Sword Art Online 赤い炎の妖精と水色の猫妖精   作:マグナス

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第五話 火矢、撃ち込むわよ

「あれ、まだシノンさんだけ? キリトさん達は?」

 

 

 飯を食って早めにログインして集合場所に行くと、ケットシーの女性――シノンさんが立っていた。

 

 相変わらず冷たいクールな表情でこっちを見たかと思うと、“まだ来てないけど”とだけ言って会話を終わらされてしまった。

 

 でも、せっかく会ってんだし少しは話したいよな。

 

「シノンさんってさ、武器は何使ってるの?」

 

 

 離れた距離にいたから近づいて、シノンさんの前に立ちながら笑顔でそう言うと、シノンさんは面倒くさそうに溜め息を吐きながらウインドウを操作し、背中に武器を出した。

 

 何か凄い強そうな弓が出て来たぞ……おい。

 この世界で弓を使うなんて珍しいな、飛び道具なら魔法があるんだし。

 

「見たこと無い弓だけど、プレイヤーメイド?」

 

 

 サイトとかでも見たこと無いからドロップアイテムではないだろうし、色々な角度から見ながら聞いてみると、冷たい返事だったがどうやら“そう”と返してくれたらしい。

 

「ま、欲を言えば<<光弓シェキナー>>が欲しいんだけどね」

 

 

 ……確かシェキナーって、伝説級の武器だろ?

 凄い強いって噂を聞いた事があるけど、クエスト……難しそうだなぁ。

 

 というか、プレイヤーメイドで満足してないのが驚きだ。

 普通プレイヤーメイドでも充分戦えるだろ、うん。

 

「じゃあ、今日はシェキナーでも取りに行く?」

 

 俺が冗談めかしてそう言うと、僅かながらに耳と尻尾を震わせた。

 ああ、やっぱりシノンさんもVRMMOプレイヤーなんだな。

 

 そりゃあ誰だって伝説級の一個しか無いような武器があったら欲しいよな。

 

「べ、別にいいわよ。そんな簡単に取りに行ける物だったらもう取りに行ってるし」

 

 

 明後日の方向に身体を向けながら、そう言うシノンさんを見て、俺は思わず笑ってしまった。

 

 別の方向を向いているシノンさんの尻尾が目に入るんだけど、凄い揺れてんだもん。

 

 すると俺の笑い声に気付いたのか、シノンさんが。

 

「何よ、何がそんなにおかしいわけ?」

 

 

 今まで通りの冷たい声色でそう言ってきた。

 

「いや、分かり易いと思ってさ」

「――――はあ?」

 

 

 俺が笑いを堪えながらそう言うと、シノンさんはわけがわからないと言いたげな表情で、馬鹿にされたように感じたのか背丈的に軽く下を向いている俺の顔を覗き込むような形になってる。

 

「だって、尻尾が凄い揺れてんだもん。それって自分で動かせんの?」

 

 

 そう言いながらふざけて尻尾に向かって笑いながら手を伸ばすと、凄い力で手で払われた。

 痛いんですけど……そりゃ無いですよ、シノンさん。

 

「痛てて……、何で尻尾触っちゃ駄目なんだよー」

 

 

 俺が払われた手を抑えながらそう尋ねると、シノンさんは顔を赤くしてそっぽを向いてしまった。

 

 ああ……リアクションで大体分かったわ、要するに神経があるわけね。

 

 現実世界にいると着いてないモンだから触られ慣れてないから、過敏に反応しちゃうって事かな。

 

 ……だとしたら、無性に触りたいんだけど。

 

 いや、だってどんなリアクションするか凄い見たいんだよ。過敏そうだから結構……まあ、男としては期待しちゃう反応? みたいな事になるかが気になるんだよね。

 

 あー……知り合いにケットシーいないし、どうしようか。

 

 触りたい……あぁ、無性に触りたい。

 

 でも触ったら絶対に怒るよな、この人。

 

「なあシノンさん、尻尾触っていい?」

「ふざけないで」

 

 

 一言ですか、一言で駄目出しですか。

 でもそんだけ嫌だって事は間違いなく敏感だと思っていいんだよな……?

 

「あまり変な事考えてると、火矢を撃ち込むわよ」

 

 

 すいませんでした、本当にすいません。お願いですから火矢は止めてください。

 サラマンダーだけど何故か火が苦手なんだよなぁ……俺。

 

「駄目だよーレイン君、ケットシー族は尻尾触られたら変な感じがするらしいから」

 

 

 後ろからさっきも聞いた声がしたので振り向くと、キリトさんと手を繋いでるアスナさんがいた。

 

 やっぱり恋人同士か……いいねぇ、俺にはそんな兆しはリアルでもさっぱり無いしな。

 幼馴染みは狂暴だし、せっかくいるのにフラグの一つも立たないんじゃな。

 

「アスナ、余計な事言わないで。そんな事教えられて余計に興味持たれたらどうする気?」

 

 

 厳しい、俺に対して厳しいぞシノンさん。

 

 確かに会ったばかりでお互いの事全然知らないけど、流石に“興味持たれたら困る”みたいな口ぶりは俺でも傷つくぞ。

 

「まあまあ、そんなに敬遠するなよ。レインだって、良い奴だと思うぜ? クラインの知り合いなんだし、おかしいって事はないだろ」

 

 

 クラインの奴、良い友人がいるじゃん。何か負けた気がすんなぁ、あんな風に憎まれ口を叩きながらフォローを入れてくれる友人、すっごい羨ましい。

 

 アスナさんも隣でどっちの味方をするわけでも無くただ微笑んでるだけ、シノンさんは相変わらずそっぽを向いたまま。

 

「そ、そういえばキリトさん」

「キリトでいいぞ、俺は堅苦しいのって苦手でさ」

 

 

 フレンドリーだし、本当にいい人だなぁ……。

 

「じゃあ失礼して……。シノンさんの武器がプレイヤーメイドだったから聞くけど、キリト達も?」

 

 

 俺が遠慮がちにそう尋ねると、キリトが武器を見せてくれた。

 

 シノンさんと同じ紋章が入ってるし、やっぱりプレイヤーメイドなんだ。

 そう考えるとアスナさんも一緒だよな……。

 

「すっごいな。プレイヤーメイドって、かなり金取られるんだろ? 複数人でやって貰って割引とかあったとか?」

 

 

 心の底から関心し、目を丸くしながらそう尋ねるとキリトさんは苦笑しながら。

 

「いや……まあ知り合いづてに頼んだだけさ、付き合いが長いからたまに割安で作ってくれるんだよ」

 

 

 うわー……何そのキリトオンラインネットワーク。略してKON……うん、我ながら下らない。

 

 でも羨ましすぎるぞ、それ。見たところキリトの武器もかなり強そうだし、かなりのレプラコーンだろうな……いいなぁ。

 

「ふーん……、じゃあクラインも?」

 

 

 だとしたらアイツには言いたい事がある、俺はなるべく平静を装いながら尋ねた。

 

「ん? ああ、多分そうだと思う」

 

 

 キリトに俺の考えてる事が分かるわけないので、あっさりと答えてくれた。

 よし、早く来いクライン。来たら一発肘鉄入れてやるから。

 

「いやー悪ィ悪ィ、すっかり遅くなっちまったなぁっ!?」

 

 

 ちっ……微妙に浅かったか。

 俺がクラインの声が聞こえると同時にそっちの方向に勢い良く向かって肘打ちをしたが、距離があったから浅かった。

 

「レイン……手前ェいきなり何しやがる!」

 

 

 肘打ちに決まってんだろ、肘打ちに。見て分からないのか?

 

「手前ェ……。今、絶対心の中で“肘打ちに決まってる”とか思ってんだろ……」

 

 

 そんなに睨むな心を探るな、何で当たってるか分からないから余計に怖いんだ。

 

 というかそもそも……。

 

「お前が悪いんだろうが! 人に“今度礼はするからサラマンダーで可愛いアバターの知り合いがいたら紹介してくれー”って言うから、俺は紹介してやったろうが!」

 

 

 俺がクラインの胸倉を軽く掴みながらそう叫ぶと、キリトとアスナさんがジト目でクラインを睨み始めた。

 

 クラインは一瞬その視線にたじろいだが、すぐに俺の胸倉を掴み返してきて。

 

「それが何だッてんだよ! 借りはいつか返すからいいだろうが!」

「自分だけプレイヤーメイドの武器とかおいしい思いしてんじゃねよ! そういった伝手があるなら紹介してくれてもいいだろうが!」

 

 

 クラインの半ば逆ギレとも正当ギレとも取れる叫び声を、自分の叫び声で打ち消しながらそう返すと、クラインは表情に焦りを出し、そのまま黙ったが。

 

「だったらもっと上玉紹介しろよ! 何なんだよあの女どもは! アバターが可愛いだけで性格最悪じゃねェか!」

「そんなの俺の知った事じゃねえだろうが! 大体お前の好みの性格なんざ知るかよ!」

 

 

 すぐに理不尽な理論で返して来た。

 

 流石にその言葉にはキリト達もドン引きしてる、シノンさんに至っては軽蔑としか取れない視線でクラインの事を後ろから睨んでる。

 

「手前の友人はあんなのしかいねェのかよ! もちっとマシな友人作れや! 人に奢らせて飲み食いしたと思ったら、パーソナルカードも渡さないでとんずらしやがって!」

「それは簡単に奢るお前が悪いだろ!? ていうかお前は事ある毎に女、女。女しか言えねえのかよ!」

 

 

 あぁ……何か凄い長引きそうだな、この口論。引く気はないけど。

 

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