Sword Art Online 赤い炎の妖精と水色の猫妖精   作:マグナス

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第一話 教科書、一緒に見せてくれないか?

 ……あぁ、眠い。

 

 どうして授業ってこんなに退屈なんだろうな、もうペンを持つ気力もねーし……。

 俺は両手を机の上に置いてそこに顔を乗せて瞳を閉じる。

 

 あー……、昼休み前だから腹減ってるけど寝れそうな気がしてきた。

 

 よし、寝「おい羽原、単位落としても俺は責任を取らないからな。態度も成績に入れるって、何回言えば分かるんだお前は」…れなかった。

 

 今の授業を担当してるのは俺のクラスの担任、ちょっと口煩いけどこうやって一度注意をしてくれるのは教師なりの責任と、優しさなんだろうなと思う時がある。

 

 仕方ない、担任様がご立腹になる前に授業を受けるとしますか……ってやばい。

 

「教科書ロッカーの中に入れっぱなしじゃねえか……」

 

 

 誰にも聞こえないように俺はそう呟き、机の中に手を入れて捜索するが何も入っていない。

 

 …隣の奴に見せてもらおう、そうしよう。

 

 えっと今の隣は……

 

「なあ朝田さん、悪いんだけど…教科書一緒に見せてくれないか? ロッカーの中に入れっぱなしでさ」

 

 

 声を潜めて俺が話しかけた隣の席の人物。

 

 そう、メガネをかけたショートヘアの女子、朝田詩乃だ。

 皆は大体一人でいる事が多いからよく分からないって言ってるけど、俺はただ単に皆が距離を置いているだけだと思う。

 

 朝田さんは一人でいるのが好きってよりも、無理に距離を置いている感じがするしな。

 個人的には美少女に入ると思う、綺麗っつーよりは可愛い方の美少女だけどな。

 

 とか何とか考えて返答を待ってると無言で軽く机を寄せてくれたので一度身体を横に向けて両手を合わせて会釈。

 

 こんな優しい一面だってあるんだしよ、無表情だけどな。

 

 そんな事を思いつつ机を着けると、当然身体も近くなるわけで……何かいい香りがしてきた。

 

 フワッとしてるっつーか何つーか……女の子独特の匂いってやつ。

 

 とか軽くふしだらな事を考えてノートに字を書こうとしたら消しゴムが見事に落ちやがった。

 

 美術の時間に角を全て使って丸くなった消しゴムは綺麗に転がって朝田さんの小さい足に当たって止まった。

 

 朝田さんも感触が伝わって気づいたようで、大きな溜め息を吐いて目を細めながら椅子を少し引いて身体を横に倒しながら手を床に伸ばして…って近くね!?

 

 机を着けてる上に、朝田さんが俺の方に身体を倒して来る。

 

 確かにそっちから手を伸ばした方が近いけど、もう少し意識しようぜ……。

 

 俺がどきまぎしてる内に朝田さんは消しゴムを拾ってくれたようで、ゆっくりと身体を起こしながら面倒くさそうに俺のノートの真ん中に消しゴムを置いた。

 

 とりあえず…礼は言っておかなきゃな。

 

『サンキュー』

 

 ……っと、ノートの左側に書いてそれを朝田さんに見えるように軽く机の接点に寄せる。

 その際に朝田さんが自分のノートに俺のノートが当たり字がずれ、恨めしそうな表情を浮かべ、綺麗だけど見た目通り冷たい字で『どういたしまして』と書き返してくれた。

 

 ふむ、今なら上手くコミュニケーションが取れるかもしれないな。

 

『いつもは昼飯、どこで誰と食べてんの?』

 

『教える必要なんてある?』

 

 

 むっ……やはりか、ツンツンとした返事が返って来た。

 

『教えない必要があんの?』

 

 

 俺がこう書くと朝田さんはまた溜め息を吐いて俺のノートに返事を書いた。

 

『場所は決めて無い、大体一人で食べてるけど』

 

 

 なるほど、こう言っちゃ悪いが想像通り一人で食べてるのか。

 

『一緒に食わない? 女っ気が薄くて寂しいんだよ。女もちゃんといるけどさ』

 

『遠慮しとく、ごめんなさい』

 

 

 律儀にそう最後に書いてくれた朝田さんは俺にノートを返した。

 ……仕方ない、今回は諦めようか。

 

 とか何とか思いつつ残りの時間は真面目に授業を受ける俺であった。

 

 

 

 

 

◆◇◆◇◆

 

 

 

 

 

「あー……何でこの歳になって幼馴染と飯を食わなきゃいけないんだよ」

 

 

 昼休みになったので俺は昼休み限定で解放している屋上に行って持って来たサンドイッチを目の前に座ってる幼馴染と食べてる。

 普段はこいつ、"鳴宮(なるみや) 心(こころ)"とその知り合いと食べているんだが、体調を崩したとか何かで今日は欠席だ。

 

 こんな季節に屋上で飯食ってる奴なんざ少ないから解放的でいい、寒いけど。

 

「女と食べられるだけいいでしょー?」

 

 

 やめろ、そんな甘えたような声を出すな。

 女らしさなんて殆どないようなもんだろうが、性格も凶暴、更には色々な部分も残念な具合だが何故か身長だけは俺と5cmくらいしか差がないくらいデカイんだから。

 

「痛てててててっ!! ちょおま、マジで離せ! 痛いから、痛いからあぁぁぁぁああ!!」

 

 

 俺の思考を呼んだかの様に、心が黒い笑みを浮かべてプロレス技をかけてきた、餓鬼の頃から何回も喰らってきたがやっぱり慣れない、ていうか慣れたらお終いな気がする。

 そもそも同じ技を続けて使わないで、対策をさせないところが汚い。

 

 その体勢のまま数分、俺はサンドイッチを左手に握って必死に耐え抜いた。

 

 ああヤバかった、身体が悲鳴を挙げてるんだが……。

 

 まあ何も言わないでおこう、時間がかかるとこの後の用事に響く。

 

 残りのサンドイッチを口に含んで咀嚼、手を払って付着していたカスを落として立ち上がる。

 

「お前と食ってても出会いが無くて退屈なんだよ、俺教室戻るからなー」

 

 

 短くそう言って屋上を後にする、その際何か言っていた気がするが気にしない、気にしたら負けだ。何せ戻ったらまた技をかけられるに違いないからな。

 

 とりあえず飲み物を買ってっと……自販機の前に立って適当に小銭を入れる。

 

 ココアとコーヒー、どっちかなら飲めんだろ。

 

 そんな風に考えて両方を一本ずつ買って学校内を散策する。

 

 一人で飯食ってるらしいから、大方庭のベンチか何処かにいんだろ。

 

 靴に履きかえて外に出る、おー寒い。

 

 もう冬なんだからそりゃ寒いわなぁ……。

 

 こんな寒い中で飯食ってるってのは流石に無いかな……っているよ、朝田さん。

 

 そーっと後ろから近付いてベンチの背もたれの後ろに立って息を吐いてボーっとしている朝田さんの冷たそうな左頬に左手に持った暖まったココアを軽く当てる。

 

「きゃっ!」

 

 

 定番の驚いたリアクションをしてくれた、ここは人間だったらこんな感じの反応をするだろうな、うん。

 

 ごめん朝田さん、いきなりは悪かった。謝るからそんな人を一人殺せそうな鋭い視線を俺に向けないでくれ、本当に怖いから。

 

 とりあえず俺は右手のコーヒーをポケットにぶち込んで右手を空ける。あ、やばい。ポケットだけじゃ熱防げないじゃんか、今足が凄い熱いんだが。

 

 急いでやる事をやろうそうしよう。

 

 俺は相変わらず鋭い視線を顔をこちらに向けて送ってくる朝田の身体側に回り、朝田の冷えた右手を掴んで軽く開かせてココアを握らせる。

 

「奢り、さっきの授業のお礼だから」

 

 

 我ながら気障で無理やりすぎたかもしれないな、これ。

 

 朝田は一瞬きょとんとした顔になって俺に缶を返そうとしたがやはり暖には敵わずに俺が握らせたココアを両手で包み温まってる。

 

 あーそうだな、うん。静かだと何かいい。「いつもこうなりゃ素直で可愛いのにな」

「途中から口に出てるわよ……」

 

 

 あー……出てましたか、口に…ってそりゃ拙い。

 

 朝田もどこから聞こえたのか分からんが、どうやら素直で可愛いだけはがっつり聞こえたと取っていいだろう、こんなに顔が赤くなってんだから。

 

「と、とりあえず俺は寒いから教室戻るわ。朝田も風邪引かないようにしろよな」

 

 

 うわぁカッコ悪い、顔を赤くしながら居た堪れなくなって俺は駆け足気味で校舎の中に戻る。

 

 失敗したかな、これ。

 

 

 

 

 

◆◇◆◇◆

 

 

 

 

 

何なのよ、もう。

 

 羽原君……別に隣の席っていうだけで接点なんか無かったし、関わろうとも思わなかった。

 

 よくよく考えれば羽原君は大勢の友達と一緒にいるのをよく見かけるのに、どうして今日は一人だったんだろう。

 

 私にお礼をする為…っていうのは考えすぎね。

 

 私みたいないつも一人でいる奴と一緒にいたら陰口叩かれるかもしれないし、何も利点なんか無いもの。

 

 というか、何で私……

 

「羽原君の事考えてんのよ……」

 

 

 まあこうやって律儀にお礼してくれたり出来るし、悪い人じゃないんだろうけど。

 

 相手が私をどう思ってるのかは分からないけど、関わりを持つのは止そう。

 そのほうが羽原君の為になるもの。

 

 

 

 

 

◆◇◆◇◆

 

 

 

 

 

 さーて学校終わり……っと。

 

 あー今日は何するかな、ダチは皆部活だしなぁ……。

 

 一瞬朝田さんを遊びに誘おうかと思ったけどそこまで深い仲じゃない上に二人だけだと絶対に拒否されるのでそれは流石に自重した。

 

 俺はマフラーを巻いている首を左右に倒して間接を鳴らしながら暇つぶしの方法を必死に考えた。

 

 そうだ、久しぶりにあれでもやるか。

 

「アルヴヘイム・オンライン。絶剣に負けて以来ログインしてなかったけなぁ……」

 

 

 アルヴヘイム・オンライン。この時代では最も人気なゲーム、VRMMOの一種。

 

 何が凄いのって、簡単に言うと自分のもう一つの肉体がゲームの中にあって、ゲームの中ではその身体を自分の意思で現実世界と殆ど同じ感覚で動かせるんだから。

 

 それにアルヴヘイム・オンラインはレベル依存じゃなくてスキル依存制、やる時間が少なくても何とかなるし、何より魅力的なのが……飛べる事なんだよなぁ。

 

 もう空を飛ぶのが気持ちいいのなんのって、一回やったら病み付きになるね。

 

 アイツ、強すぎだろ。確かあのちょっと有名な黒の剣士……名前が出てこないけどソイツも負かしたんだっけか。

 

 俺も周りに比べたらそれなりに持ったほうだとは思うけど、流石に勝てるわけがない。

 何が凄いって、今まで何十人と一緒にプレイしてきたけど、あそこまで反応が速いやつなんて一人もいなかった。

 

 まあ……今はその絶剣さんもいつの間にかいないらしいけどな。

 

 それじゃ、やる事も決まった事だし急いで帰るかなぁ……。

 あ、その前にアップデートの情報とかまとめてあるの知りたいし、本屋でも寄ろうか。




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