ゼンノロブロイの英雄譚 〜Rob Roy of the Royal Road〜   作:C.S

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第8話 優勝候補

『先程、細かい霧雨も舞っていました東京レース場──昨日まで降り続いた大雨の影響で、重バ場でレースを迎えることになります。数々の難関を乗り越え、このダービーに歩を進めた、18人のウマ娘たちの入場です』

 

長い長い地下道を通り抜け、12万人の大観衆が詰め掛けるレース場へと踏み出していく。

地下まで響いていた歓声は、地上に出ると大気を揺るがすほどの轟音となった。

今までの私だったら、とっくに萎縮してしまい一歩も動けなくなっていたと思う。

けれど、今の私なら大丈夫──クリスエスさんとトレーナーからのエールを受けた私なら──。

英雄の勝負服を纏った、私なら──。

 

『姿を見せたのは『青葉賞』を制した、2枠3番のゼンノロブロイです!』

『前走は1番人気に推され、そのまま1着を勝ち取りました。今回も3番人気に推されています。きっと好走が期待できるでしょう』

 

実況のハツラツとした女性の声と、解説の落ち着いた男性の声が聞こえる。

思わず身が引き締まってしまうけど、身体が固くなりすぎないようにしないと……。

そう考えていた瞬間、場内の歓声がより一層大きくなった。

思わず気圧されてしまいそうな声量に振り返ると、それが2人のウマ娘へ向けられたものであることが分かった。

1人は白くダボっとした勝負服、尾花栗毛のウェーブヘアが特徴のウマ娘。

もう1人はピチッとした淡いピンクのタキシードに、勝気な表情が印象的なウマ娘。

今大会の優勝候補たちだ。

 

『さあ! この2人が入場してきました! 1枠1番、2番人気のチェリーマイスター! そして7枠13番、1番人気のネオユニヴァースです!!』

『皐月賞ではネオユニヴァース、チェリーマイスターの一騎打ちとなりました。今回も熾烈な激戦が期待できるでしょう』

 

この2人に寄せられる期待の大きさは、側に立っているだけで十分に伝わった。

圧倒されそうになるけれど、決して飲み込まれない。

だって私は、この2人に並ぶために……ううん、この2人を倒すために、準備を整えてきたんだから。

 

「ユニヴァースさん、チェリーさん」

「──ハロー、ロブロイ」

「やぁ、ゼンノロブロイ! あれから私の対策は出来た?」

 

2人とも、笑顔で反応してくれる。

けれど、纏う空気はピリついていて、思わず後ずさってしまいそうになる。

けれど、絶対に退かない。

勝利のイメージを、より鮮明なものにするために。

 

「……私が勝ちます……ダービーウマ娘として、世代の頂点を、獲らせていただきます!」

「へぇ……随分と印象が変わったねぇ。前は怯えたウサギみたいだったのに、今は飢えたトラのよう」

「スフィーラ──ロブロイを"ZDAL"……強敵と認識するよ」

 

静かな、本当に静かな闘志のぶつかり合い。

胸の内に燃やした熱い思いは、2400メートルのターフの上で爆発させる。

だから今はこれでいい。

短な邂逅だったけれど、お陰で『英雄』のイメージが、より鮮明なものになった。

 

『さぁ、各ウマ娘がゲートに入り体勢完了! 日本ダービーのスタートです!』

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