ゼンノロブロイの英雄譚 〜Rob Roy of the Royal Road〜   作:C.S

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第55話 二度目の有マ記念(前編)

渇いた風が、芝を撫でるように吹き去っていく。

空を仰げば、雲は少なく、西に傾いた陽光がターフを照らす。

これから始まる有マ記念は、中山レース場で開催される年末のグランプリレースだ。

芝コース、2500メートルで争われる、1年間の感謝をファンの皆さんへ伝えるためのレースだ。

係員に誘導されて、一人、また一人と、鉄のゲートの内側へ収まる。

タップダンスシチーさんも、ヒシミラクルさんも、他のライバルたちも、次々にゲートインしていく。

キルトスカートをたなびかせながら、私もゲートに入る。

1枠1番、最内枠を獲得できたのは、幸運と言う他ない。

幸運に感謝して……静かに時を待つ。

集中力を研ぎ澄ませる。

最後の1人がゲートに収まる瞬間を……。

静寂が打ち破られる瞬間を……。

ゲートが開き、スタートが切られる瞬間を……。

寸分たりとも、見逃さないように……!

 

 

 

ガコンッ!!

 

 

 

一斉に、走り出す!

 

『ゲートが開いた、今スタートが切られました! ちょっと後方、2番のミラシュラインが出遅れましたが……さぁ、早くもタップダンスシチーが行きました! タップダンスシチーがスゥーッと先頭に立ちました!』

 

タータンチェックのマフラーが風を受けるのを感じながら、集団に付き従うように走る。

私は最内枠、外から他のウマ娘たちが先行して、集団の形が形成されていく。

周囲を走ってくれるおかげで風の影響は小さくなるけれど、その分、最終コーナーで前に抜け出すためにパワーが必要になる。

それに、油断はできない。

なぜなら先頭をるのは、大逃げを得意とするタップダンスシチーさんだから。

少しでも気を抜こうものなら、最も容易く逃げ切られてしまう。

このレースは彼女の独壇場になってしまう。

そして、もう1人……芦毛のステイヤーも私の前に位置取っている。

 

『先頭はタップダンスシチー、そしてヒシミラクルが2番手となりました。外目をつきましてはホールデム、そしてトライスプラッシュが行っている。内々からはゼンノロブロイ、さらにニトロプロスペクタ。さぁ、8番ネヴァークルーザーは中段です。そして後方から行くのか、パワフルシューターは抑えています。ゼンノロブロイをマークするように、パワフルシューターは後方から進めています。さぁ、正面スタンド前に15名が出て参ります』

 

地鳴りのような大歓声が、全身を包み込む。

応援の声は、期待の熱は、時には身体を縛る枷であり、時には力を与えてくれる。

今の私にとっては、全ての言葉がエネルギーとなる。

トレーナー、チームメンバー、同期のライバルたち、そしてファンの皆さん、全ての声援が、私を前に進ませる大きなエネルギーとなる。

勝ちたい──私に、レースの素晴らしさを教えてくれたこの舞台で、私も、同じように夢を与えられる存在になりたい!!

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