ゼンノロブロイの英雄譚 〜Rob Roy of the Royal Road〜   作:C.S

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第50話 最終ミーティング

『年末の風物詩、一年間を締めくくる総決算、暮れのグランプリレース『有マ記念』。今年も錚々たるウマ娘たちが選ばれて参りました』

『ここからは参考レースを見て参りましょう。まずはジャパンカップを振り返ります』

『これはゼンノロブロイが快勝でしたね。誰かをマークするという彼女の走り方ではなくて、自信を持って中団から抜け出すというね──』

 

控え室のテレビから聞こえてきた、今日のレースの特番放送。

これから出走するウマ娘たちの情報が流れていく。

当然、私のことも……。

 

「ロブロイや。今日までのお前さんの努力は、全部見てきた。全部見てきた上で、コレだけは胸を張って言える。お前さんは、本当に強いウマ娘だ」

「柏トレーナー……」

「心配そうな顔をするな。心配性だけは、遂にどうにもならなかったな」

 

トレーナーさんは優しく、穏やかな笑みをこぼした。

私の緊張感を解きほぐそうとしてくれているのだろう。

ガチガチになって、最高のパフォーマンスが発揮できなくならないようにとの気遣いなのだろう。

その隣にはクリスエスさんがいた。

私がチーム『アルネブ』を目指したキッカケの先輩が、応援に駆けつけてくれた。

クリスエスさんだけじゃない、他のチームメンバーも観客席で見守ってくれているという。

本当に、良いチームに巡り合うことができた。

 

「作戦は何度も重ねたミーティングの通りだ。今回の枠番は1枠1番。最高のポジションと言って良い、理想通りに走れるだろう」

「けれど、その分、周囲からマークされる……」

「その通りだ。そのリスクだけは、常に頭の片隅に置いておくんだ。なにせお前さんは、圧倒的1番人気に支持されているんだからな」

 

渡された新聞の一面には、上位人気のウマ娘たちの顔が大きく映し出されていた。

そこには、自信満々のポーズを決める、タップダンスシチーさんもいた。

けれど、彼女より、どのウマ娘よりも大きく、私の姿が掲載されていた。

派手で大きな見出しで、『秋シニア3冠に挑む』と刻まれながら。

 

「……………………」

「──怖い、か?」

「クリスエスさん……はい、少し……」

 

深緑のキルトスカートを握り締めながら俯いてしまう。

私の小さい身体は、『期待』という言葉に押し潰されてしまいそうになる。

私はクリスエスさんのように強い英雄には……

 

「Understand──気持ちは、分かる。私も、同じ気持ち、だった」

「クリスエスさんも、同じだった? どういう事ですか?」

「気付いていなかったのか? クリスエスもレースの前は、お前さんのように緊張でガチガチになっていたんだよ。この鉄仮面のせいで分かり辛かったかもしれないが……」

 

柏トレーナーはクスクスと笑いながらクリスエスさんを見やる。

クリスエスさんは視線を落とした。

常に凛とした立ち振る舞いをしているクリスエスさんからは、全く想像もつかない。

ふと、思ってしまう。

私は、本当のクリスエスさんのことを、どの程度知っているのだろうか?

私がクリスエスさんに抱いていた『英雄』の姿は、私が勝手に作り出していた『もう1人のクリスエスさん』だったのではないか、と。

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