ゼンノロブロイの英雄譚 〜Rob Roy of the Royal Road〜 作:C.S
充実した夏合宿を終えた私たちは、秋のG1シリーズへと挑戦することになる。
合宿によって実力を底上げしたウマ娘たちが、春以上の激戦を繰り広げるシーズンだ。
初戦となるスプリンターズステークスは、G3のアイビスサマーダッシュを連覇した直線番長、『カルストンライトオ』さんが勝利を飾った。
続く秋華賞は、魔法のように華麗な走りで話題となった『スイープトウショウ』さんが、菊花賞は、徐々に実力を見せ始めてきた大器晩成の『トライスプラッシュ』さんが制覇した。
一方の私は、秋の初戦をG2の京都大賞典に挑戦した。
しかし、結果はクビ差の2着に敗れ、不甲斐ない結果となってしまった。
敗北の反省を練習に反映させ、次走に向けて練習を重ねる。
次走は今シーズン、初のG1レースとなる、『天皇賞・秋』だ。
東京レース場の芝、2000メートルのレースだ。
昨年、一昨年と、クリスエスさんが連覇の快挙を成し遂げた、私にとっても思い入れの深いレースだ。
(絶対に勝ちたい……クリスエスさんと、同じ舞台に立ちたい……)
昨年の秋天に勝利して、ウイニングライブのセンターを飾ったクリスエスさんを思い返す。
あの頃の凛として、煌びやかなクリスエスさんのようになりたい。
そう強く思いながら、学園のターフを奔走していた。
そんな時、遠方のベンチに、1人のウマ娘の姿が見えた。
トレセン指定のジャージを纏い、足を伸ばしてストレッチをしている。
桜色のショートボブヘアのウマ娘、私の戦友の姿だ。
「チェリーさん! チェリーマイスターさん!!」
「ん? この声は……ロブロイ! 久しぶりだね!!」
チェリーさんは私の顔を見ると、満面の笑顔で返答してくれた。
その変わらぬ姿に、私は安堵を覚えた。
「お久しぶりです、チェリーさん。体調は大丈夫なんですか?」
「うん、もう絶好調! 今ならどんなレースに出ても負ける気はしないね!」
軽くピョンピョンと跳ねながら、すこぶる快調な様子をアピールしてくれた。
私はより一層の安心感が湧き上がる。
「安心しました。また、一緒に走れるんですね」
「私は次走、秋の天皇賞が復帰戦になるんだ。ロブロイも出走してたよね?」
「はい、私もG1の初戦が秋天です」
「そっか! じゃあ、久しぶりに本気の勝負だね……」
そう言った瞬間、チェリーさんの瞳が細く、鋭くなる。
私を見る目は、友人ではなく、ライバルを見る目だった。
声のトーンも低くなり、私は緊張感を抱いた。
「昨年の菊花賞以来、1年ぶりの対決だ。ロブロイも強くなってるみたいだけど、私の方が強くなってる。そう断言できる」
チェリーさんは人差し指を立て、それを私に突きつける。
私は少しのけぞったが、チェリーさんからは目を逸さなかった。
「私もロブロイも、まだG1タイトルに手は届いてない。私が先にG1に到達する。次の天皇賞で、全てのウマ娘を差し切ってみせる」
宣戦布告──私が受ける立場なるとは思いもしなかった。
少し怖い、けれど、嬉しかった。
「天皇賞の盾は譲りません。私が勝ちます。勝って、英雄の名前を知らしめてみせます!」
「いいや、私が勝つ。勝って、秋空に桜吹雪を幻視させるよ!」