ゼンノロブロイの英雄譚 〜Rob Roy of the Royal Road〜   作:C.S

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第51話 裏切ってしまう

控え室でのミーティングを終えて、私はターフへと続く地下バ道を歩いていた。

地下にいても、真上の観客席から聞こえる大歓声は、肌で感じられるほど強かった。

一歩ずつ、一歩ずつ、照明に照らされた通路を進むにつれて、耳に入る声は大きくなっていく。

それに比例して、私の内側でプレッシャーが増幅していく。

 

足取りが重い。

進むのが怖い。

ターフに立ちたくない。

マイナスの感情が、止めどなく溢れてくる。

 

今日まで、様々なメディアで何度も取り上げられた。

多分、大多数の人にとって、今回のレースへの関心は共通しているのだろう。

『ゼンノロブロイが秋シニア3冠を達成できる』か否か──

大勢の人が私に注目してる……。

たくさんの期待が私に寄せられている……。

私は、失敗できないんだ……必ず、達成しなくちゃいけないんだ……。

 

 

 

『ロブロイ──秋のシーズンの活躍に、私は期待している』

夏合宿のときに行った夏祭りで、クリスエスさんに言われた言葉だ。

 

「期待してるぞ、ロブロイ! お前さんなら、次も、この先も、必ず勝てる!」

トレーナーさんからは、こんな声援をかけてもらえた。

 

『ゼンノロブロイ、アンタの走りにも期待してるよ。ジャパンカップを勝って、アタシとターフで踊ろうじゃないか!』

秋の天皇賞の後に、タップダンスシチーさんから激励を受けた。

 

『ネオユニヴァースは、『期待』しているよ』

『私も『期待』してる。絶対に勝てるって、信じてるから!』

ネオユニヴァースさんやチェリーマイスターさんにも、期待されている。

 

 

 

期待──そう、期待されているのだ。

誰が? 私が──。

大きな大きな『期待』は、まるで鉛のようで、私の全身にのしかかってくる。

ターフに近づくにつれて、足は重くなり、呼吸を荒げてくる。

たくさん準備はしてきた。

人一倍の努力をしてきた。

練習だって積み重ねてきた。

それでも、レースに絶対はない。

これまで2連勝してたって、今日は負けるかもしれない。

皆の『期待』を、裏切ってしまうかもしれない……。

……怖い……そう思ってから、ターフへ向かう足は止まってしまった……

 

 

 

 

 

 

 

 

「……ちゃん? ロブロイちゃ?」

 

穏やかで暖かい、まるで母親のような安心感のある声が、私を呼んでいた。

視線を上げると、フワフワとした葦毛のウマ娘が、心配そうに私を覗き込んでいた。

 

「ロブロイちゃん、大丈夫? もしかして、どこか具合が悪いの? トレーナーさんか誰か呼ぶ?」

 

ヒシミラクルさんはそう言って、私の背中をさすってくれた。

 

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