ゼンノロブロイの英雄譚 〜Rob Roy of the Royal Road〜   作:C.S

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第11話 柏トレーナー

『私を、このチームに入れてください!!』

 

あのウマ娘は──『ゼンノロブロイ』は、そう言って、チーム『アルネブ』の門戸を叩いてきた。

初対面の印象は、お世辞にも良いものではなかった。

内気そうな少女、小柄なことも拍車をかけていた。

まるで野ウサギのような、か弱いウマ娘だと感じた。

まぁ、この時期は同じようなウマ娘が何人も来ていたので、あまり驚きはしなかったのだが──。

 

俺は──『柏 雷平』はトレセン学園のトレーナーを務めている。

ワインとカレーうどんが好きな、どこにでもいるアラフォーだ。

他のトレーナーからは『枯れ木のよう』と揶揄われる程度には痩せているので、一見すると頼りないかもしれない。

だが、トレーナーとしての腕には自信があった。

若い頃は海外でウマ娘の育成に力を入れていた。

かつてはL'Arcの栄光を、3人のウマ娘に獲らせたこともあった程だ。

運も絡んだとはいえ、間違いなく当時が最高潮だっただろう。

トレセン学園から、トレーナーとしての招待を受けたのも、この頃だった。

 

だが、ここ数年、ウチのチームはお世辞にも、強豪と言えるような成績は残せていなかった。

G1ウマ娘を輩出したこともあったが、それは彼女らの才があったからこそだ。

腕が落ちただとか、勝負の勘が失われただとか、マスコミには散々な書かれようだった。

怒りよりも自分自身への情けなさが勝ってしまったよ。

 

転機が訪れたのは、1年前の冬に『シンボリクリスエス』をスカウトした日だ。

彼女はアメリカからの留学生だ。

生徒会長の『シンボリルドルフ』に招待され、日本のトレセン学園へと編入してきたという。

境遇としては、俺とよく似ていた。

とは言え異国、当然ながらクラスメイトもチームメイトも日本のウマ娘だ。

クリスエス自身、お世辞にもコミュニケーションが上手ではない。

また、彼女が纏う近寄りがたい雰囲気も相まって、他人からは勝負にストイックなウマ娘と評価されていた。

本当は口下手なだけなのだが……。

 

しかし、この評価は、あながち間違いではない。

こと勝負において、クリスエス飢えた獣のように貪欲だった。

生まれ持ったフィジカルと、トレーニングに打ち込むパッション、勝利へのストイックさ、全てが一級品だった。

その実力をもって、彼女は『天皇賞・秋』と『有マ記念』の2冠を制覇した。

この喜ばしいニュースは、世間は勿論、学園中にも疾く知れ渡った。

その噂を聞きつけてか、ウチのチームへの入部希望者が殺到する事態に陥った程だ。

『ゼンノロブロイ』も、そんなウマ娘たちと同じだと思っていた。

 

「有マ記念を見て思いました!」

 

クリスエスとお近づきになりたい、というファン意識が強いウマ娘の1人だと……。

けど、それは誤りだった。

 

「私は、彼女のような……ううん、クリスエスさんを超える、『英雄』になりたいんです!」

 

驚いたことにロブロイは、クリスエスの姿に、『英雄となった自分自身』の姿を見ていた。

しかも、あの有マ記念を──9人のG1ウマ娘を薙ぎ払ったクリスエスを見た上で、こんなセリフが飛び出したのだ。

見た目で騙されていた、彼女は野ウサギなどではなく、飢えた獣だった。

クリスエスのような……否、それ以上のポテンシャルを秘めているような──。

 

 

 

 

 

「──そうだ、ロブロイや。お前さんの内に燃ゆる炎は、まだ残っているんだろう。だから苦しんでいるんだろう」

 

合宿所の窓から見える景色、冷たそうな海が夕日で茜に染まっている。

その砂浜を、紅白のトレセンジャージを着たロブロイが走っている。

初日のトレーニングは無しと言ったのに、彼女は自主練していた。

それも、何かに取り憑かれたような疲れ切った表情で……。

 

「俺は、彼女に何をしてやれるだろうか……」

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