ゼンノロブロイの英雄譚 〜Rob Roy of the Royal Road〜 作:C.S
『外から『フルアウェイキング』! だが、先頭は『ハワイタイクーン』! いま、最強の『大王』が降臨したあああぁぁぁぁぁっ!!!』
スマホの画面から、実況者の興奮した絶叫が爆発した。
今年の日本ダービーは、私とネオユニヴァースさんと2人で、カフェテリアの一角に居座って観戦していた。
画面の向こう側では、ガタイの良い褐色のウマ娘が勝利を喜ぶ姿と、掲示板をズームアップした赤い『レコード』の文字が映し出されていた。
「すごいウマ娘さんが台頭してきましたね。日本ダービーのレースレコードを2秒も縮めるなんて……ましてや、前走勝利したNHKマイルカップからも、そんなに日が空いていませんよ」
「アファーマティブ。ハードなレーススケジュール、だね。でも、彼女は成し遂げた。"MABTE"──変則二冠ウマ娘の、誕生だね」
圧倒的な強さを見せつけられた。
もしかすると、昨年のユニヴァースさんよりも強いのかもしれない。
今年のクラシック世代は、これまでと異なった盛り上がりを見せてくれる。
そんな期待を抱かせてくれるレースになった。
「油断は、ダメだよ。彼女たちは、間違いなく、私たちにとっても"壁"になる。"RCOL"──もっと、高みを目指さないと、ね」
「そうですね、私ももっと頑張らないと。あまりウジウジしていると、チェリーさんにも怒られちゃいますね」
頬を掻きながら小さく笑う。
チェリーさんは、先の中山記念でのレコード勝利後、体調不良によりレースの出走を見送っている。
現在は北海道の療養施設で、回復に努めているという話だ。
きっと、過剰な練習に身体が追いつかずに、体調不良となってしまったのだろう。
たまにビデオ通話をすると、とても元気そうな姿を見せてくれる。
ただ、どこか力無く感じてしまうのは、決して気のせいではないのだろう。
「……チェリーさんの分まで、私たちも頑張らないと」
「ウマ娘が最高のパフォーマンスを発揮できる期間は長くないよ。"LYBL"──明日のことは、三女神様しか分からない」
ユニヴァースさんは立ち上がると、窓の外をジッと見つめる。
桜の花びらが散り始め、徐々に緑色の葉が茂っている。
季節の変わり目であり、私たちの世代が、シニア級のG1戦線に本格的に挑戦する時期だ。
「世代交代、私たちの存在を、もっと知らしめる。その第一歩として、ネオユニヴァースは『天皇賞』に出走するよ」
「私が出走予定のレースですね。また、ユニヴァースさんと走れるなんて……」
「スフィーラ。今度も、私が勝たせてもらうよ」
ユニヴァースさんは微笑を讃えている。
私も嬉しさのあまり、笑みが浮かんでいたことだろう。
ユニヴァースさんが右手を差し出してくる。
私はそれを、思いっきり掴んだ。
春の天皇賞が、2人にとって、最高のレースになると信じて。