ゼンノロブロイの英雄譚 〜Rob Roy of the Royal Road〜   作:C.S

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第17話 神戸新聞杯(後編)

『先頭はチェリーマイスター! チェリーマイスター先頭だ! 外を突いたゼンノロブロイ2番手! 後は外を突いてネオユニヴァース3〜4番手! あと100メートル!!』

「栄光を掴むのは私だ! この一勝を秋シーズンのファンファーレにしてやる!!」

 

パールホワイトの燕尾服が先頭を走る。

チェリーさんのパワフルな走りは、他のウマ娘を寄せ付けない。

ユニヴァースさんは大外へと追いやられた影響か、少し表情が歪んで見える。

正直、私も息苦しさに喘いでいる。

四肢がもげそうな程、足の先の感覚が薄れる程、必死に走っている。

けど、それでも足は止めない。

 

「だって、勝ちたいから……憧れの『英雄』に、少しでも近づきたいから!!」

 

強い信念を言葉にすると、不思議と足が軽くなった気がした。

限界かと思ったけれど、また力が湧き上がってきた。

私を先頭へと導いてくれるほどの力が。

 

『ゼンノロブロイが先頭に並びかける! チェリーマイスターも譲らない!!』

 

「私だ! 私が勝つんだ! ココは、私の場所だ!!」

「まだ! まだ、私も、諦めません!!」

 

チェリーさんとの競り合い、互いの身体がぶつかりそうな程のデッドヒートだ。

まるで重戦車のように何者をも寄せ付けない走りは、驚嘆以外の言葉が浮かばなくなる。

でも、私だって準備をしてきた。

トレーニングを重ねてきた。

その成果を発揮するのは、絶対にこの瞬間だ。

 

『残り100メートル! 今度はゼンノロブロイが先頭だ! ゼンノロブロイ先頭! 2番手はチェリーマイスターだ!』

 

僅かに私の方が先に出る。

チェリーさんの姿が、視界の端へと消えていく。

眼前にあるのは、青々とした芝のターフと、一本のゴール板のみ。

駆け抜けるんだ、あのラインの先に。

一歩でも、ハナ差でも、1ミリでも先に。

 

「私が……勝つんだああああああっ!!!」

 

『チェリーマイスター並びかけてきたか?! しかし、今はゼンノロブロイ、ゴールイン!!』

 

ゴール板の前を駆け抜ける。

ただひたすら、無我夢中で通過する。

実況の声も耳に届かないくらい、そのことだけに集中して。

だけど、その瞬間だけは、ハッキリと自信を持てた。

私がレースに勝った瞬間だけは。

 

「……勝った……勝った! やりました、私、勝ちました!!」

 

やや遅れて、実感が沸々と内から湧き上がる。

思わず衝動に任せて、飛んで跳ねるように喜びを露わにしてしまう。

だけど、それ程までに嬉しかった。

重賞の勝利がではない、これ程までの強者たちを相手に勝てたことがだ。

 

「……あと、少しだったのに……見事に躱された、完敗だ」

「うん……ネオユニヴァースは、"悔しい"を、感知しているよ」

「チェリーさん、ユニヴァースさん」

 

掲示板には2着にチェリーさん、ユニヴァースさんは3着と表示されていた。

予想していた、そんな結果だった。

勝利の喜びを一旦飲み込み、私は2人に頭を垂れた。

 

「お二人とも、ありがとうございました! お二人という目標であり、ライバルがいたから、私は勝つことが出来ました!」

「ロブロイが勝ったのは、"努力する"を、した結果だよ」

「今日の勝利は譲るけど、本番は勝たせてもらうから──クラシック最後の一冠、『菊花賞』は、ね?」

「ネガティヴ──私は"星間宙域"に至る……『三冠ウマ娘』に、なるよ」

 

そう、まだスタートラインに過ぎない。

本当の勝負は、ここからなのだから。

 

「次も負けません。菊花賞も、その先も、私が勝ちます」

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