Sword Art Online 赤い炎の妖精と水色の猫妖精   作:マグナス

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prologue

「なあ朝……じゃなかった。――――シノン」

 

 

いつもお気楽そうに笑顔を浮かべてる彼が凄く真面目な表情で、私の水色の瞳を見ながら、一度口にしかけた現実での名前――この世界で出すのはマナー違反――を急いで訂正し、この世界での私の名前を呼んだ。

 

「……何よ」

 

 

 私は、こんな真面目な表情を浮かべた彼を見たことがない。そう思うと何故か人には見せていない一面を見れたような嬉しさが少しだけ込み上げたが、深く関わりすぎたかもしれないと言った卑屈的な考えも同時に現れた。

 

 ――――どっちが私の本当の気持ちなんだろう、GGOであんな目に遭って以来、恐怖で少数の人間にしか心を開かなかった私が。でも心を少し開けただけでも幼い頃の事件を経験した自分としては凄い進歩だったろう。

 

 そんな私が感じた二つの気持ち、どっちが自分の本当の物なのかなんて分かりはしない。

 

 ううん、今すぐに分かるわけなんてないのよ。そんな想いを感じた事も無いし……って

 

「いつまで見てんのよ……」

「心の整理が付くまで」

 

 

 見られている照れを隠す為に、半ば怒り気味に言ったが表情と同じで静かだけど、すごく圧力のある声で返されてしまう。

 

 ……何よ、いつもは“今が楽しければいい”みたいな感じで生活してるくせに。

 

 なのに、いきなりそんな表情をされて、そんな声で言われたら……何も言い返せないじゃない……!

 

 それに……心の整理って言ったわよね……。

 

 恋愛感情、いい思い出がないなぁ……。

 

 新川君に迫られた時は本当に死の危険が迫ってたし、まあ…あれは恋愛と言うよりは“狂愛”ね、新川君には悪いけど…狂ってた。

 

 でも彼の赤色の瞳は、何故かそんな思いを忘れさせてくれそうな程澄んでいて、自然と吸い込まれて……。

 

 と、そこまで思考して自分の顔がゆっくりと彼の顔に近づいて行ってるのが分かった。

 

 真剣な表情の彼は気づいてないみたいなので、少しずつ顔を離してく。

 

 ……絶対に今、顔が真っ赤になってる。

 

 それこそ彼の髪色並みに、赤い炎のように。

 

 そんな顔の火照りを静める為に、視線を斜め下に落としながらちょっとだけ彼の顔を覗いてみる。

 

 こうして見ると、この世界の彼はそこまで悪く無い容姿をしてると思う。

 いつも笑っているせいで穏やかそうに見えるけど、実際彼の目、結構鋭いんだ……。

 

 ……現実世界だと、まじまじと人の顔を見る機会なんて無いからちょっと新鮮。

 

 作り物の身体だとしても、現実世界と変わらない。そんな事をムカつく誰かが言っていたわね。

 

 ――――でも、正しいと思う。朝田詩乃も、シノンも。今私の目の前にいる彼も、現実世界の彼も。どれも現実なんだと思うと、この身体も凄く愛おしく思えてくる。

 

 そんな事を考えていると、彼も心の整理が付いたのか僅かに赤くなって、薄らと汗の様なオブジェクトが浮かんだ顔に先ほどよりも真剣な表情を浮かべながら、私の顔に手を当てて正面に向き合うようにしながらゆっくりと、しかし確実に言った。

 

「俺、お前の事が――――」

 

 

 その先は聞かなくても分かった、私は照れ隠しと言わんばかりに満面の笑みを浮かべて、この世界での私の特徴とも言える猫耳を揺らし、尻尾を大きく振った。

 

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