未確認で親交系   作:優柔不断

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『未確認で転校生』

 

 

 

 真っ白な雪が街全体を包む中、夜ノ森家の家の周りにも銀世界が広がっていた。

 吐息をつけば白く広がる煙に、子供たちは満足するだろう。

 そう思いながら、見た目が青年然とした夜ノ森家の大黒柱。僕、夜ノ森蒼宗が雪掻きをしていた。

 結構積もっているし、車が通る道路も真っ白だ。

 

「ふう。これで子供たちが通りやすくはなったかな」

 

 せめて家の周りだけでもと、僕が大きな除雪用スコップで道を作っておいた。

 

「うわぁ。積もった積もった」

 

「母さん? 珍しいね、こんなに朝早く」

 

「旦那が朝5時から雪掻きしてるのに寝てられないわ」

 

「別に良いのに、ほら。寒いから中に入ろう。あらかた終わったしね」

 

「ほんと、仕事が早いわね」

 

 そう言って、愛する妻が僕の頬を優しく触ってくる。

 あぁ、とても温かい。愛する妻・茜はそのまま僕にキスをしてくれる。

 

「寒い朝から一気に温かくなったよ。僕は幸せだなぁ」

 

「私も、炊事洗濯をしてくれるスーパー主夫に恵まれたわ。そして子供たちにも優しい良いお父さん」

 

「…………〝良いお父さん〟になる為に、頑張っているのかもしれない……」

 

「……そんなことないわよ。あなたは良いお父さん」

 

 とても静かで、優しい声音に、思わず涙腺が緩んでしまった。母性というものは破壊力がある。

 こうして妻に弱みを見せてしまうのも、治さないといけないかもしれないなぁ。男なんだし、夜ノ森家を任されたのだから、(あかね)と娘たちを守れる父として。

 

 

◇ ◆ ◇ ◆ ◇

 

 

「寒かったでしょ? 朝一のコーヒー淹れるよ」

 

「お願いするわ。寒いとはいえまだ目が覚醒してないしねぇ」

 

 そう二人が喋りながら、台所にへと入っていく。

 だが、密かに会話を盗み聞きしていオレ、三峰白虎は溜め息を吐いた。

 

(……あなた方が気にする必要はないんですよ……全部悪いのは〝三峰〟の方です)

 

 蒼宗さんが気に病んでいたこと、茜さんもそれ同様に気にしていたこと。その原因は知っている。知っているからこそ、報いたい。

 

 夜ノ森家を、守る。

 

 

◇ ◆ ◇ ◆ ◇

 

 

「それじゃ、オレと真白は先に向かいますね」

 

「ほんとうに私も行かなくて平気?」

 

「なんなら僕も付いて行くけど?」

 

 いざ、新たなる学校にへと、足を運ぼうとした所、茜さんと蒼宗さんが気にしてそんなことを聞いてきてくれた。

 オレは頭を下げて大丈夫ですからと何回もしたことで折れてくれた。そりゃ田舎から来た未成年を一人で学校に行かせて、転入の手続きまでやらせては居住者の責任者として茜さん達も気掛かりなんだろう。

 だが、生憎と『普通』とは違うので、大丈夫なのだ。

 

「それじゃ、小紅ちゃん。白夜を頼んますよー」

 

「はくやー! ちゃんと大きな声で挨拶するんですよー」

 

 そうしてオレと真白は真っ白な雪道を歩いて学校へ、小紅ちゃんや紅緒が通う雲雀高校にへと向かった。

 今から小紅ちゃんや紅緒が驚く顔が楽しみだ。

 

 

◇ ◆ ◇ ◆ ◇

 

 

 真白も学校に通う為にわざわざ自分の学校を休んでまで面倒を見るという白虎さんに、私は少しばかり驚いていた。

 

「小紅、どうした?」

 

「あ、うん。白虎さんはわざわざ学校を休んでまで真白の面倒を見るなんて凄いなー、と思ってたんだ」

 

「……そうか?」

 

 必然的に私と一緒に通学することになった白夜と共に、高校への道のりの中そんなことを喋っていた。

 

「……手続きが間に合わなかったから、兄さんが面倒見るって昨日も言ってた」

 

 白夜が相変わらず無表情のままだが、白夜も白夜さんに任せるほど信頼してることに少し心が和らぐのが分かった。

 やっぱり兄弟妹(きょうだい)なんだな、って。

 だが、ほっこりとしている場合じゃない。今まさに男子と一緒に登校しているカップルに見られているんじゃないかとドキドキしている!

 なんて言い訳をしようかな、なんて考えていると、十字路の左から、さっそく同じクラスの男子生徒に目撃される。

 だが(はや)し立てることもなく、物凄く見なかった風に顔を逸らされて高校にへと早足で向かっていった。

 

(ぬわわぁぁぁ!!)

 

 考えた矢先に見つかるなんて、心の中で叫喚して頭を抱えてると、

 

「おはよー、小紅ちゃん」

 

「ふっ、止めておけと俺は言ったぞ? だが挨拶してしまっては仕方ない……おはよう! (ちいさ)(くれない)よ!」

 

 後ろから顔馴染みの姉弟がやって来ていた。

 

「まっ、まほらにまこと!!」

 

「あれー? そちらの方は~?」

 

「その姿形……果ては漆黒の闇から生まれ堕ちし者か?」

 

 伸びた口調と優しそうな眼鏡を掛けた私の親友・まほらが何の臆することもなくズバリ聞いてくる。そしてそのまほらと似ているが独自な体の動きと独自なしゃべり方をする独自的なまほらの弟・まことが訳分からないことを言い出している。

 

「えっ、あっ、えーっと! そのかんだっ!」

 

 そして今現在私は最高にパニックしている。

 なんて説明したものか! 許嫁とこの際ハッキリと言うべきか? いや、それでは堂々と囃し立ててくれと言わんばかりじゃないか。

 思考が追い付かない時、白夜がまゆら達と向き合い。そして、

 

「……小紅の許嫁の三峰白夜、16歳です。……小紅がいつもお世話になっております」

 

「まぁー」

 

「ほほぅ」

 

「何丁寧にあいさつしてるーー!!」

 

 とても良いお手本になるようなお辞儀をして挨拶されてしまったー!

 まゆらもまこともとても良い笑顔になっている。

 

「これはこれはご丁寧にどうもですー。あたし桃内(ももうち)まゆらと申します。小紅ちゃんのお友達でーす」

 

「桃内まことです。小紅さんとはお友達です。まゆらの弟です」

 

 互い凄い丁寧にお辞儀して挨拶し合っていた。

 そして、まこと。お前はたまに真面目になるから疲れるなぁ。

 

「知らなかったよ。小紅ちゃんに許嫁がいたんだねー」

 

「これも終焉の雷鳴(こえ)

 

「まことも驚いてるってー」

 

 こらが姉の力か、まゆらは手を顔にかざしたまま決めポーズをしたままのまことの言葉を代弁した。よく解読できると私は関心する。

 

「い。いやこれは私も知らなかったんだぞ!? 誕生日に急に言われて、いきなり一緒に住むことになったりして私も混乱状態しているというか……! 小姑も居るし」

 

「誕生日プレゼントが許嫁で同居で小姑……? ちょっと待ってー、脳が処理しきれないよー」

 

「複雑暗号のパラドックス 」

 

 まゆらがグルグルと目を回して混乱している所で、また一人だけ見当違いな方向を向いて見当違いな発言しているまことを放っとき、軽く事情を話しながら歩いていく。

 

「そっかぁー。おじいさまが決めちゃってたんだー。小紅ちゃんち、昔からおじいさまの言うことは絶対だったもんねぇ」

 

「そうなんだ……おかげでうちはおじいさまが亡くなるまで全員、目玉焼きは固焼きにソースをかけるのしか許されなくて……」

 

「そうだったんだー」

 

「私は塩が好きで母様と父様は醤油。姉様はケチャップ、しかも半熟派だったのに……」

 

「あたしはオーロラソースが好きだなー」

 

((目玉焼きにそんな選択肢があったのか…………))

 

 前方に歩いて話していた私たちの後ろに、男子組が静かに話を聞いてくれていたが、まことは白夜とちゃんと話してるのかな?

 少しだけ気になる。

 

「我が半身よ! そのような邪気が迫り来る波に溺れたかっ?」

 

「えー? あたしまことの前でもかけてたよ~? というか、まことにもかけてあげてじゃない~」

 

「なん、だと!?」

 

「えーい! というか目玉焼きの話はどうでもいいんだっ! いいか白夜っ、許嫁のことは学校では話すんじゃないぞ。秘密だからなっ」

 

「……?」

 

「こんなこと皆に知られたら面白可笑しくはやし立てるに決まっている! いいな!?」

 

「……………わかった……小紅が嫌なら言わない……」

 

 むぐっ……そんな言い方されたら、……私が悪いみたいじゃないか……。

 無表情な顔の白夜に、少し落ち込んだようにと見えてしまった。

 

「ま、まゆらとまこともこのことは内密に頼むぞ」

 

「う……うん……」

 

「了承の果てに何を望む」

 

 受け流す(スルー)

 

「でも、小紅ちゃん。あんな言い方ないよ~。三峰くん可哀想だよ~。まことが珍しく人のこと心配して三峰くんの肩に手を添えてるよ~」

 

「…………ぅぅ」

 

「それに良い人じゃない。ちゃんとご挨拶してくれたし~」

 

「そ……そうか……?」

 

「そうだよ~。あとね~えっとほら……まことの相手してくれるよ~!」

 

 え~~? でも確かにテンションの違いが分からない者同士で通じ合うものがあるのかもしれない。現に今だってまことの『お前から闇の気を感じる』という解読不可能な話に『きっと海苔を食べてきたからだ』と白夜も合ってるのか合ってないのか答えが分からない返答をしていた。

 そして、私はもしかして落ち込んだんじゃないかと心配して、少し白夜に向き返り、聞いてみた。

 

「お……おい。お、怒った……か?」

 

「?……いや……その、ただ……」

 

「た……ただ……?」

 

「……オーロラソースって何かな、と」

 

「目玉焼きの話!?」

 

 

◇ ◆ ◇ ◆ ◇

 

 

「じゃあ、職員室はあっちだから」

 

「…………」(コクリ)

 

「三峰くん一緒のクラスになれるといいね~」

 

 まゆらがニコニコしながらそう言う。

 べ、別に心配とかしてるワケじゃないし……一緒のクラスなら手助けとか出来るとか考えてたワケではないし……。

 

「ねー?」

 

コツン、と柔らかいまゆらが優しくぶつかってきた。

 

「な、なんだっ///」

 

「祝福の鐘が鳴動っ! (訳:まゆ姉かわえー!)」

 

「このシスコンめがー! この姉を引き剥がせー!」

 

「まゆ姉可愛いから離れてだって」

 

「だからお前はなんで急に素に戻る!?」

 

 この弟はたとえ公然だとしても崩さないこのペースに、一種の尊敬の念が浮かぶが、残念ながら浮上してはすぐ沈むから意味はなさない。

 だが姉のまゆらも(まこと)に甘いしブラコン気味だから、結局昔から変わらないままだ。

 私か? 私はあの〝姉〟の妹だぞ? ……慣れたさ。

 

「うふふ~、でも三峰くん本当にいい人だと思うよ~?」

 

「またその話かっ」

 

「歩幅か」

 

「うん。まことの言うとおり三峰くんあんなに大きかったらあたし達と歩幅も違うのにね~」

 

 そういえば……買い物について来たときも……。

 

吾輩(わがはい)も大きいである! 吾輩は男である!」

 

「え~? まこともあたしと同じ身長だから小っちゃいよ~。おチビさんだ~」

 

「なん、だと……? 謀反おこす、ぞ!」

 

「なでなで~」

 

「わ~い、ほがらか~ほが~らか~」

 

 しまった。私が考え事してたら姉弟の漫才が始まってしまった。学校の廊下でやめてほしい!

 私はいつものように二人を引っ張って自分たちの教室に入っていった。

 

 なんやかんやと二人と話していれば、担任の先生が来て、朝のホームルームが始まった。

 そして、

 

「えーというわけで、今日から皆さんのお友達になる。三峰白夜君です。仲良くしましょうねー」

 

 なんとなくだけど、こうなる予想はしていた。

 そして嬉しそうにまゆらが私の方に向いて笑顔になる。

 まったく。本当にまゆらの笑顔にはこちらも笑顔になってしまいそうだ。

 因みに、前がまことでその隣がまゆら。クラスの皆も何故か公認カップルのように席がなるべく近くにしてあげるべく、少しだけ手伝っていた。

 

「それからもう一人、新しいお友達が居るんですよー」

 

 えっ?

 

「三峰真白です! よろしくお願いします!」

 

「えぇーーっ!! いろいろどーゆうことォー!?」

 

 

 

 どうやら高校生活も、未確認(わからない)だらけのようだ。

 

 




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