ブルーアーカイブ -灰の翼-   作:空素

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あらすじ
目的地に到着!
謎のコンピューターが…




EP-9 そこにあったもの

『Divi:Sion Systemへ、ようこそお越しくださいました。お探しの項目を入力してください』

 

無機質な電子音声がコンピューターから流れた。

それは、以前、耳にした電子音声とは異なるもの。

 

「おっ、まさかの親切設計。G.Bibleについて検索してみよっか?」

 

さすがに不用心過ぎるぞ、モモイ。

 

「いや、ちょっと怪し過ぎない?それより、『ようこそお越しくださいました』ってことは…《ディビジョンシステム》っていうのが、この工場の名前?」

 

或いは、かつてのルビコンで傭兵たちをサポートしていた《オールマインド》のようなシステムAIかもしれない。

そう言えば、以前、エアは、正面の直前に自身を救ってくれたオールマインドが何かを計画していたと言っていた。

その内容は不明だが、自ら考え、動いているところから自律型のAIだったのかもしれない。

或いは、AIに扮した、エアのようなコーラル変異波形の可能性も…。

 

そんな考えを巡らせていると、じっとコンピューターを眺めていたアリスが無言のまま近付く。

 

「キーボードを発見……G.Bibleと入力してみます」

 

アリスは慣れた手つきでキーボードを叩く。

その後ろから、モモイ、ミドリ、ユズの三人が覗き込む。

 

「あっ!なんか出た!」

 

だが、画面に表示されたのは、意味不明な記号の羅列。

 

「こ、壊れた!?アリス、いったい何を入力したの!?」

 

慌てふためくモモイがアリスに詰め寄るが、当のアリスも困惑した様子で首を横に振った。

 

「い、いえ、まだエンターは押していないはずですが……」

 

顔を見合わせた二人が、再び画面を向く。

 

『あなたはAL-1Sですか?』

 

その文字が大きく画面に表示された。

それはまるで、これまでの事務的で機械的なやり取りからはかけ離れた、何者かの意思を感じさせる質問だった。

 

「!?」

 

「!!」

 

「?」

 

モモイは驚愕し、ミドリは警戒し、アリスは困惑、或いは疑問を浮かべるように首を傾げる。

 

「いえ、アリスはアリスで──」

 

「ま、待って!!」

 

アリスが画面に表示された何者かの問いかけに答えようとするが、それをミドリが引き止める。

 

「──何かおかしい。アリスちゃん、今はとりあえず入力しない方が──」

 

だが、無情にも電子音が響き渡り、画面の文章が更新される。

 

『音声を認識。資格が確認できました。おかえりなさいませ、AL-1S』

 

アリスの声で反応したということは、“AL-1S”というのはアリスを指しているようだ。

まるでそれは、強化人間時代の私の型番のようだが、それにしては敬意のようなものが感じられる。

 

「!?」

 

「音声認識付き!?」

 

その古びた見た目からは想像も付かない、思いがけない性能にモモイとミドリが驚愕する。

 

「えっと…AL-1S、っていうのは、アリスちゃんのことなの?」

 

前回の探索にいなかった為に、状況に不明点がいくつもあるだろうユズが訊ねる。

私もそれについてはユズと同じく初耳だが、(おおよ)その見当は付く。

 

「あ、ごめん。そういえばユズちゃんには言ってなかったかも」

 

廃墟という土地で眠って──いや、休眠していたこと、機械からなる身体──機体、そして、型番のような名前。

間違いなく、アリスは何者かによって造り出された存在だ。

そして、その用途もまた、これまでのアリスを見ていれば想像が付く。

 

「……」

 

アリスは不安そうな表情で画面の文章を見詰めている。

 

──アリスはおそらく、“私の世界”にあったアーマード・コアとは異なる発展を遂げた、だが、本質的には同系統の人型兵器。

その姿が戦闘や戦争とはかけ離れた少女というのは、なんとも皮肉的だ。

 

先生に視線を向ける。

先生はゲーム開発部の四人を見守っている。

先生は、この事実に気付いているのだろうか?

もし、アリスが──生徒が兵器であったのなら、先生はどうするのか。

或いは、その力が他の生徒──ひいては世界に向けられ、破壊と殺戮を齎すことになった時、先生はどんな選択をするのか。

 

こんなものは、私の妄想に過ぎない。

それでも、万が一の可能性がない訳ではない。

かつて、“あの世界”で生き、様々なものを見て、体験した私だからこそ思い浮かんでしまう最悪の想像。

 

それでも先生は、アリスを生徒として見られるのだろうか?

人々と、その生きる世界を滅ぼすような、“人類種の天敵”に対しても。

先生は、先生でいられるのだろうか?

 

「アリスの、本当の名前…本当の、私…」

「あなたはAL-1Sについて知っているのですか?」

 

『………』

 

アリスの問いに、画面の文章は沈黙を貫く。

それは、答える気がないというより──。

 

「反応が遅い…?」

 

「何か画面もぼんやりしてきたけど、処理に詰まってるのかな?」

 

文章の更新を待つこと数秒。

 

『そうで』

 

更新されたかと思いきや、再び文章の後半が意味不明な記号の羅列となって表記される。

 

「え、え?何これ、どういう意味!?」

 

ミドリを含めた四人もこれには驚愕し、困惑する。

 

『それは』

 

だが再び、問題ない表示で文章が更新され、四人の注目を集める。

 

『緊急事態発生。』

 

そこに表示されるのは、一切の脈絡を無視し、これまでの流れを断ち切るもの。

 

『電力限界に達しました。電源が落ちると同時に消失します。残り51秒。』

 

「ええっ!?だ、ダメ!せめてG.Bibleのことを教えてからにして!」

 

あまりに性急すぎる流れに動揺しつつも、モモイは目的を忘れない。

 

『あなたが求めているのはG.Bibleですか?<YES/NO>』

 

「!?」

 

「YES!!」

 

モモイの代わりに、ミドリがすかさず答えを返す。

 

『G.Bible……確認完了、コード:遊戯……人間、理解、リファレンス、ライブラリ登録ナンバー193、廃棄対象データ第1号。残り時間35秒。』

 

「廃棄!?どうして!?それはゲーム開発者たちの、いやこの世界の宝物なのに!!」

 

そこから、ゲーム開発部は画面の文章とのやり取りを交わしながら、G.Bibleを手に入れるべく、奮闘する。

 

「──G.Bibleの在り処を知ってるの?」

 

『──あなたたちも知っています。今、目の前に。』

 

モモイ達が求めるG.Bibleは、このコンピューターの内に存在し、そして、それは失われつつあるという。

 

『──新しい保存媒体への移行を希望します』

 

「──《ゲームガールズアドバンスSP》のメモリーカードでも大丈夫?」

 

『……まぁ、可能、ではあります』

 

「な、何だかすごく嫌がってる感じがするんだけど…気のせい…?」

 

「データケーブル、連結完了!」

 

こうして、G.Bibleはモモイの携帯ゲーム機に保存されることになった。

 

『──保存領域が不足。既存データを削除します。』

 

「え、嘘!?セーブデータ消してない!?ねぇ!?」

 

『容量が不足している為、確保します。』

 

モモイの努力の結晶が失われようとしている。

モモイはどうにか残せないか抗議する。

 

「──そこまで装備揃えるの大変だっ──」

 

『残念、削除。』

 

しかし、無情にもモモイの努力はデータの海の藻屑と化した。

差し迫った状況ゆえ、余裕が無かったのもあるだろうが、あまりにも無慈悲。

 

「ちょっとおおぉぉぉぉぉおおお!?」

 

モモイの絶叫が虚しく木霊(こだま)する。

 

わなわなと震えるモモイの横で、三人がコンピューターの画面を覗き込み、首を傾げる。

 

「あれ…電源、落ちちゃった…?」

 

「ぁぁぁあああああぁぁぁ!!私のガールズアドバンスのデータがぁぁぁぁぁあああっ!!」

 

だがモモイはそれどころではなく、天井に向かって絶叫する。

 

「あ、待って!」

 

ミドリの視線の先、データを転送したモモイの携帯ゲーム機の画面が点灯する。

 

「何かが画面に…?」

 

そして、ゲーム画面に表示される『転送完了。』の文章。

 

「え?」

 

天井を仰いでいたモモイも我に返り、視線をゲーム画面に落とす。

 

『新しいデータを転送しました。』

『<G.Bible.exe>』

 

「こ、これって!?」

 

ユズが期待を込めて呼びかける。

ゲーム開発部の表情がみるみる明るくなっていく。

 

どうやら、彼女たちはやり遂げたらしい。

 

早速、データを開こうとするも、パスワードに阻まれるが、問題無いようだ。

ミレニアムの《ヴェリタス》か。

話には聞いているが、実際に接触したことはない。

 

彼女たちの手にかかれば、並のパスワードであれば問題なく解除できるようだ。

 

私と先生は互いに頷き合う。

あとは無事に、この《廃墟》から脱出するだけだ。

 

「待っててね《ミレニアムプライス》…いや、キヴォトスゲーム大賞!私たちのゲームは今度こそ、キヴォトスのゲーム界に良い意味での衝撃を与えてやるんだからっ!!」

 

目的を果たして浮かれ、気が昂ったのだろう。

溢れ、湧き上がる意気込みを声高らかにモモイが宣言する。

 

その声は、建物の内部によく響いた。

 

「お、お姉ちゃん、声大きすぎ。そんな大声で叫んだら──」

 

「平気だってミドリ!だってガードロボはこの中に入れないんだから!いくら叫んだって問題ないよ!」

 

「も、モモイ、それは…!」

 

「アリス知ってます!それは“フラグ”です!」

 

ゲーム開発部がモモイを諌めるも、しかし、その“フラグ”は回収されることになる。

 

私たちが入ってきた通路とは別のところから、オートマタ型のガードロボが姿を現す。

 

それを目にしたゲーム開発部の動きが止まる。

 

こうなってしまったからには仕方ない。

私はスナイパーライフルで現れたガードロボを撃破し、叫ぶ。

 

「みんな!ガードロボが出てきた方に走れ!」

 

恐らく、先程のコンピューターが表示した《緊急事態》。

あれによって、この不可侵領域に設定されていたシステムが解除されてしまったのだろう。

そう考えると、モモイの声は関係ないのかもしれない。

寧ろ、早めに状況を知ることが出来て、逆に良かったという可能性もある。

だが、どの道このままでは、私たちを追って大量のガードロボが流れ込んでくることになる。

 

「え!?でもそれだとまた敵に鉢合わせることにならない!?」

 

「それでも、来た道を戻ったらもっとたくさんの敵と出会うことになっちゃう!ここはイヴさんの言う通りに行こう!」

 

ユズが私の言いたいことを代弁してくれた。

要はそういうことだ。

私たちの侵入を防ぐ為に集められたガードロボが、一挙に雪崩れ込んで来ているはずだ。

それと鉢合わせるくらいならば、多少のリスクを考慮して、他の経路で出口を目指した方がいい。

 

[“出口への経路は任せて!ここまでの《マッピング》で、この建物の大まかな構造は把握できた!そこから、逃走経路を導き出す!”]

 

先生は再びこの工場に足を踏み入れるに際して、アロナに内部の地図情報の構築──マッピングを頼んでいた。

それがこういった形で功を奏した。

マッピングできたのは一部だけだったが、全体像から傾向を探り、仮想マップを導き出すことができていた。

 

『はい!スーパーアロナちゃんにお任せください!仮想マップは随時更新されます!そこから最短ルートで出口を見つけちゃります!!』

 

[“私が出口へ案内する!代わりにみんなは現れる敵を倒していって欲しい!”]

 

「はい!時間制限ありの脱出ミッションですね!」

 

アリスは相変わらずゲーム感覚だが、やる気を溢れさせる。

それが寧ろ、他三人の士気を高めているというのだから面白い。

 

「後ろからの敵は私が対処する。みんなは前に進むことだけ考えればいい。念の為、弾薬が切れたら即、知らせてくれ。フォローする」

 

《廃墟》の外に出るまで、どれだけの敵が現れるか分からない。

それを相手取り、四人の弾薬もどれだけ持つかは不明だが、万が一の可能性も考えておく。

 

「うん!分かった!先生!イヴさん!よろしく!それじゃあ、行くよ!ゲーム開発部!帰るまでが遠足だー!!」

 

「「「うん(はい)!!!」」」

 

モモイの鬨の声に、ミドリ、ユズ、アリスが闘志を示す。

 

モモイを先頭に、私たちは工場の出口へ向かうべく、走り出した。

 

*****************************

 

「退いた退いたー!ゲーム開発部のお通りだー!!」

 

次々と現れるガードロボをゲーム開発部の四人は薙ぎ倒していく。

 

「うん、イヴさんの予想通り、思ったより敵は多くない…!」

 

ミドリが確信を得たように呟き、敵を撃ち抜く。

 

私の推測は当たっていたようで、敵は決して少なくはないが、工場の前で防衛を敷いていた数に比べれば大したことではない。

やはり、ガードロボは向こうに集中しているようだ。

お蔭で、私は背後を気にすることなく、モモイ達の援護に回れる。

私の支援の数だけ、四人の弾薬を温存することができる。

 

とは言え、残弾数を気にして、目の前の敵が倒せないようでは本末転倒だ。

使うべきタイミングでは勿体ぶらずに使うべきだ。

その為にも、残弾をしっかり把握し、先を見通す必要がある。

 

「ユズ!アリス!残弾の残りはどのくらいだ?割合でいい!」

 

特に、一発ごとの威力が高い分、弾数が少ない二人は、特に早く消耗してしまう。

 

「えと、だいたい6%くらいです!」

 

「アリスは5%です!」

 

どちらも一割を切っているか。

それもそのはず。

この工場内に侵入した時点で、あと一回の戦闘が限界と言っていたのだ。

そんなものだろう。

 

幸い、二人の攻撃は範囲を巻き込める。

ユズは一体の周辺、アリスは直線上。

それである程度は誤魔化せる筈だ。

 

そして、この情報は私が知る為でもあるが、周囲──特に、四人を指揮する先生に共有する為でもある。

 

[“出口はもうすぐだよ!この先に緊急時の非常出口がある!”]

 

なるほど、それは確かにこの状況には打って付けだ。

 

だが、その進路を阻むように、続々とガードロボが姿を現す。

工場内に雪崩れ込んだ外のガードロボがばらけ、様々なルートを通じて追い付きつつあるのかもしれない。

 

「ううっ…!もう弾薬が尽きそうなのに…!」

 

ミドリが弱音を漏らす。

それだけ、今の状態は余裕がないという証左だろう。

 

「諦めちゃダメだよ!ミドリ!」

 

だが、モモイがいつも通りの変わらない様子で励ます。

 

「《テイルズサガクロニクル2》を作るんだから!こんなところで立ち止まってなんかいられないでしょ!?」

 

その顔には、幼いながらも、不敵な笑みが浮かんでいた。

 

「お姉ちゃん…!うん!!」

 

「ミドリ、大丈夫…!わたし達なら乗り越えられるよ…!」

 

ユズが、ここまで来る為に振り絞った勇気を分ける。

 

「はい!ミドリ、諦めなければ、必ず乗り越えられます!ゲームがクリアできるのと同じです!」

 

アリスが、目覚めてからの短い時間で経験した学びを与える。

 

「どんな敵が出て来ても関係ない!だって、みんながいるから!」

 

ミドリは心を奮い立たせ、銃を構える。

 

一丸となったゲーム開発部は、迫り来る敵を迎え撃つ。

先生による的確な指示で、慎重かつ大胆、繊細かつ豪快に敵を撃破していく。

それは、弾薬の無駄な消耗を限りなく無くす為の最適解に近い、最高効率の立ち回り。

 

正しく、四人それぞれの長所を最大限に活かし、短所を補い合った結果。

 

ユズの爆撃が、シールド持ちを中心に周囲を巻き込む形で吹き飛ばす。

アリスの光弾がユズが巻き込めない奥の敵を貫く。

残った敵をモモイの範囲攻撃とミドリの精密射撃が確実に撃破する。

 

それは、確かな一つの強さの形として、私の目には映った。

 

「あ!先生!アレ!?」

 

モモイが指差す先には、閉ざされたシャッターがあった。

それが外への出口なのだろう。

 

「あっちにレバーがあります!」

 

ミドリが示す方には、シャッターを開く為のものと思われるレバーがある。

しかし──。

 

「あ、でも、電気が通ってないから動かせないんじゃ…!」

 

ユズの懸念は最もだ。

手動で上げようにも、その間に後ろから追い付かれる可能性もある。

今はまだ、姿は見えないが、着実に気配は近付きつつある。

 

「こうなったら私が──」

 

アリスが銃を構える。

だが──。

 

「いや、その必要はない」

 

私がそれを制止する。

アリスの残弾はほんの僅かだろう。

こんなことで無駄撃ちさせる訳にはいかない。

そして、私は四人の間を通り過ぎ、シャッターに近付く。

 

[“あまり荒くしないでね”]

 

先生に釘を刺されるが、私はそれを聞き流し、地面を蹴った。

安易に“歯車”は回せない。

だが、今出せる全力を込める。

勢いを乗せ、シャッターへと右脚を叩き込む。

 

鋼鉄のシャッターは大きくひしゃげ、脚を打ち込んだ中心から縦に真っ二つに裂ける。

多少、イメージと違ったが、何はともあれ。

これで外への出口が開通した。

 

「──よし、これで通れるように……」

 

後ろへと視線を向ければ、ゲーム開発部の四人が顔を青ざめさせて互いに抱き合って震えていた。

 

[“だから言ったのに…”]

 

唯一、この状況を見据えていた先生は、困ったように顔を手で覆っていた。

 

「と、取り敢えず、みんな外に出よう…」

 

幸いにも、周囲に敵影は確認出来なかった。

だが、シャッターを破った音を聞き付けて、じきに集まって来るだろう。

その前に退散しなくてはいけない。

 

全員が外に出ると、私は手榴弾を投げ入れ、シャッター周辺を崩し、出口を塞ぐ。

これで少なくとも、工場内からの追手に対しては大幅に時間を稼げるだろう。

 

外の敵も最低限のハズで、殆んどが工場内に突入しているはずだ。

 

[“みんな、急いで!今は大丈夫だけど、また敵が集まって来るはず!その前に《廃墟》の外に!”]

 

先生も同じことを考えていたのだろう。

すぐにでもこの場を離れるようにゲーム開発部を促す。

 

「はい!脱出ミッションは《廃墟》の外へと更新されました!」

 

「うん…!もう残弾もほとんど残ってないし、急ごう…!」

 

ユズの言葉に全員が同意して頷き、《廃墟》の外へ向かい、走り続ける。

遠くに出口が見え始めた頃。

 

「よーし!もうここまで来れば平気でしょー!」

 

モモイがまた良からぬ発言をこぼす。

 

「バッ──お姉ちゃんのバカ!なんでよりによってこのタイミングでそんなこと言っちゃうの!?バカバカバカ!!」

 

「モモイは今のところ回収率100%なんだよ!?どうしてそんなこと言っちゃうの!?」

 

「うわーん!モモイがまた襲撃フラグを立てましたー!」

 

涙目でモモイに詰め寄るミドリ、ユズ、アリス。

 

そして、関連性は不明だが、私の“耳”が、気配を察知する。

 

[“みんな!後方から敵性反応!気を付けて!”]

 

すぐに、先生からも警告が出される。

それから間も無く、背後から巨大な影が飛び出し、私たちの背後を取った。

 

「「「モモイ(お姉ちゃん)ーーーーー!!!」」」

 

「私のせいなのこれぇ!?」

 

現れたのは、二脚の人型兵器。

それは、私は戦っていないが、以前、アビドスでのPMC基地襲撃に際し、ホシノを抜いて対策委員会メンバーが対峙した元理事が戦闘に用いたという機体と酷似していた。

 

《ゴリアテ》。

 

元理事が運用したのは《ゴリアテ型パワードアーマー》とのことで、もしかすると、この目の前の機体こそがオリジナルなのかもしれない。

人が乗り込める場所は見受けられず、パワーローダーと同じく、本来はAIを組み込んだ自律型の兵器なのだろう。

 

分厚い装甲に覆われ、両腕はガトリングに、両肩部も連装式のミサイルポッドになっているように見受けられる。

そして何より目を引くのが、頭部から伸びる巨大砲塔だろう。

それは最早、頭部そのものを砲塔にしたというべきだろう。

ACは頭部パーツで周囲の情報を把握し、また姿勢制御を司っていたが、ゴリアテは一体どこの部位でそれらの機能を保持しているのか?

それとも、パイロットが必要ない故に、それらの機能も必要ないのか?

 

興味、疑問は尽きないが、今はそんなことに気を取られてる場合ではない。

 

「みんな!今はとにかく走れ!」

 

ゴリアテに加え、他のガードロボもまた、集結しつつある。

悠長に戦闘はしていられない。

殿(しんがり)を務める私が、どうにか牽制し、ゴリアテの気を引き付け、モモイ達を逃す。

 

「先生!モモイたちは任せるぞ!」

 

私はブレーキをかけると、慣性に任せてゴリアテに向き直る。

向かって来るゴリアテへと、手榴弾を投擲しつつ、SRで狙撃する。

今はダメージはどうでもいい。

敵視を引き付けられればそれで上等だ。

 

[“分かった!イヴも無理しないで!みんな!行くよ!”]

 

先生は四人を連れて、出口へと向かっていく。

それを肩越しに確認し、視線を前に戻せば、ゴリアテは両腕のガトリングを構えていた。

間も無く、火花を散らして無数の弾丸が発射されるが、その弾道は線となって私の視界に映っている。

それを掻い潜る。

時には低姿勢で、時には横に滑り、時には舞い上がる。

そうして躱し切ったところで、ゴリアテの両肩部の装甲が開き、無数のミサイルが放たれる。

 

すでに先生たちは《廃墟》の外に逃れている。

これ以上の足止めは必要ないだろう。

私は闘争も交えて、ミサイルを予測の線を潜り抜ける。

ミサイルの爆炎の中を駆け抜け、《廃墟》の出口へと差し掛かる。

 

『──何人(なんぴと)も…近付かせはしません』

 

ゴリアテから声が響く。

それは無機質な、これまでに何度も聴いた、だが、その(いず)れにも当て嵌まらない、電子音声──AIの声。

 

『《聖剣》には…決して──』

 

ゴリアテは立ち止まっていた。

もう私を追う必要はないと判断したのだろう。

 

「……」

 

私はモモイ達のあとを追うように、《廃墟》を後にした。




《QUEST CLEAR》!!

ファンファーレでも流したいような気分ですが、色々と謎は残ります

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