ゼンノロブロイの英雄譚 〜Rob Roy of the Royal Road〜 作:C.S
「いやぁ〜! 本当にめでたい! 前代未聞の秋天連覇! お前さんなら成し遂げられると信じてたぞ!!」
トレセン学園に戻って来た私たちは、チーム『アルネブ』の部室で、クリスエスさんの祝勝会を開催していた。
壁には『シンボリクリスエス! 連覇おめでとう!!』と書かれた幕が貼られ、テーブルには彩り豊かな御馳走が並んでいる。
チームメンバーは皆、浮足立っており、キャロットジュースを飲みながらクリスエスさんの強さを語り合っていた。
最も喜んでいるのは柏トレーナーだった。
二人三脚でクリスエスさんの異形の達成を目撃して、どうして普段通りでいられるだろうか。
トレーナーもジュースを飲んでいるのに、まるで酔っ払っているかのような興奮具合だった。
「クリスエス! お前さんは間違いなく、このチームの誇りだ! 本当に、本当におめでとう!!」
「Thanks──皆の応援が、力をくれた。私からも、礼を、言わせてほしい」
そう言うとクリスエスさんは、私たちに頭を下げた。
レースの時の圧倒的な強者感は隠れ、凛々しくも穏やかな姿があった。
そんな純粋無垢な姿が、彼女との距離感を縮めてくれているのかもしれないと感じた。
「さぁ! 秋のシーズンはまだまだこれからだ! お前さんたちも自分のレースに向けて、練習を怠るな!」
柏トレーナーの檄が飛ぶ。
私たちは気持ちを引き締め、力強く返事をする。
しかし、すぐに雰囲気は緩み、また祝いのムードへと引き戻された。
私はケーキを持って、クリスエスさんに直接お祝いを伝えようとした。
「クリスエスさん。コレ、どうぞ」
「ロブロイ──コレは、cakeか?」
「美味しいんですよ? 中にニンジンがたくさん入ってて」
「そうか。ありがたく、いただこう」
そう言うとクリスエスさんはケーキを一口食べる。
表情こそ変わらなかったが、頬が紅潮するのがわかった。
きっと、気に入ってもらえたのだろう。
「クリスエスさん。本当におめでとうございました。私、クリスエスさんの強さを改めて実感しました」
「ロブロイはレースの間、ずっとクリスエスから目を離さなかったからな。一着でゴールした直後は、ボロボロ泣いていた」
「そう、なのか?」
「と、トレーナー! それは言わないでください!!」
軽くトレーナーを叩きながら抗議する。
しかし事実なので反論の余地もない。
羞恥心で顔が火照るのを感じながらも、私はクリスエスさんに伝えた。
「私、やっぱりクリスエスさんに、もっともっと近づきたいって思いました。強くてカッコいいクリスエスさんのような、『英雄』になるために」
「ロブロイも、強くなっている。私も──油断は、できないな」
そう言うとクリスエスさんは優しく微笑んだ。
リップサービスなのかもしれないけれど、私を認めてくれたようで、とても嬉しかった。
頬に手を当て、口元を緩めていると、頭に柏トレーナーの手が乗せられた。
「ロブロイや。そろそろお前さんの秋のローテを決めないとな。この先はシニア級のウマ娘たちとのレースになる。これまで以上に過酷になるぞ?」
「はい、心の準備は出来ています。そういえば、クリスエスさんの次のレースは……」
そう問いかけたタイミングで、部室の扉が勢いよく開かれた。
何事かとそちらを見やると、長身のウマ娘が佇んでいた。
天然パーマのウマ娘だ。
鹿毛のボブヘアーだが、一部に赤と青の編み込みが施されている。
右耳には金色の鯱鉾のような髪飾りをつけている、強気そうな様相のウマ娘だ。
その少女は、クリスエスさんを見るなり、快活な声を上げた。
「YO-HO! 見てたぜクリスエス! それでこそ、我が宿命のrivalだ!!」
「Long time. タップダンスシチーか」