ゼンノロブロイの英雄譚 〜Rob Roy of the Royal Road〜 作:C.S
クリスエスさんと強さを改めて知った有マ記念から、もう4ヶ月が経った。
クリスエスさんは宣言通り、トゥインクルシリーズを引退してドリームトロフィーリーグへ移籍した。
彼女が打ち立てた"2分30秒5"という有マ記念レコードにより、世間に大きな衝撃を与えて。
とは言え、チームを引退する訳ではなく、今でも並走などで様々な指導をしてくださっている。
一緒のレースで走れないのは残念だけど、近くに目指すべき目標として居続けてくれるのは、本当にありがたいことだ。
同期のメンバーも、みんな活躍が目覚ましい。
ネオユニヴァースさんはG1の大阪杯を、チェリーマイスターさんはG2の中山記念を勝利して、勢いに乗っている。
同じクラシックレースを競ったのが、昨日のことのようで、本当に誇らしい限りだ。
かく言う私、ゼンノロブロイも、3月にG2の日経賞に出走した。
残念ながら2着に敗れたが、各々が春シーズンのピークに備えて準備を整えていた。
私もクリスエスさんや柏トレーナーから多大なサポートを受けて、次走のレースのトレーニングに励んでいた。
「次のレースは、G1の天皇賞だ。距離は3200メートルと、菊花賞よりも200メートル長くなる。過去最長距離のレースだ」
「スタミナ管理が大事になりますね。プールトレーニングを増やした方がよろしいでしょうか?」
「そうだな、スタミナを重点的に鍛えよう。春の天皇賞に出走を表明したウマ娘だと、菊花賞ウマ娘のロットオブチャンプに、有マ記念2着のホワイトハウス、そして2冠ウマ娘のネオユニヴァースがいる」
トレーナーが対戦相手の情報をまとめた資料を見せてくれる。
同期のウマ娘たち、よく知ったメンバーだ。
負けたくないという思いの外に、少しの安心感を覚えてしまう。
しかし、相手は強豪ぞろいな上、未知の距離での対決となる。
秋の頃のように、不安が過ってしまうこともある。
「春のシーズンは、クリスエスですら出走を避けた未知のレースだ。俺もトレーナーとして、最大限のサポートを惜しまない。だから、大船に乗ったつもりでいてくれ、ロブロイ」
「ありがとうございます、とっても心強いです」
けど、私を支えてくれる、トレーナーさんがいる。
応援してくれる人がいる。
そして、心強いチームメイトがいる。
だから私は、安心して、集中してレースに臨める。
「そう言えば、今日はクリスエスさん、練習お休みなんですね」
「ああ、何でも『友人に会いにいく』と言っていたなぁ」
「そうなんですか? でも……」
クリスエスさんの友人と脳裏に思い浮かべてみる。
真っ先に思いついたのは、『タップダンスシチー』さん。
ジャパンカップや有マ記念ので競ったこともあって、クリスエスさんに激しい対抗心を燃やして居るのが印象深い。
あと、学園内では、『タニノギムレット』さんと一緒にいる姿もよく見かける。
曰く、日本ダービーを争った仲であり、互いの強さを認め合うライバルとの噂だ。
他にも何人か友人と思しき方々の姿を思い浮かべたけど、クリスエスさんの友人って……
「……我の強い人が多いんですよね」
「きっと今回も、個性の強い仲間のところへ行ってるんだろう」
「そう……なんですかね?」
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今日は、トレーニングを休んだ。
目的は"Visit"──"お見舞い"、と言うらしい。
病院の部屋に、友人の名札がかかっている。
アメリカでは、お見舞いにカードを贈る。
小さな花束に添えたが、きっと彼女は、食べ物を望むだろう。
そんなことを考えながら、ベッドの上で横になる彼女に、声をかけた。
「体調は、どうだ? 『ヒシミラクル』」
「あ、クリスエスちゃん。久しぶり〜」
白く、フワフワとした髪を揺らしながら、友人の『ヒシミラクル』はニヘラと笑った。
とても元気そうに見えるが、その右脚は、真っ白なギブスで固定されていた。