ゼンノロブロイの英雄譚 〜Rob Roy of the Royal Road〜 作:C.S
控え室でのミーティングを終えて、私はターフへと続く地下バ道を歩いていた。
地下にいても、真上の観客席から聞こえる大歓声は、肌で感じられるほど強かった。
一歩ずつ、一歩ずつ、照明に照らされた通路を進むにつれて、耳に入る声は大きくなっていく。
それに比例して、私の内側でプレッシャーが増幅していく。
足取りが重い。
進むのが怖い。
ターフに立ちたくない。
マイナスの感情が、止めどなく溢れてくる。
今日まで、様々なメディアで何度も取り上げられた。
多分、大多数の人にとって、今回のレースへの関心は共通しているのだろう。
『ゼンノロブロイが秋シニア3冠を達成できる』か否か──
大勢の人が私に注目してる……。
たくさんの期待が私に寄せられている……。
私は、失敗できないんだ……必ず、達成しなくちゃいけないんだ……。
『ロブロイ──秋のシーズンの活躍に、私は期待している』
夏合宿のときに行った夏祭りで、クリスエスさんに言われた言葉だ。
「期待してるぞ、ロブロイ! お前さんなら、次も、この先も、必ず勝てる!」
トレーナーさんからは、こんな声援をかけてもらえた。
『ゼンノロブロイ、アンタの走りにも期待してるよ。ジャパンカップを勝って、アタシとターフで踊ろうじゃないか!』
秋の天皇賞の後に、タップダンスシチーさんから激励を受けた。
『ネオユニヴァースは、『期待』しているよ』
『私も『期待』してる。絶対に勝てるって、信じてるから!』
ネオユニヴァースさんやチェリーマイスターさんにも、期待されている。
期待──そう、期待されているのだ。
誰が? 私が──。
大きな大きな『期待』は、まるで鉛のようで、私の全身にのしかかってくる。
ターフに近づくにつれて、足は重くなり、呼吸を荒げてくる。
たくさん準備はしてきた。
人一倍の努力をしてきた。
練習だって積み重ねてきた。
それでも、レースに絶対はない。
これまで2連勝してたって、今日は負けるかもしれない。
皆の『期待』を、裏切ってしまうかもしれない……。
……怖い……そう思ってから、ターフへ向かう足は止まってしまった……
「……ちゃん? ロブロイちゃ?」
穏やかで暖かい、まるで母親のような安心感のある声が、私を呼んでいた。
視線を上げると、フワフワとした葦毛のウマ娘が、心配そうに私を覗き込んでいた。
「ロブロイちゃん、大丈夫? もしかして、どこか具合が悪いの? トレーナーさんか誰か呼ぶ?」
ヒシミラクルさんはそう言って、私の背中をさすってくれた。