ゼンノロブロイの英雄譚 〜Rob Roy of the Royal Road〜   作:C.S

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第12話 好敵手

ロブロイは──私と、よく似ている。

去年の私も──ロブロイと、同じローテーションを走った。

皐月賞は、出走条件を満たせなかった。

青葉賞で勝ち、日本ダービーに挑んだ。

そこで、2着に敗れた──。

 

ロブロイは、小さな身体で、4メートルはあろうかという大きなタイヤを引いていた。

砂浜には、延々とタイヤの跡が残っていた。

悔しさが、ロブロイを突き動かしている。

だけど、その衝動は、彼女の身体を壊しかねない。

その姿も、去年の私を、見ているようだった。

 

「悲嘆に暮れているな。我が運命の朋友(ディオスクロイ)の片割れよ」

「──タニノギムレット、か?」

 

振り返ると、1人のウマ娘が立っていた。

左目に眼帯を付けたウマ娘だ。

私の"friend"であり、"rival"でもある、ウマ娘だ。

 

「お前のチームの新入りか。冥府(タルタロス)へ疾走する様は、まるで死神(ハデス)の足跡を辿っているようだ」

「……何を、しにきたんだ?」

「お前の方こそ何をしている? 傍観者に徹するつもりか?」

 

ギムレットは私の後頭部を掴み、引き寄せ、私の顔を覗き込んできた。

赤みがかった鹿毛の奥、アンバーの瞳に、ついつい引き込まれそうになる。

だが、低く恫喝的な声色が、それを許さなかった。

 

「彼女は破滅への道を奔走している。それがどのような終幕(フィナーレ)を迎えるのか、分からないとは言わせない」

「……………………」

 

ギムレットは、本当に素晴らしいウマ娘だった。

暴君をも思わせる力強い走りと、全てを撫できる鬼のような末脚は見事としか言えない。

ターフの上の彼女は、誰よりも輝き、見る者すべてを酩酊させた。

彼女は、勝負に貪欲過ぎた──。

僅か4ヶ月で6レース、しかもG1を3回も走っている。

それほどの負荷を負ったまま、ギムレットは脚部不安により引退した。

 

「日本ダービーは最高の走りができた。お前との競り合いは心を熱くさせた。それだけに、もう競い合えないことが心苦しい」

 

そう言って私は解放される。

ギムレットは、トレーニングするロブロイを指差した。

 

「彼女にもその非業(カルマ)を背負わせるならば、ワタシはクリスエス、お前を"好敵手"とは呼べなくなる」

「……迷って、いるんだ──なんと、声を掛ければいいのか……」

「お前は何と伝えたい?」

「私は──」

 

私の思いを言葉にする。

不恰好で、言葉足らずな思いを、吐き出す。

静かに聞き届けたギムレットは、鼻を鳴らして笑った。

 

「その言葉を、そのまま伝えればいい」

「しかし……正しく、伝わるだろうか?」

「言葉足らずだろうが、伝わるハズだ。それがお前の、本心からの言葉だと、想いであると。ならば、これ以上に何を悩む必要がある?」

 

そう言い残し、ギムレットは合宿所へ戻って行く。

彼女は、私の背中を押してくれたのだろう。

きっと、コミュニケーションが苦手な私を、見かねたのだろう。

 

「──Thanks」

 

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