『──はぁ、はぁ』
私はなけなしの貯金を切り崩して、唯一親身に接してくれた親戚の叔父から貰った情報を頼りに、とある片田舎に来ていた。
『この住所におじさんが一番頼れる人がいる。 そこにいけば絶対その人がなんとかしてくれるから、すぐに行きなさい』
そう言っておじさんはこっそり私にメモ帳の紙切れを渡して、おじさんの家に帰った。
傍から見ればそれは薄情だ、と思われるかもしれない。しかしおじさんは家のしがらみの中、出来ることを精一杯やってくれたのだろう。
──そんなことより今の私はとにかく生きる事を考えなければいけない。
指定の住所の最寄り駅についた頃にはすっかり日も沈み、まばらな街灯がぽつりぽつりと点灯していた。
そして私はなけなしの気力と、掠れそうな希望を胸に、インターホンを押した。
『どなた様?』
応答したのは少しハスキーで、高いはずなのに何故か落ち着く男性の声だった。
「すみません、コウジおじさんにここに行きなさいって連絡もらったんですけど……」
『……取り敢えず出るから、ちょっと待っててください』
少し私の地域の特有の訛りが入ったトーンで、その声の主は別段邪険にする訳でもなく、待っててと言った。
玄関の扉が開き、すごくガタイの大きい男性が現れ、こう言った。
「取り敢えず入り。 茶でもしばこか」
──────
そのお家は一般家屋と言うのは少し広い様に感じる一軒家で、奥の部屋からは賑やかな声が聞こえている。
「すまんなぁ、今ちょうど夕飯で、リビングがうるさぁてのう。慣れんと思うが、しゃあないとでも思うてくれ」
字面だけ見るとおっかないような、頼れるような、ぶっきらぼうなような、でも、声色と目がとても優しそうなその男性は、首筋をポリポリ掻きながら、私の事を見抜いたようにそう言う。
「い、いえ、そんな事!」
私は慌てて否定する。
「……ま、そこに家の家内がおるで、家内と宜しくしとき。俺はちょっと急ぎの用があるで、後で行くわ」
男性はそう言うと、「
「どうしたの
奥様、貴方のほうが私にとってはお若く見えます。
「ああ、穂南、多分やけど、あれや、ちょっと連絡してくるから、その間頼むわな」
男性はそう言うと、そそくさと歩き出した。
「はいはい、わかってますよ。 さ、取り敢えず上がって」
奥様も、全て理解していると言わんばかりの落ち着きで、私を歓迎してくれた。
今まで歓迎された経験などなかった私は、熟々と胸の奥が熱くなった。