ゼンノロブロイの英雄譚 〜Rob Roy of the Royal Road〜   作:C.S

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第38話 天皇賞・秋(前編)

『天皇賞・秋の陣! スタートが切られました! さぁ、ちょっとバラついたスタートになりました。2コーナーに向けてのポジション争いになっていきます』

 

稍重の芝コースを、一斉にスタートが切られた。

秋の天皇賞は、東京レース場2000メートルのレースだ。

今年走ったG1レースの中では短い距離だけど、その分、最終直線での競り合いが激しくもなる。

東京レース場の最終直線は長く、急な坂もある。

如何にパワーを温存しながら走れるか、それが鍵となる。

 

『レッドローウェン、スーッと先頭に立ちました。内ではアクアプレイヤー、そして4番のレイオブライト。早くも縦長になって、向こう正面の直線へと入っていきました』

 

先頭を1人のウマ娘が逃げていく。

けれど大逃げというワケではなく、全体がそれに沿って、各々のペースで走っているという調子だ。

私は中央付近に位置をつけて、全体の様子を客観的に見れるように走っていた。

少し前方にはチェリーさんがいる。

一歩一歩を踏み締めるような、力強い走りは健在だった。

後方をチラリと確認すると、ヒシミラクルさんも、少しローペースで走行していた。

休養明けというのが響いているのか、それとも体力を温存する作戦なのか……。

 

『向正面の中間を過ぎました。レッドローウェンが引っ張ります。次いでアクアプレイヤー、その外につけたのがレクイエム。その外行っているのが皐月賞ウマ娘のサムライヤマトです。その後方にはレイオブライトがいて、6番のトーセンダンディ、内からチェリーマイスター久々! そしてバッドディーラーがいて、真ん中にゼンノロブロイ、真ん中にゼンノロブロイ! 内にアトモスデネブ! その後方、カントウサークルはこのポジションにつけている、ミルキーウェイが行っている、後ろからホワイトハウスです、後ろからホワイトハウス!少し離れて14番のヒシミラクル、果たしてミラクル見られるか? ノストラダムスがいて、NHKマイル杯王者のセンリガン、そして1番のビターロゼリアです! さぁ、位置取りは決まった! ご覧のような展開で、3〜4コーナー、大欅の向こうを過ぎていっている!』

 

レースは終盤、間も無く最終直線へと飛び込んでいく。

近づく観客席からは歓声が湧き上がる。

鼓膜を震わす轟音は、人々の絶叫か、はたまた地を蹴るウマ娘たちの蹄跡か。

先頭を逃げるウマ娘、彼女を捕えられるのは……。

 

「ここだ! ここが私の大一番だ!!」

 

絶叫、同時に、チェリーさんがスパートをかける。

私が仕掛けるよりも一瞬早く、チェリーさんの勝負服が外目から抜け出していく。

追走しようとして気付く、更に大外から、ヒシミラクルさんも追い上げてきていたことに。

 

「……仕掛け所が、上手すぎる」

 

思わず感嘆の声を漏らしてしまうが、まだレースは終わっていない。

私の前には、まだ5〜6人のウマ娘がいる。

まだ間に合う、ここから全力で踏み込めば、まだ追いつける。

 

『さぁ、レッドローウェンが、平均ペースの逃げに持っていっているのか? 残りの各ウマ娘も、遅れまいと、バ群に飛びついてきた!』

 

先頭のウマ娘には疲れが見えるけれど、それを追う2番手3番手のウマ娘には、まだ少し余裕があった。

私の足は、徐々に疲労が現れつつあった。

けれど、最低限、いまのポジションは死守しなければならない。

 

「これ以上は離させません! チェリーさんを抜いて、全員抜いて、私が勝ちます!!」

「抜かせない! 誰も抜かせない、G1の栄光、栄誉は私が──!!」

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