ゼンノロブロイの英雄譚 〜Rob Roy of the Royal Road〜   作:C.S

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第49話 期待

『ロブロイ──秋のシーズンの活躍に、私は期待している』

夏合宿のときに行った夏祭りで、クリスエスさんに言われた言葉だ。

 

 

 

「期待してるぞ、ロブロイ! お前さんなら、次も、この先も、必ず勝てる!」

トレーナーさんからは、こんな声援をかけてもらえた。

 

 

 

『ゼンノロブロイ、アンタの走りにも期待してるよ。ジャパンカップを勝って、アタシとターフで踊ろうじゃないか!』

秋の天皇賞の後に、タップダンスシチーさんから激励を受けた。

 

 

 

『ネオユニヴァースは、『期待』しているよ』

『私も『期待』してる。絶対に勝てるって、信じてるから!』

ネオユニヴァースさんやチェリーマイスターさんにも、期待されている。

 

 

 

 

 

期待──そう、期待されているのだ。

誰が? 私が──。

こんな、どこにでもいる普通なウマ娘の私が?

ただ、本を読むことが好きなだけで、憧れに近付きたいと不純な動機で走っているだけの、平凡な私が?

否、もう平凡という評価は遠い昔の話だ。

今の私は、G1レースを2勝したウマ娘だ。

世間的には賞賛され、競技的にはチャレンジャーから挑戦を受ける立場へと変わった。

そう、変わってしまったのだ。

私自身は内気で臆病な『ゼンノロブロイ』のままなのに、世間での私は、世界の強豪をも払い除けた王者の『ゼンノロブロイ』だった。

たった3ヶ月にも満たないうちに、私は押し上げられてしまった。

 

それ相応の振る舞いをしなければと、何度も自分自身に語りかけた。

けれど、やっぱり、『期待』という言葉は、あまりにも重すぎた。

私の身体は、『期待』というたった2文字に押し潰されそうだった。

逃げたくても逃げられない。

だって、逃げるということは、私に期待してくれた全ての人たちを裏切る行為だから。

クリスエスさんやトレーナーさん、共に駆け抜けてきた同期のウマ娘たち、これからもターフの上で競い合うライバルたち、応援してくれる観客の皆さん。

多くの期待を裏切ってしまう。

そんなことは、許されないことだ。

 

けれど、周囲の目は、私と同じ名前の別人を見ている。

私ではない『何か』を求めて、メディアを追いかけて、レース場にやってくる。

もう、作り上げられてしまったと言っても過言ではない。

『ゼンノロブロイ』という『英雄』が、私以外の皆さんによって作り上げられてしまった。

『ゼンノロブロイ』という『英雄』なら、秋シニア3冠の偉業に手が届くと、信じて疑わない。

本当の私は、そんな『期待』に恐怖する、野ウサギのように貧弱なウマ娘なのに──。

 

──これが、私が憧れた、『英雄』の姿だったのかな……。

歪で、虚飾に塗り固められた、上っ面だけの姿が……。

中身が空っぽになってしまった、ただそこにあるだけの像のような私が……。

こんなのが、『英雄』だったのかな……。

 

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