ゼンノロブロイの英雄譚 〜Rob Roy of the Royal Road〜   作:C.S

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第34話 普通

「How are you? ヒシミラクル」

「あ、クリスエスちゃん〜。アイムファインだよ〜」

 

日本人は皆、同じ答えをする。

とても不思議だ。

ヒシミラクルは、足の怪我が、まだ治っていないというのに。

 

「ごめんね〜、こんな定期的に来てくれて〜。練習の時間は取れてる?」

「No problem──自己管理は、出来ている」

「おぉ〜、さっすがクリスエスちゃんだねぇ〜」

 

ヒシミラクルはニヘラと笑ってみせる。

花束を渡そうと視線を上げると、ベッドの脇の小さな棚の上に、様々な小物が置かれていることに気づいた。

 

「コレは……何かの、木片か?」

「あぁ〜あ、ギムレットちゃんがくれたんだよ。蹴り壊した柵の破片だって。幸運を運ぶって言ってたけど、本当かなぁ〜?」

「コチラは……四葉のクローバーの、栞か」

「ファインちゃんがくれたんだぁ。コッチの方が幸運のお守りっぽいよねぇ〜。まぁ、私、あまり本は読まないんだけど……」

「コッチは……兜飾りの、キーホルダー……ノーリーズンか?」

「せいか〜い。『天下人たるもの、こんなところで立ち止まっている暇はない!』って、メチャクチャ励まされちゃった。有難いよねぇ〜」

 

ヒシミラクルは嬉しそうに顔を綻ばせている。

どうやら私以外の同期のメンバーも、定期的に顔を覗かせてきているようだ。

足の怪我の話を聞いたときは、驚いたし心配もした。

だが、彼女のマイペースな性格のためだろうか、今でもこうして、楽観的に過ごしていた。

 

「元気そうで、私も安心した。これなら、秋のシーズンには、復帰出来そうだな」

 

彼女は楽観的だが、謙虚な性格でもある。

のんびりとした普段の姿からは想像もつかないが、菊花賞、春の天皇賞、宝塚記念と、3つのG1タイトルを獲得した強者だ。

ステイヤーとしての才能は、私も羨む点が非常に多い。

それでもヒシミラクルは、『普通のウマ娘』を自称する。

 

「きっと、ギムレットたちも……君には期待している」

「そう……かなぁ〜? アハハ、なんか、悪いなぁ〜」

 

ヒシミラクルは頭を掻きながら、困ったように眉をしかめた。

きっと、他のメンバーからも、同じような言葉をかけられているのだろう。

やはり、期待してしまうのだ。

彼女のステイヤーとしての才能を、もう一度、見られる日を。

 

「しかし、Sorry──私のチームには、とても、強いウマ娘がいる」

「あ、知ってるよ。たしか、『ゼンノロブロイ』ちゃんだよね?」

「ヒシミラクルといえども、ロブロイを倒すのは──簡単ではない」

「私を何だと思ってるの〜? 私はどこにでもいる、いたって平凡なウマ娘なんだから」

 

そんな、何気ない会話をしていると、あっという間に時間が過ぎてしまった。

名残惜しいが、私は、お暇することにする。

 

「では……学園で、待っている……早く、治るといいな」

「うん、ありがとね〜。また、遊びに来てねぇ〜」

 

 

 

**********

 

 

 

「…………はぁ〜〜。私なんて、たまたま勝てただけの、普通のウマ娘なんだけどなぁ〜〜…………期待が、重いなぁ…………」

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