ゼンノロブロイの英雄譚 〜Rob Roy of the Royal Road〜   作:C.S

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第6話 チェリーマイスター

図書委員の仕事を終えた後、一層の情報を集めるため、トレセン学園のレース場にやってきた。

この時間、ここではチェリーマイスターさんが練習をしていると聞いたからだ。

皐月賞を僅差2着の実力者、一体どのような人物なのだろうか。

そう思いながら観に行ったのだけど……。

 

「ウオオオオオォォォォォォォリャアアアアアアアッ!!!!」

 

雄叫びを上げながら芝の上を爆走するウマ娘が1人。

桜のようなピンクのショートボブに、強い自信を内包した釣り上がった瞳、いずれも見覚えのある姿だ。

勝負服ではなく学園指定のジャージ姿だが、見紛うハズがない。

彼女がチェリーマイスターさんだ。

 

「ッハァ! ハァ! フゥゥゥーーーーッ!!」

 

チェリーマイスターさんは、ゴール板を通り過ぎた後、荒い呼吸を整えながら水を飲み始める。

彼女を観察していて、分かったことを、持参したノートにメモする。

チェリーマイスターさんの脚質は、前半はややローペースで走り、終盤に一気に追い上げていく『差し』型だ。

序盤にスタミナを温存できる分、最終直線に差し掛かってからの爆発的な末脚は、並のウマ娘を寄せ付けない。

また、彼女のパワフルな踏込みも差しの脚質に合っている。

何と言うか、生まれ持った身体も才能なんだなぁっと、少し嫉妬してしまった。

 

「……お〜い? 聞こえてますかぁ〜?」

「…………ふぇ?」

 

意識の外からかけられた声に、思わず気の抜けた声が溢れる。

快活な声に導かれて顔を上げると、満面の笑みを浮かべたチェリーマイスターさんが、私を覗き込んでいた。

好奇心にも似た、少年のような純粋な眼差しだった。

 

「アッ……あのっ……」

「アッハッハ! そんなに縮こまってないで声をかけてくればよかったのに!」

「れ、練習の邪魔をしてすみません! チェリーマイスターさん!」

「おっ? アタシのことを知ってるのか? ってことは、ダービーの対戦相手か?」

 

コチラの素性を悟ったのか、チェリーマイスターさんの瞳が鋭くなる。

失言だったかと思うより先に、少し何かを考える素振りを見せ、また満面の笑みに戻った。

 

「アッハッハ! ライバルだって言うんなら、存分にアタシの走りを見てってよ!」

「チェリーマイスターさん、良いんですか? てっきり追い返されるものかと……」

「『チェリー』でいいよ、皆そう呼んでるから。存分に、隅々まで見てってよ! だって、その程度で負けるつもりはないからね」

 

チェリーさんは曇り無き眼で、堂々と宣言した。

どれほど対策されようとも、決して自分を曲げない走りをする。

誰が相手であろうとも、自分のスタイルを貫き通す。

自分の走りに絶対の自信を持っている、それが彼女の力強い走りに反映されているのだろう。

 

「わ、私も負けません! 日本ダービーを勝つのは私です!」

「見た目に反して威勢がいいねぇ? アンタ、名前は?」

「──ゼンノロブロイです」

「『ロブロイ』……英雄の名前だ。覚えておくよ、例えアタシが負かす相手でもね」

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