ゼンノロブロイの英雄譚 〜Rob Roy of the Royal Road〜   作:C.S

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第32話 天皇賞・春(後編)

『先頭、ヴァルティーチェの大逃げは、依然として15バ身のリードがあって、ゴールまで800メートルを過ぎて場内がどよめいている!』

 

彼方先を黄色と黒のタテ縞模様の勝負服がポツンと逃げている。

集団の、私自身のスピードも徐々に上がっており、先頭を逃げるウマ娘の背中も少しずつ大きくなっている。

なっているのだが、それでもまだ遠い。

私が想定していたよりも、先頭のウマ娘に中々追いつけない。

 

『ヴァルティーチェの大逃げだ! ロットオブチャンプはまだ行かない、ゼンノロブロイが2番手に上がった! それからホワイトハウス、ようやくネオユニヴァースが姿を見せた! ホワイトハウスの外からネオユニヴァースが並んだか!』

 

背筋をゾクリと震わせる感覚に襲われる。

反射的に振り返ると、大外で綺麗な金髪が風を受けてたなびく。

ネオユニヴァースさんが動き出した。

脅威の差し足で、順位を着実に上げていた。

けれど、私だってまだ足が残っている。

最終直線でスパートをかける準備は整っている。

しかし──。

 

『第4コーナーを曲がり切った! しかし先頭はまだヴァルティーチェ! 彼女にはスタミナがあるぞ! ヴァルティーチェ粘っている!』

 

先頭を逃げる青髪のウマ娘は、全くスピードが落ちない。

否、むしろ最終直線に入って、スピードが上がっている?

3200メートルという長距離をハイラップで駆け抜けた先で、まだ余力を残していた?

けど、私だって、ここまで溜めていた足がある。

同様に大外を回って、ネオユニヴァースさんも迫ってきていた。

 

『懸命にゼンノロブロイ、外からネオユニヴァースが追い上げる! しかし、ヴァルティーチェ先頭だ! ヴァルティーチェ、これは逃げ切る、逃げ切る!』

「な……んで……!!」

 

追いつけない、いま出せる最高速度に達しているのに、先頭のウマ娘を捉えきれない。

少しずつ差は迫っているけど、ゴールには間に合わない。

スタミナを必要とする長距離レース、大逃げという作戦を選択したウマ娘のポテンシャルを、私たちは、完全に見誤ってしまった……!

 

『全て退けて、ヴァルティーチェの一人旅! 逃げ切ってゴールイン!! 2着にはゼンノロブロイです! ヴァルティーチェが左手を上げました! ヴァルティーチェ、まんまと逃げ切りました!』

 

ゴール板を通過して、そのまま芝の上に転がってしまう。

喉の渇きと肺が焼けつく感覚、四肢の痺れが身体を蝕んでいく。

そして、他者を軽んじた己の未熟さが、心を蝕んでいく。

ひたすらに悔しかった。

冷や水を被ったように冷静な思考で、そんな感情に沈み込んでいった。

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