私から伝えておく」

 

「それは助かります。よろしくお願いします」

 

報告を終え、私はサンクトゥムタワーを後にした。

 

宵闇の中、ふと空を仰げば、星空の中に月が浮び、静かな淡い光を降らせていた。

 

月明かりが注ぐ中、私はシャーレへと夜の街を駆けるのだった。




これにて特別依頼編終了となります

次回からは再び本編に入っていきます

特に理由はないけど、モモカとアユムを出したかったんや…
特に理由はないけど!!
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