わたしの百合ハーレムは神様に望まれているらしい   作:緑茶わいん

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章間 番外編
【番外編】お土産と素朴な疑問


 公爵領から持ち帰ってきたお土産はけっこうすごい量になった。

 具体的に言うと、シルヴィアの買った分だけで荷馬車が一台まるまる埋まった。

 

 なんでそんな量になったのか。

 渡す相手が多いからだ。騎士団関係、貴族学校関係、神殿関係──ほら、数えるだけで面倒くさい。

 受け取る相手も多くが貴族。となると一人に渡す量も日本人の「旅行のお土産」程度とはぜんぜん違う。

 日本に置き換えると、友人にちょっとしたお菓子を配るくらいのノリで菓子折り二種類を一箱ずつ、さらに冷凍の海鮮となんか洒落た置物くらいは余裕で贈る。

 受け取ったほうも家族と共有したり使用人に施したりするのでこのくらいはいるのだ。

 

 受け渡しは基本的に使用人を通して。

 自分の使用人から渡して、相手の使用人が検品、リストを作って主人に渡す。受け取った主人は興味のある品だけを手元に置いて、残りは親族や使用人に渡したり、売ったりする。

 特に親しい人やお世話になった人には品物を持参して「確かに渡しました」と挨拶もする。

 玄関先で「はいこれ。じゃ、また!」って言えたら楽なのに。

 というわけで。

 

「みんなの分のお土産は別途贈ったけど、これは騎士団みんなの分ね」

 

 木箱一つ分のお土産がスリスの手でテーブルに置かれた。

 慣れてきた騎士団長室。

 同席していたラシェルが「どれどれ」と覗き込んで、

 

「工芸品かな?」

「そうです。小さくて可愛いものを選んで買ってきました。早いもの勝ちということでいいですよね?」

「もちろん。でも、ボクたちももらっていいのかい? 他にもいろいろもらったけど」

「大丈夫ですよ。たくさん買ってきましたから」

 

 ご当地の石細工。

 石なので値段は大したことがないものの、さすがに石の質と細工の懲り具合はなかなかだ。なによりもらっても場所を取らない。

 

「ララたちや平民のみなさんには別に買ってきたので、これは騎士で分けて大丈夫ですよ」

「ふーん。そっちはなにを?」

「主に食材ですね」

 

 食べ物は輸送の間に悪くなるのでのんびりした旅には向かない。商人はできる限り一日の移動距離を伸ばしたりして輸送している。

 ただ、平民は食べられるもののほうが嬉しいだろう。保存用の魔道具を使って悪くならないように持ち帰ってきた。

 ラシェルはこれに「なるほど」と頷いて、

 

「手間を考えるとそっちのほうが高級品じゃないかな?」

「いや、本当にただの野菜とかですよ?」

「そんなこと言って、シルヴィアのことだから珍しい食材買い込んできたんじゃないの?」

「そ、それは……まあ、少しは」

 

 ただし、それは両親やマリーの研究用なので分けられない。

 

「そっちはだめですからね? 食事なら食堂でお願いします」

「もう、ラシェル先輩? シルヴィアをあまりいじめないでくださいませ」

「いいじゃないか、これくらい。ボクたちの仲なんだし」

 

 人によってはパワハラだけれど、ラシェルとは実際仲が良いのでセーフ。

 机から立ち上がって歩いてきたエリザベートが木箱の中から一つを手に取る。何気なく取ったようでいて、しっかり自分の好みのものをゲットしたようだ。

 

「でもさ、なんだか不思議っていうか、変な感じ」

「なにがですの?」

「貴族ってこうやってたくさんお土産を買ったり贈り物をするじゃない」

「そうですわね」

 

 貴族がお金を使うのにはいわゆる「経済をまわす」意味もある。

 お金を市井に還元し、産業を発展させ、民を飢えから守る。みんなが後生大事にお金を抱えていては市場に出回るお金が少なくなってみんなが困る。

 

「あっちこっちで出費するのによくお金が足りなくならないよね?」

「足りなくなっているんですの?」

「ちゃんとやりくりしてるよ。桁が大きいから大変だけど」

「そこは慣れですわね」

 

 お金持ちの金銭感覚が狂う理由がよくわかる。

 食べるもの、着るものの値段が普通に十倍以上したりするのだ。

 

「いまのところやりくりしてるけど。っていうか、なんかことあるごとにご褒美もらうからそのたびに余裕ができてるけど、管理を間違ったらあっという間に赤字じゃない?」

 

 前世時代から不思議だったこと。

 こんなことしていて本当に失敗しないのか。

 と、エリザベートはふっと笑って、

 

「だからこそ、管理を誤った家が潰れるのですわ」

「潰れる家もあるんだ!?」

「そりゃああるよ。有能だった先代が急死してぼんくらが継いだ結果、あっという間に大赤字とかけっこう聞くよ」

「それで大丈夫なの貴族」

「そうならないように管財人を雇ったり、しっかりとした配偶者を選んだりするの。……まあ、そういう機転もきかないような家は本当に潰れますけれど」

 

 貴族怖い。

 一族経営の会社みたいである。というか似たようなものか。

 

「エリザベートはそういうの大丈夫なの?」

「お父様はそういったところで厳しい方ですので、幼少期からお金の使い方については躾けられました。……というか、わたくしの場合、ある程度自分で管理するしかありませんでしたし」

 

 騎士学校時代、メイドもつけられない寮生活だったことを言っているのだろう。

 同室のイザベルをずいぶんとこき使っ──頼っていたので「独り立ち」と言っていいかは疑問の余地があるけれど。

 生活に必要な品を自分でリストアップ、金額も添えて家に支援を要請するといった「社会勉強」は行われていたらしい。

 

「まあ、これに関してはシルヴィアほどではありませんわね」

「やっぱり平民はそういうのに敏感なのかい?」

「そうですね。お金の計算くらいできないと直接的に損をしますし」

 

 商人によっては意図的にごまかしてきたりするし、そうでなくとも銅貨の代わりに銀貨を使ってしまう──とか発生しかねない。

 

「読み書きができなくても物の値段だけはわかるとか、酒場の看板だけは間違えないとか、そういう人はけっこういますよ」

「へえ。平民もいろいろ工夫して生活してるんだね」

「そういった機転では貴族の子女よりもしっかりしているかもしれませんわね」

 

 しっかりしているというか、ちゃっかりしているというか。

 

「お金といえば、本格的に服の費用が馬鹿にならなさそうだなあ」

「ああ。あなた、小柄なくせに成長が著しいですものね」

「エリザベートだって成長してるじゃない」

 

 栄養状態がいいからか、エリザベートはかなり女性らしさが増してきている。はっきり言うと胸やお尻のラインが大人っぽくなってきたということだ。

 これにお嬢様は「ふふん」と笑って、

 

「わたくしは身長もありますし。同じサイズでもシルヴィアのほうが目立ちますわよ?」

「あはは。シルヴィアは細いし筋肉もあんまりついてないもんね」

「これでもたまに素振りはしてるんですけど……」

 

 ラシェルは胸が小さめ。彼女も背がたかいほうだし、なにより動きやすく髪もショートなので凛々しい系統の美しさがある。

 アンジェは運動しないのもあってシルヴィア同様の細身だけれど、こちらは清楚さの引き立つ体型。

 リゼットは意外と着痩せするタイプらしく──うん。

 

「イズも意外と大きいのですわよね。というかわたくしより……生意気ですわ」

「いいじゃない。まあ、あんまり大きいと弓を引く邪魔になりそうだけど」

 

 前世の世界では弓を引くために片乳房を切り落とした部族の話なんかもあった。……もしそんなことをイザベルがしようとしたら、シルヴィアは慌てて止めるだろう。

 なお、仲間内でいちばん控えめなサイズなのは──本人の名誉のために具体的な名前は差し控えさせてもらおう。

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