回生の者とカルデア 作:……
一話
藤丸立花が目を覚ますと、そこは混沌としか言いようのない光景が広がっていた。
様々な国、様々な時代の建築物や文化が切り貼りされたパッチワークのような空間、その中心に立花は立っていた。
「……えーっと、こういう時の第一声って何言えばいいかな?」
「──っ!?」
真後ろから聞こえた声に立花は驚いて振り向く。
そこにいたのは、この空間と同じように継ぎ接ぎの服を着た、中性的な人物がこちらを見つめていた。
「君はどうしてここに?君の話を聞かせておくれ」
「えっと……」
立花が今までの経緯を語ると、
「──ごめんよ、君の旅路を笑いたかったわけじゃない。でも、ふふっ…眠ってここに来ただなんて!眠っただけで英霊の座までくる女がいるとは思わなかったんだよ!っははは!」
「つまりここは、あなたの英霊の座?」
「そうだよ。私は──輪廻、いや違うな。リンカー……?回生……、そうだ!ボクはカイセイ、そう呼んでくれ」
頭を捻った挙句、明らかに本名じゃない名前を名乗ったカイセイにジトっとした目を向けた立花に、カイセイは慌てて弁明する。
「待って待って!オレってばこの状態で話すのなんて割と初めてだし、話すことになるなんて思ってもなかったからさ、名前も決めてなかったの!」
「……どういうこと?」
「抑止力とかの話は聞いたことある?地球を守りたいガイアと人を守りたいアラヤ、その合作がワタシなんだよ」
さらに首を傾げる立花に、カイセイはさらに話を続ける。
「大昔に神に呪われた一人の人間が居た。その人間は魂の不滅を得て、アラヤとガイアはその者に伝説や神話、そして文明を知ることによって再現を可能にする権能を与えた。つまり、様々な時代に転生して、その文明や神話、伝説を収集することを役目にされたってことだ。……英霊の座には時間の概念が無いワケだから、一人目の私が死んだら自動的に英霊の座にはこの世全ての力と知恵を得た英霊、抑止力の最終兵器が出来上がる。それが俺だよ」
つまり、同じ魂を転生させただけの別々の個人を繋ぎ合わせた存在こそが、ここにいる彼であるらしい。
カイセイは少しの時間の後、思い出したように
「魂が同じだけで転生した私たちは一応別人、それが混ざってるから口調も一人称もぐちゃぐちゃだけど気にしないでね」
と付け加える。
幾度もの死の経験、幾度もの人生の経験。
それを想像し、なんと声をかければいいかわからなかった立花にカイセイは
「よければボクの自慢話を聞いてくれるかい?正真正銘、この世で最も有名人に出会っているのはわたしだからね、自慢とかしたいんだよ」
「えっと、うん!聞かせて!」
そう頷いた立花に
形のない島で三姉妹と共に過ごした日々。騎士として王とその仲間たちと共に語らい、そして全てを失った悲劇。向日葵の画家と過ごした短い時間。天才と語り合い、軽く罵り合いながらも共に頭を働かせた時間。
彼が語った思い出はこれだけにはとどまらず、彼は多くの思い出を自慢げに語った。
そうして一通り語り終えた
「……これを、君のところにいる万能の天才さんに返しておいてくれ。『僕は絵は苦手だと言ったはずだ』って伝えておいて欲しい。そろそろ目覚める時間だろう?」
その言葉と共に、ぐらりと世界が揺れるような感覚に包まれる。
次に目を開けた時、立花はベッドの上で、その手には絵筆が一本しっかりと握られていた。
立花がそれをダ・ヴィンチに渡そうと彼女の工房へ赴き、ポケットから絵筆を取り出した瞬間、ダ・ヴィンチはガシリと立花の肩を掴んだ
「立香ちゃん!?それをどこで!どうやって手に入れだんだい!?」
「えっと、まず落ち着いて─────」
「彼は今どこに!?どうやって会った!?」
今までの彼女からは想像できないほどに取り乱すダ・ヴィンチに狼狽えつつも、今日の夢のことを立花が伝えるとダ・ヴィンチは
「……そうか、取り乱してすまないね。でも彼はそれほど大事な親友だったんだ。さて、立花ちゃん、召喚室に向かって欲しい。もしも彼が召喚できたなら、彼はカルデアにとってとても大きな戦力になる」
促されるまま召喚室に向かった立花。
渡された絵筆を触媒とし、召喚を開始する。
光り輝いた円の中より人影が現れた。
「……サーヴァント・ルーラー。輪廻の中に在りし故に名は無い。好きに呼べ」
現れた彼女は、面影こそあるものの、夢の中で見た
「ふむ、どうやらカルデアの霊基再臨やら霊衣やらのシステムのおかげで混ざり合った私たちが見事に分離しているらしい。今の私はメソポタミア、ギルガメッシュと共に在った頃の私だ。この頃はまだ積み重ねた死が少なく、精神も幼かった」
彼女は懐かしげにそう語る。
「ではマスター、これからよろしく頼むぞ」
そういうと、彼女は霊体化してどこかは消えていった。
名無しのルーラー
英霊の座にあるはずの本物の魂が分割・複製され未だに転生を繰り返している。
過去の自分の記憶はあるが、サーヴァントが以前の聖杯戦争での記憶を記録として持っているのと同じで、覚えてはいるが実感はない。
その神話や伝説、時代の文明全てを回収する必要があるため、一つの時代に複数の彼/彼女がいることもよくある。
カルデアでは、霊基再臨や霊衣により時代ごと、場所ごとのそれぞれの彼/彼女が明確に分離しており、同一の霊基・霊核を持ちながらもコロコロと性格や姿が入れ替わる。