ゼンノロブロイの英雄譚 〜Rob Roy of the Royal Road〜   作:C.S

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第42話 日本の頂点

「Come back──帰ってきたのか、タップダンスシチー?」

「Of course! 私にとっての舞台はコッチだぜ、シンボリクリスエス!!」

 

高らかな笑い声を上げながら、タップダンスシチーさんはクリスエスさんの肩を叩いた。

昨年のジャパンカップで、世界の強豪と共に、クリスエスさんをも打ち破った猛者だ。

彼女は、他者を寄せ付けぬ圧倒的な大逃げを得意とするウマ娘だ。

その印象的な走りは、見た者を悉く魅了する。

そのため、彼女のファンや同胞は多いと聞く。

私も宝塚記念で敗れてから、彼女の走りに惹かれつつあったのだが、ここしばらくは学園で姿を見ていなかったような気がする。

 

「最近まで、何処かへ行っていたんですか?

「ちょっとばかし、海外のレースに挑戦するためにね? もしかして、アタシの活躍を知らないの?」

「す、すみません! 自分のことで頭がいっぱいで……!」

「私も、あんまり他人のことは気にしてなくて〜」

「Oh my god! アタシの走りも、まだまだ未熟ってことか!」

 

私とヒシミラクルさんのリアクションに、タップダンスシチーさんは落胆して肩を落とした。

海外のレース──私には縁遠いような世界に思えてしまう。

自分たちとは全く異なる文化、全く異なるレースを経験してきた海外のウマ娘との戦いは、きっと一筋縄では行かないのだろう。

10月頃に開催される海外のレース、そう聞いて思い立ったレースが一つあった。

過去にも日本のウマ娘が何人も挑んみ、そして敗れてきたレースだ。

 

「もしかして、タップダンスシチーさんが走ってきたのって……!」

「欧州の……いや、世界最高峰の中距離レース──フランスの『凱旋門賞』さ!!」

 

凱旋門賞──パリロンシャンレース場にて開催され、芝2400メートル最速の栄誉が与えられる、由緒正しいレースだ。

このレースに勝利したウマ娘は、世界中から羨望の眼差しを向けられることになる。

その頂に到達した日本のウマ娘は、歴史上、まだ1人として存在していない。

 

「世界に挑んだ。憧れに届いたアタシの『逃げ』が、どこまで通用するのか確かめたかった」

「But、結果は……」

「優勝──と言いたかったけど、今のアタシの力じゃあ17着だった! 世界の頂の高さを、まざまざと見せつけられたよ!」

 

アッハッハッと豪快に笑うタップダンスシチーさん。

敗北したと語るのに、その顔はとても晴れやかだった。

勝つことへのこだわりは薄く、挑戦した事実が大事だったのだろうか、と思う。

しかし……。

 

「世界の頂点にはなれなかった……だけど、日本の頂点には立てる! そうだろ、クリスエス!!」

「I don't know──話の流れが、まったく見えない。なぜ、私に問う?」

「アンタが過去に2回表彰された『年度代表ウマ娘』の称号! 今年はアタシが獲得する!」

 

先の反応から結果にドライな方なのかと思ったけれど、むしろ逆だ。

どんな結果にもこだわり、未練を残している。

だからこそ、今の自分が獲れる結果を渇望しているのだ。

彼女は、勝利に飢えている。

彼女は、強いウマ娘だ。

 

「アタシは宝塚記念に勝った。年末の有マ記念にも勝って2大グランプリを同年制覇すれば、アタシが選ばれるハズだ!」

「その通り、かもしれない。しかし──簡単に勝てると、思わない方がいい」

 

そう言ってクリスエスさんは私をジッと見つめる。

言われてハッとした。

私の今秋のローテーションは……。

 

「有マ記念は、ロブロイも走る」

「I see──また、ライバルとして戦えるってワケだ」

 

タップダンスシチーさんの鋭い視線が突き刺さる。

陽気な眼差しではない、レースの時のような真剣な眼差しだ。

捕食者のようなプレッシャーを帯びた緊張感に晒されて、思わず萎縮してしまいそうになる。

けれど、私はタップダンスシチーさんを見つめ返した。

 

「私も、負けるつもりはありません。有マ記念でもあなたを倒して、私が『英雄』になります!」

「ゼンノロブロイ、アンタの走りにも期待してるよ。ジャパンカップを勝って、アタシとターフで踊ろうじゃないか!」

 

 

 

**********

 

 

 

「ロブロイちゃんも、タップちゃんも、カッコいいねぇ〜」

「ミラクルも、ジャパンカップと有マ記念を、走るのだろう?」

「そうだけど……私はあそこまでバチバチしてないって言うか……」

「何度も言う。お前は、強いウマ娘だ──期待している」

「……それはズルいよ、クリスエスちゃん」

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