ゼンノロブロイの英雄譚 〜Rob Roy of the Royal Road〜 作:C.S
「How are you? ヒシミラクル」
「あ、クリスエスちゃん〜。アイムファインだよ〜」
日本人は皆、同じ答えをする。
とても不思議だ。
ヒシミラクルは、足の怪我が、まだ治っていないというのに。
「ごめんね〜、こんな定期的に来てくれて〜。練習の時間は取れてる?」
「No problem──自己管理は、出来ている」
「おぉ〜、さっすがクリスエスちゃんだねぇ〜」
ヒシミラクルはニヘラと笑ってみせる。
花束を渡そうと視線を上げると、ベッドの脇の小さな棚の上に、様々な小物が置かれていることに気づいた。
「コレは……何かの、木片か?」
「あぁ〜あ、ギムレットちゃんがくれたんだよ。蹴り壊した柵の破片だって。幸運を運ぶって言ってたけど、本当かなぁ〜?」
「コチラは……四葉のクローバーの、栞か」
「ファインちゃんがくれたんだぁ。コッチの方が幸運のお守りっぽいよねぇ〜。まぁ、私、あまり本は読まないんだけど……」
「コッチは……兜飾りの、キーホルダー……ノーリーズンか?」
「せいか〜い。『天下人たるもの、こんなところで立ち止まっている暇はない!』って、メチャクチャ励まされちゃった。有難いよねぇ〜」
ヒシミラクルは嬉しそうに顔を綻ばせている。
どうやら私以外の同期のメンバーも、定期的に顔を覗かせてきているようだ。
足の怪我の話を聞いたときは、驚いたし心配もした。
だが、彼女のマイペースな性格のためだろうか、今でもこうして、楽観的に過ごしていた。
「元気そうで、私も安心した。これなら、秋のシーズンには、復帰出来そうだな」
彼女は楽観的だが、謙虚な性格でもある。
のんびりとした普段の姿からは想像もつかないが、菊花賞、春の天皇賞、宝塚記念と、3つのG1タイトルを獲得した強者だ。
ステイヤーとしての才能は、私も羨む点が非常に多い。
それでもヒシミラクルは、『普通のウマ娘』を自称する。
「きっと、ギムレットたちも……君には期待している」
「そう……かなぁ〜? アハハ、なんか、悪いなぁ〜」
ヒシミラクルは頭を掻きながら、困ったように眉をしかめた。
きっと、他のメンバーからも、同じような言葉をかけられているのだろう。
やはり、期待してしまうのだ。
彼女のステイヤーとしての才能を、もう一度、見られる日を。
「しかし、Sorry──私のチームには、とても、強いウマ娘がいる」
「あ、知ってるよ。たしか、『ゼンノロブロイ』ちゃんだよね?」
「ヒシミラクルといえども、ロブロイを倒すのは──簡単ではない」
「私を何だと思ってるの〜? 私はどこにでもいる、いたって平凡なウマ娘なんだから」
そんな、何気ない会話をしていると、あっという間に時間が過ぎてしまった。
名残惜しいが、私は、お暇することにする。
「では……学園で、待っている……早く、治るといいな」
「うん、ありがとね〜。また、遊びに来てねぇ〜」
**********
「…………はぁ〜〜。私なんて、たまたま勝てただけの、普通のウマ娘なんだけどなぁ〜〜…………期待が、重いなぁ…………」