ゼンノロブロイの英雄譚 〜Rob Roy of the Royal Road〜 作:C.S
「Come back──帰ってきたのか、タップダンスシチー?」
「Of course! 私にとっての舞台はコッチだぜ、シンボリクリスエス!!」
高らかな笑い声を上げながら、タップダンスシチーさんはクリスエスさんの肩を叩いた。
昨年のジャパンカップで、世界の強豪と共に、クリスエスさんをも打ち破った猛者だ。
彼女は、他者を寄せ付けぬ圧倒的な大逃げを得意とするウマ娘だ。
その印象的な走りは、見た者を悉く魅了する。
そのため、彼女のファンや同胞は多いと聞く。
私も宝塚記念で敗れてから、彼女の走りに惹かれつつあったのだが、ここしばらくは学園で姿を見ていなかったような気がする。
「最近まで、何処かへ行っていたんですか?
「ちょっとばかし、海外のレースに挑戦するためにね? もしかして、アタシの活躍を知らないの?」
「す、すみません! 自分のことで頭がいっぱいで……!」
「私も、あんまり他人のことは気にしてなくて〜」
「Oh my god! アタシの走りも、まだまだ未熟ってことか!」
私とヒシミラクルさんのリアクションに、タップダンスシチーさんは落胆して肩を落とした。
海外のレース──私には縁遠いような世界に思えてしまう。
自分たちとは全く異なる文化、全く異なるレースを経験してきた海外のウマ娘との戦いは、きっと一筋縄では行かないのだろう。
10月頃に開催される海外のレース、そう聞いて思い立ったレースが一つあった。
過去にも日本のウマ娘が何人も挑んみ、そして敗れてきたレースだ。
「もしかして、タップダンスシチーさんが走ってきたのって……!」
「欧州の……いや、世界最高峰の中距離レース──フランスの『凱旋門賞』さ!!」
凱旋門賞──パリロンシャンレース場にて開催され、芝2400メートル最速の栄誉が与えられる、由緒正しいレースだ。
このレースに勝利したウマ娘は、世界中から羨望の眼差しを向けられることになる。
その頂に到達した日本のウマ娘は、歴史上、まだ1人として存在していない。
「世界に挑んだ。憧れに届いたアタシの『逃げ』が、どこまで通用するのか確かめたかった」
「But、結果は……」
「優勝──と言いたかったけど、今のアタシの力じゃあ17着だった! 世界の頂の高さを、まざまざと見せつけられたよ!」
アッハッハッと豪快に笑うタップダンスシチーさん。
敗北したと語るのに、その顔はとても晴れやかだった。
勝つことへのこだわりは薄く、挑戦した事実が大事だったのだろうか、と思う。
しかし……。
「世界の頂点にはなれなかった……だけど、日本の頂点には立てる! そうだろ、クリスエス!!」
「I don't know──話の流れが、まったく見えない。なぜ、私に問う?」
「アンタが過去に2回表彰された『年度代表ウマ娘』の称号! 今年はアタシが獲得する!」
先の反応から結果にドライな方なのかと思ったけれど、むしろ逆だ。
どんな結果にもこだわり、未練を残している。
だからこそ、今の自分が獲れる結果を渇望しているのだ。
彼女は、勝利に飢えている。
彼女は、強いウマ娘だ。
「アタシは宝塚記念に勝った。年末の有マ記念にも勝って2大グランプリを同年制覇すれば、アタシが選ばれるハズだ!」
「その通り、かもしれない。しかし──簡単に勝てると、思わない方がいい」
そう言ってクリスエスさんは私をジッと見つめる。
言われてハッとした。
私の今秋のローテーションは……。
「有マ記念は、ロブロイも走る」
「I see──また、ライバルとして戦えるってワケだ」
タップダンスシチーさんの鋭い視線が突き刺さる。
陽気な眼差しではない、レースの時のような真剣な眼差しだ。
捕食者のようなプレッシャーを帯びた緊張感に晒されて、思わず萎縮してしまいそうになる。
けれど、私はタップダンスシチーさんを見つめ返した。
「私も、負けるつもりはありません。有マ記念でもあなたを倒して、私が『英雄』になります!」
「ゼンノロブロイ、アンタの走りにも期待してるよ。ジャパンカップを勝って、アタシとターフで踊ろうじゃないか!」
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「ロブロイちゃんも、タップちゃんも、カッコいいねぇ〜」
「ミラクルも、ジャパンカップと有マ記念を、走るのだろう?」
「そうだけど……私はあそこまでバチバチしてないって言うか……」
「何度も言う。お前は、強いウマ娘だ──期待している」
「……それはズルいよ、クリスエスちゃん」