回生の者とカルデア 作:……
「……サーヴァント、バーサーカー。召喚に応じ、参上した」
白銀の騎士は、獅子王によって他の誰よりも先に第六特異点へと呼び出された。
最初の騎士であった彼は、大剣を手に召喚に応じた。
抑止力と契約した彼らの内から、一人として切り取られたその霊基は、あまりに脆く、歪みに満ちた物だった。
獅子王より、事の些細を聞き及んだ彼は、他の円卓の騎士が召喚されて揃うまで、大剣をその手に握りしめたまま、無言で獅子王のそばに立ち尽くした。
多くの円卓の騎士が召喚され、集められた円卓の騎士の前で獅子王は言った。
魔術王による世界の崩壊、せめてもの対抗策としての『聖槍による救済方法』。
「日没に答えを聞く。私が待てる猶予は、それだけだ」
その直後、暮れ行く陽の光を反射しながら、あまりにも長い大剣が振り下ろされる。
縦に振り下ろされたその剣を獅子王は横へ避けた。
「……なんのつもりだ、サー・シルバリオ。我が最も古き騎士よ」
「猶予など不要、答えは決まってる」
他の者へと与えられた猶予の時間を、彼は捨て去った。
他の者が思い悩むのはわかる、だからこそそんな必要もないほど早くに決着を付けてしまおうと、友の悩みすら切って払おうと彼は決めたのだ。
しかし、シルバリオという騎士に許された霊基はあまりに小さい。
無数の転生を繰り返した人物の、伝説として残された文献も少ないたった一生涯を無理やりに切り抜いた歪な霊基はあまりに弱く、脆かった。
「……何故、何故だ、我が騎士よ。私は、あなたを誰よりも信頼していたのに」
振り抜かれる剣をロンゴミニアドで弾いた獅子王の表情に翳りが生まれる。彼女の中の騎士王の残滓とも呼べる感情が僅かに現れた。
「………私は、騎士王の円卓の騎士だ。だからこそ、お前がお前であるうちに、その息の根を止めてやる」
「──、そうか。ならばどうなろうと、卿は私の隣に立つことはないのだな」
躊躇いがちに握られていた聖槍の柄を、獅子王は今一度握り直した。
真横から振り抜かれた大剣が逸らされる。
彼はすかさず後ろへと飛び退く。
獅子王は聖槍を構える。
白銀の騎士は、その大剣を握り締める。
「我が騎士道は血に塗れ、最早その先に道は無し。……『
彼の身体を不気味な魔力が覆う。
曰く、その騎士は最も多くの血を浴びた騎士である。
曰く、その白銀は血に塗れてなお白く輝いた。
そして、伝説に曰く、その大剣を振るう怪力は龍にも勝る。
彼の宝具は彼の殺戮そのものであり、呪いでもある。
しかし、あくまで伝説の脚色、彼の自力は龍には遠く及ばない。
それでも、彼は獅子王の首にその刃を突き立てんと走った。
衝撃と轟音、破壊音。
その後に残ったのは……
「……──、あと一歩、か」
「あぁ、あと一歩だ。卿の刃は私の首を落とすに至らなかった」
ロンゴミニアドが、白銀の鎧を貫いている。
かつて敵の返り血に塗れていた白銀の鎧は、今は彼自身の血を浴びて輝いている。
彼の大剣は、彼女の首に薄く傷を残し、獅子王の籠手に防がれていた。
「おォォ──!」
彼は大剣を手放し、腰の剣に手をかける。
その剣は、彼が生涯にてたった一度行った一騎打ちにて使われた剣。
第二宝具『
これまでに大剣によって切り捨てた者たちとは違う、自らの友と呼んだ者を、親愛なる者を殺すのだという決意の表れ。
有象無象と同じ錆にはしないという彼なりの想い。
しかし、彼がそれを引き抜くよりも、獅子王がその聖槍を彼の体から引き抜く方が早かった。
引き抜かれたロンゴミニアドの一撃に彼は膝を突く。
「……不死とは呪いだ。お前のソレを終わらせることができるのは、私しかいないと思っていたが、なんともまぁままならんものだ」
霊核を貫いた一撃を受けて、彼は現界して初めて笑った。
自嘲するように、そして……自らの死を得ることのできない騎士王
「──はは、やはりこういうのは私の役回りではないな。──お前に、満足できる終わりが訪れることを祈っているよ」
白銀の騎士の体を淡い光が包む。
後に残されたのは、それぞれの決意をした円卓の騎士たちと、それを聞き届けようとする獅子王。
そして、地面に突き刺さった一本の大剣。
最期まで彼なりの王への忠を尽くした彼の姿は、円卓の騎士たちの胸の中にそれぞれの思いを抱かせた。
円卓の騎士は獅子王を護るもの、獅子王を誅するものに別れ、そして戦い、そうして獅子王の騎士たちは誕生した。
彼らはまず一番愛するものを手にかけ、獣になった。
もはや生き延びようと聖槍に選ばれる資格もなくなった。
そして、自らの最も古い騎士であった彼を処断した獅子王もまた、自らを人と呼ぶ資格などなく、人を捨てた者であると、自らの内に残った最後の騎士の残滓を打ち捨てた。