ゼンノロブロイの英雄譚 〜Rob Roy of the Royal Road〜   作:C.S

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第18話 非情な現実

『第3コーナーの頂上から下り、800メートルの標識を通過! チェリーマイスターはまだ後方です!』

 

澄み渡る秋空の下、爽やかな風を感じながら私たちは走っていた。

淀の大舞台、京都レース場にて開催されるレースの真っ只中だ。

芝コース、3000メートルの長丁場、クラシックレースを締めくくる千秋楽。

『最も強いウマ娘が勝つ』と評されるG1レース、『菊花賞』だ。

 

『各バ第4コーナーのカーブへと入ってきましたが、今度は外を突いてロットオブチャンプが早めに動いていった! 前に行って今度は単独先頭か? 2番手集団には、ネオユニヴァースが飛びついた! ネオユニヴァースが上がってきた! 単独2番手ラクな手応えだ!』

 

私たち同世代のウマ娘全員が初挑戦となる長距離レース。

故に、スタミナを意識しながら走らなければならない。

私は2番人気に選んでもらえたが、正直に言うと、とても辛いレースだった。

胸が締め付けられるような痛みに、息も上がっている、脚も棒のようだ。

私だけじゃない、3番人気のチェリーさんも、後方で苦悶の表情を浮かべていた。

普段の力強い走りは、残念ながら翳ってしまっていた。

しかし、ユニヴァースさんは着実にゴールを狙っていた。

 

『さぁ第4コーナーのカーブから、直線コースを向いてきた! ロットオブチャンプ、2バ身くらいの差がついて、外の方からはネオユニヴァースが2番手の位置!』

 

普段の無表情が僅かに歪んでいる。

やはりユニヴァースさんにとっても厳しいレースだったのだろう。

それでも、流石は二冠ウマ娘の貫禄というのだろうか、走りに疲労は見られない。

 

『さぁネオユニヴァースは2番手、1バ身差の2番手だ!』

 

先頭を走るロットオブチャンプさんも懸命に逃げる。

彼女を捕えることが出来れば、ユニヴァースさんが勝利する。

ナリタブライアンさん以来、6人目の『三冠ウマ娘』の称号を獲得できる──。

 

──ハズだった。

 

『ゴールまで150メートル、ロットオブチャンプ! ロットオブチャンプ先頭! ネオユニヴァース2番手! しかし、外を突いてホワイトハウスが突っ込んできた!』

 

ユニヴァースさんはそれ以上伸びなかった。

先頭のウマ娘との距離も縮まらない。

否、寧ろ離されているようだった。

そこに飛び込んできた新たな刺客がユニヴァースさんに襲いかかる。

私を容易く追い抜いたホワイトハウスさんが、ユニヴァースさんに並んでしまう。

それが意味するところは、即ち──

 

「ユニ、ヴァース、さん……!」

「……ッ……!」

 

『先頭は、ロットオブチャンプ! ロットオブチャンプ先頭で今、ゴールイン!! 2着はホワイトハウスか?!』

 

……『レースに絶対はない』と言ったのは、果たして誰だっただろうか。

私は、その残酷ながら当たり前の事実を、こんな形で突きつけられると思わなかった。

三冠ウマ娘は確実と評されたネオユニヴァースさんはクビ差の3着。

私ことゼンノロブロイは、実力不足により4着だった。

チェリーマイスターさんは9着という結果、私は何も言葉が出せなかった。

恥ずべきことに、勝者への賞賛の気持ちよりも、自身が抱えていた驕り昂りへの嫌悪が勝ってしまった。

私のクラシック戦線は、芳しくない、苦い思い出と化して終わった。

待ち受けているのは、今よりも一層過酷な、シニア級ウマ娘たちとの、激戦の舞台だ。

私たちのレースは、まだ、始まったばかりなのだ。

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