わたしの百合ハーレムは神様に望まれているらしい   作:緑茶わいん

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新しい流れと否定する者 3

 村に男たちを運んで一泊させてもらい、朝に出発して帰還。

 移動手段は御者も馬もなしに自走するでっかい馬車である。座席なんてない、壁と天井がついているだけの代物なのでがったんがったん揺れた。それくらいは仕方ないよね、と、上空を飛び馬車の軌道を調整しつつシルヴィアは思った。

 で、なんとか刺客を引き渡して。

 

「また無茶しましたわね?」

「今回は無理してないと思うんだけど……!?」

「無理ではなく無茶と言いました。……まあ、早く帰って来てくれて助かりましたけれど」

 

 そう言うエリザベートは少し疲れた様子だった。

 

「なにかあったの?」

「いろいろ、ですわね。あちこちから面倒な知らせが次々と」

 

 やれ橋が落ちた、やれ農作物が荒らされた、やれ村の宝が盗まれた、やれ国境付近の砦で隊長が病気になったから治しに来てほしい、などなど。

 全部が全部騎士団の仕事というわけじゃない。

 ただ、事件が起こっているのがほぼすべて『銀百合』関連の家や領地だというのが問題だ。

 率で言えば圧倒的。

 もちろん、一般騎士まで含めるとその家柄はかなりの数に上るので偶然という可能性もなくはないのだけれど、

 

「嫌がらせを通り越して犯罪じゃない、そんなの!」

「ええ、まったくその通りですわ」

 

 副団長であるラシェルも「やれやれ」という顔で。

 

「新人も入ってきて忙しい時だって言うのに、なんで国内貴族から横槍を入れられないといけないんだろうね?」

「騎士の何割かを有するわたくしたちが機能不全に陥れば国力低下は免れません。その隙を他国に突かれればまずいことになりますのに……」

「他国の横槍っていう線はないのかな?」

「すべてがどこか別の国の陰謀だとすれば、あまりに手の込んだ、大掛かりな作戦ですわね」

 

 あっちこっちでタイミングを合わせて事件を起こせるのだから相当だ。いや、国内貴族の仕業だとしてもあんまり変わらないのだけれど。

 

「魔物討伐の要請も引き続き届いていますわ」

「そっちはどうしたの?」

「とりあえず、面倒そうな案件にはクレールとイズを派遣しておきました」

「あの二人なら最速で終わらせて帰ってくるでしょ。ストレスが溜まらないように猫を連れて行かせたし」

 

 最悪、猫ことティーアが守ってくれるわけか。

 

「わたしの行った案件みたいに嘘の要請が混じっているとしたら相当厄介だよ。罠で襲われるかもしれない」

「承知しております。……けれど、一件につき余裕を持った人数を派遣していては足りなくなりそうですわね」

「遠くの案件は日帰りってわけにはいかないからね」

 

 そして悪いことに、クレールとイザベルも魔物の代わりに刺客をぼこぼこにして帰ってきた。

 

「なんなのもう! 人間相手じゃ手加減しないといけないから面倒なんだけど!?」

「……面倒、で済ませるクレールさんもクレールさんだと思いますけど」

「あはは。荒事に慣れてる人員じゃなかったらやられてたかもだね」

 

 これは本格的にどうにかしないとまずい。

 ひとまず可能な限り適切な派遣を続けつつ新人騎士の訓練等を行っていると、その日の夜に城から召喚状が届いた。

 時間指定は今すぐ。

 

「パーティとかじゃないと言っても変な格好で行くわけにはいかないしなあ……」

 

 しょうがないので神聖魔法でぱっと着替えた。

 デザインは異なるものの、ここのところのイメージを継続して白のドレスだ。ついでに下着も作ってしまう。

 この対応にゼリエが苦笑して、

 

「これでは我々メイドのお世話する隙がありませんね」

「ごめんなさい。でも、部屋の掃除や荷物の管理をしてくれるだけで十分すぎるわ。スリスもゼリエを助けてあげてね?」

「もちろんです! お任せください!」

 

 

 

 

 

 城へ呼び出されたのはシルヴィアにエリザベート、ラシェル、リゼット。『銀百合』騎士団上層部が揃い踏みである。さらに神殿からアンジェリカとアンジェも呼ばれていた。

 

「アンジェリカ様。神殿が手薄になりませんか? 騎士団はマルグリット様がいるのでなんとかなりますけれど……」

「信頼できる子に任せてあるから、よほどのことがない限りは大丈夫よ。よほどの事態がここで起こるようならあまりにも出来過ぎだしね」

 

 通された部屋には国王と正妃の他はエリザベートの父である公爵ほか数名の重臣しかいなかった。給仕が終わるとメイドも外に出され、護衛はエリザベートたちが務めるということで話が始まる。

 

「此度の件、我々としても重く見ている。よもや、先の一件があってなお、これだけの不心得者がいるとはな」

「申し訳ありません、陛下。これはすべてわたしに原因がございます」

「よい。其方に悪意が無いことはわかっている。国のため、民のために尽力し、成果を挙げている者を咎めて何になろうか。……むしろ問題は、国のためと言いつつ他人の足を引っ張ろうとする愚か者よ」

 

 言って国王は重苦しくため息をついた。

 アンジェリカが「恐れながら、陛下」と口を開いて、

 

「今回の事態、陛下ご自身やお妃様のご意思は含まれていないと考えてよろしいでしょうか?」

 

 言った人間によっては即首が飛んでもおかしくない発言にも、国王夫妻は苦笑を浮かべただけだった。

 

「少なくとも余にそのつもりはない」

「わたくしも同様です。同じ女として、『銀百合』の活躍を好ましく思いこそすれ疎ましく思うことはありません」

「ならば、本件の関係者をどのように処分するおつもりですか?」

 

 それは核心を突く問いだ。

 シルヴィアが向かった案件、クレールたちが片付けた案件、どちらも城預かりとなって調査が行われることになっている。

 おそらくとかげの尻尾切り、中心人物まではたどり着けないだろうけれど、関係者全員をあぶり出せた場合、いったいどれだけの貴族の名前が挙がるかわからない。

 国王は「そうだな」と重々しく頷いて、

 

「最低でも当人は処刑。特に罪の重い者については一族郎党処分すべきであろう。……ただ、罪を認めた者や勇気ある情報提供を行った者にはある程度の温情、あるいは報奨を与えようと思っている」

「国内貴族の半分が消滅する可能性さえあると思いますけれど」

「構わぬ。だとしても、竜の尾を踏むよりはましであろう?」

 

 プルプルなら一人で城を半壊させることさえ可能だ。むしろ瓦礫をどかすほうが面倒なレベル。

 それにしても、国の行く末を憂う者のせいで国の未来が危ういとか洒落になっていない。

 

「シルヴィア、そしてアンジェよ。其方らはどう思う? この事態、どう動くつもりだ?」

「……それは、私は巫女です。天使になろうと、人を助けるために力を尽くすだけです」

 

 アンジェが遠慮がちに答えるのを聞いて、シルヴィアもまた「そうですね」と頷いた。

 

「わたしも基本的にはアンジェ様と同じ考えです。わたしは憎しみあったり疑いあうのには向いていませんから」

「……え? ときどきすごくあくどいこと言い出すのに?」

「ラシェル先輩、今は真面目な話の最中ですわ」

 

 こほん。

 

「警戒はします。でも、誰が敵かわからない状況でギスギスしても仕方ありません。できる限り力を尽くしてみんなを助けます。今までそうやってきましたし、その結果、いろんな人に助けてもらいました」

「なるほど、な。善行を貫くことで潔白を証明する、か」

 

 国王がふっと笑い、正妃もまた「どちらが好ましいかは明白ですね」と呟く。

 

「いっそのこと、其方の神聖魔法で都の人間全てを浄化できればよいのだがな」

 

 それはただの冗談というか希望に過ぎなかっただろう。

 けれど、シルヴィアは「あれ?」と考えて、

 

「都全体の浄化も、準備があれば可能なのではないでしょうか」

 

 全員が「は? なに言ってるのお前?」という顔になった。

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