回生の者とカルデア 作:……
「……そうだな。確かに、私は全てを愛することができる。愛している。だが、私は愛するものを自らの手で歪めるような真似はせぬ。愛しいモノというのは、ただそこに在るだけで良いのだから」
彼女は、現界した直後にギルガメッシュに向けたものとも違う温和な笑みを浮かべてそう言った。
「それが私の愛し方であり在り方だ。獣としての力を振り翳すとすれば、それはきっと
「……今この場にいる君は人類悪の資格はあれど成り得ない、ということかな?」
「その通りだ。……それよりも、今の問題はコレだろう」
無造作に槍を振るうレイ。
するとその槍は闇に紛れてこちらへと迫っていたラフムへと突き刺さる。
「……
虚空に口を開いた黄金の砲門は、圧倒的物量を持ってラフムたちを蹂躙する。
しかし、
「g……g様……貴様!私を……誰だと……ぁぁァァ!!!」
「……これは……私か?」
「その通り、君の要素を混ぜ込まれたラフムは大きく変質しているいる。戦闘力は通常のラフムとは比べ物にならないだろうね。君の“射撃”を少しの間とはいえ生き延びているわけだし」
目の前で人の言語を獲得し、叫ぶラフムを前に彼女が漏らした疑問にマーリンが答える。
「……藤丸、先に謝っておく。今回の私は加減をせぬ故に、お前の出番は無いだろう。これは私がすべき後始末だからな」
周囲に濃密な魔力が渦巻く。
それに呼応するように、あるいは迎撃の体制を整えるようにラフムが湧き出す。
「……下郎が、私に触れること能うと思うな」
放出されたのは彼女の呪い。
彼女の呪いは彼女自身の魂と肉体を補填し、不死たらしめるモノである。
ならば、その魂を補う熱は何処にあるのか?
普段、彼女の呪いはその強度でその矛盾を
その矛盾を彼女の意思に応じ他者からの強奪という方法で埋めるのが、彼女が体得したこの呪いの“使い方”だった。
魂を奪われたラフムたちが地に堕ちるのに目もくれず、呪いがばら撒かれた範囲内に存在しなかったラフムたちが次々に飛来する。
「なるほど、魔術王とやらはここで私を退去させる算段らしい。その名通りの男かそれを騙る愚か者かは知らんが、この私とやり合う度胸はないようだな。藤丸、これを持って行け」
「……っ!これは?」
藤丸立花に投げ渡されたのは、彼女の黄金に輝く腕輪。
その表面には複雑な紋様が刻まれ、不規則に輝いている。
「諸悪の根源の目の前まで辿り着いたのなら、それを使え。それには私の魔術を刻んである。決戦魔術と言えば伝わるか?」
『……冠位英霊』
「その通りだ、ロマニ・アーキマン。その使用の可否は貴様らに一任する。……さて、後は私が私自身として、後始末をしなければならんのだが───」
レイはマーリンへと目配せする。
すると、マーリンは頷いた。
「そうだ、彼がこの場にいる。…相手はビーストであり、
遠く崖の上、剣を携えた男が原初の母を見下ろしている。
「死なくして命はなく、命あってこそ生きるに能う。そなたの言う永劫とは、歩みではなく眠りそのもの」
蒼炎が男を包み、その姿は山の翁のものへと変貌した。
「山の翁よ、すまないが私の尻拭いに付き合ってくれるか?」
「……良いだろう。原初の母とて、意思もなき怪物と成ったのであれば、晩鐘の示すままこの剣を振るうことに躊躇いはない。原初の母よ、その翼……天命の下に、剥奪せん!」
山の翁はティアマトへと肉薄し、その剣を振るった。
ティアマトの肌に青い亀裂のような傷が刻まれ、ティアマトは苦しむように叫んだ。
『ビーストに死の概念が……!?今ならビーストを完全に消滅させられる!』
「分かっている」
彼女の槍が輝きを纏う。
宝具ではなく込められた膨大な魔力による輝き、それは彼女の奥の手となる一撃の予備動作であるが、しかし
「──っ!?」
彼女の元へと絶え間なく突貫し、その度に
「──きひひひははは!訛るなよ愚物が!」
「その声で喋るな虫唾が走る……半端な混ざり物が」
レイが槍を振るう。
しかしラフムはそれを受け止め、レイの首を落とした。
「きひひははは!きひ……?」
「油断したな……、コレに一度とはいえ首を落とされるとは。ラフムの質が上がっている……流石の私でもティアマトの相手をしながらお前たちを守り切ることはできん。お前たち、備えろよ」
その時、優に二十を超える数のラフムが一斉に飛来する。
その全てが、先ほどと同じ神霊級、もしくはそれを超越した個体だった。
「っ、消え去れ!」
再度猛威を振るった呪いによって半数が生き絶えたが、残りは異常な速度で周囲を旋回し、死角から藤丸立花へと迫り刃を振り上げた。