ブルーアーカイブ -灰の翼-   作:空素

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あらすじ

変異コーラル侵蝕体(第四段階)撃破

早くも第二章も佳境に差し掛かったところですかね?
パヴァーヌは一章と二章が分かれてますからね
どうしても短くなってしまいます


EP-7 ゲーム開発部護衛依頼-ALT

特に強く意識していた訳でもない。

 

その時が来るまで、じっと耐える覚悟もしていた。

 

だが、思いの外、あっさりと望みは叶った。

 

私は再び、眠りの中で“レイヴン”に夢に招かれた。

 

(お前)が望んでいたことだろうに、随分と驚いてるじゃないか」

 

眼を開けたところで目の前に立っていたのは以前と同じ姿の“レイヴン”。

 

「……“レイヴン”はてっきり、拒否すると思ってた」

 

前回、“猟犬”について訊ねた時、“レイヴン”ははぐらかした。

そこから私はてっきり“レイヴン”は“猟犬”について、隠そうとすると思っていた。

 

「拒否も拒絶もしないさ。それがお前()()()ならな。知りたいんだろ?“あの人たち”について。生半可な知識欲じゃなく、()()を持って、知ろうとしているんだろ?」

 

「……」

 

“猟犬”は、本来、私が受けるべき代償を肩代わりしている。

肉体機能の損耗と記憶の喪失。

それによって、私は今以上にダメージを負っているハズだった。

それでも、私は戦う。

戦ってみせる、そのつもりだった。

 

だが──。

 

「“あの人たち”はそれを良しとしなかった。それは何故だろうな?」

 

「…分からない…」

 

“猟犬”が何故、私を庇うのか。

私と彼らは、ほとんど面識がない。

それなのに彼らは、私を代償から遠ざけている。

 

「分からない?本当に?」

 

“レイヴン”が問う。

それはまるで、自身は何かを知っているかのように。

何らかの“答え”を得ているかのように。

 

「…私だったら、自分で戦うから。目的の為なら例え、親しい者を犠牲にしてでも──」

 

「だが、その自分が死んで、戦うことができないとしたら?」

 

“レイヴン”の言葉に、私は眼を見開く。

彼女の顔を見れば、複雑な、困ったような、呆れたような笑みを浮かべていた。

 

「“あの人たち”は、“あの人たち”なりに、為すべきことを為しているだけだ。ウォルターの忘れ形見であるお前に対してな。お前の為すべきことがそのまま、“あの人たち”の為すべきことに繋がっている。だからお前を助けているんだ。その身を犠牲にしてもな」

 

“レイヴン”の言葉が終わると同時に、“猟犬”が私の傍に現れ、寄り添う。

その機械仕掛けの身体は、錆に蝕まれ、動きもぎこちない。

 

「……」

 

私は膝を突き、その身体を優しく撫でる。

言葉は無くとも、その意志は伝わってきた。

 

“あなたは私たちとは違って生きている”

 

“その身体を大切にして。喪っても良いだなんて、思わないで”

 

“私たちがいる内は、あなたの身を代償には冒させない”

 

“私たちはいずれ消える運命。それに代償は関係ない”

 

“私たちは死人だから。それでも、それまではずっと、あなたの傍にいるから”

 

“いつでも…”

 

「……ありがとう…」

 

最後に優しく撫でてやり、私は立ち上がった。

 

「…“レイヴン”」

 

「なんだ?」

 

「主を失った猟犬は、どうなるか、考えたことはある?」

 

「……」

 

“レイヴン”は、それが何を意味しているのか、聞いては来ない。

ただ無言で、続きを促す。

 

「首輪からは解き放たれた。でも、もう暖炉を付けて家を温めてくれたり、餌を与えてくれる人はいない。そんな猟犬は、何処へ向かうのか」

 

以前にも考えた。

屍肉を貪る野犬に成り下がるか、それとも、爪牙を研ぎ、獲物を狩る狼となるか。

 

「…はっ、さぁな。私は鴉だから知らないな」

 

“レイヴン”は下らない問答とでも吐き捨てるように鼻で笑う。

 

「…そうだよね」

 

“レイヴン”は、私が言わんとしていることを理解している筈だ。

その上で、敢えてはぐらかしているように思える。

“答え”は自分で見つけろ。

そう言う事なのかもしれない。

 

「…だが、こんな話は聞いたことがあるか?」

 

目覚めが近いのか、視界が白み始める。

 

「何?」

 

意識が遠のいていく中、“レイヴン”の声が響き渡る。

 

「鴉は、狼を友とし、狩りをする。鴉が狼を獲物の元に導き、狼が仕留めるんだそうだ」

 

それはまるで──。

 

「……」

 

いや、その先は口にしないでおこう。

あり得たかもしれない未来。

だが、そうはならなかった。

 

決して、並び立つことはなかった、夢幻だ。

 

「私としては、お前(猟犬)が、(狩人)となってくれることを願う」

 

だからこそ、“レイヴン”は求めるのだろう。

戦場で共に並び立つ、友となる存在を。

 

「…覚えておくよ」

 

視界がホワイトアウトしていく中、足元の“猟犬”が寄り添う感覚だけは、ずっと変わらなかった。

 

“彼ら”はきっと、これからも私の傍に寄り添ってくれるだろう。

 

その身が滅びる、最期の瞬間まで──。

 

****************************

 

瞼の裏に光を感じ、私は目覚めた。

 

心地良い目覚めだった。

爆発に叩き起こされることが日常になると身構えていたのだが、どうやらアイツ(レンカ)にも多少の自制心はあったらしい。

 

枕元の携帯端末に手を伸ばし、連絡を確認する。

そこには──。

 

「…ふふっ…」

 

思わず噴き出しつつも、私は急いでベッドから飛び降りる。

シャワーを浴びて身だしなみを整え、着替えた後、レンカに今日の予定について連絡を入れる。

今日はもしかすると遅くなるかもしれない。

 

作業中か、それとも寝ているのか、既読はすぐには付かないが問題ない。

元々。一人暮らししていたこともあって、意外にもアイツは家事が出来る方だ。

腹が空けば勝手に食べて片付けるし、風呂にも入るし、洗濯もする。

ただし、タイミングはかなり気分次第だが。

介護しなくて済むのは気が楽だ。

 

武装に関しては、場所が場所だけに何が起こるか分からない。

入念に準備する。

実際、昨日は不測の事態が発生した。

二日連続は勘弁願いたいが、私には備えることしか出来ない。

 

必要最低限のメンテナンスは昨晩の内にしてある。

レンカに頼むこともできたが、彼女には私が借りている風紀委員会の銃に代わるものを造ってもらっている。

今はそちらに専念して貰いたい。

 

・・・覗く度に関係なさそうな兵器や爆発物の試作を行っていたりもしているが、これに関しては期日を設けていない私にも問題があるだろう。

だが、ハンドガンの出来からして、彼女は間違いなく優秀な技師だ。

きっと、頼んだ仕事はきっちり(こな)してくれるだろう。

 

武装の準備も整い、私は家を出る。

向かうはミレニアム。

そして、今回の依頼は、ゲーム開発部だ。

 

先程、携帯端末を確認したが、そこにはモモトークからの通知が届いていた。

見てみればそこには、モモイ、ミドリ、ユズ、アリスからのメッセージが届いていた。

 

『イヴさん、おはよう!アリスのことはどうにかなったんだけど、結局、G.Bibleが必要になっちゃったから廃墟に行くことになっちゃって…。良かったらまた一緒に来てくれないかな!?』

 

『イヴさん、おはようございます。朝早くにすみません。お姉ちゃんから連絡が行ってると思うけど、一応、私からもお願いさせてください。廃墟の探索に、同行してくれませんか?どうかよろしくお願いします!』

 

『イヴさん、おはようございます。朝早くにいっぱい連絡しちゃってすみません。G.Bibleがどうしても必要で、廃墟に行かなきゃいけないんです。私も一緒に行きますが、お手は煩わせません!でも、どうか力を貸してください!』

 

『イヴ、おはようございます!私たちのギルドハウスを守る為に必要なアイテムを入手する為に、あのダンジョンにみんなで行くことになりました!でも、私たちだけでは推奨レベルを満たしていないので、攻略するにはイヴの上級ジョブの力が必要です!私たちのパーティーに入って、一緒に冒険してくれませんか?』

 

そしてついでに、先生からも。

 

『[“多分、ゲーム開発部のみんなから連絡が行ってると思うんだけど、G.Bibleが必要でまた廃墟に行かなきゃいけないみたいなんだ。きっと、またイヴの力が必要になると思う。だから、どうかあの子達のお願いを聞いてはくれないかな?ほ、報酬は何とかして出すからさ…”]』

 

前回はG.Bibleを見つけることが叶わず、アリスを見付けて撤退するという流れだった。

だが今回は、今度こそ正真正銘、G.Bibleを求めての《廃墟》探索。

そして、同行者も増え、新たにユズとアリスが加わっている。

 

前回の《廃墟》探索では、護衛という事だったが、意外にもモモイとミドリは戦えていた。

一人ずつでは足りないところも、二人で力を合わせることで、互いに補い合っていた。

 

「…ふむ…」

 

一つ思い付いたことがある。

それを早速、先生にメッセージとして送る。

すぐに既読が付き、返事が返ってきた。

 

『[“えっ!?それって大丈夫なの!?”]』

 

適当に返事を返し、アプリを閉じると、私は端末をしまう。

そして、ミレニアムへと、駆け出した。

 

****************************

 

道中で軽く朝食を済ませつつ、ミレニアムに到着すると、既にゲーム開発部の全員と先生が待機していた。

 

「悪い、待たせたか?」

 

[“大丈夫。私たちも今来たところだよ”]

 

「!アリス知ってます!付き合ってる恋人同士のデートの時のやり取りです!」

 

私は無言でアリスに近付く。

首を傾げるアリスを()()で見下ろすと、両手でその頬っぺたをつねる。

 

「バカなことを言うのはこの口か〜?」

 

つねりながら、伸ばしたり、こねくり回す。

見た目通りの子供らしく、その頬はとても柔らかく、弾力に優れている。

 

いひゃっ(いたっ)!?ひゃひふふんへふか(何するんですか)

ひふ(イヴ)〜!!」

 

アリスは涙目になって抗議するが、あまりの心地良さが癖になって弄り続ける。

いやぁ、それにしてもよく伸びる。

 

「おぉ〜!アリスのほっぺモチモチだぁ〜!?次、私!私も!」

 

それを見たモモイが興味を惹かれ、目を輝かせる。

 

「お姉ちゃん!アリスの頬っぺたを弄ってる場合じゃないでしょ!」

 

そう言いながらも、ミドリの視線は伸びるアリスの頬っぺたに興味を示していた。

その隣のユズもまた、興味を惹かれたようにソワソワしている。

 

一通り満足した私はアリスの頬っぺたから手を離した。

離された頬っぺたは、凄まじい弾力性と柔軟性を発揮し、元通りになりつつも余韻を残して揺れ、波打つ。

その様子に更に才羽姉妹とユズが目を輝かせる。

 

「うぅ…ヒドいです…アリス、イヴにキズモノにされちゃいました…」

 

アリスは両手で頬を押さえ、(さす)りながら、上目遣いで私を睨む。

 

[“その表現はちょっとマズいんじゃないかな!?”]

 

先生は何を慌てているんだろう。

確かに、傷と言うには、若干、赤くなっているだけで大袈裟な表現だが、そこまで騒ぎ立てるほどの事だろうか?

単なる事実だろうに。

 

首を傾げる私、それとモモイ、アリス。

ユズとミドリは何故か視線を逸らしていた。

 

[“と、取り敢えず!これで全員集合だね!!”]

 

この空間に漂っていた微妙な空気を入れ替えるように、先生が手を叩き、話題を変える。

 

「そ、そうですね!イヴさん、来てくれてありがとうございます!」

 

「は、はい!今日はよろしくお願いしますね!イヴさん!」

 

それにミドリとユズが便乗する。

多少、気にはなるが今は置いといて良いだろう。

 

「うん、よろしく。とは言っても、前回とは違って、私は後方支援に徹するから。そのつもりで」

 

それこそが、私が先程、思い付いたことだった。

 

「「えぇっ!?」」

 

それに驚愕するのはモモイとミドリ。

 

「!!」

 

驚きつつも、意を決したように覚悟を決めた表情をしたのはユズ。

 

「?」

 

疑問符を浮かべるアリス。

 

[“あちゃー…”]

 

困ったように先生は顔に手を当てていた。

 

「なんでなんで!?どうして!?」

 

「私たちやっぱり、足手纏いでしたか!?」

 

モモイとミドリが問い詰めてくる。

なまじ、先の《廃墟》探索の時に共に戦ったからこそ、全幅の信頼を寄せてくれていたのだろう。

 

「足手纏いなんかじゃないよ。寧ろ、二人はよくやっていた。だからこそ、私は二人に“可能性”を感じた」

 

「“可能性”…?」

 

モモイが首を傾げる。

私はそれに頷き返す。

 

「“強さの欠片”とでも言うべきものかな」

 

「“強さの欠片”…」

 

ミドリはその言葉を噛み締めるように呟いた。

 

「それでも、あの時の二人には《廃墟》の敵は荷が重かった。だから私も手助けした。でも──」

 

私はそのまま、ユズとアリスへと視線を向けた。

 

「今のあなた達はもう、あの時よりも成長して、信頼できる仲間もいる。だから、任せても良いって、そう思えた」

 

以前の《廃墟》での戦闘は、元々、上手く連携出来ていた二人を更に成長させたことだろう。

更にそこに、ユズとアリスが加われば、私が居なくても問題ない、そう判断した。

 

「もちろん、さっき言った通り、後方支援はするし、状況次第では私も前線に出よう。でも、その時までは、試してみないか?自分たちの力を」

 

私の言葉に、モモイとミドリは顔を上げ、そこには喜び、或いは嬉しさが浮かんでいた。

 

「うおー!やってやる!やってやるぞー!!」

 

武者震いを堪え切れないように、モモイは拳を空に突き上げる。

 

「うん!やろう!やってみよう!お姉ちゃん!」

 

そこにミドリと、ユズとアリスも加わる。

 

「みんなで、戦おう…!私も、頑張るから…!!」

 

「はい!みんなで力を合わせて攻略しましょう!」

 

やる気に満ち溢れた四人を眺めているところに、先生が近付いてくる。

 

[“いやぁ、すっかり私の仕事が取られちゃったね?”]

 

そう言いつつも、先生はどこか嬉しそうだ。

遠回しに、私が先生みたいだった、とでも言っているようなものだが、私はそれに溜め息で返す。

 

「何を惚けてるんだ。先生の仕事はこれからだろう?という訳で、あの子達の指揮は任せたよ」

 

確かに自分でも慣れないことをしたと思っているが、それでも、それは所詮、模倣でしかない。

先生としての務めが果たせるのは、先生だけだ。

そして、私にも私の役目がある。

 

[“了解。それにしても意外だね。イヴならまた前線で暴れると思ったのに”]

 

確かに、以前の私であれば、何人いようと構わず前線で敵を蹂躙していただろう。

当然、今でも必要があれば、同じことをするつもりだ。

その必要性があれば、の話だ。

 

「…それでも良いけど、五人も居たら混乱しかねない。特に、あの子たちはまだ、戦闘経験が浅いからな。それなら、私は下がって適宜、支援や援護に徹した方が有効的だろう。それに──」

 

私はゲーム開発部の四人に視線を向ける。

四人は互いの武装を確認し、立ち位置や立ち回りを確認しているようだ。

 

[“それに?”]

 

モモイとミドリに伝えた言葉には一切の偽りは無い。

正しい力、“強さ”の片鱗。

 

「…ちょっとだけ、興味が湧いたんだ。“力”ではない“強さ”に。独り善がりじゃなく、誰かと共に並んで戦える“力”に、な…」

 

それは、私が持っているような、蹂躙し、殺すだけの暴虐とは異なるもの。

あの二人には、その“可能性”を垣間見た。

そして、それはきっと、ユズも、アリスも持っている。

その先を見てみたいと思った。

 

[“誰かと共に並んで戦える力が、強さ、か…。それなら、イヴにもあるんじゃないかな?”]

 

そうだろうか?

そうだったらいいな、と今では思える。

 

「…どうだろうな」

 

だが、口には出さない。

これは、私だけの“祈り”だから。

 

“祈り”は、そっと心に秘めるものだ。

口に出してしまえば、きっと縋ってしまうから。

誰かに、何かに。

 

大丈夫。

私には共に並んで戦ってくれる“猟犬”がいるから。

()()()()、“彼ら”と共に、戦えるから。

例えその時間が、永遠でないとしても。

“彼ら”との戦いの果てに、きっと“答え”がある。

 

主無き猟犬は、何処へ向かうのか。

見すぼらしい野犬に堕ちるのか、それとも捕食者たる矜持を取り戻し、狼と成るのか。

 

私がその“答え”を得るまでは、心の中で“祈り”を続けよう。




フルパーティーで再び《廃墟》へ!!

《廃墟》のダンジョン感も相まってRPG感があって良いですね
ゲーム開発部のシナリオは冒険感があって大変よろしい

もっと冒険させたいですね〜
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