ゼンノロブロイの英雄譚 〜Rob Roy of the Royal Road〜   作:C.S

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第47話 今度は……

「よーい……スタート!!」

 

トレーナーさんの合図を受けて走り出す。

トレセン学園の練習用コース、走り慣れた芝の上だ。

練習しているのは言わずもがな、皆が期待するグランプリレースへの出走に向けてだ。

中山レース場、芝2500メートル、右回りのコース──有マ記念に出走するために。

 

昨年の有マ記念では、シニア級の強豪ウマ娘たちに苦戦を強いられ、そして敗北を味わった。

勝利したのは、シンボリクリスエスさんだった。

ただの勝利ではない。

最終直線に入る直前に、ジェット機のようなブーストをかけ、他のウマ娘たちを一気に薙ぎ払った。

懸命に追う者を1人として寄せ付けず、2着に9バ身差をつけるという圧倒的な強さを、勝利を見せつけた。

それだけじゃない、決して破られることはないと言われていたレースレコードすら塗り替えてしまったのだ。

2分30秒5──あの衝撃は、いまでも私の中に深く根付いていた。

あのレースに、もう一度挑む。

それも今度は、ただのチャレンジャーではなく、2冠ウマ娘として──秋シニア3冠を狙うウマ娘として……。

 

「……ロイ……ロブロイ! 聞いているのか?」

「……ぁ……あ、えっと、すみません! トレーナーさん!!」

「メリハリをつけるのが上手いお前さんが、練習中に考え事とは珍しいな」

 

物思いに耽っている内に、いつの間にかコースを走り終え、ベンチでトレーナーさんとのミーティングをしていた。

こんなに余計なことに思考を縛られていた事実が申し訳なく、私は耳を垂らして俯いてしまう。

しかしトレーナーさんは嫌な顔一つせず、私の背中を軽く叩いてくれた。

 

「気にするな。最近は練習だけじゃなく、マスコミへの対応でも忙しかったからな、きっと疲れが残っているんだろう。少し早いが、今日の練習はここまでにしよう」

「い、いえ! 最後まで練習させてください! もう本番まで、有マ記念まで時間が……」

「何度も言っているだろう。焦って練習をしても、怪我のリスクが上がるだけでメリットは何もない。十分な休養を取って、万全な状態で良質なトレーニングを重ねてこそ意味があるんだ」

 

真剣な表情のトレーナーさんに諭される。

確かに私は、強い焦燥感に駆られての発言だった。

私は、無言で首を縦に振った。

 

「まぁ、何だ。丁度お前さんに会いたいと言ってる連中がいてな。いい機会だから一緒にリフレッシュしてきたらどうだ?」

「私に、お客さんですか?」

 

首を傾げる私の視線は、コース沿いのベンチに誘導された。

離れたところには2人のウマ娘が座っていた。

1人は尾花栗毛のウェーブかかったロングヘアのウマ娘、何を考えているか分からないような表情をしていた。

もう1人は桜色のボブカットのウマ娘、強気そうな笑顔でコチラに手を振っている。

 

「ネオユニヴァースさん! チェリーマイスターさん!」

 

私とクラシック戦線を競った、同期のウマ娘たちだった。

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