回生の者とカルデア 作:……
「……ふむ、ギルガメッシュ王にゴルゴン三姉妹、キミはやっぱり人に愛される才能があるんだね。それとも、他人を愛する才能なのかな?」
「──さぁ?ボクにはわからない。けれど、確かに良き友と良き出会いに恵まれた。もちろん君も含めてね、ダ・ヴィンチ」
カルデアにて、少し揶揄うように問いを投げたダ・ヴィンチに、男は答えた。
ダ・ヴィンチと出会ったその時の姿──本人に聞かなければ性別がわからないと誰もが思うほど中性的な姿──の彼のその言葉に、ダ・ヴィンチは少し顔を逸らした。
「……私の遺伝子が後世に残らなかったのはキミのせいだぞ、レイ」
「レイ……、そういえばそう名乗っていたね、懐かしい。しかし、それはそれとして君の男色にボクは関係ないだろう。君が拗らせただけだ」
「なっ!?言うに事欠いてソレかい!?どれだけ君が私の……っ!」
彼の返答にガタリと椅子から立ち上がるダ・ヴィンチ。
一番混む時間帯を過ぎた食堂だったので見ていた人物は少ないが、見る人が見ればこれは夢かと疑うほどに顔を真っ赤にしてダ・ヴィンチは椅子に座り直した。
「……認めたまえよ、私の趣向を捻じ曲げたのは君だぞ」
「ボクはそんな記憶はない。天才の遺伝子が後世に残らなかった責任はボクには重すぎるな」
「だ・か・ら!実際にその責任が君にあると言ってるんだよ!」
「いや、ボクにはないね」
「ある!」
押し問答を繰り返しながら、段々とお互いの主張が雑になっていく。
……そもそも、議題からして割とトンチキであることは、この会話を偶然に聞いた誰もが察したが、黙っていることにした。
ぐぬぬ、と次の手を考え込むダ・ヴィンチを前に、彼はのうのうとパフェを頬張っている。
そんなところにふと、藤丸立花が通りかかった。
すると、ダ・ヴィンチはすぐさま二人のテーブルに立花を呼び、問う。
「ねぇ立花ちゃん?初恋の人がコレで、しかも女性と思っていたのが男性なんて話になったらさ、それまでの価値観とか全部吹っ飛ぶと思わないかい?」
コレ、とパフェを頬張る彼を指さすダ・ヴィンチ。
立花はなるほど、とダ・ヴィンチの主張を理解する。
その細い指はスプーンにしなやかに絡みつき、一口頬張るたびにその瞳を幸せそうに、可愛らしく細める姿は確かに傾国の美女と言っても過言ではない。
すると、突然彼がスプーンを取り落とした。
「……今、なんて?」
「だから、初恋の人が──」
「本気……?」
「そりゃあ、本気じゃないと言わないよ」
言い切ってしばらくした後、やってしまったという表情で赤面するダ・ヴィンチを前に、彼もほのかに頬を染めていた。
「ダ・ヴィンチちゃん?えーっと、その……ドンマイ?」
「……くっ、退去してやるぅ!」
立花に慰められ、よほど恥ずかしかったのか、本当に淡い光を帯び始めるダ・ヴィンチ。
しかし、
「──せっかく会えたのに、またさようならは悲しいなぁ」
「……。」
ダ・ヴィンチにとって懐かしい、悪戯っぽい調子の彼の声に返答はない。
しかし、ダ・ヴィンチの帯びていた光が消え去る。
彼女の瞳は〝ほら、恥ずかしいこと言ったんだし、引き留めるなら早く答えを寄越したまえよ!〟
と雄弁に語っている。
「……えーっと、
意思の確認の言葉と共に差し出されたその手をダ・ヴィンチは、高級な陶磁器に触れるように恐る恐る握り返した。
「ダ・ヴィンチちゃんってばそんなに大切にしてくれるんだ?意外かも」
目を細めて笑う彼に、ダ・ヴィンチは非難の目線を向ける。
そして、思い出したように
「……ところでさっきの論争は、非を認めるということでいいのかな?」
「生前から恋人がいたりした〝僕〟はカルデアでもその相手と話したりするし、ボクもそんな感じでいいかなって思ったんだよ、ダ・ヴィンチならね。だけど、君の趣向についてはボクは本当に何も悪くないぞ」
「だーかーらー!」
何気なく語られた彼の恋愛事情と、またもや始まってしまった不毛な論争から目を逸らすように遠くを見つめる立花であった。