黒い沈黙と夢の帽子<ドリスティーメア>   作:白木蓮人

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わたくし事ならぬリアルタイム事ですが、二話同日投稿となります。
キリのいいところまで書こうとしたら字数がヤバいことになったので二分割したのである。それでも多い気がするんけどさ。


交わる世界 III

 どごぉーん、と遠雷のような重低音が、大気をビリビリと震わせた。

 

 驚きで誰もが口をつむぐ中、からん、と鉄の棒が落ちる音が、いやに大きく響く。周囲だけは静かだからか、はたまた脱獄を試みている緊張感からか。

 ユナさんが、期待を含んだ声をあげる。

 

「お、焼き切れました?」

「一本だけな。もう一本やれば通り抜けられるか……」

 

 爆音が鳴ったのに、二人ともまったく動じない……いえ、かくいう私も慌てふためく機会を失った感じはするけど……

 ……ともかく、サルヴァドールさんは今、スティグマ工房製の高熱ナイフで鉄格子を焼き切ろうとしていた。いざというときのために懐に忍ばせておいたもので、他の武器とは違って没収を免れていたとのこと。

 

「しかしこんな工具のような使い方、工房に怒られるに違いないな。せめて手入れ料が高くつかないといいんだが……」

「ウチはお得意様なんですし、そうそう見限られることもないとは思いますけど。それよりナイフが壊れないかどうかの方が心配です」

 

 まだまだ時間がかかりそうな気配を察して、ユナさんはすごすごと座り直した。

 

 緩慢に流れていく時間……私はずっと同じようなことを考えていた。

 そして、やはり諦められないと結論が出て、再度サルヴァドールさんに話しかける。

 

「あの、やっぱり仲間にはしてもらえませんか?」

「またその話か。先程も言った通り、君を連れていくことはしない」

「なんとかなりませんか……もし危ない目に遭ったら、私一人では切り抜けられません」

「知ったことではないな。そんな我儘は、儂らに護衛の対価として差し出せるものを思いついてから言いなさい」

「対価についても考えましたが、なにも思いつきませんでした!」

 

 サルヴァドールさんは、あからさまに溜め息をつく。

 

「なんでもかんでも正直に言えばいいというものではないんだよ。ひたすらに、儂らが君を仲間にする利益は無い。これで話は終わりだ」

「でも……」

 

 なおも私が何か言おうとすると、サルヴァドールさんは、ガリ、とナイフを鉄格子に引っかからせた。

 

「もう十分だ。そうやって、ネズミのように人の脛に齧りついて。みっともないとは思わないのかね……君は一体どうして、そうまでして仲間になることにこだわる?」

「それは……」

 

 不信と軽蔑と嫌気とが混ざった言葉が、胸を貫いてくる。

 すぐに答えないと。そんな焦りが冷や汗となって全身に滲み出し、目の前が暗くなっていく。

 

 そうだ……確かに、別に彼らについていかなくてもいい。牢屋の外にいるバケモノに襲われると決まったわけじゃないんだから。それより都市の人間の方が確実に恐ろしい。フィクサーともなれば、人命を奪うことなんて日常茶飯事のはずなんだから。

 それなのに、拒絶されている場所へと自分をねじ込もうとして……私は一体どうしたいんだろう? 

 

 ”過去の失敗を忘れたの? ”

 

 迷う心に、そんな声が届いた気がした。

 

 ”こうやって仲間外れにしないでと懇願したよね? でも誰も受け入れてくれなかったから、あなたは……”

 

 その通りだった。一度目の人生で……あの研究所で私が死んだのは、分不相応な身分を求めたことが始まりだった。

 裏切られた希望は、絶望へと姿を変える。

 金色に燃えていた炎が、黒い炭になるように。

 

 ”ほら、見てごらん”

 

 顔を上げれば、灰色の街を行き交う雑踏が、私を近寄る価値もない燃え滓だと一瞥して立ち去っていく。

 ここにある光景では、他人ばかりが暖かそうで、自分ばかりが凍えそうで。

 その格差に心がぐらついていく。

 私を見捨てた力ある者達へと、爆炎となって目にものを見せてやれたなら、どれだけ胸がすくだろう。

 私を見限った白い衆目の前から、灰となってかき消えてしまえれば、どれだけ心が軽くなるだろう。

 

 いずれにせよ……このまま唯一の希望が折れてしまう前に、事を起こさないと。

 霜の降りた窓ガラスを掻き毟るのは、やめにしよう。せめて潔く、彼らの団欒から立ち去ろう。

 もう誰にも迷惑はかけない。今度こそ同じ失敗しないように、自分から手を離さないといけない。

 

 嗚咽にも似た浅い呼気が、何度も歯の隙間を行き来する。

 それでも。

 たとえ燃え尽きるとしても、私はやってみせるべきなんだ……

 

『……それが、正義と名誉が味方してくれることだから?』

 

 囁く声に、()は応える。

 希望が折れたからって、なんだって言うの? 

 

 あなたはこの行動が過去の繰り返しだと言うけれど。気にする場所が間違っているんじゃないかな。

 私の失敗は、他人に取り入ろうとしたことではなくて。絶対に挫折しないでいられる道を求めてしまったことじゃないのかな。

 周りの顔色ばかり伺って、本当に必要なものを見つめられなかったから。

 

『他人に成功を認めさせる前に、自分の失敗を認めるの……自分で自分のことを認めてあげないと』

 

 今だってそう。

 寒々しい世界に耐えきれなくて、衝動的に行動してしまうのなら、それこそ過去の過ちの繰り返し。

 今の私がやるべきことは、どれだけ不様を晒すことになっても生き残ること。

 昔の私の言うように、自分は暖かいですよと、無理に炎を燃やすことじゃないし。

 今の貴方が囁くように、自分は寒くありませんよと、格好よく火を消すことでもない。

 

 誰かの歩みを気にするんじゃなくて、私自身が踏み出すべき次の一歩を捕まえるの。

 

 ”……たとえ不出来な人生でも? ”

『不出来な人生でも、それが自分の人生でしょう。そこからはどうあっても逃げられないんだから、いっそ堂々としてやりましょう!』

 ”そう……今にも消えそうな最後のマッチの火を、大切にしながらもあなたは……”

『凍てつく風前に立つんです』

 

 ──私は目を開いた。

 

「……大した価値を示せないことは分かってます。他人に認められる結果を出せないことも、まるで信用できない判断しか下せないことも……」

 

 一つ、一つと自分の愚かさを認めていく過程は、背筋が凍るような恐怖だった。

 欠点を晒して何がしたい、と人は言う。

 

「なのに仲間にしてくれと。なおさら疑問だね」

 

 私は耳を傾けた。

 

「ええ、もっともな意見です。でも私は……」

 

 けれども、一つ、一つと炎が消えていく暗闇で……明るすぎる光に紛れてしまっていた、小さな火が輝くようになる。

 理想という名の幻影に裏切られながらも、最後に残った四本目のマッチの火。

 手のひらを焼きながら、遠い夢を語る灯りは弱すぎて、もどかしくて頼りないかもしれないけど……

 

 私は口を動かした。

 

「私はそれら全ての弱さが、『堂々としてはいけない理由』になることは無いと思います」

 

 私の物言いに、老人は乾いた喉を鳴らして笑う。

 

「君は能力や権威も無いまま胸を張るというのかね? 随分と滑稽なことだ」

「ええ、そして能力や権威が無くては胸を張れないというのも、臆病なことです」

 

 老人の顔から笑みが消える。

 

「私は滑稽でも、勇気ある人間でいたい。ですから、質問の答えとしては──」

 

 ……こうやって立ち向かったところで、輝かしい道が切り拓けるとは思わないけれど。

 輝かしい道だけに踏み込もうとも思わないから。

 

「──それが、私が生きていく道だからです」

 

 しぃん、と。

 静まりかえった空気に、私は密かに体を握りしめて耐え忍ぶ。

 間違ったことを言ってたりしないだろうか。

 腹を抱えてバカにされるならまだマシだ。失望されて、話す価値も無いと目も向けられなくなるのが、きっと一番辛い。

 でも……辛くても前へ。苦しくても目を開けて。

 

 答えを待つ私に、壁の向こうから微妙な呼吸音をさせながら、サルヴァドールさんは口を開いた。

 

「……なるほど、君は一番噛みやすい脛ではなく、一番噛みつくべき部位へと食らいつくネズミなわけか」

 

 しみじみといった具合に、サルヴァドールさんは息を吐いていた。

 

「ならば君は、どうしようもなくなったら無理にでも儂らの後ろについてくる気かね」

「それは……そうなります。譲れないものを前に、なりふり構ったりはしません」

「そのときは、自分の身は自分で守れるかね」

「……難しいです」

 

 彼は僅かにしわがれた喉で、長々と唸る。

 

「そこがどうにもならんのだよ。やろうと思えば君に手を貸すことは出来よう。しかし『利他心』という名の()をかいて死んでいった同業者を何人も見てきた身としては、どうにも……」

 

 言葉を濁らせて、サルヴァドールさんは黙り込み、ただナイフが鉄を焼くジリジリとした音だけを手元から鳴らす。

 

 でも、どうやら心証を悪くなさそうだった。『仲間にする理由がない』から、『仲間にできない理由がある』へと、変わってくれたから。

 あともう少し。あと一歩、あと一押しだけなにかあれば……

 

 そう強く念じていた時。

 誰もいないと思っていた、反対側の隣の牢屋から、鉄格子を叩く音がした。

 

「勝手に話を聞いて、勝手に口を挟むようで申し訳ないですが」

 

 姿の見えない誰かは、男性の声をしていた。冷静で優しいような……でも暗澹ともしているような、奥深い感触。

 そして彼はこう言った。

 

「こういうのはどうでしょう。私が彼女の身を守るというのは」

 

 誰もにとって唐突な提案に、真っ先に声を上げたのはサルヴァドールさん。

 

「どういうことかね?」

「幸か不幸か、私は仲間と一緒の場所に落ちてきたわけではないようで、今は独りです。片手間に他人を護衛するくらいは可能かと」

「ほう、それだけの実力があるとは感心だ。では彼女を放っておいて、儂らと共に行くという選択肢はどうだ?」

 

 サルヴァドールさんの言う通りだ。私なんかに構わないで、三人で行動した方が生き残りやすいだろう。

 けれども、彼の淡々とした声色は変わらなかった。

 

「他者の弱点を補うつもりがない人間を、仲間にしたいとは思えませんね」

 

 あまりにも憮然とした受け答え。

 くつくつと喉を鳴らしたのは、老人の方だった。

 

「……まったく、夢見がちな小娘に続いて、生意気な若造にまで噛みつかれるとは。もう少し話の分かる輩とご一緒したかったものだ」

 

 彼は気の抜けた抑揚で、

 

「いいだろう。君たちの仲間入りを認める」

 

 ついに、私の意志に応えてくれた。

 歓喜に息をのむ。そして向こうから視界が通ってないことも忘れて頭を下げた。

 

「本当ですか!? ありがとうございます!」

「提案を受けてもらったこと、感謝します」

 

 謎の存在さんも丁寧に謝辞を述べる。

 これらに対し、ユナさんはサルヴァドールさんのいる牢屋に身を寄せた。

 

「いいんですか師匠?」

「無償で剣を振るわされるのは気に喰わん。だが図書館に恩を売る機会を失うのも惜しい」

「……というと?」

「マルクト君は言ったね? 『どうあっても後ろをついてくる』と。つまり仲間と認めようが認めまいが、どちらにせよ同じような結果になる……彼女を背中に控えて敵を斬ることになるわけだ」

 

 サルヴァドールさんは、フンと鼻を鳴らす。

 

「で、あればだ。『仲間にしない』と見捨てた形にして恨まれるより、『仲間にしてやる』と守ってやった形にして恩を売るほうが得になる」

「そういうことですか。わざわざ殺す理由もないわけだし……まさかあんた、このことを見越して……」

 

 と、ユナさんが目を丸くして振り向いて、

 

「……たりはしなかったみたいだね。なのに口論なんてしたんだ。肝が据わっていること」

 

 素知らぬ顔して目を逸らす私に、呆れていた。

 

 いやまさか、私の身にそんな価値があるなんて盲点だった。

 今の図書館は蔵書の大部分を失って閉館したとはいえ、一部の知識は司書の頭に入っている。中でもアンジェラになら、ロボトミーで使われていた『特異点』について教えることも出来るわけだし、そんな情報を都市のフィクサーが手にすれば、一気に成り上がれる可能性が開く。

 

 まあ、だとしても分の悪い賭けではあるだろうにね。

 私たちはアンジェラが素直に恩返しの出来る人だって知ってるけど、彼らはそうじゃない。たくさんの人を殺して本に変えてきた血の通ってない機械としての姿しか見ていないのだから、あっさりと恩を仇で返される未来の方が想像しやすいはずだ。

 

 なんとなくだけど……このことを私の方から提案しても、切り捨てられてたんじゃないかな。

 

「釈然としないって顔だ」

 

 ユナさんに横目で見られていることに気付いて、頬をかく。

 

「すみません。でもやっぱり不思議で……」

「あんたの思ってる通り、カネのために血を浴びたり、冷酷で打算的だったりするのがフィクサーだよ……でも同時に、小さな幸運や不運が落ちてきて一喜一憂したり、事務所の仲間との益体もない関係が大事だったりするのもフィクサーだ」

 

 彼女は自身の両手を眺める。

 それは誰かの傷口から返ってきた血の温かさを思い出しているようでもありながら、誰かの手のひらから伝わってきた血の温かさを思い出しているようでもあった。

 

「冷たい部分もあれば、暖かい部分もあるのが人情ってもんでしょ。その落差が不気味に思えたりもするだろうけど……そうだ、あんたもフィクサーなら分かるでしょ? お隣さん」

「……ええ、麗らかな光を護る為に、硬い氷の殻を構築することもあるでしょうね」

 

 急に話を振られたからか若干の躊躇を見せつつ、お隣さんも肯定する。

 

「そういうこと。確かに私らはいつだって平然と人を殺すけど……」

 

 遠くに思いを馳せるようなユナさんの顔には、仄かな笑みがあった。

 

「それでもやっぱり、懐に入って来たやつはやり辛いよ。なんとか同時に生きてもいい理由を探したくなる」

「ユナさん……」

 

 私、ちょっと涙を流しそうになってる……

 彼女はまたふっと笑うと、顔を近づけてきて、ひそひそ声で言った。

 

「というかここだけの話……もし私が残酷でしかない奴だったら、事務所の穀潰しから殺してるっての」

 

 ユナさんの視線の先を、私も見て……目をしばたたかせる。

 

「ご、穀潰しさんなんですか……?」

「家賃にも満たないような安くて楽な依頼ばっかり受けるうえに、もう将来性も無いからね……」

 

 それでも私たちの師匠だから。とユナさんは壁に背を預けた。

 

 カラン、と鉄格子が落ちる音がした。

 

「よし、これでこっちに来られますね」

「いや待ってくれ、やっぱり二本分の隙間では足りんかった。もう一本必要だな……」

「……今は師匠だけが頼りなので、どうにか頑張ってください」

 

 また立ち上がりかけては座り直すという動作をすることになったユナさんに、私は苦笑いしたのだった。

 

 

 

 ふと、監獄がにわかに騒がしくなる。聞こえる限りだと……あまり遠くはない場所の通路を、大人数が移動している音かな。ロボトミー社で何度も同じような音を聞いた経験があるから、この推測には自信がある。

 

 謎のお隣さんが、いぶかしげに喋る。

 

「おかしいですね。爆音が鳴ったのは遠方だったはず。なぜこちらに騒ぎが近づいてくるんでしょう」

「もし誰か来たら不味いな。流石に鉄格子を外したのは誤魔化しようがないぞ。あと少しでこちらは焼き切れるが……君たちの鉄格子にまた苦戦することになるわけだから……」

 

 サルヴァドールさんの懸念に、悪い想像が膨らんでしまう。

 いかつい看守たちに、唯一の希望である高熱ナイフが没収され、ここよりもっと厳重な牢屋に入れられたら……もしかすると、脱獄を試みた罰として拷問や処刑までありえるのかも。

 心中でワナワナと震えていると、ユナさんがまたじーっと見つめてきて、こう言った。

 

「ねえ、あんたって本当になんの力も無いの?」

「申し訳ないですが……」

 

 私がそう返してもなお、彼女はじーっと……私の頭の上を見続けてきて、

 

「じゃあそのヘアバンドついてる()()()()()()はなんなの? あの黄色い女の子のとそっくりだけど」

「え?」

 

 そこで私は、いつも着けてる赤いヘアバンドを外して手に取った。

 ぱちくり、とまばたきする模様と目が合う。

 ユナさんの言う通り、ヘアバンドの上部に白いチョークで描いたような目の模様があった。

 

「本当ですね。あの女の子の帽子に描かれてるものとそっくり……」

「心当たりは無いの?」

「ありません……いえ、でも何か伝わってきます。これは……」

 

 そのヘアバンドから、私の心に染み渡ってくるイメージがあった。

 

 黒く焦げた炎。

 寂しい綿の両腕。

 舞い踊る青緑の鱗粉。

 警告色の虫の国。

 腐った執念で乾いた茎。

 

 ……彼らもまた、図書館からついて来ていた。

 

「そっか、どうりであなたの声が聞こえたんだね……」

 

 怪訝な顔をするユナさんを尻目に、私はヘアバンドを付けなおしながら立ち上がる。

 早速、出番が来たみたい。

 

「みなさん、後ろに下がって伏せてください!」

「……へ?」

「なんだね急に」

「わかりました」

 

 三者三様の反応をされつつ、私はヘアバンドを……いや、『幻想体で創られた帽子』の力を呼び覚ます。

 

「今からこの牢屋をぶっ壊します!!」

 

 世界を揺らす閃光が、帽子より発されると。

 いつの間にか、私が身に纏う装束は一片していた。

 

 熱を帯びた炭か灰か、そういうものに見える未知の材料で構築された衣を着ていた。それは今もボロボロと火の粉を散らし続ける。

 そして片手には炎の剣……だと思えるような、燃え盛る巨大なマッチ棒が手にされていた。

 ……大丈夫、火傷なんてしない。むしろ冷たいくらいだから。

 

 決して、ただの衣装替えではない。

 これぞ外殻で発明され、L社によって完成した、幻想体から抽出される武装……『E.G.O』。

 感情を対価として、人類の深層に身を浸して。

 他人の自我の殻を被り、その力を借り受けるんだ。

 さあ、絶望の淵で切実な火を灯す、この幻想体の名を叫ぼう──

 

「世界を灰へ還すために、一緒に歩き始めましょう──『燃え尽きた少女』!」

 

 呼応して、全身で火花が爆ぜ散らかす。

 やることは単純だ。

 部屋と通路とを隔てる硬い牢屋に、マッチ棒を振りかぶって……思いっきり水平に振り抜く! 

 

 次の瞬間、地平線に昇る朝焼けを間近で目撃してしまったような、圧倒的な光熱で視界を真っ赤に染められる。

 一拍置いて、猛烈な熱波が体をなぶる。

 あわや着ている服の端から焼け飛び、血の一滴まで灰になりそうな炎の海が広がった。

 

 咄嗟に身をかばった人々が。

 次に瞼を開ける頃には……

 

 炎の残滓、煙と煤が粉雪のように黒く舞っている。

 皆を閉じ込めていた牢屋は、全てまとめて真っ二つに引き裂かれていて、もう誰も閉じ込められそうにはない。

 床には石壁から作られたであろう溶岩が流れて、火をちろちろと揺らしている。

 通路では、ほとんど蒸発した蝋燭の僅かな残りが壁に張りついて溶けていた。

 

「……よし! 脱出しましょう!」

 

 と、E.G.Oが光の粒子となって消えて、元の姿に戻った私はガッツポーズして前に進む。

 融解して無残な歯並びになった鉄格子の間では、熱で大気が揺らめいていた。火傷しないように越えないとね。

 

「……その力について色々と聞きたくはあるんだけど、それよりもさ……」

 

 一緒に牢から出たユナさんが、微妙な面持ちで話しかけてくる。

 

「バカみたいに目立つことしたわけだけど、これから遭遇するであろう邪魔者と袋小路、全部あんたが焼き払ってくれるの?」

「……あっ」

 

 そういえば、近くで人の気配がするから急がないとって話だった。すぐに牢から出られたのはよかったけど、絶対に誰かが様子を見に来るよね……ついつい幻想体の呼びかけに感化されちゃったというか、なんというか。

 私はヘアバンドに手を当てて念じてみる……うーん、みんなやる気が無い。こうして制御された幻想体は、ご機嫌をとってあげないとエネルギーを産み出さないようで。

 

「れ、連続使用は出来ないみたいです……」

「……ああもう、師匠この子思い切りがよすぎます……!」

 

 頭を抱えるユナさんもそこそこに、両隣の牢屋からも、無事に人が出てくる。

 サルヴァドールさんは反対側の牢から出てきた青年に顎をしゃくった。

 

「これの責任を負うと言ったのは君だからね」

「さあ、そこまでは言ってないと記憶していますが」

 

 にべもなく流されていた。

 これはやってしまったか……私は笑顔を顔に貼り付けつつ内心ダラダラと汗をかいていたけど、思ったよりみんな気にした様子もなく次の話に進んだ。

 

「ともあれ、まずは自己紹介といこう。改めて儂は夜明事務所の所長、サルヴァドール。こっちは事務所員のユナだ」

「……本当に今更な感じがするけど。どうも、よろしく」

 

 図書館で接待した時と変わらず、サルヴァドールさんは初老の男性だ。落ち着いた色調の服を、気楽に着こなしている。中でもカーキ色の外套が特徴的で、イケてるおじさま、という形容がピッタリ。大人っぽい雰囲気のユナさんと並べば、ことさら画になるというか……ファッション雑誌に載っても問題なさそう。

 

 次にみんなの視線が私に向いたので、私はそれに応えてビシッと背筋を伸ばした。

 

「はい! 私は図書館で歴史の階の指定司書をやっています、マルクトです! よろしくお願いします!」

 

 私の服だって負けてないよ。司書用の制服に、髪色と合わせたブラウンカラーの上着を羽織っている。制服といっても堅苦しい感じは無くて、むしろカジノとかにありそうな洒落た雰囲気があるものだ。

 思えばこれって、アンジェラが作ったと考えるのが自然だよね? あの時の彼女、意外と楽しんで図書館を作ってたのかな……

 

 そして最後は謎のお隣さん。

 彼は青年という言い方がピッタリの男性で、黒一色の上下の服に、これまた黒いコートに身を包んでいる。どれも撥水と防寒に優れていそうな、つやつやした素材だ。

 路地を映したような黒髪には、少しだけ白色が混じっている。路肩に溶け残った雪のように。

 

「──『寒天事務所』の、リュウヤです。よろしくお願いします」

 

 彼はふざけた感じが一切無い所作で、軽く頭を下げた。

 ……寒天事務所、か。これも当然ながら、図書館が喰ってきた事務所の一つだ。やっぱり図書館が解放した人を、横から誘拐されているので間違いないらしい。

 

 挨拶を終えると、全員が顔を見合わせる。私も空気を読んで、とりあえず顔を見合わせておいた。

 

「……さて、そろそろか」

 

 サルヴァドールさんが呟けば、ほどなく通路の曲がり角の見えない場所から、ざわめきが押し寄せてくる。それは足音であったのだろうが、あまりに多くの種類で混濁している音響は、意味不明な唸りにしか思えなかった。

 

 そして彼らは曲がり角からはみ出てくる。人の顔が、狼の鼻頭が、トカゲの前足が、魚の死んだ目が、天使の翼が……

 ぞろぞろと後ろに続いてくる。真鍮製の人形、緑の肌をした小人、歩く大根、腐った死体、大きなカニ……

 

 悪夢のように脈絡が無く、雑多な姿形をした生命体たちが、通路を覆い尽くす。

 あれがユナさんが言っていたバケモノ……珍妙な見た目をしていたりもするが、漂う気迫からして、私なんかでは一方的に殺されるだけだろう。

 

 その中で、先頭集団にいた個体……小さな人間に透明な羽が生えている、いわゆる妖精が目を丸くして声を上げた。

 

「オイ! コイツら、都市の世界のニンゲンじゃないか!?」

 

 指差された瞬間、悪寒が全身を貫いた。

 バケモノたちの、目、目、目……もしも敵意を持った視線というものに糸のような実体があったら、私たちはそれに埋もれていたことだろう。

 

「都市のニンゲン。コロス」

「仇は討つ。カンネンしろ、ゲドウども……」

 

 獣が牙を剥いて爪を研ぎ、剣士が摺り足をして刀に手をかける。ヘドロの塊が不穏に膨れて、ひとりでに宙に浮く銃口がこちらを向く。

 その他、人間が考えうる全ての威嚇を向けられて、思わず歯を強く噛み合わせる。

 私以外の三人も、体中から緊張を隠しきれていなかった。いかに経験豊富なフィクサーといえども、絶体絶命を予感して平然とはしていられないようだった。

 

 考える時間は多くない。

 流れからして、もう弁解や説得は火に油を注ぐだけ。

 まともな武器だって誰も持ってない。

 出口も分からない、行き止まりがどこにあるかも知れないこの監獄で、夥しい数のバケモノから逃げきれるか。

 出来なければ……リンチ、という表現では足りない量の暴力で、赤く濡れそぼった死体を晒すことになるのかも。

 

 私は握りしめられたサルヴァドールさんの手を見つめて、決断の時を待つ……

 

「あれ、もしかしてあの二人……みんな、ちょっと待って!」

 

 澄んだ声が震えて、バケモノたちが動きを止め、背後を振り返った。

 何事かと首を伸ばす私たちの前で、群衆の海が割れていく。そして彼らに見守られながら、一人の少女が歩いて来た。

 

「うん……やっぱり特徴的な口ひげがあるの。お年寄りのフィクサーは珍しいみたいだし、となりに女の人もいるし、本当にあの話に出てきた人とそっくり……」

 

 少女は私たち……というより夜明事務所の二人をまじまじと眺める。

 紅茶色の髪が揺らめきながら腰下まで流れ、桃色の肩出しドレスが肢体をなぞるように飾り……そして目の模様がついた逆さ台形の大きな帽子。

 うん、あの黄色い子と同じで可愛らしい。ピンクのチューリップに妖精がいれば、こんな容姿で蕾の中から顔を出すのかも。

 

「ナンデ、止める……?」

「都市のヤツら、ミナゴロシにすベシ!」

 

 バケモノは止められたことに立腹して口々に騒ぐ。けれど物騒な手段をとらないあたり、あの少女がかなり重要な立場にいることが伺えた。

 彼女は群衆に振り返ると、

 

「あのねみんな……このおじいさんとおねえさんは、オトモダチかもしれないの!」

 

 なにやら不思議なことを言い出した。

 ……友達って言葉は、かもしれないって言葉が後に続いていいものだっけ? 

 

「カモシレナイ……?」

「トモダチか? ソウじゃないのか?」

 

 バケモノは困惑していた。もちろん、夜明事務所の二人も。

 

「なんだね、急に人のことを友達とかなんとか……まさか『中指』の傘下組織か?」

「怖いこと言わないでくださいよ。自分勝手な価値観を押し付けられると、ただでさえ意味が分からなくなるんですから」

 

 しかもお互いの様子からして初対面だよね、これ。

 この周囲の困惑ぶりは流石に無視できなかったのか、桃色の少女は弁明しだす。

 

「えっと、オトモダチだけど正確にはそうじゃないというか……それっぽい可能性があるというか、確認しないとダメというか……うん、名付けて『仮トモダチ』なの!」

「カリ……?」

「トモダチって言葉が入ってるから、つまりトモダチ!」

 

 結局、意味の分からない概念が誕生した。

 めでたく仮トモダチとなった二人をよそに、今度は私とリュウヤさんの方に目を向けてきた。

 

「えーと、そっちの人たちは……」

 

 彼女はどうにも扱いに悩んでいるようだった。

 そこにリュウヤさんが即座に断言する。

 

「私たちはこの二人の友達です」

 

 夜明事務所の二人を指差し、あまりに平然と言い切ったものだから、えっ、と驚きの声をあげる隙も無い。

 そんな誰も口を挟めない状況が、傍から見れば言葉もなく理解し合っているように見えたのか。この言い分は、どうやら少女に通じたようだった。

 

「ということは、仮トモダチのトモダチ? うーん……まあいいや、あなたたちも仮トモダチってことにしてあげるの!」

 

 私たちも仮トモダチになった。よかったのかな? 

 でも少なくともこの場は、彼の機転に助けられた形になる。さもなければ、今頃あのバケモノたちにむしゃむしゃと群がられていても、おかしくなかったから。

 

 それじゃあ、と少女は私たちに向き直って、ドレスの裾を軽く摘まみ、無邪気な笑顔を浮かべた。

 

「初めまして、新しいオトモダチさん! モーノは『友達の世界の管理人』なの! 今は帽子世界中を巡りながらデコイたちとオトモダチになって、都市の乱暴者たちに殺されないように、安全な場所に連れてってあげてるんだよ!」

 

 ……はい? 

 この情報の濁流にはユナさんも、意味不明な数式を突き付けられたかのように困惑した顔になっていた。

 

「えっと……カンリニン、ボウシセカイ、デコイ……?」

「あー、ご丁寧にどうも、儂はサルヴァドールというんだが……安全な場所というと、君はそんな場所を知っているのかい?」

 

 一方でサルヴァドールさんは、なんとなく話を合わせることにしたようだ。誰も戦う術の無いこの状態では、どうあれ波風を立てないに限るのだから。

 チューリップの妖精、もとい……モーノさんは、ふるふると首を横に振る。

 

「ううん、残念だけど、今の帽子世界に絶対に安全な場所は無いと思うの……だからこうしてみんなで力を合わせながら、誰も暴れてない場所にどんどん移動していってるの」

「ふむ、つまり避難しているわけか? この監獄にもそういう理由で?」

「鍵の世界には誰も出入りできないから、絶対に安全だって考えたの。でもあなたたち都市の世界の住民が来られたってことは、ここも安全とは限らないんだね……」

 

 サルヴァドールさんは、彼女の後ろに控えるバケモノたちを見やった。

 

「絶対に出入りできないと言いながら、団体様でいらっしゃったようじゃないか」

「それはね、なんかテーブルをどかしたら地面に穴が開いてたの。そこに入ったら鍵の世界だったの」

「絶対に出入りできないって謳い文句はなんだったのかね……」

 

 いよいよ話を合わせるのも限界か、サルヴァドールさんは額に手を当ててのけぞった。

 そんなおじいさんに、少女は不思議そうな目をしながら、

 

「えっと……とりあえず、おじいさんたちはどうするの? このままモーノについてくる? それともこのコゲ臭い場所で待ってる? どっちにしても、本当のオトモダチかどうかは後で確認させてね!」

 

 そう言い残して、モーノさんは手を振りながら立ち去っていった。とりあえず、バケモノ集団との荒事に発展せずに、やりすごせたみたい。ほっと胸をなでおろす。

 ぞろぞろと続く行列を眺めながら、サルヴァドールさんは、彼女の興味を引くきっかけとなった立派な口ヒゲをさすった。

 

「さて、ついていくかは迷うところだね」

 

 その呟きに、私は前に出てモーノさんの背を目で追った。

 

「今のところ、悪意は感じられませんが……」

「知性も感じられない」

「うっ、情け容赦ない……」

「いいかね君、立ち入り禁止にされている場所にこんな大人数引き連れて侵入するような輩はな、絶大な自信があるにしろ、後先を考えてないにしろ、どうせまともじゃない」

 

 確かにそうかもしれないけど……

 図書館を訪れた者は皆、都市の中でも荒事を得意としてた。なにせ自分の命を掛け金に、司書を殺して、本を持ち帰ることに同意して来たんだから。

 そんな人たちがある日、場違いな世界に迷い込んでしまったら……ここは、そういう事態に陥ってるんじゃないのかな。

 

「都市の人たちから逃げてるみたいな話もありましたし、切実な事情があったのかも」

「それなら後者だ。後も先もなくなった巨大な泥船は、周囲に被害を撒き散らしながら沈んでいくことだろう」

 

 そうしてサルヴァドールさんが踵を返そうとした、丁度その時だ。

 あちこちから大きなコウモリやカラスが飛んできて、何やらせわしなくモーノさんに喋りかけはじめた。他の場所の偵察でも任せていたのだろうか? 

 

「え、また都市の人が暴れてるの? 黒いおじさんと青いお姉さんが……プリムローズ、かわいそうなの……」

 

 ただ、次に続いた情報がよほど衝撃的だったのか、モーノさんは高く声をあげる。

 

「え、メルが味方についてるの!? そんな、どうしよう……と、とにかく、はぐれちゃった()()()()()おにいさまと合流しよう!」

 

 と、ひとしきり叫んだ彼女は、慌てて早歩きしていく。

 隣を見れば、夜明事務所の二人の足は完全に止まっていた。半ば茫然とした表情で、ぽつぽつと口を開く。

 

「……聞きましたか師匠。あの変な女の子ですけど、ついていきませんか?」

「同名なだけの別人だとしても、『フィリップ』君の名前が出た以上は選択の余地が無いな……悪いが二人とも、これからあの友達の管理人とやらに同行する。儂らの事務所の仲間が彼女の下にいる可能性が出た」

 

 振り返るサルヴァドールさんに、私とリュウヤさんは黙って頷いた。四人揃って、モーノさんの背中を追いかける。

 足早になる二人の後ろ姿に、私は口の中で呟く。

 

「でも……あなたたちの知っているフィリップさんは……」

 

 もう、死んでいる。

 彼は最終的に、図書館で本にもならずに死んだ。二度と生きて目覚めることはない。だから別人であるはずなんだ。

 そう思う一方で、拭い切れない悪寒がする。

 図書館の犠牲者ばかりが誘致されたこの世界で……はたして彼らとの因縁が再び結ばれないと、どうして確信できるだろうか。

 

 遠くから、サルヴァドールさんとモーノさんの喋り声がする。

 

「あ、ついてくることにしたの?」

「少し気になることもあるからね。それで恥を忍んで訊くんだが……そもそも管理人とか帽子とか、どういう意味なのかね?」

「そういえば都市の世界の人って、帽子世界のことをまるで知らないんだっけ。分かった、歩きながらお話してあげるの」

「頼んだよ。あと儂らの武器も回収したいんだが、寄り道してもらっても?」

「えー……乱暴しない?」

「情報の対価を安く見るつもりは無い、とだけ言っておこう」

 

 彼らの会話が続いていく間にも、私はかける言葉が見つからなかった。

 あるいは、期待に満ちた目を閉じさせることなど、誰もすべきではないのかもしれない。

 彼らに真実を告げる時は今じゃない……彼らが事実を受け入れる準備が出来た時だ。

 こうして先送りにする決断が、自分の臆病さによるものではないことを祈りながら歩いていると、背後から視線を感じた。

 

「……」

 

 リュウヤさんだ。もしや彼は、私の心にある恐れを、逃さず嗅ぎ取ったのだろうか。

 冷静と誠実。穢れ無き新雪で造られたような彼はその実、獰猛な獣を思わせる真紅の瞳を持っていた。

 

 私はそっとヘアバンドに手を当てる。

 幻想体のみんなは、まだ目覚めようとはしない。でもきっと、すぐに必要になる。

 この先に待っているのは、幾重にも折り重なった苦難である気がするから……




MOD紹介コーナー『寒天事務所』

名前の通り、『寒天事務所』をはじめとした、いくつかのゲストを追加するMOD。
今回の話に出てきた『リュウヤ』は、件の寒天事務所の設立者であり頼れるリーダー。
なお、この話を投稿した時点だと、このMODのストーリー部分は日本語翻訳されてない。それ以外のコアページやバトルページ、本のストーリーはばっちり翻訳されてる。
まあMODの翻訳なんてファイル漁ってAIに投げたら終わるから、自分でやっちゃえハッサン。

寒天事務所が犠牲になるまでの簡単なストーリーとしては、

平和に暮らしていた寒天事務所。しかしある日の依頼の帰りに、『アレクセイ』率いる一部のメンバーが、謎の組織に脅されて無理やり図書館入り。製本される。
その後、リュウヤをはじめとした主要メンバーが、アレクセイたちが帰ってこないことを不審がっていると、ハナ協会から図書館に行けとのお達しが。スポンサーからの要請は断れずに図書館入り。製本……

という流れ。いつもの都市と星と図書館である。

寒天事務所の特徴として、束縛の状態異常と、それに関係するパッシブ、バトルページがある。
束縛でマッチコントロールできるのはもちろん、束縛がある相手とのマッチが有利になったり、付与した束縛の数によってバトルページが強化されたり。
相手に使われてみると分かるが、マッチ操作をほぼ思うさまにされた上で、不利なマッチをすることになるのは、かなりキツい。

弱点として、ダイスの数や出目や効果自体は平凡。特にダイスが3つあるページは稀と言っていいレベルで少ない。(代わりに数少ないそれらは強力無比だが……)
また、威力はともかくダメージ量の補正がまるで無いことも弱点の一つか。
もっと身も蓋もないことを言えば、紫の涙で状態異常を弾いてしまえば終わりである。

そして自分で寒天事務所のページを使う時に解決すべき問題として、どうやって十分な束縛を付与するかという点がある。
LoRの戦闘においては、何か特殊なことでもしないかぎり、一幕の間に使えるマッチ用ページは一枚か二枚くらいのもの。
同時に、束縛付与できる光回復ページなんて贅沢なものはMOD環境で見てもごく稀であり、確実に的中効果を発動させるもの難しく……そうなれば、一人のキャラクターが、一幕の間に付与できる束縛の数は、安定しないし、思ったより少ない。敵が多人数となればなおさらである。

このことについて編成単位で考えておかないと、束縛がうまく付与できずに、強みを発揮できない。

一番単純なのは、司書全員に寒天事務所のパッシブやバトルページを採用すること。
ピン刺しするだけでも、五人分の力があれば、だいぶ安定する。
他は階層の幻想体ページを使うとか。
束縛を補助できる幻想体はちょこちょこいるので、思い出してあげよう。
環境に他MODがあるのなら、それで一幕の間に多数のページを使えるように、リソース関連を強化するのもいい。

ちなみに、寒天事務所MODのバトルページのエフェクトは、その多くがアニメーションするタイプのものになっていて、とても綺麗。
コアページ、バトルページのデザインも凝っていて、見ごたえアリアリ。(ネームドのコアペは、だいたい司書の見た目を乗っ取っちゃうので、そこが辛い管理人はいるかもしれないけど)

高難易度ではあるが、それに見合った面白さをたくさん提供してくれる寒天事務所MOD。
今回は『寒天事務所』だけの紹介にとどまったが……その先は是非、自分の目で確かめてくれ!
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