ゼンノロブロイの英雄譚 〜Rob Roy of the Royal Road〜   作:C.S

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第48話 休息

有馬記念まで数週間と迫っていたのだけど、身体とモチベーションを回復させるために、週末はお休みをもらった。

私を応援するために、ネオユニヴァースさんとチェリーマイスターさんと一緒に出かけることとなった。

二人の同期と共に訪れたのは、街で一番大きな書店だった。

全部で3つのフロアに分かれており、各階層ごとにジャンル分けされた書物が販売されている。

また、1階にはカフェも併設されており、購入した本を読みながら穏やかな時間を過ごすこともできる。

最近は多忙のせいもあり、滅多に訪れられなかったので、二人の好意に甘えて、思う存分楽しむこととした。

 

「す、すみません……私1人でこんなにはしゃいでしまって……」

「ネガティヴ──ネオユニヴァースも、『楽しい』を、感じているよ」

「私も楽しいよ! 1人だと滅多に本なんて読まないからさ!」

 

コーヒーや紅茶を飲みつつ、私がオススメした本を読みながら、2人は笑顔を返してくれた。

ネオユニヴァースさんにはSF作品を紹介した。

普段の彼女の不可思議な言動からインスピレーションを受けたのだが、少し安直だっただろうか……?

チェリーマイスターさんにはサスペンスを勧めた。

普段は直情的な性格なので、頭を悩ませる展開を新鮮に感じてくれるだろうとの配慮だ。

 

「ロブロイは、何を読んでいるの?」

「わ、私は……『英雄譚』を読んでます。大好きな偉人に、英雄に、少しでも触れたくて……」

 

自分語りをしていると、頬が熱くなってくるのを感じた。

今日は思い切って、図書館で読んで気に入った本を、自分のお金で買ってしまったのだ。

もったいなかったかもしれないけれど、読んだことのある文章を見るだけで、心の中に満足感が溢れてきた。

 

「ロブロイは、言ってた。憧れの『英雄』になるために走っているって」

「そう、ですね。今でも、憧れの背中に追いつこうと、毎日のように必死で……」

 

そう、あの背中に、憧れの姿に追いつきたくて、私は毎日走っている。

深緑の勝負服を纏った漆黒のウマ娘──2年前の有マ記念で観た、あの姿に追いつきたくて……

 

「でも、私の中では、ロブロイはとっくに『英雄』だと思ってるよ」

「え……? わ、私なんか、まだまだ……」

「もうG1を2勝もしてて、ましてや秋シニアの3冠に王手までかけている。今だけでも十分凄いんだよ、ロブロイは」

 

チェリーさんに賞賛され、気恥ずかしくなってしまう。

けれど、なんと返せばいいのか分からず、熱った顔を隠すようについ俯いてしまう。

すると、隣のユニヴァースさんが、私の肩にそっと触れた。

 

「ロブロイはすこい。でも、ネオユニヴァースは、『もっとすごいロブロイを見る』をしたいよ」

「もっとすごい、私ですか……?」

「私も、ユニも、足を止めちゃったけど、ロブロイはまだ走ってる。ロブロイはまだ、レースに挑んでる。私もユニも、ロブロイが創り出す『未来』を見たいんだよ」

 

『未来』──それはきっと、ううん、間違いなく、『有マ記念』のことだ。

私が憧れを見つけた舞台に、2人の同期は『未来』を見ているんだ。

私の勝利を、願ってくれているんだ……。

 

「ネオユニヴァースは、『期待』しているよ」

「私も『期待』してる。絶対に勝てるって、信じてるから!」

 

2人の熱く、頼もしいエールを受け取ってしまう。

こんなに応援をされては、期待を寄せられては、絶対に負けることは出来ない。

無論、負けるつもりはないけれど、それでも強く意識してしまう。

勝負へのプレッシャーが、まるで風船のように大きくなっていく。

今にも弾けてしまいそうな程に、寄せられる『期待』は大きくなっていく。

 

「……ありがとう、ございます。一生懸命に、走りますね」

 

口からは心からの感謝が溢れ出す。

だけど私の心は、真冬の海みたいに、ひどく冷え切っていた。

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