ゼンノロブロイの英雄譚 〜Rob Roy of the Royal Road〜   作:C.S

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第60話 IFエピローグ〜見たかった未来〜

『さぁ! 今年もこの季節がやって参りました! 暮れの大一番、中山レース場のメインレース『有マ記念』が間も無く開催されます!!』

 

「ハハッ! 有マの時期はいつも凄い人だかりだが、今年は例年にも増して窮屈に感じるな。ロブロイ、クリスエス、2人とも逸れるなよ」

「No problem──私は、いいが……ロブロイは、すでに逸れている」

「と、トレーナーさぁぁぁん……クリスエスさぁぁぁぁん……どこに行っちゃったんですかぁぁぁ……」

「大丈夫かロブロォイ! 本当に、終ぞ身長は微塵も伸びなかったな……『小さな英雄』ってのも、悪くないか」

 

苦笑するトレーナーさんに助け出されながら、なんとか合流を果たす。

今日の有マ記念は、残念ながらチーム『アルネブ』のメンバーが出走するワケではない。

ただ、私にとって、私たちにとって、注目しなければならない特別なレースだったので、無理を承知でトレーナーさんに連れてきてもらった次第だ。

 

 

 

**********

 

 

 

私が秋シニア3冠を達成したニュースは瞬く間に日本中を賑わせた。

日本一の『英雄』として、私の『ゼンノロブロイ』の名は轟いた。

引っ込み思案な私としては、そこまで堂々と広められるのは気が引ける思いだった。

だけど、私の意図するところとは別に、私の名前はすぐにメディアから消えていった。

代わりに現れたのは、その当時のクラシックを席巻した、1人のウマ娘だった。

彼女は圧倒的な末脚とレースセンスを駆使して、デビューから無敗のままクラシック3冠の栄光を掴み取った。

人は彼女の走りを、『まるで、飛んでいるようだ』と評した。

私も彼女と走ったことがあるけれど、なるほど、世間の評価は正しかったと嫌でも納得させられた。

デビューから引退まで、14戦12勝を飾った彼女は、人々からこう呼ばれた。

『英雄』──私が渇望した称号は、彼女の象徴となってしまったのだ。

 

 

 

**********

 

 

 

「だがロブロイや、どれだけ素晴らしいウマ娘が台頭しようともだ! 俺の中での『英雄』はお前だけだ!」

「Agree──そして、ロブロイは……誇るべき称号を、持っている。『秋シニア3冠』と、『有マ記念のレースレコード』だ」

 

私がトゥインクルシリーズを引退してから、しばらく経つ。

けれどあの日、私が到達した"2分29秒5"というレコードタイムは、未だに更新されていない。

そして、『秋シニア3冠』の称号を有するウマ娘も、私を含めて2人しかいない。

誇るべき快挙であることは、疑う余地もない。

だというのに……。

 

「……だというのに、あまり世間の話題に上がらないのは、私のことが忘れられてしまったからでしょうか?」

「ロブロイや、それについては俺も納得がいっとらん。お前さんの功績は胸を張れるものだ」

 

項垂れる私の頭を、細くも武骨で大きな手が優しく包み込む。

その温かみで、胸の奥からジンワリと安心感が広がる。

嗚呼、変わらないんだな、と……。

 

「ロブロイ……少なくとも、今は注目されているハズだ。なぜなら今日は……」

「そうですね、今日の有マ記念は特別ですから……史上3人目の『秋シニア3冠』のウマ娘が誕生するかもしれないんですから!」

 

ターフヴィジョンに出走表が映し出され、地下バ道から次々にウマ娘たちが出てくる。

今日のレースで、1番人気に推されているウマ娘が渦中の人物だ。

その実力はジュニア期から発揮されていた。

朝日杯フューチュリティステークス、クラシックの日本ダービー、そして昨年の有マ記念と、3年連続G1タイトルを獲得した麒麟児だ。

そして今年、天皇賞・秋とジャパンカップを連覇し、此度の有マ記念にて連覇と『秋シニア3冠』の達成に挑戦する。

 

「私とクリスエスさん、2人分の偉業をたった1人に達成されてしまいますね」

「Hopeful──喜ばしいことだが……同時に悔しくもある」

 

クリスエスさんは、腕を組みながら裾を強く握りしめる。

普段、冷静沈着な彼女が感情を表に出すのはとても珍しい。

けれど、きっと私と彼女の思いは一緒だろう。

 

「……走ってみたいですね。彼女とも……」

「Agree──ターフの上で、共に語らいたいな……」

 

『さぁ! 白とグレーの市松模様の勝負服がターフに降り立った! 1番人気のウマ娘が、1枠2番ゲートに収まります! 今年の有マ記念でも逆襲の末脚を炸裂させるのか!! 間も無く、出走です!!!」

 

実況の叫びが高らかに鳴り響き、共鳴してスタンドも湧き上がる。

皆が心して見守る──新たな『英雄』が誕生する瞬間を。




これにて『ゼンノロブロイの英雄譚』は完結となります。
最後までお付き合いいただき、誠にありがとうございました。
最後に未練たらしいIFを描いてしまい、大変申し訳ございませんでした。
うp主の夢は、5年後の天才と逆襲の子供たちへ託したいと思います。
改めてになりますが、最後までご愛読いただき、誠にありがとうございました。
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