わたしの百合ハーレムは神様に望まれているらしい   作:緑茶わいん

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地域興し作戦 1

「石がたくさん採れるのは魔力のおかげ。魔物が出てきやすいのは魔力のせい。……駄目じゃんこれ?」

「そうですね……。良い方向に働けば人のためになり、悪い方向に働けば人を害する。魔力とはそういうものなのです」

「魔力を良い方向に向ける方法はないんでしょうか?」

「神聖魔法によって土地を浄化すれば魔物の出現を抑えられると聞きますが……」

 

 みんなの視線がいっせいにシルヴィアに向けられる。

 

「それはどのくらいの頻度でかけるもの?」

「ええと……詳しくは聖女様に伺うべきかと思いますが、最低でも季節に一度は必要かと」

「三ヶ月に一度ここに来て大きな魔法を使うのは……ちょっと無理かなあ」

 

 そこまでの神聖魔法を使えるのは限られた聖職者だろうし、そんな魔法なら欲しがる地域はいくらでもある。ひとつの領地だけが恩恵を受け続けるのはちょっとズルい。

 

「恐れながら、私としては他の方向性も模索するべきかと」

「そうね。時間はあることだし、いろいろと考えてみましょうか」

 

 さすがに夜も遅くなってきたので今日のところは眠ることにする。

 

「クレール。せっかくだから一緒に寝る?」

「む」

 

 目を輝かせて頷きかけた少女は──けれど、ぎりぎりのところで踏みとどまって。

 

「ううん。寝間着じゃなにかあった時に動きづらいし、手のところに剣を置いておきたいから。我慢する」

「……そっか」

 

 あのクレールが真剣に任務のことを考えている。

 嬉しいような、寂しいような。戦闘が上手くいかなかった後というのもあるかもしれないけれど、これがお互いに大人になっていく、ということなのかもしれない。

 

「じゃあイズ。一緒に」

「それはズルい!」

 

 うん、やっぱりクレールはクレールかもしれない。ちょっとほっとした。

 

 

    ◇    ◇    ◇

 

 

「ねえ、シルヴィア? 私はこれからどうすればいいの?」

 

 翌日の昼間はファン──ステファニーと遊ぶことにした。

 母であるスザンナ第四王妃も一緒である。

 存在を葬られた第十王女、今は非公式の公爵令嬢である彼女は大っぴらに外へ出られないらしく、私室で遊ぶことを余儀なくされている。

 少しでも気が紛れればとクレール、イザベルも連れてやってきた。

 話をしたり、手遊びをしたり。そんなふうにして遊んでいると、少女がふと顔を向けて尋ねてくる。

 

「ファン様が将来、なにになるべきか、ということでしょうか?」

「うん。……私は、神様の言うとおりにしちゃいけないんでしょう?」

 

 少女の恩恵は前代未聞の『女王』。

 それに従おうとすれば多くの混乱が起きる。だから女王にはなれない。

 なにかしら別の職業神託を受けたと偽って暮らしていくしかないだろう。幸い、否応なく注目される王族と違って貴族の庶子なら「恩恵を見せろ」と強要される機会は少ない。

 誤魔化し誤魔化しやっていくことはたぶん可能だ。

 

「そうですね……。むしろ、こう考えてはいかがでしょう? ファン様には多くの可能性があります。あなたは自分のなりたいものになってもいいのです」

「私の、なりたいもの?」

「はい。前に仰っていた聖職者は難しいかもしれませんが、職人や商人──騎士にだってなることができます」

 

 それは、この世界ではあまり馴染みのない考え方。

 前世が日本人だったシルヴィアには当たり前の考え方でもある。

 

「ファン様のなりたいもの。考えてみてはいかがですか?」

「……私は、なにになってもいいの?」

「本当になんでも、とはいかないかもしれませんけれど、選択肢があるのはいいことです。クロヴィス様に相談なさってはいかがですか?」

 

 これにスザンナも微笑んで頷く。

 

「そうね。……私には王妃以外の道なんてなかったもの。むしろ羨ましいくらい」

 

 神に決められた道を進んでいるのはシルヴィアたちも同じだ。

 

「わたしも神様の勧めで戦略家を目指しています。……そうでなかったら料理人とか、学者とか、なってみたいものはあったのですよ?」

「あたしは騎士で満足してるけど。そうだよね。なりたいものとか考える前に『これ』って決まるのが普通だもんね」

「はい。私も、自由に選べるのなら別の道を選んでいたと思います」

 

 神託が国の安定を助けているのも事実。国王の選別がスムーズになるのはもちろん、それぞれの職業に一定数が割り当てられるので極端な人手不足が起こりづらい。

 前世では医者や教師が不足して問題になっていた。

 

「もし騎士を目指されるのでしたら『銀百合』は歓迎いたします」

「あ、それ面白そう。でもそうするとあと二年で進路を決めないとだね」

「七歳から寮生活だもんね」

 

 自分で職業選択をするように社会の仕組みができていないのもある意味問題かもしれない。

 職業が神に決められるということは、急な拡大が難しいということでもある。例えば騎士をもっと増やしたければ五歳以下の子供たちに望みを託すしかないわけで。

 神託は別のだったけど騎士になりたい! みたいな子供が増えれば多少は解決する。

 そのうちなにかこう、救済措置のような──国のために戦いたいという八歳以上の子を拾い上げる制度を『銀百合』内に設けてもいいかもしれない。

 

「ちょっと。なにも危険な仕事を勧めなくてもいいでしょう? もっと安全な仕事がいくらでもあるのだから」

「申し訳ありません、スザンナ殿下。わたしたちが騎士団関係者なので、つい」

 

 慌てて平謝りすれば、ステファニーはくすくすと笑ってくれた。

 うん。この笑顔を守ってあげたい。彼女が健やかに生きてくれればそれが一番だ。

 

 

    ◇    ◇    ◇

 

 

「トロールと採石場、魔力の関係、か」

 

 アンを連れて相談に行くと、クロヴィスは顎に手を当ててうなった。

 

「お前達にそれを解決する手立てがあるというのか?」

「一時的にトロールの発生を抑えることならわたしにもできそうです。ただ、それ以上はまだ」

「だろうな。……レイユ湖の一件は見事だったが、ここも同じようにはいかないだろう」

「はい。あれは太陽の光が魔石をつくっていましたが、大地の魔力となるとおそらく地面からです」

 

 穴を掘って調査するとなると大変だし、原因も見つけづらい。

 

「下手に掘り返して刺激することで逆に良くない作用があるかもしれません」

 

 地震とか。トロールがむしろ増えるとか。

 

「土地の浄化か。この街の聖職者で賄えるのなら願ってもないのだがな」

「上位の神聖魔法を安易に広めることは神の威光を貶めることに繋がりかねませんので、わたしが勝手に指導するわけにもいきませんね」

「常識外れの儀式を軽々扱う巫女がよく言う」

 

 巫女じゃないと反論したかったけれど、シルヴィアはもう正式な巫女なのでなにも言えない。

 

「で? 他の方法は何か思いついたのか?」

「大地の魔力が強いのであれば作物もよく育つのでは、とも思いましたが……」

「ここらの土地は農業にはあまり向いていない。土が硬すぎるらしい」

「石が生えてくるような土地柄ですものね」

 

 大地の魔力にも種類があるのかもしれない。

 

「なかなか上手くはいかないものだな」

「文献を調べたり、聞き込みをしたり、いろいろと動いてみようと思います。イリス様も物流の観点から調査をしてくださるかと」

「それはいいが、お前達にはもっと突飛な発想を求めたいな」

 

 また無茶を言ってくれる。

 

「あのトロールに敢えて鉱石をたっぷり食べさせると凝縮されて質のいい石ができないか、とか、そういう方向性ですか?」

 

 ものすごく適当に思いつきを口にしてやると、何故かクロヴィスは「ほう」と感嘆して、

 

「面白そうだな。いいぞ、試してみろ」

「簡単に言わないでください」

 

 でもまあ、上手くいったらクレールの武器素材も準備できるかもしれない。

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